テナントが決まらない区画を、内装をしないまま空けておくビルは珍しくありません。
国はこうしたスケルトン状態の部分について、平成12年の通知で消防法令の扱いを示しています。
ところが津市消防本部の基準には、条件を満たせばその区画を設置単位の床面積から外せる無用途区画という扱いがあります。
この記事では津市の無用途区画を入口に、国の通知との違いと、鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市などの扱いを並べて比べます。
津市で管理しているビルの2階が、半分ほど空いたまま借り手が見つかりません。
使っていない部分のために消防設備を増やすのは、正直なところ負担です。
津市には、空き区画を無用途区画として床面積から外す扱いがあります。
ただし区画や火気の始末など、条件と申請が要ります。
ほかの市でも同じように空き区画を外せるのですか。
国の通知や他の市は、空き区画も計画どおりの用途で数えるのが基本です。
津市の扱いがどこまで踏み込んでいるのかを順に見ていきましょう。
- 津市は空き区画を無用途区画とし、政令第32条の特例で消防用設備等の設置単位の床面積から外せるとしています
- 階ごと無用途区画にしたときは、その階を階数からも外せるとしています
- 条件は不燃材料での区画と、電気・ガスなどの火気と収容物の除去で、扉の溶接や窓の固定まで具体的に書かれています
- 無用途区画にするには、津市消防本部の要綱に定める特例適用申請が要ります
- 国の通知と鈴鹿市・埼玉県央広域は、スケルトン部分も事前に計画された用途で扱うのが原則です
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目次
津市の無用途区画とはどんな扱いなのか

冒頭で、何のための扱いかと、どの通知を借りているかが示されています。
無用途区画として政令第32条の特例適用し消防用設備等の設置単位から除外する方法について、「スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について」(平成12年3月27日付け消防予第74号消防庁予防課長通知)を準用し、次のとおり取り扱う。
1 無用途区画の取扱い(平成29年5月25日付け消予第303号津市消防本部予防課長通知)
⑴ 次の条件を満たせば消防用設備等の設置単位床面積から除外できるものとする。
ア 無用途とする階又はその部分を不燃材料で区画する。必要に応じ点検口を設置できるものとする。
イ 区画部分の火気(電気、ガス等)を除去する。
ウ 区画内の収容物を除去する。ただし、不燃物は除く。
⑵ 上記⑴について、階を無用途区画とした場合、無用途区画した階は階数から除外できるものとする。
消防用設備等が要るかどうかは、多くの場合、延べ面積や階の床面積、階数で決まります。
津市は、使う予定の無い階やその部分を無用途区画にすれば、その面積を設置単位の床面積から外せるとし、階ごと区画したときは階数からも外せるとしています。
これは政令第8条の区画とは別物で、政令第8条が別の防火対象物とみなすのは開口部のない耐火構造の床や壁などで区切ったときですが、無用途区画の区画は不燃材料で足り、根拠も政令第32条の特例です。
津市の基準には義務か指導かを示す凡例の記号が無く、この節は平成29年の津市消防本部予防課長通知を根拠に書かれています。
- 消防法施行令第32条で、消防長又は消防署長が認めれば政令の基準を適用しないことができる
- 津市はこれを使い、空き区画を消防用設備等の設置単位の床面積から外す扱いを定めた
- 区画のしかたは平成12年の国のスケルトン通知を準用している
- 細かな条件は平成29年の津市消防本部予防課長通知で決めている
床面積が減れば、要らなくなる設備も出てくるということですか。
建物によってはそうなりますが、どの設備が変わるかは面積の計算しだいです。
まず空き区画を外した場合と外さない場合の面積を図面で出してみましょう。
国のスケルトン通知とはどこが違うのか

