津市消防本部の「高層建築物における指導基準」は、高さ45mを超える建築物を対象に、避難バルコニーや屋上の避難広場まで細かく定めています。
一方、消防法の高層建築物は高さ31mを超えるもので、数字が違うため、どちらの話か混ざりがちです。
避難バルコニーの広さ・手すり・解錠は、別の項を借りて読まないと全体が見えません。
広さと手すりの数字、解錠の準用先、屋上避難広場までを順にたどり、堺市・鈴鹿市の書き方とも比べます。
津市の高層ビルを管理していて、避難バルコニーの設計図を見せられました。
何をどこまで確かめればよいのか分かりません。
津市には高さ45mを超える建物の指導基準があり、避難バルコニーの項があります。
広さ・表示・解錠を順に見ていきましょう。
国の法令で決まっていることと、津市が指導していることは、分けて読むのでしょうか。
はい、手すりの高さのように国の決まりと重なる部分と、津市が指導として足している部分があります。
そこを分けて読みます。
- 津市の指導基準は高さ45mを超える建築物が対象で、関係者と協議したうえで指導される。消防法の高層建築物は31m超で別の数字
- 避難バルコニーは安全空間か共用部分につなぎ、奥行き1m以上2m以下・長さ4m以上、3m以内の窓等は防火戸にする
- 手すり1.1m以上は建築基準法施行令第126条第1項と同じ高さで、津市は上下をつなぐ0.6m平方以上の開口と幅0.4m以上のはしごを足している
- 出入口は誘導灯B級同等以上で表示し、施錠するなら4⑵オの解錠。この解錠は屋上と消防隊進入口の項も借りている
- 屋上避難広場は、最上階が500㎡を超えるとき床面積の2分の1以上。国の避難器具の免除条件(1,500㎡以上)とは別の話
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目次
津市の高層建築物の指導基準は高さ何mの建物に当たるのか

まず、どの建物が対象になるのかを原文で確かめます。
本指導基準は、高さ45mを超える高層の建築物に対し適用するものとする。ただし、指導基準によるものは関係者と協議を行ったうえで指導すること。
高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。第八条の三第一項において同じ。)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの(略)
消防法第8条の2の高層建築物は高さ31mを超える建築物で、津市の基準はそれより高い45mから始まります。
堺市の高層建築物の指導指針は、高さ31mを超える建築物か、地階を除く階数が11以上の建築物を対象にしていて、津市より低い所から当たります。
津市の基準は、45mを超える部分を「超高層部」と呼び、防火区画や安全空間(避難者が滞留できる区画)をその部分に求めています。
原文は「協議を行ったうえで指導する」と書いていて、義務として課すとまでは書かれていません。
基準は防火区画から電気設備まで20の項目に分かれ(第2)、避難バルコニーは第2の4「避難施設」に入っています。
第2の20⑵は、敷地や構造などから判断して他の方法で同等以上の安全性が確保されるなら、その方法によることができるとしています。
建物の高さが45mを超えるかを確かめ、超えるなら設計の早い段階で所轄の消防署と協議の場を持ちましょう。
高さがちょうど40mのビルなら、この基準は関係ないのですか。
津市のこの基準は45mを超える建築物が対象なので、40mの建物は当たりません。
ただし消防法の高層建築物(31m超)の扱いは別です。
避難バルコニーは建物のどこにどうつなげて設けるのか

置く場所と、つなぐ先の部分から見ます。
避難バルコニーは次によること。
ア 避難バルコニーは、避難階の直上階まで連続して設けるとともに、道路、広場等避難上有効な空地に面し、かつ、はしご自動車が有効に架梯できる位置とすること。
イ 避難バルコニーは、安全空間又は廊下等の共用部分に接続して設けること。
避難バルコニーは単独の設備ではなく、安全空間か共用廊下から出る先として置かれています。
次の順にたどると、つなぐ先の条件まで見えます。
- 第2 4⑵ア:避難階の直上階まで連続して設け、道路・広場等の空地に面し、はしご自動車が架梯できる位置にする
- 第2 4⑵イ:安全空間又は廊下等の共用部分に接続して設ける
- 第2 3(安全空間):超高層部に設け、⑴耐火構造の床・壁か特定防火設備の防火戸で区画、⑵その防火戸は常時閉鎖式か煙感知器連動閉鎖式、⑶特別避難階段等に直結して相離れた位置に2か所以上、⑷階の避難者が滞留できる広さ
- 第2 4⑵ウ:避難バルコニーは、安全空間以外の他の用途部分と防火区画する(防火戸は特定防火設備に限る)
設計図の配置図で、バルコニーが面する空地とはしご自動車が架梯できる位置を確かめましょう。
つまり、避難バルコニーは安全空間か共用の廊下につながっている必要があるのですね。
はい、そのうえではしご自動車が架梯できる位置に置きます。
配置図で面する空地を確かめましょう。
避難バルコニーの広さと手すりとはしごはどう決まっているのか

