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特定建築物定期調査の警報設備とスプリンクラー設備はどこを見るのか|懸垂物の落下防止から劣化診断まで5つの視点で解説

警報設備とスプリンクラー設備を確認する調査員

特定建築物定期調査の任意調査項目には、警報設備やスプリンクラー設備、照明器具や懸垂物の落下防止対策に関する確認事項が含まれています。
これらは消防法に基づく点検の対象になっている場合が多く、消防設備士や消防設備点検資格者が定期的に点検していますが、建築基準法上は別の視点で調査が必要になることがあります。
昭和63年には懸垂物の落下事故をきっかけに国が「懸垂物安全指針」を定めており、令和6年の建築基準法改正では大規模木造建築物の規制緩和とスプリンクラー設備の設置が結び付けられました。
本記事では、なぜこの項目を見るのか、どう判定するのか、実務で見落としやすい点を5つの視点で解説します

うちのビルは自火報の点検を毎年受けていますが、それとは別に定期調査でも警報設備を見るのですか。

建築基準法にも警報設備の設置基準があります。
スプリンクラーや懸垂物の落下防止まで含めて確認します。

懸垂物というと、天井から下がっている看板とかですか。

100kg以上の懸垂物が対象です。
順番に5つの視点で見ていきましょう。

この記事の結論
  • 警報設備は消防法の点検記録があれば現地調査を代替できるが、記録がなければ調査員自身が確認します。
  • 警報設備の劣化及び損傷は著しい腐食・変形・損傷の有無で判定します。
  • スプリンクラー設備は令和6年の法改正で緩和された大規模木造建築物に設置されたものが調査対象になる設備です。
  • スプリンクラーヘッドの腐食・変形・異物による目詰まりを目視で確認します。
  • 照明器具や懸垂物は昭和63年の落下事故をきっかけに定めた指針に基づき落下防止対策を確認する対象です。

特定建築物定期調査で確認する警報設備・スプリンクラー設備・懸垂物落下防止の5つの視点を示すインフォグラフィック

照明器具や懸垂物はなぜ落下防止の対象になるのか

天井の照明器具や懸垂物の固定状況を確認する調査員
照明器具や看板等の懸垂物は、経年劣化で落下すると通行人に重大な被害を与えるおそれがあります。
昭和63年の落下事故をきっかけに、国は独自の安全指針を定めました。
照明器具、懸垂物等の落下防止対策の状況について、どのような視点で確認するか。
照明器具、懸垂物等の落下防止対策と劣化・損傷等について確認する。調査の対象は、固定式・駆動式を問わず質量が100kg以上の懸垂物である。
懸垂物は重ければ重いほど慎重な確認が必要です
昭和63年1月5日に発生した懸垂物の落下事故を受け、当時の建設省(現国土交通省)は「懸垂物安全指針」を作成・周知しました。
指針は、壁から突出しているものを含め、質量が100kg以上の懸垂物すべてを適用対象としています。
調査では、固定金具のゆるみや腐食、支持部材の変形など、落下につながる兆候がないかを目視で確認します。
維持管理基準の作成や安全管理者の選任が行われているかも、あわせて確認しておきたいポイントです。

うちのテナントの看板、結構前から付けっぱなしです。

固定金具の緩みや錆がないか、一度確認しましょう。
100kg以上なら指針の対象です。

警報設備はなぜ消防法の点検だけでは調査が終わらないのか

建築基準法の警報設備の設置状況を設計図書と照合する調査員
自動火災報知設備は消防法に基づき点検されていますが、建築基準法にも独自の警報設備の設置基準があります。
用途変更で警戒が必要な部屋が増えていないか、建築基準法の視点で確認する必要があります。
警報設備の設置の状況について、どのような視点で確認するか。
設計図書等及び所有者等へのヒアリングにより建築基準法の設置基準に基づき設置された警報設備について確認する。ただし、6か月以内に実施した消防法に基づく点検の記録がある場合は、当該記録により確認することで足りる。
警報設備は二つの法律から二重に義務付けられています
建築基準法施行令第百十条の五は、病院やホテル、共同住宅など特定の用途の建築物について、火災を有効かつ速やかに感知し報知できる警報設備の設置を求めています。
確認申請が不要な用途変更があった場合、警報設備の新設が必要になっていても見落とされやすいので特に注意します。
消防法に基づく点検記録がある場合はその記録を確認すれば足りますが、記録がなければ調査員が設計図書と現地を照合します。
感知器周辺の照明器具や懸垂物、警報を妨げる物品放置がないかもあわせて確認します。

うちは去年、事務所の一部をテナント用に区切りました。
それでも警報設備は今のままで大丈夫でしょうか。

間仕切りの変更で未警戒の部屋ができていないか確認が必要です。
設計図書と現況を照合しましょう。

警報設備の劣化や耐用年数はどう確認するか

受信機や感知器の劣化と耐用年数を確認する調査員
警報設備は火災を最初に知らせる重要な設備ですが、外観からは劣化が分かりにくい機器もあります。
耐用年数の目安を知っておくと、更新の時期を見極めやすくなります。
警報設備の劣化及び損傷の状況について、どのような視点で確認するか。
警報設備に著しい腐食、変形、損傷等がないかを確認する。あわせて設計図書等の設置記録や銘板等を参考に、各機器の耐用年数を確認することが望ましい。
警報設備にも機器ごとの寿命の目安があります
受信機及び中継器は約15年、感知器は約10年、発信機や地区音響装置は約20年が耐用年数の目安とされています。
発信機の押しボタンにある保護板がない、感知器が変形しているといった状態は要是正の判定につながります。
消防法に基づく点検の記録がある場合は、自動火災報知設備の点検票でその判定結果を確認します。
記録がない場合は、消防設備点検資格者等による点検の実施を管理者に促すことも調査員の役割です。

