ビルや工場に置くディーゼルなどの発電機には、消防の基準があります。
堺市では、堺市火災予防条例第19条が内燃機関を原動力とする発電設備の位置・構造・管理を定めています。
第19条は、自分の4つの号に加えて、変電設備(第18条)と炉(第2条)の規定を準用して基準を組み立てています。
この記事では、国の省令・堺市の条例・堺市消防局の【解説及び運用】を分けて読み、保有距離の表と準用の連鎖を順にたどります。
大阪市の条例・運用基準とも比べます。
堺市の工場の地下に、ディーゼルの発電機を入れる計画があります。
まわりをどれだけ空ければよいか聞かれました。
堺市の条例の解説に、保有距離の表があります。
操作盤の操作を行う面は1.0m以上です。
発電機の部屋は、普通の機械室でよいのですか。
条例は変電設備の規定を借りて部屋の条件を決めています。
根拠の順番に見ていきましょう。
- 発電設備の位置・構造は、消防法第9条にもとづき、国の省令の基準に従って市町村の火災予防条例で定められます
- 堺市火災予防条例第19条は、非常電源用だけでなく一般用の発電設備にもかかり、点検しやすい位置・防振・排気筒・機器の固定を求めています
- 堺市の解説は「容易に点検することができる位置」を、発電機と原動機本体の周囲0.6m以上・操作盤の操作を行う面1.0m以上などの表で示しています
- 第19条第2項が変電設備と炉の規定を準用するので、不燃材料で区画し防火戸を設けた室・燃料タンクと内燃機関の2m・資格者の点検が発電設備にもかかります
- 大阪市の条例第13条も同じ組み立てで、表の数値は同じですが、大阪市はキュービクル式の表を別に設けています
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目次
堺市の発電機にはどんな基準がかかるのか

発電機のような火災のおそれのある設備は、消防法第9条で市町村の条例に任されています。
その省令(対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令)が、第3条第17号で内燃機関を原動力とする発電設備を対象に挙げています。
一方、省令第17条の表は、内燃機関を原動力とする発電設備に、消防法施行令第5条第1項第3号・第4号(不燃性の床の上・外部への延焼を防止する措置をした室)などを適用しないとしています。
発電機を不燃の室に入れるという規定は、国の省令には見当たりません。
そのうえで、堺市の条例は次のように定めています。
(1) 容易に点検することができる位置に設けること。
(2) 防振のための措置を講じた床上又は台上に設けること。
(3) 排気筒は、防火上有効な構造とすること。
(4) 発電機、燃料タンクその他の機器は、堅固に床、壁、支柱等に固定すること。
第1号の「容易に点検することができる位置」が、次の章で見る保有距離の表につながります。
堺市消防局の【解説及び運用】は、この条文がかかる発電設備を次のように説明しています。
ただし、搬送用発電機及び移動用発電機は除外されている。(固定して設ける場合は、本条の適用を受ける。)
第19条は、常用の発電機や、固定して置く発電機にもかかる点が大事です。
流れを順番に並べます。
- 消防法第9条が、火災のおそれのある設備の基準を市町村の条例に任せています
- 消防法施行令第5条と省令が、条例で定める基準を示し、内燃機関を原動力とする発電設備が対象になります
- 省令は防振・排気筒・固定・浸水・屋外の3mなどを定めていますが、不燃の室に入れる規定はありません
- 堺市火災予防条例第19条第1項が、点検しやすい位置・防振・排気筒・機器の固定を定めています
- 堺市の【解説及び運用】が、各号の読み方と、一般用の発電設備にもかかることを示しています
非常用でなく、ふだん使う発電機にもかかるのですね。
はい、一般の用途の発電設備にもかかります。
移動用でも、固定して置けば対象です。
発電機のまわりは何メートル空ければよいのか

