津市の海岸には、夏の間だけ営業する海の家(浜茶屋)が建ちます。
津市の基準は海の家の桟敷席を飲食店と同じ(3)項ロとして扱うので、広さや人数によっては自動火災報知設備や屋内消火栓設備まで必要になります。
津市の審査基準は、毎年建てて取り壊す海の家について、代わりの設備で置き換える特例を条件つきで書いています。
この記事では津市の基準を原文でたどり、国の条文と大阪市・東大阪市の仮設建築物の特例とも比べます。
津市の海岸で、夏だけの海の家を出す予定です。
屋内消火栓まで要ると言われたらどうしようと心配しています。
津市の基準には、海の家に絞った政令第32条の特例があります。
条件を満たせば、屋内消火栓設備は大型消火器などで置き換えられます。
条件を満たせば代わりの設備で済むのですね。
はい、ただし営業期間や訓練の回数まで条件に入っています。
建物の扱いから順にたどっていきましょう。
- 津市の基準は、建築基準法第85条の仮設建築物を毎年期間を限って海の家として使う場合に、条件を満たせば政令第32条を適用できるとしています
- 条件は、避難階で避難しやすい構造・避難上有効な開口部・営業6か月未満で終了後に除却・営業期間中の訓練2回以上の4つです
- 消火器は必要な能力単位の倍数以上を歩行距離20mで包含するように置き、津市の例1は400㎡で4単位の2倍=8単位と計算しています
- 自動火災報知設備は非常警報設備か非常警報器具、非常警報設備は非常警報器具、誘導灯は誘導標識、屋内消火栓設備はパッケージ型消火設備か大型消火器で置き換えます
- 特例適用申請は要りませんが防火管理者と防炎は法令どおりで、大阪市・東大阪市の仮設建築物の特例は期間を6カ月以内と書くなど組み立てが違います
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目次
津市の海の家は消防法ではどんな建物として扱われるのか

津市の基準は、まず建築基準法の仮設建築物であることと、用途の項を決めています。
建基法第85条第5項に規定する仮設建築物(以下「仮設建築物」という。)において、毎年営業期間を限定した海の家(浜茶屋)として使用する実態がある。
仮設建築物における消防用設備等の設置については下記の条件を満たすことで政令第32条を適用することができるものとする。
(略)
⑴ 海の家の桟敷席の用途は3項ロとする。
建築基準法第85条は、仮設興行場・博覧会建築物・仮設店舗などの仮設建築物について、特定行政庁が1年以内の期間を定めて建築を許可できるとしています。
津市の基準は「第85条第5項」と書いていますが、e-Gov法令検索で見る現行の条文では、この仮設興行場等の規定は第6項に置かれているので、現行の番号では第6項に当たると読めます。
用途については、津市の基準は桟敷席を(3)項ロ、つまり飲食店と同じ扱いにすると決めています。
埼玉県央広域消防本部の審査基準も、平成23年4月28日の事務連絡を引いて、仮設建築物はそれぞれの用途別の項に含まれるとしていて、仮設だからといって別の用途になるわけではありません。
(3)項ロのときに国の基準でどの設備が要るかを、面積と人数の主な線だけ抜き出すと次のとおりです。
| 設備 | (3)項ロで必要になる主な線 | 消防法施行令 |
|---|---|---|
| 消火器 | 火を使う設備・器具(防火上有効な措置が講じられたものを除く)があれば面積にかかわらず、なければ延べ面積150㎡以上 | 第10条第1項第1号ロ・第2号ロ |
| 自動火災報知設備 | 延べ面積300㎡以上 | 第21条第1項第3号イ |
| 非常警報設備(非常ベル等) | 収容人員50人以上(地階・無窓階は20人以上) | 第24条第2項第2号 |
| 誘導灯・誘導標識 | 規模にかかわらず(規則第28条の2の部分を除く) | 第26条第1項 |
| 屋内消火栓設備 | 延べ面積700㎡以上 | 第11条第1項第2号 |
仮設でも飲食店と同じ扱いになるのですね。
はい、桟敷席の床面積と人数で必要な設備が決まります。
まず海の家の図面に面積と席数を書き込んでおきましょう。
海の家が特例を受けるにはどんな条件を満たせばよいのか

