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特定住戸部分はなぜ住戸ごとの区画で足りるのか|複合用途建物の高齢者施設に求められる七つの要件を解説

複合用途ビルの外気に開放された廊下と住戸のドアが並ぶ様子をイメージした写真

認知症高齢者グループホームや老人ホームのような施設が、店舗や事務所と同じ建物に入っている複合用途ビルでは、その部分だけを区画する工事が必要になることがあります。
延べ面積が275平方メートルに満たない小規模な部分であれば、居室ひとつひとつを区画する通常のやり方ではなく、住戸ごとにまとめて区画すれば足りるという、もう一つの道が用意されています。
この道は、以前ご紹介した住戸利用施設と特定住戸利用施設の違いの中でも触れた条文の続きにあたり、住戸ごとに満たすべき七つの要件が定められています。
この記事では、複合用途建物の中で住戸ごとの区画が認められる「特定住戸部分」の対象と、満たすべき要件をわかりやすく解説します。

うちのビルは1階が店舗で2階から上が高齢者住宅なんですが、この部分だけ壁を耐火構造にする工事が必要なんでしょうか。

条件次第では、住戸ごとの区画で足りる場合があります。
まずは、なぜこの道が用意されているのかを見てみましょう。

普通の区画とは、また別の条件になるんですね。

はい、条文の中身を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 消防法施行規則第十二条の二第三項の定めにより、複合用途建物の中にある小規模な高齢者施設等の部分は、住戸ごとにまとめて区画すれば足りる「特定住戸部分」として扱われます。
  • 対象になるのは、令別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物のうち(六)項ロの用途に供される部分で、延べ面積275平方メートル未満のものに限られます。
  • このルートを選べば、各住戸を準耐火構造の壁及び床で区画し、出入口を外気に開放された廊下に面するようにすれば、住戸ごとの区画として認められます。
  • 各住戸の床面積が百平方メートルを超える場合や、すでに通常の区画工事を終えている部分は、この特定住戸部分のルートを使うことはできません。
  • 実際に要件を満たしているかどうかは、最終的に所轄消防署の確認が必要です。

特定住戸部分はなぜ住戸ごとの区画で足りるのかを示す図解(対象の確認・住戸の区画・通路の仕上げ・消防署への確認の4ステップ)

なぜ複合用途建物の高齢者施設は住戸ごとの区画で足りるのか

複合用途ビルの中で高齢者施設に当たる一区画をハイライトするイラスト
店舗や事務所と高齢者施設が同じ建物に入る複合用途ビルでは、施設部分だけがスプリンクラー設備の対象になることがあります。
まずは、なぜ「住戸ごと」という区画の単位が別に用意されているのかを確認しましょう。
【消防法施行規則第十二条の二第三項】第一項の規定にかかわらず、令別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物(同表(五)項ロ及び(六)項ロに掲げる防火対象物の用途以外の用途に供される部分が存しないものに限る。)の部分で同表(六)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分のうち、延べ面積が二百七十五平方メートル未満のもの(第一項第一号に定めるところにより設置される区画を有するものを除く。以下この条において「特定住戸部分」という。)においては、令第十二条第一項第一号の総務省令で定める構造は、次の各号に定める区画を有するものとする。
この部分は「特定住戸部分」と呼ばれ、住戸単位でまとめて区画すれば足ります。
第一項は居室ひとつひとつを準耐火構造や耐火構造の壁及び床で区画する原則を定めていますが、第三項はその特例として、条件を満たす部分に限り住戸単位での区画を認めています。
これは、複合用途ビルの一部にだけ高齢者施設等が入っている、比較的小規模なケースを想定した規定です。
次の章で、どんな建物のどの部分が対象になるのかを具体的に見ていきましょう。

居室ごとじゃなくて、住戸ごとでいいというのは意外でした。

はい。
次は、対象になる建物とその部分の条件を確認しましょう。

どんな建物のどの部分が対象になるのか

住戸を囲む厚い壁及び床と、外気に開放された廊下に面する防火戸のイラスト
対象になる建物と部分には、条文がいくつかの条件を重ねています。
順番に確認しましょう。
【消防法施行規則第十二条の二第三項】(略)令別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物(同表(五)項ロ及び(六)項ロに掲げる防火対象物の用途以外の用途に供される部分が存しないものに限る。)の部分で同表(六)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分のうち、延べ面積が二百七十五平方メートル未満のもの(第一項第一号に定めるところにより設置される区画を有するものを除く。)(略)
条件は大きく三つ重なります。
一つ目は建物全体が令別表第一(十六)項イの複合用途防火対象物であること(ただし(五)項ロ又は(六)項ロ以外の用途が混ざっていないことが前提です)。
二つ目は、その中の(六)項ロ(高齢者施設等)の用途に供される部分であること。
三つ目は、その部分の延べ面積が275平方メートル未満であること。
さらに、すでに第一項第一号の区画を満たしている部分は、この特定住戸部分のルートから除かれます。次の章で、実際に満たすべき区画の中身を見ていきましょう。