| 部分 | 区分 | 保有距離 |
|---|---|---|
| 発電機及び原動機本体 | 相互間 | 1.0m以上 |
| 発電機及び原動機本体 | 周囲 | 0.6m以上 |
| 操作盤 | 操作を行う面 | 1.0m以上 |
| 操作盤 | 点検を行う面 | 0.6m以上(点検に支障とならない部分は除く) |
| 操作盤 | 換気口を有する面 | 0.2m以上 |
| 燃料槽と原動機の間(燃料搭載型を除く) | 燃料・潤滑油・冷却水等を予熱する方式の原動機 | 2.0m以上(不燃材料で有効に遮へいした場合は0.6m以上) |
| 燃料槽と原動機の間(燃料搭載型を除く) | その他のもの | 0.6m以上 |
第2号の防振について、解説5は次の方法を挙げています。
高温の排気ガスが可燃物に吹き付けないようにすることも挙げられています。
図面で確かめる順番を並べます。
- 発電機と原動機本体のまわりに0.6m以上、2台以上なら本体の相互間に1.0m以上をとります
- 操作盤の操作を行う面は1.0m以上、点検を行う面は0.6m以上、換気口の面は0.2m以上をとります
- 燃料槽が別置きなら、原動機が予熱する方式かを確かめ、2.0m以上(遮へいすれば0.6m以上)か0.6m以上かを決めます
- 床や台を建物から切り離すか、スプリングなどで振動を吸収する方法を決めます
- 排気筒の経路で、可燃物に近づく部分がないかを確かめます
燃料槽との間は、予熱するかどうかで変わるのですね。
はい、予熱する方式は2.0m以上です。
不燃材料で遮へいすれば0.6m以上になります。
変電設備の規定を借りるとはどういうことか

借りている先は2つあります。
1つ目は、変電設備の第18条第1項です。
その第3号が、室の条件を定めています。
堺市の解説7(1)は、準用の中身を次のように書いています。
発電設備にただし書を当てはめるときの具体的な条件は、第19条の解説には書かれていません。
ただし書を使う計画は、所轄の消防署と確かめておくのが確実です。
2つ目は、炉の第2条第1項第16号(灯油・重油などの液体燃料を使う炉の附属設備)です。
国の省令第10条第3号も、内燃機関を原動力とする発電設備について同じ読み替えをしています。
前の章の表(燃料槽と原動機の間)は第1号「点検しやすい位置」の読み方で、この2mは第16号ウの火災予防の基準です。
根拠の号が別なので、両方を図面で確かめます。
準用はさらに先へつながります。
第18条第1項第13号は、点検と記録を求めています。
電気主任技術者・電気工事士のほか、発電設備には次の者が加わります。
たどった準用の連鎖を番号で並べます。
- 第19条第2項が、変電設備の第18条第1項を発電設備に準用します
- 第18条第1項第3号により、キュービクル式を除き不燃材料の区画と、窓・出入口の防火戸が必要になります
- 第18条第1項第13号により、資格者による点検と記録・保存が必要になります
- その資格者は消防局告示第1号の2で、発電設備には自家用発電設備専門技術者が加わります
- 第19条第2項は炉の第2条第1項第16号も準用し、「たき口」を「内燃機関」と読み替えて燃料タンクとの2mを求めます
点検できる人まで、変電設備の条文から決まるのですね。
はい、第18条第1項第13号の準用でつながります。
告示で発電設備の資格者が加わります。
キュービクル式や屋上の発電機はどう扱うのか

発電設備での読み方を、解説7(2)が示しています。
屋外に置く発電設備は、第19条第3項で定められています。
解説8は、土地の事情で屋外(屋上)に置く発電設備が増えたことから設けた規定だと説明しています。
第19条第4項は、気体燃料を使うピストン式で出力10kW未満のもののうち、板厚0.8mm以上の鋼板製の外箱に収めた一定のものを別に扱っています。
解説9は、こうしたものは火災の危険性が低いため、屋外で建物から3m以上の距離をとること等を要しないとしたと説明しています。
屋上や屋外の計画で確かめる順番を並べます。
- 発電設備がキュービクル式か、室に据え付ける形かを分けます
- キュービクル式なら、平成20年消防局告示第4号への適合か、日本内燃力発電設備協会の認定品かを書類で確かめます
- 屋外なら、建物から3m以上とれるか、開口部のない不燃の外壁に面するかを確かめます
- 気体燃料で10kW未満の小型なら、第4項の外箱の条件に当たるかを確かめます
- 屋外でも、燃料タンクと内燃機関の2mや保有距離・標識・点検はかかります
屋上のキュービクル式なら、3m離さなくてよい場合があるのですね。
はい、消防局告示第4号に適合するキュービクル式なら除かれます。
認定の書類で確かめましょう。
大阪市の発電設備の基準は堺市とどこが違うのか

