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統括防火管理者の選任はどう決めればよいのか|協議の自由と届出の連名原則を解説

統括防火管理者はどうやって選び届け出ればよいのかを示すアイキャッチ

高層の雑居ビルでは、フロアごとに違うオーナーやテナントが別々に防火管理者を選んでいることがあります。
それぞれの防火管理者がばらばらに動いていると、建物全体としての避難誘導や消防計画がまとまりません。
この分断を防ぐために、平成24年の法改正で統括防火管理者という役割が新設されました。
本記事では、統括防火管理者をどうやって協議して選び、どう届け出ればよいのかを解説します。

うちの雑居ビル、フロアごとに管理会社が違うんです。
統括防火管理者て、うちも選ばなあかんのですか。

管理について権原が分かれている建物なら、選任が必要です。
まずは何のための制度か確認しましょう。

聞いたことはあるんですが、どう選べばいいのか分からなくて。

協議の方法には決まった書式が無く、思ったより自由です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 統括防火管理制度は平成24年の消防法改正で新設されました
  • 高層建築物等で管理について権原が分かれている場合に選任が義務付けられます
  • 統括防火管理者を選ぶための協議の方法は任意です
  • 選任の届出は全ての管理権原者の連名が原則です
  • 共同防火管理協議会の代表者や複数建物の重複選任など、柔軟な運用も認められています

統括防火管理者の選任は協議で決め届出は連名が原則であることを示す図解

統括防火管理制度はなぜ平成24年に新設されたのか

色分けされた複数のテナントが入った高層雑居ビルと注意を示す三角マークのイラスト
高層建築物や雑居ビルでは、フロアや区画ごとに管理する人が分かれていることが珍しくありません。
それぞれの防火管理者が個別に動くだけでは、建物全体としての安全対策に隙間が生まれます。
消防庁「消防法の一部を改正する法律の公布について」(平成24年6月27日) [背景] 東日本大震災の教訓を踏まえ、大規模・高層ビルを中心にビル全体の防災管理を強化する必要性が高まるとともに、近年、建築物全体の防火管理体制があいまいな雑居ビル等を中心として多数の死者を伴う火災被害が頻発した。
消防法第8条の2第1項 高層建築物(高さ31メートルを超える建築物をいう。)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの(略)の管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちからこれらの防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者(以下「統括防火管理者」という。)を協議して定め(略)当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
個々の防火管理者だけでは、建物全体の安全は守れません。
そこで平成24年の改正(平成24年法律第38号)は、建物全体の防火管理業務を統括する役割を法律に位置づけました。
施行は平成26年4月1日で、対象になるのは高さ31メートルを超える高層建築物や、管理権原が分かれている地下街などです。
統括防火管理者には、各防火管理者へ必要な措置を指示する権限も与えられています。
まずは、この統括防火管理者をどうやって選べばよいのかを見ていきます。

統括防火管理者って、雑居ビルなら必ず選ばなあかんのですか。

管理権原が分かれている建物なら必要です。
次は選び方を見ていきましょう。

統括防火管理者はどうやって協議して選べばよいのか

色分けされた複数の書類のアイコンが1つの書類へ線でつながる協議のイラスト
統括防火管理者は、管理権原者どうしの話し合いで決めます。
話し合いの進め方そのものには、法令で決まった手順がありません。
「消防法の一部を改正する法律等の運用について」(平成24年10月19日消防予第389号・消防技第60号) 管理について権原を有する者は、統括防火管理者を協議して定めなければならないこととしているが、この協議の方法については、任意の方法に委ねているものであること。また、統括防火管理者については、2以上の防火対象物において、同一の統括防火管理者を重複して選任することを妨げるものではない
話し合いさえ整えば、進め方は自由です。
書面での合意でも、代表者を決めて任せる方法でも、協議の実質があれば足ります。
選ばれる人にも条件があり、消防法施行令第4条の資格と、消防法施行規則第3条の3の要件を満たす必要があります。
また、管理会社が複数の建物を受託している場合など、同一人物を複数の建物で統括防火管理者に選ぶことも認められています。
選んだあとにやるべきことが、次の届出です。

うちのビル、管理会社が別の建物も何棟か持ってるんですけど、同じ人を統括防火管理者にできますか。

できます、重複しての選任も認められています。
選んだら次は届出です。

選任したことをどう届け出ればよいのか

届出書類に複数の印鑑が並び青いチェックマークが付いたイラスト
統括防火管理者を決めたら、所轄の消防長または消防署長へ届け出る義務があります。
このとき、誰の名前で届け出るかにも決まりがあります。
(同通知) 統括防火管理者を選任(解任)した場合の届出義務については、全ての管理権原者に課されているものであり、改正後の消防法施行規則別記様式第1号の2の2の2の2中の届出者については、当該選任に関係する全ての管理権原者の連名をもって行うことが原則であること。
消防法第8条の2第4項 第1項の権原を有する者は、同項の規定により統括防火管理者を定めたときは、遅滞なく、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。消防法施行規則第4条の2第1項 法第8条の2第4項の規定による統括防火管理者の選任又は解任の届出は、別記様式第1号の2の2の2の2による届出書によつてしなければならない。
届出は代表者1人ではなく全員の名前で出すのが原則です。
消防法第8条の2第4項が届出義務を課しているのは「権原を有する者」全員で、規則の届出書にもその全員が名前を連ねます。
選任の届出には資格を証する書面を添える必要がありますが、原本のほか写しでも構いません。
テナントの数が多いビルほど、この連名をそろえる作業に時間がかかります。
ただし、すべての場合に全員の判子が要るわけではなく、例外もあります。