同じ通知を元にしながら、空き区画の数え方が津市とは逆になっています。
未使用部分をスケルトン状態(内装仕上げや設備の一部について未施工部分が存する状態をいう。)のままで、防火対象物の他の部分の使用を開始する場合の当該スケルトン状態の部分の用途については、原則として事前に計画されていた用途によること。
スケルトン防火対象物(スケルトン状態の部分を有する防火対象物をいう。)の使用開始後において、スケルトン状態の部分に係る具体的な利用形態が確定することに伴い、従前のスケルトン状態から用途が変更される場合には、法第17条の3の規定が適用されること。
消防予第74号は、スケルトン状態の部分の用途や規模などを原則として事前に計画された内容で扱うとし、区画の外側や廊下・階段などの共用部分は政令の本来の基準に合わせることを求めています。
政令第32条は、空き区画を除いた部分だけで先に設置検査をして使用を認めるという、手続きの例外のために使われています。
これに対して津市は、区画・火気・収容物の条件を満たした空き区画を、政令第32条によって床面積そのものから外すとしており、区画のしかたは通知を借りつつも一歩踏み込んだ扱いです。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、通知のうち用途の決め方の部分を審査基準に載せていて、空き区画を床面積から外す決まりは置いていません。
- 国の通知では、スケルトン部分の用途や規模は事前の計画どおりに扱う
- 区画の外側と共用部分は政令の本来の基準に合わせる
- 政令第32条は、空き区画を除いて先に検査し使用を認めるために使う
- 津市は同じ政令第32条を、空き区画を設置単位の床面積から外すために使っている
同じ通知が元でも、津市のほうが空き区画を軽く扱えるわけですね。
その代わり火気も物も無い状態を保つことが条件です。
空き区画を倉庫代わりに使う予定があるなら、この扱いは向きません。
無用途区画にするには何をしなければならないのか

区画・電気・ガスと可燃物の3つに分けて、どこまでやるかが示されています。
2 無用途区画の具体的な方法
⑴ 防火上有効に区画されていること。
ア スケルトン化する区画の窓、扉、ダクト等の開口部については、不燃材等で有効にかつ容易に開閉できないよう区画すること。
イ ガラスの窓などは、シャッター、雨戸などで閉鎖し、容易に開閉できないよう固定措置をするか、プラスターボード等の不燃材で塞ぐ。
ウ 出入口等の扉は溶接や不燃材で閉鎖することにより、恒久的に開閉ができないような措置をする。
エ 換気扇、排気ダクト等は不燃材で塞ぐ。なお、点検等に必要な開口(60c㎡程度)は、設定可能とする。
⑵ 出火源となる電気設備等の通電停止
スケルトン区画内は、必要最低限の電気設備の設置及び通電以外は、ブレーカー等により停止させること。(自火報の感知器設置など)
⑶ 着火物となる可燃物等の除去
ア スケルトン区画内の都市ガス・LPGは遮断すること。(ガスの元栓や配管による遮断)
イ スケルトン区画内の可燃物は除去すること。(固定された家具、襖や畳などは、建具や床材など建物の一部として取扱い、可燃物から除外することができる)
窓はシャッターや雨戸で固定するかプラスターボードなどの不燃材でふさぎ、出入口の扉は溶接や不燃材で恒久的に開かないようにします。
換気扇や排気ダクトも不燃材でふさぎますが、点検に要る60平方センチメートル程度の開口は残してよいとされています。
電気はブレーカーなどで止め、残してよいのは自動火災報知設備の感知器のような必要最低限の設備だけで、都市ガスやLPガスは元栓や配管で遮断します。
可燃物は運び出しますが、固定された家具や襖・畳は建物の一部として扱い、可燃物から外すことができます。
- 窓・扉・ダクトなどの開口部を、不燃材で容易に開け閉めできないようにふさぐ
- 出入口の扉は溶接や不燃材で恒久的に閉じる(点検口や60平方センチメートル程度の点検用の開口は可)
- 感知器など必要最低限のもの以外は、ブレーカーで電気を止める
- 都市ガス・LPガスを遮断し、可燃物を運び出す(固定家具・襖・畳は建物の一部として扱える)
扉を溶接までするとなると、内覧のときに困りそうです。
基準には溶接か不燃材で閉鎖と書かれていて、内覧の扱いまでは書かれていません。
内覧の段取りも含めて、区画の方法を事前に消防本部と詰めておきましょう。
無用途区画の手続きとテナントが決まったあとはどうなるのか

