老人福祉施設や診療所などでは、建物の規模にかかわらず火災通報装置の設置が義務付けられています。
ところが延べ面積が小さい施設では、電源を独立した配線だけで引く原則を守るのが難しいという実情がありました。
国は平成20年、延べ面積500平方メートル未満のこれらの施設に限り、電源配線の要件を一部緩和する特例を設けました。
防火管理者は自施設がこの特例の対象になるか、配線の条件を満たしているかを確認しておく必要があります。
小規模な老人ホームなのですが、先日の立入検査で火災通報装置の設置を指摘されました。
面積が小さいのに、なぜ必要なんでしょうか。
老人福祉施設のように自力避難困難者が入所する施設は、面積に関係なく設置が義務付けられているんです。
今日は、その中でも小規模な施設向けに認められた電源配線の特例について説明します。
うちは延べ面積が400平方メートルくらいの平屋です。
電源をわざわざ専用に引き直す工事は正直しんどいです。
それなら朗報です。
500平方メートル未満の施設には、配線の分岐を認める特例が用意されているので、順番に見ていきましょう。
- 令別表第一(6)項イ(1)から(3)まで及びロに掲げる自力避難困難者が入所・入院する施設は、延べ面積にかかわらず火災通報装置の設置が義務付けられています
- このうち延べ面積が500平方メートル未満のものに設ける火災通報装置は「特定火災通報装置」と呼ばれます
- 電源は原則として蓄電池又は交流低圧屋内幹線から分岐せずに単独でとりますが、分電盤との間に開閉器の無い配線からとる場合は分岐しなくてよい特例が設けられました
- この特例は配線の接続部が振動又は衝撃で緩まないように措置されていることが条件です
- 特例は平成20年12月26日付け消防予第344号による省令改正で新設され、現在の消防法施行規則第25条第3項第4号イに引き継がれています
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目次
小規模施設の火災通報装置はなぜ電源の配線が緩和されたのか

しかし小規模な施設ほど、電源を独立した配線だけで引く原則を守るのが技術的に難しいという実情がありました。
消防法施行規則は火災通報装置の電源について、他の配線から分岐させずに単独でとることを原則としています。
これは、他の機器の不具合や配線トラブルで火災通報装置の電源まで失われることを防ぐための決まりです。
ところが延べ面積が小さい施設では、電源を引き直す工事の余地が限られ、原則どおりの配線が難しい場面がありました。
そこで国は平成20年12月26日付け消防予第344号による省令改正で、小規模施設に限った配線の特例を新設しました。
立入検査で「電源は分岐させずに単独でとってください」と言われましたが、うちの建物では配線工事の場所が限られています。
専用の配線を新しく引き直すのは正直大掛かりです。
その悩みに応えるため、平成20年に小規模施設向けの特例が設けられたんです。
まずは、この特例がどの建物のどの装置に効くのかを確認しましょう。
どの防火対象物のどんな火災通報装置が対象になるのか

まずは、面積を問わず設置が義務付けられる施設の範囲を確認します。
(6)項イ(1)から(3)までは、特定の診療科名を持ち入院施設を有する病院や診療所など、入院患者を抱える医療施設です。
(6)項ロは、老人短期入所施設や特別養護老人ホーム、有料老人ホームなど、避難が困難な要介護者等が入所する施設です。
これらの施設は他の用途と違い、延べ面積が500平方メートル未満であっても火災通報装置の設置を免除されません。
このうち延べ面積500平方メートル未満のものに設ける火災通報装置だけが「特定火災通報装置」と呼ばれ、次で説明する電源の特例の対象になります。
うちの施設は延べ面積が小さいので、これまで対象外だと思い込んでいました。
面積で免除される他の建物とは違うルールなんですね。
はい、老人福祉施設や診療所は面積の基準そのものが無いので、小さな建物でも対象になります。
次は、そのぶん電源にどんな特例が認められているかを見ていきましょう。
特定火災通報装置の電源にはどんな特例が認められたのか

まずは現在の消防法施行規則の条文を確認しましょう。
電源の原則は、蓄電池または交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずに単独でとることです。
特定火災通報装置に限り、分電盤との間に開閉器が設けられていない配線からとる場合は、この分岐禁止の原則が外れます。
ただし配線の接続部を振動又は衝撃で容易に緩まないように固定することが、あわせて求められています。
このほか同じ改正では、ハンズフリー通話機能の定義や、蓄積音声情報の送出方法など、特定火災通報装置の機能面の基準も整理されました。
開閉器が無い配線であれば良いとは、思っていたより条件がはっきりしているんですね。
緩み止めの措置というのは、具体的にどうすればいいのでしょうか。
固定の具体的な方法までは条文に書かれていないので、設置業者に確認するのが確実です。
次は、この特例で見落としやすいポイントを整理します。
実務で見落としやすいのはどこか

現在の条文と比べると、見落としやすい変化が2つあります。
平成20年の通知は「規則第25条第3項第3号イ関係」としていましたが、その後の号の入れ替えで現在は第4号イに位置が変わっています。
対象の範囲も、当時は令別表第一(6)項ロだけでしたが、現在は(6)項イ(1)から(3)までの病院・診療所等も加わっています。
古い資料の号数や対象範囲をそのまま引用すると、現在の基準とずれてしまうので注意が必要です。
また、特定火災通報装置にはその旨を見やすい箇所に表示する義務もあわせて設けられているので、表示の有無も忘れずに確認します。
当時の通知の号数をそのまま資料に書いていました。
今の条文と違っていたなんて知りませんでした。
古い通知は改正の経緯を知るのに役立ちますが、号数や対象は現在の条文で確認する必要があります。
最後に、明日から確認する手順をまとめます。
明日から何を確認すればよいのか

図面と現況を照らし合わせるところから始められます。
次に、電源が分電盤から開閉器を介さずに直結されているか、配線の接続部が振動や衝撃で緩まないように固定されているかを確認します。
あわせて、電源の開閉器や配線の接続部に火災通報装置用である旨の表示があるかも見ておきます。
自分で判断がつかない部分は、設置業者や所轄消防に相談すると手戻りが少なくなります。
対象かどうか、面積、配線、表示と順番に見ていけば分かりやすいですね。
今度の点検のときに、あわせて確認してみます。
その順番で見ていただければ十分です。
最後によくある質問をまとめておきます。
よくある質問
まとめ
次の点検では、電源の配線と接続部の固定を一緒に確認してみます!
判断に迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「消防法施行規則の一部を改正する省令等の公布について」(平成20年12月26日付け消防予第344号 消防庁予防課長)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第23条第1項第1号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第25条第3項第4号イ・ロ
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





