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仮設の店舗や興行場は消防法の規制を免れるのか

祭りの仮設テントを確認する作業着姿の点検員のイメージ

祭りの屋台や展示会の仮設店舗、工事現場の仮設事務所は、建築基準法の建築確認の手続きが簡略化されることがあります。
「仮設だから面倒な手続きは要らない」と考える方も少なくありませんが、その緩和は建築基準法の中だけの話です。
仮設の建物であっても、多数の人が出入りする以上、火災のリスクがなくなるわけではありません。
本記事では建築基準法第八十五条が緩和する範囲と、そこに含まれない消防法上の義務まで条文にもとづいて解説します

今度祭りの実行委員で仮設のテントを建てるんですが、建築確認とか要らないんですよね。

建築基準法上は、特定行政庁の許可を受ければ手続きが緩和される仕組みがあります。

じゃあ消火器とか防火管理者とかも、特に用意しなくていいってことですか。

いいえ、そこは別の話です。
建築基準法と消防法、それぞれの規定を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法第八十五条は、仮設興行場や仮設店舗、工事現場の仮設事務所について、一定の要件のもとで建築確認等の手続きを緩和しています。
  • 仮設興行場、博覧会建築物、仮設店舗などは、特定行政庁の許可を受ければ1年以内の期間に限り建築できます
  • 工事現場の事務所や下小屋などは、許可を受けなくても一定の規定の適用が自動的に除外されます。
  • 防火地域又は準防火地域内で延べ面積50平方メートルを超える仮設建築物には、屋根の防火性能に関する規定が適用されます
  • 建築基準法の緩和リストに消防法令への言及はなく、防火管理者の選任や消防用設備等の設置義務は仮設建築物にもそのまま適用されます。

建築基準法の仮設建築物の緩和と消防法の防火管理義務は別であることを示した図解

仮設の店舗や興行場はなぜ建築基準法の規制が緩和されるのか

祭りの仮設テントと恒久的な建物が並ぶ様子
祭りの露店や展示会のブース、工事現場の仮設事務所は、いずれも一定期間で取り壊すことが前提の建物です。
建築基準法はこうした建物を「仮設建築物」として位置づけ、通常の建築物とは別の扱いを定めています。
建築基準法第八十五条第2項 災害があつた場合において建築する停車場、官公署その他これらに類する公益上必要な用途に供する応急仮設建築物又は工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場その他これらに類する仮設建築物については、(略)の規定並びに第三章の規定は、適用しない。
工事現場の仮設事務所や資材置場は、届出や許可を受けなくても建築基準法の一部の規定から自動的に外れます
除かれるのは建築確認や道路・用途地域に関する規定など、建築基準法の中の規定だけです。
第三章は用途地域や容積率など都市計画に関わる規定なので、仮設建築物ならではの緩和と言えます。
ただし対象になるのは工事現場からおおむね近い場所に設ける仮設建築物に限られる点に注意してください。
どこまで緩和されるのか、次に対象となる仮設建築物の種類を見ていきましょう。

工事の仮設事務所なら、届出もいらないんですね。

工事現場に近い仮設建築物ならそうです。
次は許可を受けて建てるタイプを見てみましょう。

どんな仮設建築物が対象になり許可はどう受けるのか

仮設事務所と仮設店舗と興行用テントが並ぶ様子
祭りの興行場や仮設店舗のように、一定の集客が見込まれる仮設建築物は少し扱いが異なります。
こちらは自動的に緩和されるのではなく、特定行政庁の許可を受けることが条件になります。
建築基準法第八十五条第6項 特定行政庁は、仮設興行場、博覧会建築物、仮設店舗その他これらに類する仮設建築物(略)について安全上、防火上及び衛生上支障がないと認める場合においては、1年以内の期間(略)を定めてその建築を許可することができる。この場合においては、第十二条第1項から第4項まで、第二十一条から第二十七条まで、第三十一条、第三十四条第2項、第三十五条の二、第三十五条の三及び第三十七条の規定並びに第三章の規定は、適用しない。
仮設興行場や仮設店舗は、特定行政庁の許可があってはじめて建築基準法の規制が緩和されます
許可の期間は1年以内が原則で、工事に伴う仮設店舗は工事に必要な期間まで認められます。
祭りの露店や展示会のイベントホールのような一時的な建物も、この仮設興行場等に含まれます。
無許可のまま長期間使い続けると、建築基準法上の違反になり得る点に注意してください。
許可を受けたあとも、緩和されない規定が残っている点を次に確認しましょう。

祭りの実行委員が建てるテントも、許可を受ければ緩和されるんですね。

安全上、防火上及び衛生上支障がないと認められることが条件です。
次は緩和されない基準を見ていきましょう。

緩和されても外れない基準はなにか

足場に囲まれた建物と防火性能のある屋根材
建築基準法の規定が緩和されるといっても、すべての基準が外れるわけではありません。
特に火災の延焼に関わる規定は、仮設建築物であっても一部が残ります。
建築基準法第八十五条第2項ただし書 ただし、防火地域又は準防火地域内にある延べ面積が50平方メートルを超えるものについては、第六十二条の規定の適用があるものとする。
防火地域や準防火地域にある延べ面積50平方メートル超の仮設建築物は、屋根の防火性能の規定が残ります
第六十二条は屋根が延焼を広げないための構造を定めた規定です。
仮設だからといって、どんな屋根材でも使ってよいわけではありません。
延べ面積の小さい仮設建築物や防火地域外であれば、この規定は適用されません。
自分の建てる場所が防火地域や準防火地域に当たるかどうかも、あわせて確認しておきましょう。

