防火優良認定(特例認定)は、条文の3要件さえ満たせば自動的に決まる制度ではありません。
市町村が独自に検査項目を追加できる範囲や、管理権原者が変わったときの扱いには、意外と知られていない線引きがあります。
消防庁は、こうした運用上の疑問に執務資料で一つずつ回答してきました。
この記事では、そのうち五つの質疑応答を選び、現行の消防法第8条の2の3や消防法施行規則第4条の2の6・第4条の2の8などと照らして読みます。
検査のとき、消防署から独自の書類を求められました。
条文のどこに根拠があるのか分かりません。
実は市町村が追加できる範囲には決まった枠があります。
五つの質疑応答で見ていきましょう。
認定を受けたあとに代表者が亡くなったら、うちの認定はどうなるんでしょうか。
そこにも執務資料の答えがあります。
一つずつ確かめましょう。
- 市町村が検査項目として追加できるのは、消防法又はこの法律に基づく命令に関する事項に限られます
- 消防法からの委任に基づかない市町村条例の規定は、点検基準にも認定基準にも組み込めません
- 用途を変えても、防火対象物に該当し続ける限り特例認定は失効しません
- 管理権原者が亡くなった場合、新しい管理権原者に届出の義務はありません
- 点検・報告を怠ったまま改善しないと、最終的に告発で対応されることがあります
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目次
市町村長が検査項目として追加できるのはどこまでか

特例認定の検査では、法令の要件だけでなく
市町村が独自に定める基準も検査の対象になることがあります。
市町村が追加できる検査項目には、そもそも二つの入口があります。
一つは点検基準(規則第4条の2の6第1項第9号)、もう一つは認定基準(規則第4条の2の8第1項第4号)で、どちらも法又はこの法律に基づく命令に関する事項の範囲でしか定められません。
点検基準として定めれば防火対象物点検報告の検査項目になり、認定基準として定めれば特例認定の検査項目になるという役割分担です。
市町村から独自の書類や確認事項を求められたときは、それがどちらの基準として定められているのかを確認すると、求められている理由が見えてきます。
うちの市が求めてきた書類、点検基準と認定基準のどちらの話か聞いてみます。
はい。
どちらの基準として定められた事項かで、効いてくる手続きが変わります。
消防法の委任がない市町村条例を基準に組み込めるか

市町村には独自の条例もありますが、
それがそのまま点検基準や認定基準になるわけではありません。
市町村条例はどんな内容でも点検基準になれるわけではありません。
規則が定めるのは「法又はこの法律に基づく命令」に関する事項だけなので、消防法からの委任に基づかない条例、例えば火気設備の届出や使用開始の届出のような独自条例は、そのままでは点検基準にも認定基準にも組み込めません。
これは消防用設備等の設置基準そのものではなく、どの制度の根拠で求められているかという線引きの問題です。
独自の届出や確認事項を求められたときは、その根拠が消防法令なのか、消防法令から独立した条例なのかを確認する価値があります。
うちの市、火気設備の届出も点検のときに一緒に確認されます。
これも点検基準の話なんでしょうか。
その届出が消防法からの委任に基づくものかで変わります。
根拠条文を確認してみてください。
キャバレーから飲食店へ戻しても認定は失効するか

用途が変わると、認定そのものが無効になりそうに思えます。
実際にキャバレーから飲食店へ戻した場合が照会されました。
用途変更そのものは、認定を失効させる理由に入っていません。
消防法第8条の2の3第4項が定める失効事由は、3年の経過と管理権原者の変更の二つだけで、用途変更は含まれていません。
キャバレーから飲食店へ戻しても、建物が引き続き消防法第8条の2の2第1項の防火対象物である限り、認定はそのまま効力を持ち続けます。
ただし、用途変更の結果そもそも防火対象物に該当しなくなったり、取消事由に当たる事実が見つかったりした場合は話が別です。
業態を戻しただけで、また一から申請し直しかと思っていました。
失効の理由は3年経過と管理権原者の変更だけです。
用途変更そのものは関係ありません。
管理権原者が亡くなったとき新しい権原者に届出義務は生じるか

管理権原者が変わると、消防署への届出が要るとされています。
では管理権原者が亡くなった場合、誰がその届出を出すのでしょうか。
届出の義務は、あくまで「変更前」の権原者に課されています。
消防法第8条の2の3第5項は、管理権原者の変更があったとき変更前の権原を有する者に届出を義務付けており、新しく権原者になった側には届出義務を課していません。
管理権原者が亡くなった場合、変更前の権原者本人が届出を出すことはできないため、そのまま届出義務が生じない結果になります。
もっとも、管理権原者の変更自体は認定の失効事由(消防法第8条の2の3第4項第2号)にあたるため、相続や事業承継で権原者が変わったときは、新しい管理権原者が改めて認定の申請を検討する必要があります。
代表が急に亡くなったら、遺族が慌てて届出しないといけないと思っていました。
届出義務は生じません。
ただし認定自体は失効するので、再申請は検討してください。
点検や報告をしないまま放置するとどう扱われるか

点検や報告をしなかった場合、
消防はどのような手順で対応するのでしょうか。
最初の対応は、いきなりの処分ではなく指導です。
消防機関はまず管理権原者に対し点検及び報告を行うよう指導し、改善を求めるところから始めます。
それでも応じず、点検未実施・未報告を繰り返すなど悪質な場合には、告発という形で対応が進みます。
特例認定の要件としても、過去3年以内に点検・報告がされなかった事実は認定を妨げる事由になるため、放置するほど認定からも遠ざかることになります。
うちは点検報告が遅れがちなんですが、すぐに処分されるわけではないんですね。
まずは指導からです。
ただし繰り返すと告発に進むので、早めの改善をおすすめします。
よくある質問
まとめ
うちの顧問先にも、独自基準と条例の違いを説明してみます!
基準の根拠を確認する習慣をつけてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 防火対象物定期点検報告制度に関する執務資料について(平成15年4月 消防庁防火安全室)
- 消防法第8条の2の2・第8条の2の3
- 消防法施行規則第4条の2の6・第4条の2の8
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および執務資料に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や制度の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





