病院や診療所の廊下を歩いていると、火災報知設備のそばに小さな赤い機器が並んで取り付けられているのを見かけることがあります。
これは消防機関へ直接つながる火災通報装置で、多くの建物では手動で操作しますが、病院や診療所の一部では条件が異なります。
自動火災報知設備の感知器が作動すると、人の操作を待たずに通報装置そのものが自動で起動する仕組みが定められているのです。
この自動連動の対象と例外を、根拠となる条文から確認していきます。
うちは診療所なんですが、火災通報装置って誰かが押さないと動かないと思っていました。
実は建物によっては、感知器の作動と連動して自動的に起動するよう定められています。
じゃあうちの場合、誰も押さなくても消防に連絡がいくということですか。
条件に当てはまればそのとおりです。
順番に確認していきましょう。
- 消防法施行規則第25条第3項第5号は、対象の火災通報装置を自動火災報知設備の感知器の作動と連動して起動させることを定めています
- 対象は病院や診療所など令別表第一(6)項イの一部と、これらを含む複合用途の建物です
- 受信機と通報装置が常時人がいる防災センターにそろっている場合は連動が免除されます
- 電源は他の配線と分岐させずに独立してとることが技術基準で定められています
- 既存の設備を後から連動化する工事では、配線と電源の技術基準まで含めて確認する必要があります
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目次
病院や診療所の火災通報装置はなぜ自動で作動するのか

けれども建物の種類によっては、この操作を人の手に委ねない仕組みが定められています。
病院や診療所では、火災の発見者がそのまま通報操作までたどり着けるとは限りません。
入院患者の対応や初期消火に人手を取られている間に、通報が遅れる場面が想定されます。
そこで感知器の作動そのものを通報の引き金にすることで、人の操作を待たずに消防機関へつながる仕組みが作られました。
この規定は近年の省令改正で追加され、現在も維持されています。
感知器が作動しただけで、もう消防に連絡が行っているということですか。
対象の建物ではそのとおりです。
次はどの建物が対象になるか見てみましょう。
どの建物のどの部分が連動義務の対象になるのか

まずは条文が指す令別表第一の区分に、自分の建物が当てはまるかを確認します。
(6)項イは細分化されており、連動義務がかかるのは(1)(2)の病院・有床診療所等と、老人福祉施設等を含む(ロ)です。
延べ面積の大小にかかわらず、用途区分に当てはまれば対象になる点が他の設備と異なります。
自分の建物がどの区分に当たるかは、開設時の許可や届出の根拠法令から確認できます。
判断に迷う場合は、所轄消防署に確認するのが確実です。
うちは有床診療所なんですが、対象になるということですね。
(1)(2)に当てはまれば対象です。
次は免除される場合を見てみましょう。
連動が免除されるのはどんな場合か

常に人の目が届く場所であれば、自動化に頼らなくても対応できるという考え方があります。
これは自動化を否定しているのではなく、常駐する監視員が感知器の作動を確認したうえで通報できるためです。
ここでいう「常時人がいる」は、名目だけの配置ではなく、実際に監視できる体制を指します。
受信機と通報装置が別の部屋に分かれている場合は、この例外に当てはまりません。
自分の建物にこの例外が使えるかどうかは、設備の設置場所と勤務体制の両方から確認します。
防災センターに人がいれば、連動していなくても大丈夫なんですね。
常時人がいることが条件です。
次は見落としやすい点を確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

ここを見落とすと、せっかく連動していても実際の火災で機能しない恐れがあります。
分電盤の空きスペースに何でも接続してよいわけではなく、専用の回路が必要です。
既存の建物に後から火災通報装置を増設する工事では、この電源の独立性が抜けやすい点です。
開閉器や配線の接続部には、火災通報装置用である旨の表示も必要とされています。
点検の際は、連動の有無だけでなく電源の系統まであわせて確認してください。
電源を分岐させないというのは、業者に任せておけば大丈夫でしょうか。
工事の仕様書には必ず入れてもらってください。
最後に日頃の確認事項を見ておきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

一度確認しておけば、その後は定期点検の中で見ていくだけで足ります。
次に、受信機と火災通報装置が同じ場所にあるか、常時人がいる体制かどうかを確かめます。
連動が必要な建物では、感知器の作動試験にあわせて通報装置が実際に起動するかも点検で確認します。
電源が独立して確保されているかは、設備業者による点検報告書でチェックできます。
不明な点があれば、書類を整えたうえで所轄消防署へ相談するのが確実です。
まず自分の建物がどの区分かを確認してみます。
それが一番の近道です。
点検のたびに確認していきましょう。
よくある質問
まとめ
自動で消防につながる仕組みがあると分かって、少し安心しました。
連動の有無や電源の配線まで含めて確認いたします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第23条第1項・第2項
- 消防法施行規則第25条第3項第4号・第5号
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





