温泉をくみ上げる井戸やガス分離設備を建物の中に置くと、ガス漏れ火災警報設備が要ることがあります。
根拠は消防法施行令第21条の2第1項第3号で、収容人員が1人に満たない建物や、知事の確認を受けた温泉の設備は対象から外れます。
津市消防本部の審査検査基準は、検知器を置かなくてよい場合を3つの項目にまとめて並べています。
この記事では津市の3項目を読み、四日市市・鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市・大阪市の書き方と比べます。
津市で日帰り温泉を営んでいて、源泉の井戸が敷地の小屋の中にあります。
この小屋にもガス漏れの警報設備が要るのか迷っています。
温泉の設備は、置いてある建物の条件で要否が変わります。
まず国の条文から確かめましょう。
小屋はふだん鍵を掛けていて、誰もいないのですが。
津市の基準は、その点にも触れています。
3つの除外のどれに当たるかを順に確かめるのが近道です。
- 消防法施行令第21条の2第1項第3号は、建物の中に温泉井戸・ガス分離設備・ガス排出口とその間の配管がある場合にガス漏れ火災警報設備を求めます
- 収容人員が1人に満たない建物、知事の確認を受けた温泉の設備、可燃性天然ガスが滞留するおそれのない場所の設備は対象から外れます
- 津市は除外を3つの項目に並べ、収容人員の除外には「日常点検で入室する場合を除く」と添えています
- 四日市市・鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市は、滞留するおそれのない場所を「室が2面以上開放されている場合」とほぼ同じ文で説明しています
- 除外に当たらなければ、検知器を設備の周囲の長さ10mにつき1個以上設け、ガスの濃度を指示する装置を防災センター等に置きます
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目次
温泉をくみ上げる設備にガス漏れ警報が要るのはどんな建物か

対象になる人数と設備の範囲は、消防法施行規則第24条の2の2が決めています。
前二号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物その他の工作物(収容人員が総務省令で定める数に満たないものを除く。)で、その内部に、温泉の採取のための設備で総務省令で定めるもの(温泉法(昭和二十三年法律第百二十五号)第十四条の五第一項の確認を受けた者が当該確認に係る温泉の採取の場所において温泉を採取するための設備を除く。)が設置されているもの
消防法施行規則 第24条の2の2
2 令第二十一条の二第一項第三号の総務省令で定める数は、一人とする。
3 令第二十一条の二第一項第三号の総務省令で定める温泉の採取のための設備は、(略)温泉井戸、ガス分離設備及びガス排出口並びにこれらの間の配管(可燃性天然ガスが滞留するおそれのない場所に設けられるものを除く。)とする。
規則第24条の2の2第2項が人数を1人としているので、収容人員が1人に満たない建屋は外れます。
設備は温泉井戸・ガス分離設備・ガス排出口と、その間の配管で、このうち可燃性天然ガスが滞留するおそれのない場所にあるものは同条第3項のかっこ書きで外れます。
温泉法第14条の5第1項の確認を受けた者がその場所で温泉を採取する設備も、令のかっこ書きで外れます。
堺市の基準は、平成19年6月に東京都渋谷区の温泉施設で起きた爆発火災をきっかけに、可燃性天然ガスの濃度を監視する必要が生じたと説明しています。
つまり除外は国の条文に3つあり、各消防本部の基準はその中身を言い換えて説明しています。
源泉の小屋にはお客さんが入らないので、収容人員は0人だと思っていました。
収容人員をどう見るかが、最初の分かれ目です。
津市はこの点を除外の項目にかっこ書きつきで書いています。
津市は警報を付けなくてよい場合をどう並べているのか