うちのビル、テナントが10社以上あるんですが、全社の判子を集めなあかんのですか。

原則はそうですが、例外もあります。
次にその条件を見ていきましょう。

従来の協議会や複数の建物があるときはどうなるのか

古い名簿の書類と2つの建物を結ぶ1つの届出書類のイラスト
連名が原則とはいえ、実務上は全員そろえるのが難しい場面もあります。
通知は、そうした場合の代わりの方法も示しています。
(同通知つづき) ただし、従前の消防法施行規則第4条の2に基づく共同防火管理協議会が設置されている場合には、共同防火管理協議会の協議事項及び協議会構成員名簿等を添付することにより代表者名を記載させることや、当該防火対象物の管理権原者のうち、主要な者に統括防火管理者の選任を一任している場合など、義務を果たしている旨を確認できる場合には、主要な者等による届出を認める運用を行うことは差し支えないものであること。従来、防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を外部委託していた場合も、総務省令で定める要件を満たしているものについては、統括防火管理者として選任することが認められる
全員そろわなくても、代表者による届出が認められる場合があります。
管理権原者のうち主要な者に選任を一任していることを確認できる場合は、その主要な者による届出で差し支えないとされています。
以前から防火管理業務を管理会社などへ外部委託していた場合も、要件を満たす担当者ならそのまま統括防火管理者に選任できます。
古くから共同防火管理協議会を設けていたビルは、その構成員名簿を添えて代表者名で届け出ることも認められていますが、共同防火管理協議会という制度自体は現在の規則には無く、新たに設ける仕組みではありません。
自分のビルがどの型に当てはまるか、担当の消防署に確認しておくと確実です。

共同防火管理協議会の名簿が、うちの古いビルにまだ残ってるんですが、これ使ってもいいんですか。

名簿を添えて代表者名で届け出ることは認められています。
ただし協議会自体は今の制度ではありません。

明日から何を確認すればよいのか

チェックリストと電話が並ぶイラスト
最後に、選任と届出の場面で確認しておきたいことをまとめます。
順番に照らし合わせてみてください。
  • 自分の建物が高さ31メートルを超える高層建築物や、管理権原が分かれている地下街などに該当するか確認する
  • 統括防火管理者の候補者が消防法施行令第4条の資格要件を満たしているか確認する
  • 選任のための協議を、書面や議事録などの形で残しておく
  • 届出は全ての管理権原者の連名を原則としつつ、代表者による届出が使えるかどうかを所轄消防署に相談する
  • 複数の建物を管理している場合は、同一人物の重複選任ができるかどうかも合わせて確認する
確認は建物の該当性から始めます。
高さや管理形態の要件に当てはまるかどうかは、所轄の消防署に確認するのが確実です。
候補者が決まったら、資格要件と協議の実質を整理し、届出の連名をどう集めるかを早めに調整します。
古い協議会の名簿や外部委託の実績がある場合は、それも所轄署へ伝えておくとスムーズです。
選任と届出さえ整えば、あとは統括防火管理者としての日常業務に進めます。

うちも今日中に、候補者の資格と届出の集め方を確認してみます。

それが一番確実な進め方です。
よくある質問もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q統括防火管理者を選ぶ話し合いに決まった書式はありますか?
Aいいえ。通知は協議の方法を任意としており、書面でも口頭の合意でも構いません。ただし、あとで確認できるよう記録を残しておくと安心です。
Q届出は誰の名前で出せばよいですか?
A全ての管理権原者の連名が原則です。ただし主要な者への一任が確認できる場合や、共同防火管理協議会の名簿がある場合は、代表者名での届出も認められています。
Q一人の統括防火管理者が複数の建物を兼任できますか?
Aできます。通知は2以上の防火対象物での重複選任を妨げないとしており、複数の建物を管理する会社の担当者が兼任する運用も認められています。
Q以前から防火管理業務を外部委託していた担当者を、そのまま統括防火管理者にできますか?
Aできます。総務省令で定める要件を満たしていれば、従来から外部委託していた担当者を統括防火管理者として選任することが認められています。

まとめ

統括防火管理制度は平成24年の消防法改正で新設されました
東日本大震災の教訓と雑居ビル火災の多発が改正の背景にあります
施行は平成26年4月1日です
統括防火管理者を選ぶための協議の方法は任意です
届出は全ての管理権原者の連名が原則です
主要な者への一任や外部委託の実績があれば、代表者届出や兼任も認められます
まずは自分の建物が対象かどうかを所轄消防署に確認します

選び方にも届出にも、思ったより幅があるんですね。

柔軟な運用も認められています。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防庁「消防法の一部を改正する法律の公布について」(平成24年6月27日報道発表資料)
  • 「消防法の一部を改正する法律等の運用について」(平成24年10月19日消防予第389号・消防技第60号)
  • 消防法第8条の2第1項・第4項(統括防火管理者の選任及び届出義務)
  • 消防法施行令第4条・消防法施行規則第3条の3・第4条の2(資格要件及び届出様式)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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