共同住宅や学校、工場では、国の基準だけを見ると地上の普通の階に誘導灯はいらないことが多くあります。
ところが八尾市では、八尾市火災予防条例第49条が、延面積300平方メートル以上の建物に誘導灯を上乗せしています。
この記事では、八尾市の条例の原文を入口に、国の基準・大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市と並べて、上乗せの範囲と付けなくてよい場合を順にたどります。
八尾市の条文は、事務所と倉庫だけの複合用途の建物まで字面で含む書き方になっているのが特徴です。
八尾市で延べ400平方メートルのアパートを建てます。
地上の階にも誘導灯は要るのですか?
八尾市では、条例第49条で延面積300平方メートル以上の共同住宅に避難口誘導灯と通路誘導灯を求めています。
国の基準では、共同住宅の地上の階は要らなかったはずですが。
そのとおりで、国の基準との差が市の上乗せです。
国の条文から順に見ていきましょう。
- 国の消防法施行令第26条は、共同住宅・学校・工場・(16)項ロの複合用途の誘導灯を地階、無窓階及び11階以上の部分に限っています
- 八尾市火災予防条例第49条は、(5)項ロ・(7)項・(12)項・(16)項ロで延面積300平方メートル以上のものに避難口誘導灯を求め、通路誘導灯は(12)項を除いて求めています
- 第3項ただし書きで、昼間だけ使い採光が十分なもの、開放式廊下、規則第28条の2に当たるものは除かれます
- 大阪市・東大阪市・堺市にも300平方メートルの上乗せがありますが、対象の用途と昼間の除外の範囲が市ごとに違います
- 豊中市と吹田市の火災予防条例には誘導灯の上乗せの条文がなく、国の基準どおりです
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目次
国の基準では共同住宅や工場の誘導灯はどこまで必要なのか

- 飲食店・物販店・ホテル・病院など不特定多数が使う用途は、建物全体に避難口誘導灯と通路誘導灯が必要です。
- (5)項ロの共同住宅、(7)項の学校、(12)項の工場、(16)項ロの複合用途などは、地階、無窓階及び11階以上の部分だけが対象です。
- つまり、窓のある地上10階までの普通の階なら、国の基準では誘導灯は求められません。
- この「国が求めていない部分」に、条例で誘導灯を求めているのが各市の上乗せです。
国の基準だけなら、地上の普通の階のアパートには誘導灯がいらないのですね。
はい、国の基準では不要です。
八尾市の条例が、そこに上乗せをしています。
八尾市火災予防条例第49条は何を上乗せしているのか

(1) 令別表第1(5)項ロ、(7)項、(12)項及び(16)項ロに掲げる防火対象物で、延面積が300平方メートル以上のもの
(2) 次に掲げる小規模特定用途複合防火対象物で、延面積が300平方メートル以上のもの
ア 令別表第1(5)項ロ、(7)項又は(12)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積が当該防火対象物の延面積の10分の9以上であるもの
イ 主たる用途以外の用途に供される部分の床面積の合計が、当該防火対象物の延面積の10分の1を超え、又は300平方メートル以上であるもの
(1) 令別表第1(5)項ロ、(7)項及び(16)項ロに掲げる防火対象物で、延面積が300平方メートル以上のもの
- 線引きは延面積300平方メートル以上です。地階や無窓階かどうかは問いません。
- 避難口誘導灯の対象は、(5)項ロの共同住宅、(7)項の学校、(12)項の工場とスタジオ、(16)項ロの複合用途です。
- 通路誘導灯の対象は、(12)項を除いた3つです。工場には避難口誘導灯だけが上乗せされます。
- (16)項イのうち特定用途の部分が小さい小規模特定用途複合防火対象物も、第2号のアかイに当たれば対象です。
- 第1号は(16)項ロを用途の組合せで絞らずに挙げています。字面どおりなら、事務所と倉庫だけの複合用途の建物も延面積300平方メートル以上で対象になります。
八尾市では、工場は避難口誘導灯だけで、通路誘導灯は要らないのですね。
はい、第2項に(12)項が入っていません。
次は付けなくてよい場合を見ましょう。
八尾市で誘導灯を付けなくてよいのはどんな場合か

- 本文で、付ける場所・大きさ・非常電源は令第26条第2項と規則第28条の3の例によるとされます。国の誘導灯と同じ付け方です。
- ただし書きの1つ目は、日出から日没までの間だけ使い、採光が避難上十分な建物です。用途を限らず、避難口誘導灯と通路誘導灯の両方にかかります。
- 2つ目は開放式廊下です。外気に開いた共用廊下には、通路誘導灯などを付けなくてよいことになります。
- 3つ目は、国の規則第28条の2に当たる部分です。条例が国の免除規定をそのまま借りています。
- ただし、借りる規則第28条の2から第1項第5号と第2項第4号は外されています。この2つは、小規模特定用途複合防火対象物の地上の普通の階を免除する規定です。
第1項第5号と第2項第4号を外しているのは、八尾市が第49条第1項第2号で小規模特定用途複合防火対象物を自ら対象に加えているからだと読めます。国の免除をそのまま借りると、上乗せが打ち消されてしまうためです。
これでも当てはまらない特殊な建物は、条例第51条で消防長が認めれば基準によらないことができます。
昼間だけ使う建物や、外に開いた廊下は除かれるのですね。
はい、除外の3つを先に当てはめます。
次は大阪府内のほかの市と比べましょう。
大阪市・東大阪市・堺市の上乗せと何が違うのか

