ショッピングセンターの屋上や、上下の階が吹抜けでつながった駐車場を計画するとき、泡消火設備などの特別な消火設備が要るかどうかは大きな分かれ目です。
国の基準では、屋上の駐車場は300平方メートル以上になってはじめて対象になります。
ところが堺市では、火災予防条例で屋上は200平方メートル以上から求められ、吹抜けでつながる階や自動車車庫の延べ面積にも独自の基準があります。
この記事では、堺市火災予防条例第67条と審査基準の解説を、国の消防法施行令・施行規則までたどり、大阪市・東大阪市の条例とも比べます。
堺市で店舗の屋上に駐車場を作る計画を担当しています。
広さは250平方メートルほどです。
国の基準なら300平方メートル未満なので対象外ですが、堺市では条例で200平方メートル以上が対象です。
泡消火設備などの検討が必要になります。
国の基準とは別に、市の条例で決まっているのですね。
はい、条例による上乗せです。
国の条文から順に読んでいきましょう。
- 国の消防法施行令第13条では、駐車場は地階・2階以上200平方メートル、1階500平方メートル、屋上300平方メートルから泡消火設備などが必要です
- 堺市火災予防条例第67条は、自動車車庫の延べ面積700平方メートル以上・吹抜けでつながる階の合計200平方メートル以上・屋上200平方メートル以上を上乗せしています
- 吹抜けでつながる階は階ごとではなく合計で数え、車路や歩行者用通路も床面積に入ります
- 条例で設ける消火設備も国の基準の例によるので、完全に開放された屋上なら移動式の泡消火設備も使えます
- 大阪市の条例は吹抜けと屋上の200平方メートルが同じで、東大阪市の条例は吹抜けの行だけです
▼

目次
国の基準では駐車場に泡消火設備などが必要になるのはどこからか

消防法施行令第13条は、一定の広さ以上の駐車場などに、泡消火設備や粉末消火設備といった特別な消火設備を求めています。
一 当該部分の存する階(屋上部分を含み、駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)における当該部分の床面積が、地階又は二階以上の階にあつては二百平方メートル以上、一階にあつては五百平方メートル以上、屋上部分にあつては三百平方メートル以上のもの
二 昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のもので、車両の収容台数が十以上のもの
設けるのは、水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の各消火設備のうちいずれかです。
| 場所 | 国の基準(令第13条) |
|---|---|
| 地階・2階以上の階 | 駐車部分200平方メートル以上 |
| 1階 | 駐車部分500平方メートル以上 |
| 屋上 | 駐車部分300平方メートル以上 |
| 機械式の駐車装置 | 収容台数10台以上 |
駐車場がどの用途に当たるかや、この表の全体像は、駐車場や車庫の区分の記事で解説しています。
国の基準は、屋上だけ300平方メートルなのですね。
はい、屋上はほかの階より大きい面積が基準です。
次は、堺市の条例を見ましょう。
堺市の条例は駐車場にどんな上乗せをしているのか

駐車場にかかわるのは、火災予防条例第67条の表の1行目です。
令別表第1に掲げる防火対象物又はその部分のうち、次に掲げるもの
(1) 令別表第1(13)項イに掲げる防火対象物で、延べ面積が700平方メートル以上(駐車する全ての車両が同時に屋外に出ることができる構造のものを除く。)のもの
(2) 吹抜け部分を共有する防火対象物の2以上の階で駐車の用に供する部分の床面積の合計が200平方メートル以上のもの
(3) 防火対象物の屋上部分で駐車の用に供する部分の床面積が200平方メートル以上のもの
国の基準と並べると、違いは次のとおりです。
| 項目 | 国(令第13条) | 堺市(条例第67条) |
|---|---|---|
| 屋上の駐車部分 | 300平方メートル以上 | 200平方メートル以上 |
| 吹抜けでつながる2以上の階 | 定めなし(階ごとに判定) | 駐車部分の合計200平方メートル以上 |
| (13)項イの自動車車庫・駐車場 | 階ごとの駐車部分で判定(上の表) | 延べ面積700平方メートル以上 |
国の基準で対象になる階がない建物でも、延べ面積が700平方メートル以上あれば堺市の条例の対象になり得ます。
ただし、すべての車が同時に屋外へ出られる構造のものは除かれる点は、国の基準と同じです。
屋上だけでなく、建物全体の広さでも決まるのですね。
はい、(1)は延べ面積で判定します。
次は、吹抜けでつながる駐車場の数え方を見ましょう。
吹抜けでつながる駐車場の床面積はどう数えるのか

