工場や作業場の出入口の上に、緑色の避難口誘導灯が付いているかどうかは、建物によって違います。
国の消防法施行令は、工場の避難口誘導灯を、地階、無窓階、11階以上の部分に限っています。
ところが堺市では、堺市火災予防条例第70条が、延べ面積300平方メートル以上の工場に避難口誘導灯を求めています。
この記事では、国の基準と堺市の条例・審査基準を分けて、上乗せの中身と付けなくてよい場合を順にたどります。
堺市で平屋の工場を管理しています。
出入口に避難口誘導灯が要ると言われました。
堺市では、条例が工場に延べ面積300平方メートル以上の上乗せをしています。
まず、国の基準から整理しましょう。
隣の東大阪市にも工場があります。
市によって扱いは違うのですか。
大阪市と東大阪市の条例にも、似た上乗せがあります。
ただし、対象になる用途の書き方が違います。
- 国の消防法施行令第26条第1項第1号は、(12)項の工場や作業場の避難口誘導灯を、地階、無窓階及び11階以上の部分に限っています
- 堺市火災予防条例第70条第1項は、(7)項と(12)項で延べ面積300平方メートル以上のものに避難口誘導灯を求めています
- 工場に上乗せされるのは避難口誘導灯だけで、第2項の通路誘導灯は(7)項の学校などに限られます
- 第3項ただし書きの規則第28条の2と、条例第72条を使う審査基準の特例適用基準で、付けなくてよい場合が示されています
- 大阪市の条例は(12)項全体を対象にしていますが、東大阪市の条例は(12)項ロのスタジオだけを挙げています
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目次
国の基準では工場に避難口誘導灯はどこまで必要なのか

誘導灯と誘導標識をどこに設けるかは、消防法施行令第26条第1項が定めています。
一 避難口誘導灯 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物並びに同表(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項から(十五)項まで及び(十六)項ロに掲げる防火対象物の地階、無窓階及び十一階以上の部分
(12)項は、(10)項から(15)項までのまとまりに入っています。
国の基準だけなら、工場の避難口誘導灯は、地階、無窓階、11階以上の部分にだけ求められます。
一方、同じ第1項第4号は、誘導標識を別表第一の(1)項から(16)項までのすべてに求めているので、工場にも誘導標識は要ります。
国の基準で誘導灯を設けなくてよい階の条件は、誘導灯を設置しなくてよい部屋の記事で解説しています。
国の基準だけなら、地階や無窓階のない平屋の工場に避難口誘導灯はいらないのですね。
はい、国の基準では求められていません。
次は、堺市の条例を見ましょう。
堺市の火災予防条例は工場の避難口誘導灯をどう上乗せしているのか

堺市火災予防条例では、第5章の第62条から第72条までが、消防用設備等の技術上の基準の付加基準です。
誘導灯は、第70条に定められています。
2 令別表第1(7)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が300平方メートル以上のもの(昼間(日出時より日没までの間をいう。)のみ使用する防火対象物で採光が避難上十分であるものを除く。)には、通路誘導灯を設けなければならない。
階数ではなく延べ面積で決まるので、平屋の工場でも対象になり得ます。
第2項の通路誘導灯は(7)項だけで、(12)項は入っていません。
審査基準の第18-1表も、備考で次のように整理しています。
※8 (7)項及び(12)項に掲げる防火対象物の用途に供されている部分については、※3、※4によること。
複合用途の建物((16)項)の中にある工場の部分にも、※4の扱いが当てられています。
複合用途の建物で延べ面積をどう数えるかは表に書かれていないので、所轄の消防署で確かめます。
平屋でも、延べ面積が300平方メートル以上なら対象なのですね。
はい、階数ではなく延べ面積で決まります。
次は、どの基準で付けるのかを見ましょう。
堺市で上乗せされた避難口誘導灯はどの基準で付けるのか

避難口誘導灯をどの出入口に付けるかは、借りている先の規則第28条の3第3項第1号が定めています。
イ 屋内から直接地上へ通ずる出入口(附室が設けられている場合にあつては、当該附室の出入口)
ロ 直通階段の出入口(附室が設けられている場合にあつては、当該附室の出入口)
工場なら、外へ出る出入口と直通階段の出入口が、まず確かめる場所です。
誘導灯の大きさは、第18-1表で(12)項の設置区分の欄に指定がなく、備考※7でA級、B級又はC級のいずれかとされています。
等級ごとの有効範囲は、誘導灯のA級B級C級の記事で解説しています。
条例で付けた避難口誘導灯も、国の基準の例によって設けたものなので、その有効範囲内では誘導標識を設けないことができると読めます。
誘導標識を省ける範囲は、誘導灯を設置すれば誘導標識は不要になるのかの記事で解説しています。
条例で付ける誘導灯も、国と同じ基準で付けるのですね。
はい、規則第28条の3の例によります。
次は、付けなくてよい場合です。
堺市で工場の避難口誘導灯を付けなくてよいのはどんな場合か

