オフィスや店舗の出入口に、カードやボタンで開け閉めする電気錠を付ける建物が増えています。
津市消防本部の基準は、避難口と消防隊進入口に電気錠を付けるとき、遠隔解錠・連動解錠・非常解錠装置の3つを備えるよう表で示しています。
さらに無窓階の判定では、電気錠の扉を開口部に数える条件が、消防本部ごとに少しずつ違います。
この記事では津市の基準を起点に国の条文までたどり、三重・埼玉の4つの消防本部と堺市の基準を並べて比べます。
津市のテナントビルで、裏口の扉を防犯のために電気錠に替える話が出ています。
消防の決まりで気をつけることはありますか。
津市の基準には、避難口の電気錠に必要な解錠方法をまとめた表があります。
まず電気錠の種類から確かめましょう。
鈴鹿市や埼玉の建物でも、同じ考え方で大丈夫ですか。
無窓階の数え方では、連動して開錠できれば足りるとする本部もあります。
本部ごとの基準を並べて見ていきましょう。
- 消防法施行規則と建築基準法施行令の条文に「電気錠」という言葉はなく、求めているのは内部から容易に避難できることや、かぎを用いずに解錠できることです
- 津市の電気錠の指導基準は、避難口と消防隊進入口の電気錠に遠隔解錠・連動解錠・非常解錠装置の3つを求め、通電時施錠型以外には非常電源も求めています
- 非常解錠装置は避難口なら屋内側、消防隊進入口なら屋外側に付けると表に書かれています
- 無窓階の判定で電気錠の扉を開口部に数えるとき、津市は防災センター等からの遠隔解錠を条件にし、鈴鹿市・四日市市・埼玉県央広域消防本部は連動制御盤の作動と連動して開錠できるものを挙げています
- 受信機を施錠した室に置くときの電気錠や、避難口誘導灯の避難口の電気錠にも、市ごとの指導があります
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目次
電気錠の扉は国の法令でどう扱われているのか

無窓階の開口部の条件は、消防法施行規則第5条の5に置かれています。
規則が求めるのは、内部から容易に避難でき、外部から進入できる開口部であることです。
建築基準法施行令第125条の2は、屋外避難階段への出口や、ふだん鍵をかけている非常用の出口などの施錠装置を対象にしています。
電気錠がこれらの条件をどう満たせばよいかは、各消防本部の審査基準が具体的に書いています。
なお、規則の条番号は、津市と埼玉県央広域消防本部の基準では第5条の3、四日市市の基準では第5条の2と書かれていますが、e-Govの現行条文では第5条の5です。
国の条文だけでは、電気錠で足りるかどうか判断できないのですね。
条文が求めるのは避難と進入のしやすさです。
具体的な付け方は、管轄の消防本部の基準で確かめます。
津市の基準は電気錠と解錠方法をどう分けているのか

その1で電気錠を4つの種類に分け、2で非常時の解錠方法を3つに分けています。
(1) 防災センター、守衛室等に設置した遠隔操作装置により解錠するもの(以下「遠隔解錠」という。)
(2) 自動火災報知設備の火災感知と連動し、解錠するもの(以下「連動解錠」という。)
(3) 扉の直近の見やすい位置に、非常時手動で解錠できる装置により解錠するもの(以下「非常解錠装置」という。)
通電時施錠型は、電気が来ている間は施錠し、電気が切れると解錠されるものです。
通電時解錠型はその逆で、電気が切れると施錠されます。
残りの2つは、瞬時の通電で施解錠する「瞬時通電施解錠型」と、瞬時の通電で解錠する「瞬時通電解錠型」です。
停電で錠がどうなるかが種類ごとに違うので、次の見出しの表では非常電源の要否が種類で分かれています。
うちの電気錠が停電で開くのか閉まるのか、メーカーの資料で確かめておく必要がありますね。
種類が分かれば、非常電源が要るかどうかも決まります。
仕様書の「通電時」の書き方を見てください。
避難口と消防隊進入口では何が違うのか