解説は、2つの形を挙げています。
この場合、どちらの階も国の基準(2階200平方メートル・1階500平方メートル)には届きません。
しかし堺市の条例では100+100=200平方メートルになるので、図では1階と2階の駐車場の両方が水噴霧消火設備等の設置範囲として示されています。 床面積の数え方は、解説が別の節を指定しています。
順にたどると、次のようになります。
- 条例第67条第1項の表の(2)が「駐車の用に供する部分」の床面積の合計を基準にしています。
- 解説1(1)ウが、その「駐車の用に供する部分」は「第2章 第1節 第4 床面積、階及び高さの取扱い」によるとしています。
- その第4の1(2)エが、施行令第13条第1項・施行令第21条第1項と並べて条例第67条第1項の床面積の数え方を定めています。
- つまり、堺市では国の基準と条例の上乗せを同じ物差しで数えることになります。
(イ) 一の階に、駐車の用に供される部分等が2カ所以上に分散して存する場合の床面積は、当該部分の床面積を合算すること。ただし、駐車の用に供される部分等が耐火構造の壁(開口部を設ける場合にあっては、特定防火設備が設けられていること。)により相互に区画し、かつ、区画間において車両の通行ができない場合は、それぞれ区画された部分ごとの床面積により政令第13条第1項、政令第21条第1項又は条例第67条第1項の規定を適用する。
一方、上が開いている上下階への傾斜路やカーリフトは数えません。
同じ階で駐車場が2か所に分かれていても合算し、別々に数えられるのは耐火構造の壁で区画し、車が行き来できない場合に限られます。
車路まで数えると、思ったより早く200平方メートルを超えそうです。
はい、図面で車路と通路を含めて測りましょう。
次は、どんな消火設備を置けばよいかを見ましょう。
屋上駐車場なら移動式の泡消火設備でもよいのか

- 条例第67条第3項が、設置の基準を施行令第14条〜第18条・施行規則第16条〜第21条の例によるとしています。
- 泡消火設備の基準は、そのうち施行令第15条と施行規則第18条です。
- 施行規則第18条第4項第1号は、火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所に設けるものは固定式と定めています。裏を返すと、それ以外の場所では移動式も使えます。
- 堺市の審査基準(泡消火設備の細目)は、その「それ以外の場所」の1つ目に完全開放された屋上部分を挙げています。
- したがって、完全に開放された屋上駐車場なら、条例で求められる泡消火設備を移動式で設けることも考えられます。
三 移動式の泡消火設備に用いる泡消火薬剤は、低発泡のものに限ること。
省令第18条第4項第1号に規定する「火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所」以外の場所は、防護対象となる部分が次によるものであること。
ア 完全開放された屋上部分
移動式にする場合も、施行令第15条によりホース接続口は防護対象物の各部分から水平距離15メートル以下、格納箱はホース接続口から3メートル以内に置きます。
「完全開放」に当たるかは屋上の囲いや屋根の有無で変わるので、計画の段階で所轄の消防署に確かめておくと安心です。
移動式が使えない場所や薬剤の決まりは、移動式泡消火設備の記事で解説しています。
屋上が開けていれば、移動式で済む場合があるのですね。
はい、ただし完全開放かどうかの判断が前提です。
最後に、大阪市と東大阪市の条例と比べましょう。
大阪市と東大阪市では駐車場の上乗せがどう違うのか

大阪市の条例は、例規データベースで次のように確認できます。
(1) 吹抜け部分を共有する防火対象物の2以上の階で、駐車の用に供する部分の床面積の合計が200平方メートル以上のものの、当該駐車の用に供する部分
(2) 防火対象物の屋上の駐車の用に供する部分で、その床面積が200平方メートル以上のもの
そのため、東大阪市の屋上駐車場は、条例では上乗せされず、国の300平方メートルの基準で判定すると読めます。
また、(13)項イの延べ面積700平方メートルの行は、大阪市・東大阪市の条例のどちらにも見当たりませんでした。 移動式の扱いについては、大阪市の運用基準にも同じ趣旨の記述があります。
(1) 屋上駐車場その他完全に開放されている場所
東大阪市が公開している運用基準(消火器具・自動火災報知設備・誘導灯・避難器具・連結送水管・非常コンセントの6つ)には泡消火設備が含まれていないため、移動式の扱いはこの資料からは比べられません。
| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 屋上の駐車部分 | 200平方メートル以上 | 200平方メートル以上 | 条例の行なし(国の300平方メートル) |
| 吹抜けでつながる2以上の階 | 合計200平方メートル以上 | 合計200平方メートル以上 | 合計200平方メートル以上 |
| (13)項イの延べ面積 | 700平方メートル以上 | 条例の行なし | 条例の行なし |
| 根拠の条例 | 第67条 | 第41条 | 第47条 |
| 完全開放の屋上の移動式 | 審査基準で設置できる部分に挙げる | 運用基準で設置できる場所に挙げる | 公開資料に基準なし |
堺市の条例による自動火災報知設備の上乗せは、堺市の複合用途の自動火災報知設備の記事で解説しています。
隣の市でも、屋上の基準が違うのですね。
はい、東大阪市は屋上の行がないのが大きな違いです。
建てる場所の条例を必ず確かめましょう。
よくある質問
まとめ
車路も含めて面積を測り直して、屋上の囲いの形も整理します。
そのうえで所轄の消防署に相談します!
早めに方式が決まれば、配管や水源の設計の手戻りを防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第2章 第1節 第4 床面積、階及び高さの取扱い(1(2)エ)・第3章 第1節 第6 泡消火設備(Ⅱ 3(1))・第5章 火災予防条例審査基準(第67条 水噴霧消火設備等に関する基準・解説及び運用1(1)) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第7節 泡消火設備(低発泡を用いるもの)第3 移動式に関する基準 1、凡例 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 大阪市火災予防条例 第41条(大阪市例規データベース)
- 東大阪市火災予防条例 第47条(東大阪市例規集)
- 東大阪市 消防用設備等の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令第13条第1項・第15条
- 消防法施行規則第18条第4項
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料・例規集に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の駐車場が条例の対象になるか、移動式の消火設備を使えるかの判断は、所轄消防署にご確認ください。





