消防用設備等の点検は済ませているのに、報告のタイミングで防火管理者が迷うことがあります。
毎年出す建物と、3年に1回でよい建物があるからです。
しかも「報告が3年に1回」というだけで、点検そのものまで3年に1回でよいと誤解されることもあります。
この記事では点検の頻度と報告の周期がどう違うのかを条文から解説します。
うちは共同住宅なので、消防用設備等の点検の報告は3年に1回でよいと聞きました。
報告の周期はそのとおりですが、点検そのものは1年以内の周期で必ず行われます。
報告と点検は別の話です。
点検と報告は別々の周期だったのですね。
はい。
この記事でどちらがどの周期になるのかを整理します。
- 点検そのものは種類ごとに1年以内で消防庁長官が定める期間ごとに行います。
- 特定防火対象物は点検結果を1年に1回、消防長または消防署長に報告します。
- 共同住宅や事務所などの非特定防火対象物は3年に1回の報告でよいとされています。
- 複合用途防火対象物は(16)項イか(16)項ロかで報告の周期が変わります。
- 報告の周期が延びても、点検そのものの周期が延びるわけではありません。
▼

目次
消防用設備等の点検にはなぜ二つの周期があるのか

実際には条文の中に、点検そのものの周期と、その結果を届け出る周期という、二段構えの仕組みが置かれています。
条文は「一年以内で消防庁長官が定める期間ごと」と書いており、上限は1年ですが、それより短い周期になる設備があることを前提にしています。
一方で、点検を行った結果をいつ届け出るかは、この第1項ではなく別の項で防火対象物の区分ごとに決められています。
点検の周期と報告の周期を同じものだと思い込むと、あとの号を読み違えます。
まずはこの二段構えを頭に入れてから、自分の建物がどちらの報告区分に入るかを確認してください。
点検の周期がそんなに細かく決まっているとは知りませんでした。
詳しい年数は消防庁長官が種類ごとに定めていて、この条文自体には具体的な月数は出てきません。
まずは自分の設備の点検表を確認してみてください。
報告を1年に1回にする防火対象物とはどこか

まずは1年に1回の報告が必要になる側から見ていきます。
第1号に並ぶ(1)項から(4)項は劇場や飲食店、(5)項イは旅館やホテル、(6)項は病院や福祉施設で、いずれも不特定または多数の人が出入りする用途です。
(16)項イの特定複合用途防火対象物は、建物のどこか一部にでも(1)項から(4)項まで・(5)項イ・(6)項・(9)項イの用途があれば、建物全体がこの区分になります。地下街の(16の2)項・準地下街の(16の3)項もここに含まれます。
これらは他の記事で「特定防火対象物」と呼ばれている用途の並びとほぼ重なっていて、点検報告の周期でも同じ線引きが使われています。
自分の建物がこの号のどれかに当てはまれば、点検結果は1年に1回届け出ることになります。
飲食店は1年に1回の報告でよいのですか。
飲食店は(3)項に当たるので、点検結果の報告は1年に1回です。
点検そのものは、設備によってさらに短い周期になることがあります。
報告が3年に1回でよい防火対象物とはどこか

条文の並びを見ると、こちらは主に人の出入りが限られる用途です。
(5)項ロの共同住宅、(7)項の学校、(15)項までの事務所や工場、(17)項の文化財などがこの第2号に並びます。
(16)項ロの非特定複合用途防火対象物は、建物のどこにも特定用途が無い複合用途をまとめて指す区分で、こちらも3年に1回の側です。
居住者や勤務者が建物に慣れていて、不特定多数の出入りが少ない用途がまとめられている形です。
自分の建物の用途区分を消防計画や検査済証で確認し、どちらの号に当たるかをはっきりさせておいてください。
うちのマンションは3年に1回の報告でよいのでしょうか。
共同住宅は(5)項ロなので報告は3年に1回です。
ただし管理組合が変わっても周期が途切れないよう、前回の報告日を引き継いでおくと安心です。
3年に1回の報告でも点検まで3年に1回でよいのか

報告の周期が延びることと、点検そのものをさぼってよいことは、条文の上では別の話です。
第3項が求めているのは「点検を行った結果」を維持台帳に記録し、それを区分ごとの周期で報告することで、点検の実施回数を減らしてよいとは書かれていません。
つまり非特定防火対象物であっても、第1項の周期どおり点検は毎回実施し、そのたびに維持台帳へ記録を積み上げ、3年分をまとめて届け出る形になります。
報告書を出す年だけ慌てて点検するのではなく、点検した記録が毎回きちんと台帳に残っているかを見るのが防火管理者の仕事です。
複合用途防火対象物は建物全体として(16)項イか(16)項ロかが決まるので、テナントの一部だけを見て周期を判断しないようにしてください。
3年に1回の報告でよいなら、点検も3年に1回にできますか。
できません。
点検は第1項が定める周期のまま実施し、その記録を維持台帳にためたうえで区分ごとの周期で報告します。
明日からなにを確認すればよいのか

確認する順番を決めておくと迷いません。
検査済証や消防計画に記載された用途区分を見れば、(1)項から(18)項までのどれに当たるかが分かります。
次に維持台帳を開き、直近の点検記録が周期どおりに積み上がっているかを確かめます。
複合用途の建物は部分ごとに用途が違っても、報告の周期は建物全体としてどちらの号に当たるかで決まるので、部分だけを見て判断しないようにします。
用途区分と維持台帳の2点さえ押さえておけば、報告のタイミングで慌てることはなくなります。
用途区分が分からないときはどうすればよいでしょうか。
検査済証や過去の点検結果報告書の控えに記載があります。
それでも分からなければ所轄消防署に確認してください。
よくある質問
まとめ
点検と報告の周期を分けて考えればよいと分かりました!
維持台帳もきちんと整理しておきます。
周期を混同しなければ報告のタイミングで慌てることはありません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3・第44条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の6
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