屋根の材料まで気にしないといけないとは知りませんでした。

防火地域や準防火地域にある場合は特に注意が必要です。
次は消防法側の話に移りましょう。

建築基準法の緩和は消防法の義務まで免除するのか

消火器が備え付けられた仮設テントの入口
建築基準法第八十五条が緩和する規定の一覧に、消防法令への言及は一切出てきません。
つまり仮設建築物であっても、消防法上の義務はそのまま生き続けます。
消防法第八条第一項 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、(略)消防計画の作成、(略)消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備(略)その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
消防法第八条は「興行場」を明文で挙げており、仮設の興行場もこの対象から外れません
建築基準法第八十五条の適用除外リストには消防法や消防法施行令の条文は一つも含まれていません
収容人員などの要件を満たせば、仮設のテントであっても防火管理者の選任が必要になります。
消防法第十七条にもとづく消火器等の消防用設備等の設置義務も、同じように仮設建築物に及びます。
「仮設だから消防法も緩くなる」という思い込みは、この記事でいちばん誤解しやすい落とし穴です。

建築の許可が下りたから安心、というわけじゃないんですね。

建築基準法と消防法は別の法律です。
次は建てる前に確認する手順を整理しましょう。

仮設の建物を建てる前になにを確認すればよいか

建築部局と消防署の担当者に相談する仮設建築物の計画書
仮設だからと油断せず、建てる前に確認しておきたい手順を整理します。
建築側と消防側、それぞれの窓口に相談することが欠かせません。
建築基準法第八十五条第3項 前二項の応急仮設建築物を建築した者は、その建築工事を完了した後3か月を超えて当該建築物を存続させようとする場合においては、その超えることとなる日前に、特定行政庁の許可を受けなければならない
短期のつもりで建てた仮設建築物でも、3か月を超えて使うなら改めて許可が必要です
まずは自分の建物が仮設興行場等の許可の対象になるか、特定行政庁の窓口で確認しましょう。
あわせて所轄消防署にも相談し、収容人員に応じた防火管理者の選任や消火器等の設置が必要かを確認します。
存続期間が延びそうな場合は、期限が来る前に許可の延長手続きも忘れず進めてください。
建築と消防、両方の窓口に早めに相談しておくことが、仮設建築物を安全に使い続ける一番の近道です。

建築と消防、両方に相談しておいたほうが安心ですね。

着手前の早い段階で両方に確認しておくと安心です。

よくある質問

Q仮設のテントや屋台にも防火管理者が必要になりますか?
A収容人員などの要件を満たせば必要です。消防法第八条は興行場を明文で挙げており、建築基準法上の仮設建築物であるかどうかは防火管理者の選任義務に影響しません。
Q建築基準法の許可を受ければ消防用設備等の設置も免除されますか?
A免除されません。建築基準法第八十五条の適用除外リストに消防法令の規定は含まれておらず、消防法第十七条にもとづく消火器等の設置義務は仮設建築物にもそのまま適用されます。
Q工事現場の仮設事務所も特定行政庁の許可を受けなければなりませんか?
Aいいえ。工事を施工するために現場に設ける事務所や資材置場などは、許可を受けなくても一定の規定の適用が自動的に除外されます。許可が必要になるのは仮設興行場や仮設店舗など第八十五条第6項に定める建物です。
Q仮設建築物を3か月を超えて使う場合はどうすればよいですか?
A建築工事を完了した後3か月を超えて存続させる場合は、その日が来る前に特定行政庁の許可を受けなければなりません。存続期間が延びそうなら早めに手続きを進めましょう。

まとめ

建築基準法第八十五条は、仮設興行場や仮設店舗、工事現場の仮設事務所について建築基準法の一部規定を緩和しています。
工事現場の仮設事務所や資材置場などは、許可を受けなくても一定の規定が自動的に適用除外になります。
仮設興行場や仮設店舗は、特定行政庁の許可を受ければ1年以内の期間に限り建築が認められます。
防火地域又は準防火地域内で延べ面積50平方メートルを超える仮設建築物には、屋根の防火性能の規定が残ります。
消防法第八条は興行場を明文で対象に含んでおり、仮設建築物でも防火管理者の選任義務は変わりません。
消防法第十七条にもとづく消防用設備等の設置義務も、仮設建築物にそのまま適用されます。
建築工事を完了した後3か月を超えて存続させる場合は、改めて特定行政庁の許可を受けなければなりません。

仮設の建物を建てるときも、消防法の手続きを忘れずに確認します!

仮設建築物の防火管理にご不安があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第八十五条(仮設建築物に対する制限の緩和)
  • 消防法第八条(防火管理者の選任義務)
  • 消防法第十七条(消防用設備等の設置維持義務)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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