| 市 | 避難口誘導灯の対象 | 通路誘導灯の対象 | 昼間だけ使う建物の除外 |
|---|---|---|---|
| 八尾市 | (5)項ロ・(7)項・(12)項・(16)項ロ(延面積300平方メートル以上) | (5)項ロ・(7)項・(16)項ロ | 用途を限らず両方を除外 |
| 大阪市 | (5)項ロ・(7)項・(12)項((16)項ロ等に存するものを含め床面積の合計300平方メートル以上) | (5)項ロ・(7)項 | 避難口は(7)項のみ、通路は対象全体 |
| 東大阪市 | (5)項ロ・(7)項・(12)項ロ((16)項ロに存するものを含め床面積の合計300平方メートル以上) | (5)項ロ・(7)項・(12)項ロ | 避難口は(7)項のみ、通路は対象全体 |
| 堺市 | (7)項・(12)項(延べ面積300平方メートル以上) | (7)項 | 通路のみ除外 |
※表は各市の火災予防条例を要旨でまとめたものです。(12)項ロはテレビスタジオなどで、(12)項イが工場・作業場です。
違いを順に読むと、次の4点になります。- 共同住宅の(5)項ロは、八尾市・大阪市・東大阪市が対象にし、堺市は対象にしていません。
- 工場の(12)項イは、八尾市・大阪市・堺市が避難口誘導灯を求め、東大阪市は(12)項ロのスタジオだけを挙げています。
- 複合用途の(16)項ロは、大阪市・東大阪市が中にある共同住宅などの部分の床面積を数える書き方なのに対し、八尾市は(16)項ロそのものを延面積で挙げています。
- 昼間の除外は、八尾市が用途を限らず避難口と通路の両方にかけていて、ほかの3市より広い書き方です。
同じ300平方メートルでも、対象になる用途は市ごとにずれているのですね。
はい、用途の欄を市ごとに読み比べるのが大事です。
残る豊中市と吹田市も確かめましょう。
豊中市・吹田市では誘導灯の上乗せはないのか

条文の中に「誘導灯」の語も出てきません。つまり両市では、誘導灯は国の消防法施行令第26条どおりに判断することになります。
| 市 | 火災予防条例の誘導灯の上乗せ | 共同住宅・学校・工場の地上の普通の階 |
|---|---|---|
| 八尾市 | あり(第49条) | 延面積300平方メートル以上で必要 |
| 大阪市 | あり(第45条) | 床面積の合計300平方メートル以上で必要(工場は避難口のみ) |
| 東大阪市 | あり(第50条) | 床面積の合計300平方メートル以上で必要((12)項はロのスタジオのみ) |
| 堺市 | あり(第70条) | 学校・工場で延べ面積300平方メートル以上なら必要(共同住宅は対象外) |
| 豊中市 | なし | 国の基準どおり(地階・無窓階・11階以上のみ) |
| 吹田市 | なし | 国の基準どおり(地階・無窓階・11階以上のみ) |
※表は各市の火災予防条例を要旨でまとめたものです。「なし」は条例に誘導灯の付加基準の条文がないという意味で、運用基準や個別の指導まで否定するものではありません。
同じ大阪府内でも、隣の市に移るだけで誘導灯の数が変わることがあります。計画するときは、次の順に確かめると漏れが出にくくなります。- 建物の用途を消防法施行令別表第一の項まで特定します。複合用途なら(16)項イかロかも決めます。
- 地階・無窓階・11階以上の部分があれば、まず国の基準で必要になります。
- 建てる市の火災予防条例に誘導灯の付加基準があるかを見て、用途と面積を当てはめます。
- 八尾市なら第49条第3項ただし書きの3つの除外と、規則第28条の2の歩行距離を図面で確かめます。
- (16)項ロや昼間だけ使う建物など、読み方に幅があるものは所轄の消防署に事前に相談します。
豊中市や吹田市で建てるなら、国の基準どおりでよいのですね。
はい、条例の上乗せはありません。
ただ運用基準の特例や指導もあるので、図面ができたら相談しましょう。
よくある質問
まとめ
まず用途と延面積を確かめて、八尾市の第49条に当てはめます。
除外に当たるかは消防署に相談します!
誘導灯の数は間取りを決める前に固めるのが近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 八尾市火災予防条例 第49条・第51条(八尾市例規集・2026年11月5日閲覧) https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrMjF01/init?jctcd=8A85C0D651
- 大阪市火災予防条例 第45条(大阪市例規データベース) https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市火災予防条例 第50条(東大阪市例規集) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 堺市消防局 火災予防条例(解説及び運用)第70条(PDF15ページ目) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 吹田市火災予防条例(吹田市例規集) https://www2.city.suita.osaka.jp/reiki/d1w_reiki/H337901010407/H337901010407_j.html
- 豊中市火災予防条例(豊中市例規集) https://www1.g-reiki.net/toyonaka/reiki_menu.html
- 消防法施行令 第26条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
- 消防法施行規則 第28条の2・第28条の3(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※本記事は公表されている法令および八尾市・大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市の公開資料に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。運用基準は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防局で確認してください。誘導灯を付けなくてよいかどうかは、個々の建物ごとに所轄の消防署にご確認ください。