温泉採取設備の存する部分には、ただし書きで3つの除外が付いています。
1 検知器 ⑴ 設置場所等
ウ 温泉採取設備の存する部分。ただし、次に掲げるものを除く。
(ア) メタンガスの濃度が環境大臣の定める濃度であるものとして、温泉法(略)第14条の5第1項の都道府県知事の確認を受けた温泉採取設備の存する場所
(イ) 温泉採取設備が存する建築物又は工作物で収容人員が1人未満のもの(日常点検で入室する場合を除く。)
(ウ) 温泉採取設備の設けられた室が、2面以上開放されている場合
(ア)は令のかっこ書き、(イ)は規則第24条の2の2第2項の1人に当たります。
(ウ)は、ほかの本部が同条第3項の「滞留するおそれのない場所」の説明として書いている文と同じ内容です。
(イ)には「日常点検で入室する場合を除く」というかっこ書きがあり、文のとおり読めば点検で人が入る建屋はこの除外に当たりません。
津市の基準は凡例の記号を使っていないので、義務か指導かは文の書きぶりで読むことになります(PDFのページ画像でも記号がないことを確かめました)。
鍵を掛けた無人の小屋でも、点検で入るなら除外に頼らず、計画の段階で津市消防本部に確かめてください。
毎朝、温度計を見に小屋へ入っています。
それなら収容人員の除外には当たらないのですね。
津市の文のとおりなら、日常点検で入る小屋はこの除外の外です。
入る頻度と目的を書き出して相談しましょう。
2面以上開放とはどんな部屋を指すのか

四日市市・鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市は、この言葉をほぼ同じ文で説明しています。
2 検知器 (3)設置方法 ア 共通事項
(ウ)省令第24条の2の2第3項に規定する「可燃性天然ガスが滞留するおそれのない場所」とは、温泉採取設備が設けられた室が2面以上開放されている場合をいう。
鈴鹿市(第4章 第11 ⑼ウ(イ))・県央広域(第4章 第11 9⑶イ)・堺市(第13 Ⅱ8⑷)もほぼ同じ文で、堺市は出典として平成20年8月28日消防予第200号を示しています。
四日市市の文には行政指導を示す下線がなく、鈴鹿市と県央広域の文にも▲や●の記号は付いていません(いずれもPDFのページ画像で確認)。
大阪市は用語の意義で温泉採取設備を定める中に「滞留するおそれのない場所に設けられるものを除く」と書くだけで、2面の目安は見当たりませんでした。
開口の大きさなど「開放」の程度まで書いた本部はなかったので、壁の一部だけが開いている室は管轄に確かめてください。
| 消防本部 | 知事の確認を受けた場所 | 収容人員1人未満 | 2面以上開放 | 記号 |
|---|---|---|---|---|
| 津市 | 5-12 1⑴ウ(ア) | 同(イ) 日常点検で入室する場合を除く | 同(ウ) | なし(凡例なし) |
| 四日市市 | 記載なし | 記載なし | 第11 2(3)ア(ウ) | 下線なし |
| 鈴鹿市 | 第11 ⑼ウ(ア)a・b | 記載なし | 同(イ) | 無印 |
| 埼玉県央広域 | 第11 9⑶ア(ア)(イ) | 記載なし | 同イ | 無印 |
| 堺市 | 第13 Ⅱ8⑶ア・イ | 記載なし | 同⑷ | ◆②(平成20年 消防予第200号) |
| 大阪市 | 記載なし | 記載なし | 用語の意義に規則の文だけ | - |
うちの井戸は屋根だけの上屋で、壁は1面しかありません。
それなら開いている面が3つあるので、2面以上開放の目安に入りそうです。
図面と写真を持って確かめてもらいましょう。
知事の確認を受けた温泉とはどんな場所か