表の○は「設置を要する範囲」だと備考1に書かれています(表はPDFの画像で確認しました)。
| 設置場所 | 電気錠の種類 | 遠隔解錠 | 連動解錠 | 非常解錠装置 | 非常電源 |
|---|---|---|---|---|---|
| 避難口 | 通電時施錠型 | ○ | ○ | ○(屋内側) | ― |
| 避難口 | 通電時施錠型以外 | ○ | ○ | ○(屋内側) | ○ |
| 消防隊進入口 | 通電時施錠型 | ○ | ○ | ○(屋外側) | ― |
| 消防隊進入口 | 通電時施錠型以外 | ○ | ○ | ○(屋外側) | ○ |
2 自動火災報知設備が設置されていない防火対象物については、連動解錠の設置を要しないものとする。
3 非常解錠装置は、防犯上その他やむをえない事由がある場合は、設置を要しないものとする。(略)なお、やむを得ず非常開錠装置を設置しない場合は、消防計画に避難方法等を記載すること。
4 電気錠に附置する非常電源は、自動火災報知設備に準ずるものとする。
避難口は中にいる人が逃げるための扉なので屋内側、消防隊進入口は外から入るための扉なので屋外側と表に書かれています。
備考3の後半は、認知症高齢者を収容する施設などで、防火管理が適正に行われ常時人のいる場所から遠隔で施解錠を管理しているもののうち、重症の患者の病棟や病室がある階も非常解錠装置を要しないとしています。
非常解錠装置を付けないときは、消防計画に避難方法等を書くことが条件です。
なお、高さ45mを超える建物向けの「2-3 高層建築物における指導基準」は、避難バルコニーの出入口を電気錠で施錠するなら通電時施錠型とし、連動解錠と防災センターからの一斉の遠隔解錠を備えるよう書いています(第2 4⑵オ(ア))。
同じ基準の第2 14⑵は、常時施錠する消防隊進入口にもこの4⑵オに準じて解錠装置を設け、防災センターで解錠の作動を確認できるようにするとしています。
防犯の都合で非常解錠装置を付けないなら、消防計画にも手を入れるということですね。
はい、避難方法を消防計画に書くのが備考の条件です。
付けない理由も所轄に説明できるようにしておきましょう。
無窓階の判定で電気錠の扉は開口部に数えられるのか

津市は「1-9 避難上又は消火活動上有効な開口部の判断基準」の5で、電気錠の扉の扱いを決めています。
ただし、電気錠には自動火災報知設備に準ずる非常電源を附置(電気錠の種類で、通電時は施錠し、非通電時は解錠される「通電時施錠型」を除く。)すること。
一方、鈴鹿市・四日市市・埼玉県央広域消防本部は、「外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できる」ドアの例として、連動制御盤の作動と連動して開錠できる電気錠等を挙げています。
鈴鹿市は、内側の鍵がシリンダー錠の開口部を「避難を妨げる構造」に当たるとしながら、自動火災報知設備と連動して解錠する電気錠は除いています。
つながりを番号順に並べると、次のとおりです。
- 消防法施行令第10条第1項第5号:避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階を「無窓階」とし、中身は総務省令に任せる
- 消防法施行規則第5条の5第1項:開口部の大きさと面積で普通階か無窓階かを決める
- 同条第2項第3号:開口部は内部から容易に避難でき、外部から開放し又は容易に破壊して進入できるものに限る
- 各市の審査基準:電気錠の扉がこの条件に当たる場合を書く(津市=遠隔解錠と非常電源/鈴鹿市・四日市市・埼玉県央広域消防本部=連動制御盤の作動と連動して開錠できるもの)
- 条件に当たる扉だけを開口部の面積や個数に数え、当たらなければ数えない
| 基準 | 電気錠の扉を開口部として扱う条件 | 基準の書いている場所 |
|---|---|---|
| 津市 | 防災センター・守衛室等の遠隔操作装置で非常時に解錠できること/自動火災報知設備に準ずる非常電源(通電時施錠型を除く) | 1-9 5 |
| 鈴鹿市 | 自動火災報知設備又は排煙設備若しくは防火戸の連動制御盤の作動と連動して開錠できるもの(電気錠等) | 第2章 第4 6⑶オ(内側シリンダー錠の除外は5⑴ア) |
| 四日市市 | 鈴鹿市と同じ文言 | 第1章 第4 4(5)ウ |
| 埼玉県央広域消防本部(鴻巣市など) | 鈴鹿市と同じ文言 | 第2章 第4 3⑶オ |
| 堺市 | 無窓階の節に電気錠の記述は見当たらない | ― |
同じ電気錠の扉でも、津市では開口部に数えられないことがあるのですね。
遠隔解錠の装置がない扉は、津市の基準では数えない扱いです。
開口部が足りなくなると無窓階になり、必要な設備が増えることがあります。
受信機室や誘導灯のある避難口の電気錠は市ごとにどう違うのか

