防火対象物点検は、令別表第一に掲げるほとんどの用途で管理権原者に義務づけられています。
ところが施行規則には、一定の条件を満たす防火対象物や区画について点検基準の一部を適用しないとする規定があります。
「緩和」という言葉だけを見て、点検や報告そのものが不要になると誤解する管理権原者は少なくありません。
この記事では、施行規則第4条の2の6が定める緩和の範囲と、緩和されても必ず残る実施事項を解説します
うちのビルは一部を倉庫にしていて人がほとんど入りません。
点検基準が緩和されると聞きましたが、点検自体が要らなくなるんでしょうか。
いいえ、緩和されるのは基準の一部の条項だけです。
点検と消防長への報告そのものはなくなりません。
じゃあ、緩和される部分とされない部分の違いはどこで決まるんでしょうか。
施行規則第4条の2の6に、対象になる用途と緩和後も残る実施事項が定められています。
今日はその中身を順番に確認していきましょう。
- 点検基準の緩和は、点検や報告そのものを免除する制度ではありません。
- 対象は令別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イの用途が存在しない防火対象物や区画です。
- 緩和されても、消防計画の届出と消防庁長官が定める事項の実施は必ず残ります。
- 令第8条第2号区画にあたる部分は、避難施設・防火戸の管理義務も引き続き適用されます。
- 該当性や実施事項の細部は所轄消防署への確認が確実です。
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目次
点検基準が緩和されるとはどのような意味か

施行規則第4条の2の6は、この義務のうち一部の規定だけを適用しないとする条項です。
条文が「適用しない」としているのは、第4号から第9号までの規定であって、第1号から第3号(区画の種類によっては第4号)までは適用が残ります。
つまり、対象になっても点検・報告の義務自体は消えず、実施すべき事項の範囲が狭くなるだけです。
「緩和=免除」と思い込んで消防計画の届出まで省いてしまうと、あとで是正指導を受けることになります。
まずはこの条文の構造を正しくつかんでおきましょう。
「適用しない」って書いてあるから全部要らないと思ってました。
残る号の方が実務では重要です。
どの防火対象物や部分が対象になるのか

まずは条文の要件をそのまま確認しましょう。
令別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イは、劇場や飲食店、病院、カラオケボックスなど不特定多数や要配慮者が出入りする用途です。
これらの用途が防火対象物のどこにも存在しなければ、建物全体が緩和の対象になります。
建物の一部だけに存在する場合は、令第8条の区画で仕切られた「用途が無い側」の部分だけが対象です。
倉庫や事務所だけの建物、あるいは耐火構造の壁でしっかり仕切られた倉庫部分が典型例です。
うちの倉庫部分は防火区画されているので対象になりそうです。
区画の種類によって残る義務も変わります。
緩和されても外れない事項は何か

具体的にどんな事項が残るのかを見ていきます。
第1号は、防火管理者の選任届出と消防計画の届出がされていることを求めます。
第2号は、届け出た消防計画にもとづいて消防庁長官が定める事項が適切に行われていることを求めます。
第3号は、高層建築物や地下街などで管理権原が分かれている場合、統括防火管理者の消防計画にもとづく事項の実施を求めます。
これらは用途の有無にかかわらず、防火対象物である限り外れない土台の部分です。
消防計画の届出だけは、緩和されても変わらないんですね。
はい、土台の3号はどの建物でも外れません。
区画の種類で実施事項の範囲が変わることを見落としていないか

見落としやすいのはこの部分です。
条文の「第三号に掲げるものにあつては、前項第一号から第四号までの規定」という部分がこれにあたります。
令第8条第1号の区画(開口部のない耐火構造の床・壁による区画)で用途が無い部分は、第1号から第3号までの実施で足ります。
一方、令第8条第2号の区画(防火戸など防火上有効な措置を講じた設備による区画)で用途が無い部分は、その防火戸を含む避難施設と防火戸の管理まで引き続き求められます。
どちらの区画にあたるかを取り違えると、避難施設の管理まで対象外だと誤解してしまいます。
うちの倉庫部分の区画は、どちらの号にあたるんでしょうか。
区画図面を消防署と一緒に確認しましょう。
明日からなにを確認すればよいか

次の順番で確認していきましょう。
次に、消防計画の届出と防火管理者の選任届出が済んでいるかを台帳で確かめます。
第9号のとおり、市町村長が定める基準が上乗せされている場合もあるため、条文だけで判断しません。
最後に、区画の種類と緩和の該当性を所轄消防署に確認し、点検資格者へその内容を申し送りましょう。
「緩和されているはず」という思い込みだけで点検項目を減らさないことが大切です。
次の点検の前に、消防署へ確認しておきます。
区画図面の整理からお手伝いします。
よくある質問
まとめ
区画の種類から確認してみます!
区画図面の整理からお手伝いします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