同じ特例基準の節でも、申請が要るものと要らないものが分かれています。
3 無用途区画を行う場合の手続き
無用途区画を行う場合の手続きは、同意事務処理要綱に定める消防用設備等の基準の特例適用申請を要することとする。
ここでいう同意事務処理要綱は、津市の基準の総則が定義している津市消防本部建築同意事務等処理要綱です。
同じ特例基準の節でも、3-3の特定一階段等防火対象物に設ける避難器具の特例基準は特例適用申請が不要とされているので、無用途区画は別の扱いになっている点に注意します。
津市の3-1には、テナントが決まって区画を使い始めるときの手続きまでは書かれていませんが、外していた面積が設置単位の床面積に戻る以上、設備が要るかどうかを計算し直すことになります。
国の消防予第74号も、スケルトン状態を変えるときは着工届や設置届・検査、工事中の消防計画などの手続きが要るとしています。
- 区画・火気・収容物の条件を整える計画を立てる
- 津市消防本部建築同意事務等処理要綱に定める特例適用申請をする
- 認められれば、その区画を設置単位の床面積から外し、階ごとなら階数からも外す
- テナントが決まったら、外していた面積を戻して必要な設備を計算し直し、着工届などの手続きを消防本部と確かめる
つまり借り手が決まった時点で、消防設備の工事が要るかもしれないということですね。
そのとおりです、入居の時期と工事の時期を合わせる必要があります。
賃貸の条件を決める前に、追加の設備の見込みを出しておきましょう。
鈴鹿市や埼玉県央広域など他の消防本部ではどう扱っているのか

床面積から外す決まりは見当たらず、堺市は届出の書類でスケルトン部分を確かめる形をとっています。
令別表第1(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ及び(16)項イに掲げる防火対象物において、増築、改築、修繕及び模様替その他の工事又は溶接作業等若しくは引火性危険物を使用しての作業(以下この項においてこれらを「工事等」という。)を行う場合は、当該防火対象物について権原を有する者と工事等の施工責任者とが当該工事に係る火災予防上必要な事項を協議して定めるとともに、当該協議事項の実施に努めなければならない。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、国の通知のとおり事前に計画されていた用途で扱い、用途が変わるときは消防法第17条の3を適用するとしています(いずれも凡例の記号なし)。
堺市は、条例第38条第2項で協議した事項を施行規則第5条の届出書で出させ、その別表7「スケルトン形状の部分に係る計画」に、区画の方法・予定用途・管理形態・消防用設備等の設置状況を書かせています。
堺市の記入例では、設置状況を「基本設置」「応急措置(特例適用)」「設置免除(特例適用)」に分けて書く形になっていて、空き区画の設備も特例で個別に扱うことが分かります。
四日市市・大阪市・東大阪市は、今回読んだ審査基準・運用基準にスケルトンや無用途区画の記載が見当たりませんでした。
| 消防本部 | 空き区画(スケルトン部分)の扱い | 書かれている場所 |
|---|---|---|
| 津市 | 不燃材料の区画・火気と収容物の除去を条件に、政令第32条で設置単位の床面積から外せる。階ごとなら階数からも外せる。特例適用申請が要る | 審査検査基準 3-1(平成29年 消予第303号) |
| 鈴鹿市 | 事前に計画されていた用途で扱う。用途が確定して変わるときは消防法第17条の3を適用(無印) | 審査基準 第2章 第1 14 |
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 同上。平成12年 消防予第74号を出典として明記(無印) | 審査基準 第2章 第1 15 |
| 堺市 | 床面積の扱いの記載なし。工事等の届出の別表7で区画・予定用途・管理形態・設備の設置状況を届け出る | 火災予防条例 第38条第2項・施行規則 第5条 |
| 四日市市・大阪市・東大阪市 | 今回読んだ基準に記載なし | - |
| 行田市・羽生市 | 審査基準を公開していないため確認できず | - |
鈴鹿市にもビルを持っているのですが、同じことはできないのでしょうか。
鈴鹿市の審査基準には床面積から外す決まりが無いので、計画どおりの用途で数えるのが出発点です。
津市の扱いを当てにせず、建物のある市の消防本部に相談しましょう。
よくある質問
まとめ
空いている2階の面積を出して、無用途区画にした場合と比べてみます!
区画の方法と入居後の工事までまとめて計画しておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条の3、消防法施行令第8条・第32条
- 平成12年3月27日 消防予第74号「スケルトン状態の防火対象物に係る消防法令の運用について」
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」第2章第3節 3-1 無用途区画の取扱い・第1章 総則 津市消防本部「予防関係審査基準」のページ
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第2章 第1 14 鈴鹿市「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第2章 第1 15 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 堺市消防局「堺市火災予防条例」第38条第2項・同施行規則第5条(解説及び運用・別表7) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・条例と法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。どの消防用設備等が要らなくなるかは建物ごとの面積と用途で変わるため、この記事では個別の計算はしていません。行田市・羽生市は審査基準を公開していないため比較に含めていません。