1つ目は、第70条第3項ただし書きが借りている規則第28条の2です。
2つ目は、条例第72条の基準の特例です。
本条の特例を適用するか否かは、個々の防火対象物の具体的態様により消防長又は消防署長が判断するものであり、防火対象物の関係者又は消防用設備等の設計者等の判断によるものではない。
★は、堺市消防局が防火安全性の向上を目的として定めた指導基準を示す印です。
ア 居室に主要な避難口がある場合で、次に適合するもの。ただし、政令別表第1(1)項に掲げる防火対象物又は(16)項イに掲げる防火対象物のうち(1)項の用途に供する部分の客席内を除く。
(ア) 居室の各部分から主要な避難口を容易に見とおし、かつ、識別することができること。
(イ) 居室の床面積が100㎡(主として防火対象物の関係者及び関係者に雇用されている者の使用に供するものにあっては400㎡)以下であること。
- カ 出入口がシャッターのみである倉庫等
- ク 地上1階又は2階建ての建物の避難階で、窓から容易に避難できるもの(◆の印付き)
ここまでの連鎖を、番号順にまとめます。
- 消防法施行令第26条第1項第1号が、(12)項の避難口誘導灯を地階、無窓階、11階以上の部分に限ります
- 消防法第17条第2項を受けて、堺市火災予防条例第62条が、第5章を付加基準とします
- 第70条第1項が、(7)項と(12)項の延べ面積300平方メートル以上に避難口誘導灯を求めます
- 第70条第3項が、付け方を令第26条第2項と規則第28条の3の例によるとし、ただし書きで規則第28条の2に当たるものを除きます
- 条例第72条が、消防長又は消防署長が認める場合の特例を置きます
- 審査基準の第18 Ⅱ 6★が、条例第72条などを適用して設置しないことができる場合を、ア(居室の100平方メートル・400平方メートル)やカ(シャッターのみの倉庫等)などで示します
解説は、特例の申請を「堺市消防同意・消防用設備等事務処理要綱第14条」によって処理するとしています。
400平方メートル以下の作業場なら、付けなくてよい場合があるのですね。
ただし、判断するのは消防長又は消防署長です。
次は、大阪市と東大阪市と比べましょう。
大阪市や東大阪市では工場の避難口誘導灯はどう違うのか

各市の例規集で条文を確かめた範囲で、3市を並べます。
| 項目 | 堺市(条例第70条) | 大阪市(条例第45条) | 東大阪市(条例第50条) |
|---|---|---|---|
| 避難口誘導灯の上乗せの対象 | (7)項・(12)項 | (5)項ロ・(7)項・(12)項 | (5)項ロ・(7)項・(12)項ロ |
| 工場・作業場((12)項イ) | 対象 | 対象 | 挙がっていない |
| 面積の書き方 | 延べ面積300平方メートル以上 | 床面積の合計300平方メートル以上 | 床面積の合計300平方メートル以上 |
| 工場の通路誘導灯の上乗せ | なし((7)項だけ) | なし((5)項ロ・(7)項だけ) | なし((12)項ロのスタジオにはあり) |
| 複合用途の建物 | 表の備考※8で(12)項の部分も※4による | 小規模特定用途複合防火対象物と(16)項ロの中にあるものを含む | (16)項ロの中にあるものを含む |
| 見通しと歩行距離で不要になる階 | 第3項ただし書きで規則第28条の2を借りる | 第45条第1項ただし書きに20メートル・10メートルを直接書く | 第50条の条文にただし書きはない |
| 特例の条文 | 第72条(消防長又は消防署長) | 第47条(消防長) | 第52条(消防長) |
ただし、地階、無窓階、11階以上の部分は、どの市でも国の消防法施行令第26条で避難口誘導灯が要ります。
大阪市は、見通しと歩行距離のただし書きを条例の条文に直接書いており、運用基準の特例は大阪市で避難口誘導灯がいらない出入口の記事で解説しています。
学校((7)項)の昼間だけの扱いは、東大阪市で夜も使う学校の誘導灯の記事で3市を比べています。
東大阪市なら、工場には条例の上乗せがないのですね。
条文上は(12)項ロだけです。
それでも、地階や無窓階は国の基準で必要です。
よくある質問
まとめ
堺市の工場に上乗せがかかる理由と、付けなくてよい場合が分かりました。
まずは延べ面積と出入口の位置を図面で確かめます!
図面と部屋の使い方の一覧があれば、消防署への相談もスムーズに進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第5章 火災予防条例審査基準 堺市火災予防条例 第62条・第70条・第72条(条文と解説及び運用)、第3章 第1節 第18 誘導灯及び誘導標識 Ⅱ 細目 1(第18-1表)・6 特例適用基準(1)ア・カ・ク、総則 凡例 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市火災予防条例 第45条・第47条(大阪市例規データベース)
- 東大阪市火災予防条例 第50条・第52条(東大阪市例規集)
- 消防法第17条第2項
- 消防法施行令第26条第1項・第3項、別表第一(12)項
- 消防法施行規則第28条の2第1項第1号、第28条の3第3項第1号
※本記事は公表されている法令および各市の公開資料・例規集に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。大阪市と東大阪市の比較は、各市の火災予防条例の誘導灯の条文を確かめた範囲のものです。個々の建物で誘導灯が必要か、特例が使えるかの判断は、所轄消防署にご確認ください。