津市の基準は、政令第32条を適用する前提として4つの条件を並べています。
⑴ 避難階であり、簡明な避難経路により容易に避難できる構造であること。
⑵ 規則第5条の3の避難上又は消火活動上有効な開口部を有すること。
⑶ 営業期間は6ヶ月未満であり、営業期間を終了した後に仮設建築物を除却すること。
⑷ 消火、避難、通報訓練を営業期間内に2回以上実施すること。
⑴は、海の家が避難階にあって、迷わずに外へ出られる造りであることを求めています。
⑵の「規則第5条の3」は、現行の消防法施行規則では第5条の3が「防火上有効な措置等」の条文で、避難上又は消火活動上有効な開口部は第5条の5が定めているので、現行の番号では第5条の5に当たると読めます。
第5条の5は、10階以下の階では直径1m以上の円が内接する開口部か、幅75cm以上・高さ1.2m以上の開口部を2つ以上持つことなどを求めています。
⑶は営業期間を6か月未満に区切って終わったら建物を取り壊すこと、⑷は消火・避難・通報の訓練を営業期間内に2回以上行うことです。
訓練は特例の条件そのものなので、訓練の記録に日付と内容を残しておくと、消防署に説明しやすくなります。
営業期間の中で、訓練を2回以上やればよいのですね。
はい、繁忙期に重ならないように開設前に日程を決めておくと確実です。
訓練の予定日を営業計画に書き込んでおきましょう。
海の家の消火器は何本置けばよいのか

津市の基準は、計算の例まで付けています。
⑸ 消火器を設置必要能力単位数の倍数以上及び防火対象物の床面積に上がる部分を歩行距離20m以内で包含するよう設置すること。(例1参照)
もとになる能力単位の計算は消防法施行規則第6条で、(3)項の防火対象物は延べ面積を100㎡で割った数以上の能力単位が要ります。
同じ条の第6項は、階ごとに各部分から消火器まで歩行距離20m以下となるように置くことを求めています。
津市の例1は、幅10m・奥行40mの桟敷席で次のように計算しています。
| 手順 | 津市の例1の数字 |
|---|---|
| 延べ面積 | 10m×40m=400㎡ |
| 規則第6条の必要な能力単位 | 400㎡÷100㎡=4単位 |
| 津市の倍数 | 4単位×2=8単位 |
| 置く消火器 | ABC10型消火器を3本(9単位) |
| 置き方 | 床面積に上がる部分を歩行距離20m以内で包含する |
ただし歩行距離の条件もあるので、細長い桟敷席では本数より配置で決まることがあり、配置図で床のどこからでも20m以内に消火器があるかを確かめます。
例1の広さなら、消火器3本で足りる計算なのですね。
例1ではそうですが、建物の形によっては歩行距離で本数が増えます。
配置図に消火器の位置を描いて確かめましょう。
自動火災報知設備や屋内消火栓設備は何に置き換えられるのか

津市の基準は、設備ごとに「代わりに何を置けば免除するか」を書いています。
⑹ 自動火災報知設備の設置基準面積以上である場合は、次のア又イのいずれかに該当することで、自動火災報知設備の設置は免除とする。
ア 非常警報設備を防火対象物の床面積に上がる部分を包含するよう設置すること。
イ 非常警報器具を設置すること。
⑺ 非常警報設備の設置基準に該当する収容人員以上である場合は、非常警報器具を設置することで、非常警報設備の設置は免除とする。
⑻ 誘導灯について、次のア又はイのいずれかに該当する場合は、誘導灯の設置は免除とする。
ア 規則第28条の2の誘導灯を設置することを要しない部分に該当すること。
イ 誘導標識を基準通り設置すること。
⑼ 屋内消火栓設備の設置基準面積以上である場合は、次のア又はイのいずれかに該当することで、屋内消火栓設備の設置は免除とする。
ア パッケージ型消火設備を防火対象物の床面積に上がる部分を包含するよう設置すること。
イ 大型消火器を防火対象物の床面積に上がる部分を包含するよう設置すること。
国の基準で要る設備と、津市の特例で代わりに置くものを並べると次のとおりです。
| 国の基準で要る設備 | (3)項ロで要る主な線 | 津市の特例で代わりに置くもの |
|---|---|---|
| 自動火災報知設備 | 延べ面積300㎡以上 | 床面積を包含する非常警報設備か、非常警報器具 |
| 非常警報設備 | 収容人員50人以上 | 非常警報器具 |
| 誘導灯 | 規模にかかわらず | 規則第28条の2で要しない部分に当たるか、誘導標識を基準どおり |
| 屋内消火栓設備 | 延べ面積700㎡以上 | 床面積を包含するパッケージ型消火設備か大型消火器 |
誘導灯のアは、規則第28条の2第1項第1号のように、避難階で居室の各部分から主要な避難口を見通せて歩行距離が20m以下の階なら、もともと国の基準で避難口誘導灯が要らない場合を指していると読めます。
イの誘導標識は、令第26条第1項第4号で(3)項にも設置が求められている設備です。
どの代わりを選ぶかでそろえる機器が変わるので、設置業者との見積りの段階で決めておくと手戻りがありません。
拡声器と大型消火器で済むなら、準備がずいぶん楽になります。
ただし床面積を包含するように置くことが条件なので、数と位置を図面で示す必要があります。
代わりの設備の配置図を先に作りましょう。
津市の特例は手続きや大阪市・東大阪市の特例とどこが違うのか