建物全体の用途と、施設部分の面積の両方を見られるんですね。

そのとおりです。
次は住戸をどう区画すればよいかを見ましょう。

住戸ごとにどんな区画を設ければよいのか

住戸の壁に仕上げ材を塗る職人と、外気に開放された廊下に続く通路のイラスト
対象になったら、次は住戸ごとに満たすべき区画の中身です。
号一から号三までが、区画そのものの作り方を定めています。
【消防法施行規則第十二条の二第三項】一 特定住戸部分の各住戸を準耐火構造の壁及び床で区画したものであること。
二 特定住戸部分の各住戸の主たる出入口が、直接外気に開放され、かつ、当該部分における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる廊下に面していること。
三 前号の主たる出入口は、第一項第一号ニの規定による構造を有するものであること。
区画の単位は「住戸ごと」で、各住戸を準耐火構造の壁及び床で囲みます。
出入口は直接外気に開放された廊下に面していることが条件で、煙がこもらず外へ排出できる廊下であることも求められます。
その出入口の防火戸は、第一項第一号ニが定める構造(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの、または煙感知器と連動して閉鎖する構造等)に適合させる必要があります。
居室単位の区画と違い、住戸の中にある部屋どうしを個別に区画する必要はありません。

住戸の中の部屋ごとに区画しなくていいのは助かります。

ただし、仕上げや通路にも別の条件があります。
次の章で見落としやすい点をまとめて確認しましょう。

仕上げや通路、感知器を見落としていないか

天井の煙感知器と、住戸の床面積を測る巻尺のイラスト
区画そのものの他に、仕上げ・通路・感知器・面積の四つの要件が続きます。
どれも見落とすと要件を満たせません。
【消防法施行規則第十二条の二第三項】四 壁及び天井(天井のない場合にあつては、屋根)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを第二号の廊下に通ずる通路にあつては準不燃材料で、その他の部分にあつては難燃材料でしたものであること。
五 第二号の廊下に通ずる通路を消防庁長官が定めるところにより設けたものであること。
六 居室及び通路に煙感知器を設けたものであること。
七 特定住戸部分の各住戸の床の面積が百平方メートル以下であること。
一つ目は仕上げで、廊下に通ずる通路は準不燃材料、それ以外の部分は難燃材料にする必要があります。
二つ目は、廊下に通ずる通路そのものを消防庁長官が定めるところにより設けなければならない点です。
三つ目は煙感知器で、居室だけでなく通路にも設置が求められます。
四つ目が特に見落としやすい点で、各住戸の床面積は百平方メートル以下でなければならず、これを超える住戸があるとこのルート全体が使えなくなります。

百平方メートルを超える住戸が一つでもあると、全部だめになるんですね。

そのとおりです。
最後に、明日から確認すべきことをまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

担当者が図面を持って消防署の窓口で職員に相談する様子
最後に、実務で確認すべき手順を整理します。
図面を用意してから相談すると話が早くなります。
  • 建物が令別表第一(十六)項イに該当し、(五)項ロ又は(六)項ロ以外の用途が混ざっていないか確認する
  • 高齢者施設等の部分の延べ面積が275平方メートル未満かどうかを図面で確認する
  • 各住戸の出入口が直接外気に開放された廊下に面しているか確認する
  • 各住戸の床面積が百平方メートルを超えていないか、住戸ごとに実測する
四つの条件がすべて確認できたら、住戸ごとの区画・仕上げ・通路・煙感知器の計画を立ててください。
計画は所轄消防署への相談を経てから進め、すでに第一項の区画を満たしている部分が無いかもあわせて確認すると判断がしやすくなります。

今度、消防署に図面を持っていって相談してみます。

それがよいと思います。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q特定住戸部分に該当すれば、スプリンクラー設備そのものが不要になるのですか?
Aいいえ、この規定はスプリンクラー設置義務そのものを免除するものではありません。令第十二条第一項第一号が求める「延焼を抑制する機能を備える構造」に該当するかどうかを決める規定で、この構造を満たせばその部分は同号によるスプリンクラー設置の対象から外れる、という関係になります。
Q住戸ごとに区画すれば、廊下や通路の作り方は自由に決めてよいのですか?
Aいいえ、号五により、住戸の出入口が面する廊下に通ずる通路は消防庁長官が定めるところにより設ける必要があります。仕上げについても号四で、通路は準不燃材料、その他の部分は難燃材料にすることが定められています。
Q特定住戸部分の各住戸の床面積に上限はありますか?
Aはい、号七により各住戸の床面積は百平方メートル以下である必要があります。これを超える住戸が一つでもあると、その建物にはこの特定住戸部分のルートを使えません。
Qすでに通常の区画工事を終えている部分でも、この特定住戸部分の規定に切り替えられますか?
Aいいえ、条文は「第一項第一号に定めるところにより設置される区画を有するものを除く」と定めており、すでに居室単位の区画を設置している部分はこの特定住戸部分のルートの対象になりません。切り替えを検討する場合は、既存の区画をどう扱うかを含めて所轄消防署に確認する必要があります。

まとめ

複合用途建物の中にある小規模な高齢者施設等の部分には、住戸ごとの区画で足りる特例がある
対象は令別表第一(十六)項イに掲げる建物の中の(六)項ロ用途部分で、延べ面積275平方メートル未満に限られる
各住戸を準耐火構造の壁及び床で区画し、出入口を外気に開放された廊下に面するようにする
出入口の防火戸は第一項第一号ニの構造に適合させなければならない
仕上げは通路が準不燃材料、その他の部分が難燃材料で、居室及び通路に煙感知器も必要
各住戸の床面積が百平方メートルを超えると、このルート全体が使えなくなる
実際に要件を満たしているかどうかは所轄消防署に確認してから工事や運用を進める

うちの建物が対象になるかどうか、図面を見ながらもう一度確認してみます。

それがよいと思います。
その際は図面もご用意のうえ、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第十二条第一項第一号
  • 消防法施行規則第十二条の二第一項第一号ニ・第三項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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