受信機は設置してから15年くらい経っている気がします。

耐用年数の目安を超えていれば特記事項になります。
銘板等で設置年を確認してみましょう。

スプリンクラー設備はなぜ建築基準法でも設置が求められるのか

大規模木造建築物のスプリンクラー設備の設置状況を確認する調査員
スプリンクラー設備といえば消防法の設備というイメージが強いですが、建築基準法にも設置基準があります。
令和6年の法改正で、木造建築物の規制緩和と結び付く形で新設されました。
スプリンクラー設備の設置の状況について、どのような視点で確認するか。
設計図書等で建築基準法の設置基準に基づき設置されたスプリンクラー設備について確認する。消防法に基づく点検の記録がある場合は、当該記録により確認することで足りる。
調査対象になるのは延焼防止のためのスプリンクラーだけです
令和6年の建築基準法改正では、延べ面積の上限を4,500平方メートルから6,000平方メートルに緩和する条件として、周囲への延焼を防ぐスプリンクラー設備の設置が前提とされました。
消防法令に基づき設置が求められるスプリンクラー設備を兼ねている場合は、消防法の点検記録を確認すれば調査を代替できます。
建築基準法に基づくものかどうか判別がつかない設備は、調査対象にしたうえで特記事項に記載して報告します。
確認申請書の記載欄をあらかじめ確認しておくと、調査対象の絞り込みがスムーズになります。

うちの建物は鉄筋コンクリート造なので、このスプリンクラーは関係ないですよね。

木造の大規模建築物が対象になる規定です。
設計図書で緩和の適用を確認しましょう。

スプリンクラーヘッドの劣化はどう見分けるか

スプリンクラーヘッドの腐食や異物の詰まりを確認する調査員
スプリンクラーヘッドは、火災時に自動で散水する最後の砦です。
天井に塗装されていたり、腐食していたりすると、いざというときに作動しないおそれがあります。
スプリンクラー設備の劣化及び損傷の状況について、どのような視点で確認するか。
建築基準法に基づき設置されているスプリンクラー設備の全室に設置されているスプリンクラーヘッドについて、目視等で劣化及び損傷の状況を確認する
ヘッドの異常は見た目で分かることがほとんどです
スプリンクラーヘッドが著しく腐食している、直射日光などで熱変形している、天井色に塗装されているといった状態は要是正の判定につながります。
異物による目詰まりや、配管からの漏水も見落とせないポイントです。
スプリンクラー設備は初期消火の要となる設備であるため、消防法に基づく点検記録がない場合は、消防設備点検資格者等による点検の実施を勧めます。
水損事故を未然に防ぐという観点からも、日頃からの維持管理が欠かせません。

そういえば、天井を塗装したときにヘッドも一緒に塗ってしまったかもしれません。

天井色に塗装されたヘッドは要是正です。
メーカーに交換の相談をしましょう。

よくある質問

Q消防法の点検を受けていれば、建築基準法の調査は不要になりますか?
Aいいえ。6か月以内に実施した消防法に基づく点検の記録がある場合に限り、その記録で確認を代替できます。記録がない場合や点検対象外の設備がある場合は、現地調査が必要です。
Q懸垂物安全指針の対象になる懸垂物はどんなものですか?
A固定式・駆動式を問わず、壁から突出しているものを含めて質量が100kg以上の懸垂物が対象です。看板やアーケードの装飾等が該当します。
Qスプリンクラー設備はすべて建築基準法の調査対象になりますか?
Aいいえ。令和6年国土交通省告示第284号第1第1号又は第2号ニに規定する、大規模木造建築物の緩和規定に基づき設置されたスプリンクラー設備のみが対象です。
Q警報設備の耐用年数を超えていたら、必ず交換が必要ですか?
A直ちに交換が必要というわけではありませんが、耐用年数の目安を超えていることは特記すべき事項として報告します。所有者による更新の検討を促す材料になります。

まとめ

警報設備は消防法の点検記録があれば、6か月以内のものに限り現地調査を代替できる
警報設備の劣化及び損傷は著しい腐食・変形・損傷の有無で判定する
受信機は約15年、感知器は約10年が耐用年数の目安とされている
スプリンクラー設備は令和6年の法改正で緩和された大規模木造建築物に設置されたものが調査対象になる
スプリンクラーヘッドは腐食・変形・異物による目詰まりの有無を目視で確認する
照明器具や懸垂物は昭和63年の落下事故をきっかけに定めた指針に基づき落下防止対策を確認する
質量が100kg以上の懸垂物が、固定式・駆動式を問わず調査の対象になる

うちの警報設備とスプリンクラー、両方まとめて確認してみます!

建築基準法と消防法の違いを意識すると分かりやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第21条第2項・第27条第1項第1号、同法施行令第109条の7・第110条の4・第110条の5(e-Govで現行条文を確認)
  • 令和6年国土交通省告示第284号
  • 建設省(現国土交通省)「懸垂物安全指針」(昭和63年)

※本記事は建築基準法及び同法施行令、国土交通省告示をもとに、警報設備・スプリンクラー設備・懸垂物落下防止対策の維持保全状況に関する定期調査の一般的な着眼点を解説したものです。個別の建築物における調査項目や判定は、特定行政庁の定める内容及び現地の状況に応じて異なります。実際の調査・点検にあたっては、建築物調査員等の専門資格者にご確認ください。

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