原文を見たうえで、国の決まりや他市の書き方と並べます。
ウ 避難バルコニーは、奥行き1m以上かつ2m以下、長さ4m以上とし、安全空間以外の他の用途部分とは防火区画(防火戸にあっては特定防火設備に限る。)し、当該避難バルコニーの3m以内の距離にある窓等は、防火戸とすること。
カ 避難バルコニーには、安全上有効な高さ1.1m以上の手すりを設けること。
キ 避難バルコニーには、相互に同一垂直線上とならない位置に有効0.6m平方以上の転落防止措置を講じた開口部を設け、当該開口部に直上、直下の階へ連絡する幅0.4m以上の固定の金属製はしご等を設けること。ただし、避難階の直上階に設けるものにあっては、固定式としないことができる。
屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。
ウは奥行きを1m以上2m以下、長さを4m以上と決め、3m以内にある窓等は防火戸にするとしています。
カの手すり1.1m以上は、建築基準法施行令第126条第1項が2階以上のバルコニー等に求める高さと同じで、津市が独自に高くした数字ではありません。
キは上下のバルコニーを結ぶ脱出口で、開口は有効0.6m平方以上、はしごは幅0.4m以上の固定の金属製とし、避難階の直上階のものは固定式にしなくてもよいとされています。
開口を上下で同じ垂直線上に置かない理由までは、原文に書かれていません。
堺市の指針にも手すりとバルコニーの数字がありますが、書かれている場面が違います。
| 基準 | 手すりの高さ | バルコニーの広さ |
|---|---|---|
| 国(建築基準法施行令第126条第1項) | 2階以上のバルコニー等の周囲に1.1m以上の手すり壁・さく・金網(義務) | 避難バルコニーの寸法は定めていない |
| 津市(高層建築物における指導基準 第2 4⑵) | 1.1m以上(カ) | 奥行き1m以上2m以下・長さ4m以上(ウ) |
| 堺市(高層建築物に係る指導指針・★) | バルコニーを設ける場合はおおむね1.1m(7(3)イ・進入口の項) | 幅員おおむね60cm以上(車椅子で避難する病院・福祉施設等は80cm)のバルコニー等(5(1)イ・大型店舗や就寝施設等) |
| 鈴鹿市(審査基準 第3章 第12 3⑸エ) | 屋上広場に110cm以上の手すり壁・柵・金網(避難器具の免除を使う場合) | バルコニーの寸法は確認した範囲に見当たらない |
設計図では、バルコニーの寸法、手すりの高さ、上下の開口の位置の関係を確かめましょう。
手すりの高さは、津市が厳しくしているのですか。
いいえ、1.1mは建築基準法施行令でもともと求められる高さです。
津市が足しているのは、奥行きや開口、はしごの部分です。
避難バルコニーの出入口の表示と解錠はどの項とつながっているのか