同じ仮設建築物の特例でも、大阪市や東大阪市とは書き方が違います。
仮設建築物の消防用設備等について政令第32条の特例を行う場合の手続きは、同意事務処理要綱に定める消防用設備等の基準の特例適用申請を要しないこととする。
⑵ 仮設建築物のうち、消防用設備等の特例対象となる防火対象物であっても、防火管理者の選任が義務になるもの及び防炎物品の対象となるものについては、法令基準通りとする。
⑶ 仮設建築物の適用を受けない常設店舗は本特例の対象外とする。
(3)項の防火対象物は、消防法施行令第1条の2第3項第1号ロにより収容人員が30人以上なら防火管理者を定める必要があり、同令第4条の3第1項の防炎防火対象物にも当たるので、カーテンやじゅうたん等は防炎物品にする必要があります。
また、仮設建築物ではない常設の店舗は、海辺にあってもこの特例を使えません。
大阪市と東大阪市の基準にも仮設建築物の特例がありますが、海の家に限らない書き方です。
| 比べる点 | 津市(3-4) | 大阪市(運用基準) | 東大阪市(自動火災報知設備の運用基準) |
|---|---|---|---|
| 対象 | 毎年期間を限って海の家として使う仮設建築物 | 仮設建築物(用途の限定なし) | 仮設建築物(用途の限定なし) |
| 期間 | 営業期間6ヶ月未満、終了後に除却 | 存続期間6カ月以内 | 存続期間6カ月以内 |
| 自動火災報知設備 | 非常警報設備か非常警報器具で免除 | 巡回監視装置を設け頻繁に巡視する等の措置で設置しないことができる(第12 特例基準 4) | 巡回監視装置を設け頻繁に巡視する等の措置で設置しないことができる(9 特例基準 ⑸) |
| 屋内消火栓設備 | パッケージ型消火設備か大型消火器で免除 | 容易に避難できる構造・早期発見と報知の措置・初期消火の措置で設置しないことができる(第12 特例基準 2) | この基準では扱っていない |
| 消火器の上乗せと訓練 | 倍数以上の消火器・訓練2回以上 | 仮設建築物の項目に見当たらない | 仮設建築物の項目に見当たらない |
鈴鹿市・四日市市・埼玉県央広域消防本部・堺市の公開している基準には仮設建築物の消防用設備等を軽くする項目は見当たらず、行田市と羽生市は審査基準そのものを公開していません。
津市以外の海岸で海の家を出すなら、管轄の消防本部に同じ扱いができるかを個別に確かめてください。
津市以外の海岸だと、同じようにはいかないのですね。
はい、同じ仮設建築物でも期間の数え方や代わりの設備が本部ごとに違います。
営業期間と図面をそろえて、開設前に管轄の消防本部へ確かめましょう。
よくある質問
まとめ
営業期間と図面をそろえて、津市消防本部に相談してきます!
訓練の予定日と消火器の配置図も一緒に持っていくと話が早いです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第1条の2第3項・第4条の3第1項・第7条第3項・第10条第1項・第11条第1項・第21条第1項・第24条第2項・第26条第1項・第32条、消防法施行規則 第5条の3・第5条の5・第6条・第28条の2、建築基準法 第85条(e-Gov法令検索)
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」3-4 仮設建築物における消防用設備等の取扱い https://www.info.city.tsu.mie.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/293/kasetukenntikubutu.pdf
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」屋内消火栓設備 第12 特例基準 2・自動火災報知設備 第12 特例基準 4
- 東大阪市消防局 自動火災報知設備の設置に係る運用基準 9 特例基準 ⑸
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第2章 第1 政令別表第1に掲げる防火対象物の取り扱い 14 仮設建築物
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」、四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」、堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。令第32条の適用は、消防長又は消防署長が個別の建物ごとに判断するものです。