第1項の3つの号(点検しやすい位置・防振・排気筒)は堺市の第1号から第3号と同じ内容です。
大阪市はこれに加えて、燃料電池発電設備の第9条の2の2第1項(気体燃料を使うものの配管・計量器などを、電気設備のあるパイプシャフトなどに設けない規定)も準用しています。
大阪市の変電設備の第12条第1項第3号には出入口の扉の自動閉鎖装置の規定があり、ただし書はありません(大阪市の変電室の記事で取り上げています)。
保有距離は、大阪市の運用基準 第12章 第4が示しています。
大阪市は別に「キュービクル式」の表を設け、前面及び操作を行う面1.0m以上・点検を行う面0.6m以上・換気口を有する面0.2m以上としています。
主な違いを表にします。
| 項目 | 大阪市 | 堺市 |
|---|---|---|
| 条例 | 大阪市火災予防条例第13条 | 堺市火災予防条例第19条 |
| 準用する変電設備の規定 | 第12条第1項(扉の自動閉鎖装置あり・ただし書なし) | 第18条第1項(第3号にただし書あり) |
| 準用する炉の規定 | 第3条第1項第17号(たき口を内燃機関に読み替え) | 第2条第1項第16号(たき口を内燃機関に読み替え) |
| そのほかの準用 | 第9条の2の2第1項(気体燃料の配管・計量器など) | なし |
| 保有距離の表 | キュービクル式以外とキュービクル式の2つ・第1号と準用する距離の号の両方の読み方 | 第2-19-1表の1つ・第1項第1号の読み方 |
| 表の数値(キュービクル式以外) | 本体の周囲0.6m・操作面1.0mなど | 同じ |
| 表のただし書 | 特別な工具を用いる等で容易に点検等ができるものは除く | 操作盤の点検を行う面だけにただし書 |
| 認めるキュービクル式 | 昭和48年消防庁告示第1号に適合・日本内燃力発電設備協会の認証品・運用基準の構造 | 平成20年消防局告示第4号に適合(同協会の認定品は適合するものとする) |
東大阪市消防局の公開資料(消火器具・自動火災報知設備・誘導灯・避難器具・連結送水管・非常コンセントの6基準)では、消火器具の基準が発電設備のある場所の消火器に触れているだけで、発電設備の位置・構造の節はありません。
東大阪市火災予防条例の発電設備の条文は、今回は確かめていません。
堺市と大阪市で計画するときの確かめ方を整理します。
- 建物のある市の条例の条番号(堺市は第19条・大阪市は第13条)を確かめます
- 保有距離は、堺市は第2-19-1表、大阪市はキュービクル式かどうかで表を選びます
- 発電機室の区画は、準用する変電設備の条文で確かめます(堺市はただし書、大阪市は扉の自動閉鎖装置)
- キュービクル式は、市ごとに挙げている告示や認定・認証に当たるかを書類で確かめます
- 図面に保有距離と燃料タンクの距離を書き込み、所轄の消防署と確かめます
数値は同じでも、準用している条文が少しずつ違うのですね。
はい、キュービクル式の表や扉の規定が違います。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず、発電機と操作盤と燃料槽のまわりの距離を図面に書き込みます。
発電機室の区画を消防署に相談します!
準用の条文まで図面で押さえれば、発電機室の計画が早く固まります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局 審査基準(堺市火災予防条例 第2章 第2条、第18条、第19条【解説及び運用】、必要な知識及び技能を有する者の指定について(平成20年消防局告示第1号)、条則別表1) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第12章 電気設備 第4 内燃機関を原動力とする発電設備 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 大阪市火災予防条例 第3条、第9条の2の2、第12条、第13条(大阪市例規データベース)
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開6基準) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法 第9条、消防法施行令 第5条
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令 第3条、第10条、第12条、第16条、第17条
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