この解錠の項はほかの項からも借りられているので、つながりも見ます。
エ 屋内から避難バルコニーへ通ずる出入口には、誘導灯のB級と同等以上の器具(予備電源内蔵式)を用い、「避難バルコニー」(表示面は白地、文字は黒字)と表示すること。
オ 避難バルコニーの出入口を施錠する場合は、次のいずれかの方法により解錠できること。
(ア) 電気錠により施錠管理する場合は、通電時施錠型とし、自動火災報知設備の作動と連動して解錠する装置及び防災センターからの遠隔解錠装置により一斉に解錠できる装置を設けること。
(イ) 屋内からは容易に破壊できるカバー付の手元非常解錠装置を設け、屋外からは手動により開放できる装置を設けること。
(ウ) その他これらと同等の解錠機能を有するものとすること。
B級は、消防法施行規則第28条の3の表で、避難口誘導灯なら表示面の縦寸法0.2m以上0.4m未満・明るさ10カンデラ以上のものです。
オは、施錠する場合の解錠方法を3つ挙げ、電気錠なら通電時施錠型で、自動火災報知設備との連動と防災センターからの一斉の遠隔解錠を求めています。
この表示と解錠の項は、基準のほかの項から次のように借りられています。
- 第2 4⑵エ(表示)は、第2 11⑷が「4⑵エの例により」、室内・廊下から避難器具設置場所へ通ずる出入口の表示灯に使う
- 第2 4⑵オ(解錠)は、第2 14⑵が消防隊進入口の常時施錠に「4⑵オに準じ」て使い、解錠作動を防災センターで確認できるようにする
- 第2 4⑵オは、第2 16⑷が屋上への出入口の施錠に「4⑵オによる」として使う
バルコニー・進入口・屋上の施錠が同じ解錠方法でそろっているかを、仕様書で確かめましょう。
つまり、解錠の方法は避難バルコニーだけでなく、屋上や進入口にも同じものを使うのですね。
はい、津市の指導基準では4⑵オを屋上と消防隊進入口の項が借りています。
一つ決めれば三か所に効く形です。
屋上避難広場はどれくらいの広さで何を備えるのか

広さと備えを順に見ます。
⑴ 最上階の床面積が500㎡を超えるものにあっては、屋上に当該床面積の2分の1以上の避難広場を設けること。
⑵ 前⑴の広場から2以上の経路により避難できる屋外階段等の施設を設けること。
⑶ 階段室から避難広場への出入口には、避難口誘導灯を出入口の両側にそれぞれ設けること。
⑷ 屋上への出入り口の施錠は、4⑵オによること。
⑸ 前⑴の広場には、防災センターと連絡できる非常電話を設けること。
16⑴は、最上階の床面積が500㎡を超えるとき、屋上に床面積の2分の1以上の避難広場を設けるとしています。
たとえば最上階が600㎡なら、広場は300㎡以上という計算です。
⑵〜⑸は、2以上の経路で避難できる屋外階段等、出入口の両側の避難口誘導灯、施錠時の4⑵オ、防災センターと連絡できる非常電話を求めています。
放送設備の第2 10⑵も、屋上広場がある建築物には、独立した回路でスピーカーを屋上広場に設けるとしています。
非常電話は同じ10の⑶⑷で全域に設け、親機は防災センター、子機は中央監視室・連結送水管の放水口付近・屋内消火栓箱付近と決められています。 消防法施行規則第26条第7項にも屋上広場が出てきますが、これは広場がある建物で直下階に避難器具を設置しないことができる条件で、広場の面積は1,500㎡以上などと決められています。
津市の16は、避難器具の免除を定めるものではなく、避難広場の作り方の指導です。
設計図では、最上階の面積から広場の面積を割り出し、広場の周囲の手すり(建築基準法施行令第126条第1項の1.1m以上)と誘導灯・非常電話の位置を確かめましょう。
つまり、屋上広場を作っても、避難器具の免除は国の条件で別に確かめるのですね。
はい、国の第26条第7項は面積1,500㎡以上などが条件です。
津市の500㎡超とは別の物差しです。
よくある質問
まとめ
津市の物件では、高さ45mを超えるかと、避難バルコニーの解錠を最初に確かめます!
寸法と手すり、表示と解錠、屋上広場を、指導基準の項ごとに確かめましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 津市消防本部「2-3 高層建築物における指導基準」 第1・第2 3・4・10・11・14・16・20(津市消防本部)
- 消防法 第8条の2(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第26条・第28条の3(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令 第126条第1項(e-Gov法令検索)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第2章 第2節 第3 高層建築物に係る指導指針 2・5(1)・7(3)(堺市消防局)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第3章 第12 3⑸(鈴鹿市消防本部)
※本記事は各消防本部が公表している基準等と、消防法令に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「見当たらない」としたものは公表資料を確認した範囲の結果です。四日市市・埼玉県央広域・大阪市・東大阪市・行田市・羽生市は今回の比較に含めていません。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