鈴鹿市・県央広域・堺市は、この確認を受けた場所を2つに分けて説明しています。
9⑶ 温泉の採取のための設備に用いられるガス漏れ火災警報設備の設置を要しない防火対象物又はその部分
ア 政令第21条の2第1項第3号及び省令第24条の2の2第1項第2号に規定する温泉法(略)第14条の5第1項の都道府県知事の確認を受けた温泉採取設備の場所とは、次の場所をいうものであること。
(ア) 温泉法施行規則(略)第6条の6第1項の規定により、環境大臣が定めるメタン濃度(平成20年環境省告示第58号)であるもの
(イ) 温泉法施行規則第6条の6第2項の規定により、温泉付随ガスの気泡が目視できず、近隣にあり、かつ、地質構造、泉質、深度その他の状況からみて温泉付随ガスの性状が類似していると認められる温泉の採取の場所におけるメタンの濃度が、環境大臣が定めるメタン濃度(平成20年環境省告示第58号)であるもの
(ア)は温泉法施行規則第6条の6第1項、(イ)は気泡が見えず近くの似た温泉の濃度から判断する同条第2項によるものとされています。
どちらも平成20年環境省告示第58号の濃度が物差しで、鈴鹿市(第11 ⑼ウ(ア))と堺市(第13 Ⅱ8⑶)も同じ2つを挙げています。
津市の(ア)も「メタンガスの濃度が環境大臣の定める濃度であるものとして」確認を受けた場所と書いていて、同じ趣旨です。
四日市市と大阪市の基準には、この2つの場所の説明は見当たりませんでした。
確認は都道府県知事が温泉法で行う手続で消防の審査とは別なので、確認を受けたことが分かる書類を手元にそろえておくと話が早く進みます。
温泉の掘削や利用の許可は県から受けていますが、それとは別ですか。
ここで言うのはメタン濃度についての温泉法第14条の5の確認です。
手元の書類がどの手続のものかを県の担当課で確かめてください。
除外に当たらないとき検知器はどこに付けるのか

空気より軽いガスはイ(ロ)、重いガスはロ(ロ)に、温泉の採取のための設備の決まりがあります。
温泉の採取のための設備(前条第三項に規定するものをいう。以下同じ。)の周囲の長さ十メートルにつき一個以上当該温泉の採取のための設備の付近でガスを有効に検知できる場所(天井面等が〇・六メートル以上突出したはり等によつて区画されている場合は、当該はり等より温泉の採取のための設備側に限る。)に設けるとともに、ガスの濃度を指示するための装置を設けること。この場合において、当該装置は、防災センター等に設けること。
県央広域は第11-18図で、設備を囲む周囲の長さ(a+b+c+d)が10m以下なら1個とする例を示しています。
鈴鹿市と県央広域は、指示装置の作動の決まりを、指示値を爆発下限界の10分の1以下の値に設定することだと説明し、鈴鹿市は定期に指示値を校正することも求めています。
津市は指示装置を「防災センター等常時人がいる場所」に置くとし、燃焼器と温泉採取設備の両方がある建物では、検知器の構造と性能が違うのでそれぞれの場所に設けるとしています。
鈴鹿市と県央広域は令の第1号・第2号の建物で、堺市も含めた3本部は第3号の建物の地階に燃焼器があるときに、燃焼器と温泉採取設備の双方に設けるとしています。
除外に当たらなければ、井戸の周りの長さを測って検知器の数を決めるのですね。
そうです、軽いガスか重いガスかで付ける高さも変わります。
配置図に周囲の長さを書き込んで相談しましょう。
よくある質問
まとめ
小屋に入る頻度と壁の開き方を写真にまとめて、津市消防本部に相談します!
配置図と写真があれば、除外に当たるかどうかの相談も早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第21条の2第1項、消防法施行規則 第24条の2の2・第24条の2の3第1項第1号(e-Gov法令検索)
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-12 ガス漏れ火災警報設備 5-12のPDF
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第11 ガス漏れ火災警報設備 警報設備のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第11 ガス漏れ火災警報設備 第11のPDF
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第4章 第11 ガス漏れ火災警報設備 第11のPDF
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第13 ガス漏れ火災警報設備 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」ガス漏れ火災警報設備の節 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。温泉法の確認の手続は都道府県の担当課に、個々の建物の設置の要否は所轄の消防本部にご確認ください。