堺市は誘導灯の基準の中で、電気錠で施錠する避難口の扱いを決めています。
(ク) 避難口誘導灯を設置する避難口が電気錠等により通常時において施錠されている場合、当該避難口及び施錠装置は避難上支障とならないよう、次のaからcのいずれかによること。★
a サムターン等により停電時に手動開放できること。
b 火災発生時には自動火災報知設備の作動と連動して自動的に解錠すること。
c (略)中央管理室(防災センター)その他これらに類するものから遠隔操作により解錠できること。
(ケ) 電気錠等で施錠された避難口又はその付近の見やすい場所には前(ク)aからcのいずれかの解錠方法を表示すること。★
津市の表が3つとも○なのと比べると、求める数が違います。
堺市の★は市独自の指導の印です。
受信機を施錠した室に置くときは、鈴鹿市(▲)・埼玉県央広域消防本部(▲)・堺市(★)が、自動火災報知設備の作動と連動して解錠(開錠)する電気錠等を設けるよう書いています。
今回読んだ大阪市と東大阪市の公開資料には、電気錠の解錠方法を決めた記述は見当たりませんでした。
| 基準 | 避難口の電気錠 | 受信機を施錠した室に置くとき |
|---|---|---|
| 津市 | 遠隔解錠・連動解錠・非常解錠装置の3つ(通電時施錠型以外は非常電源) | 記述が見当たらない |
| 鈴鹿市 | 記述が見当たらない(無窓階の節を除く) | 連動して開錠する電気錠等(▲行政指導) |
| 四日市市 | 記述が見当たらない(無窓階の節を除く) | 記述が見当たらない |
| 埼玉県央広域消防本部 | 記述が見当たらない(無窓階の節を除く) | 連動して開錠する電気錠等(▲行政指導) |
| 堺市 | 誘導灯のある避難口はa〜cのいずれか+解錠方法の表示(★) | 連動して解錠する電気錠等(★) |
| 大阪市・東大阪市 | 記述が見当たらない | 記述が見当たらない |
- 電気錠を付ける扉が、避難口・消防隊進入口・無窓階の開口部・受信機室の扉のどれに当たるかを図面で確かめる
- 電気錠の種類(通電時施錠型かそれ以外か)を仕様書で確かめる
- 管轄の消防本部の基準で、必要な解錠方法・非常電源・表示を確かめる
- 工事の前に、所轄の消防署へ図面と仕様書を持って相談する
まず図面で、電気錠にしたい扉がどの役割の扉なのかを確かめます。
扉の役割が分かれば、必要な解錠方法も絞れます。
工事業者の見積もりの前に確かめておくと手戻りがありません。
よくある質問
まとめ
まず裏口の電気錠が通電時施錠型かどうかを仕様書で確かめます!
種類と扉の役割が分かれば、解錠方法の検討が進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第10条第1項第5号
- 消防法施行規則第5条の5
- 建築基準法施行令第125条の2
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」(令和8年3月1日現在)1-9 避難上又は消火活動上有効な開口部の判断基準 5、1-10 「避難口」及び「消防隊進入口」に設置する電気錠の指導基準、2-3 高層建築物における指導基準 津市消防本部「予防関係審査基準」のページ
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第2章 第4 無窓階の取り扱い 5・6、第4章 第10 自動火災報知設備 3 受信機 https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」(令和6年4月1日適用)第1章 第4 無窓階(有窓階)の判定 4 開口部の構造 四日市市消防本部「審査基準・告示・ガイドライン」のページ
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」(令和5年4月1日適用)第2章 第4 無窓階の取り扱い 3 開口部の構造、第4章 第10 自動火災報知設備 4 受信機 https://www.ken-o.or.jp/notifiappli/equipment-style/page-9867/
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第二十二版 第12 自動火災報知設備 Ⅱ 1 受信機、第18 誘導灯及び誘導標識 Ⅱ 3(2)イ(ク)(ケ) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各市の消防本部が公開している審査基準・指導基準と法令に基づく一般的な解説です。運用基準・審査基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。電気錠の扉の扱いは個々の建物ごとに判断されるため、工事の前に所轄の消防署にご確認ください。





