高さ20mをこえる建物の屋上には、建築基準法で避雷設備が求められます。
四日市市ではそれとは別に、火災予防条例第18条が避雷設備の位置と構造を「消防長が指定する日本産業規格」に合わせるよう求めています。
その指定は消防本部告示で、令和8年3月24日の改正によりJIS Z9290-3-2019になりました。
条例から告示までのつながりをたどり、建築の告示の切り替えと、埼玉県央広域・羽生市・鈴鹿市・津市の指定の書き方を比べます。
四日市市にある8階建ての事務所ビルで、屋上の避雷設備を更新する話が出ています。
業者さんから規格が変わったと聞いたのですが、何に合わせればよいのか分かりません。
四日市市では、火災予防条例が避雷設備を消防長の指定する規格に合わせるよう求めています。
その指定が令和8年3月に新しい規格へ改められました。
埼玉にある支店のビルも同じ規格でよいのでしょうか。
埼玉県央広域や羽生市の例規集では、指定はJIS A4201のままでした。
同じ条文の形でも、指定の中身は市ごとに違うので順に見ていきましょう。
- 建築基準法第33条は高さ20mをこえる建築物に避雷設備を求め、構造は施行令第129条の15で国土交通大臣が定めた構造方法(平成12年建設省告示第1425号)か大臣の認定によるとしている
- 四日市市火災予防条例第18条は避雷設備の位置と構造を消防長が指定する日本産業規格に合わせるとし、消防本部告示は令和8年3月24日の改正でJIS Z9290(雷保護)-3-2019を指定している
- 建築の告示は令和6年国土交通省告示第151号でJIS Z9290-3-2019に切り替わり、令和8年3月31日までに工事に着手した建築物だけが従前の規格によることができる
- 埼玉県央広域の火災予防規程と羽生市の火災予防要綱は、同じ形の条例の指定をJIS A4201としていて、版の年は書いていない
- 避雷設備の管理は変電設備の規定を準用し、四日市市・鈴鹿市・埼玉県央広域・羽生市はいずれも点検を行わせる者として電気主任技術者と電気工事士(又は同等以上の者)を指定している
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目次
避雷設備の決まりはなぜ建築と消防の両方にあるのか

四日市市の火災予防条例は、付けた避雷設備をどの規格で造り、どう管理するかを決めています。
高さ二十メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。
四日市市火災予防条例 第18条(避雷設備)
避雷設備の位置及び構造は、消防長が指定する日本産業規格(産業標準化法(昭和24年法律第185号)第20条第1項の日本産業規格をいう。以下同じ。)に適合するものとしなければならない。
2 避雷設備の管理については、第13条第1項第9号の規定を準用する。
建築基準法第33条が高さ20mをこえる建築物に設置を求め、施行令第129条の14は20mをこえる部分を雷撃から保護するように設けるとしています。
四日市市の条例第18条は、その避雷設備の位置と構造を規格に合わせることと、管理に変電設備の第13条第1項第9号を準用することの2つを定めています。
条例の条文には規格の番号は出てこず、「消防長が指定する」とだけ書いて中身を消防長の告示に任せています。
同じ文言の条文は埼玉県央広域事務組合・鈴鹿市・津市の火災予防条例では第16条にあり、条番号は違っても作りは同じなので、まず自分の建物がある市の条例で避雷設備の条を開いて、規格の指定がどこにあるかを確かめてください。
避雷設備は建築の話だと思っていました。
消防の条例にも条文があるのですね。
はい、条例は規格の番号を書かずに消防長の告示へ任せています。
次はその告示の中身を見ましょう。
四日市市の消防長はどの日本産業規格を指定しているのか

この告示は消防本部のサイトに掲載されていて、令和8年3月24日に改正されています。
四日市市火災予防条例(昭和48年四日市市条例第49号)第18条の規定に基づき、避雷設備の日本産業規格を次のように指定する。
JIS Z9290(雷保護)-3-2019
告示の本文は規格の番号1行だけで、年の版まで「-3-2019」と書き切っています(掲載PDFの原本の画像で確かめました)。
四日市市の条例第18条の位置と構造の決まりは、この1行を通じてJIS Z9290-3-2019に適合することを求める形になります。
告示の掲載PDFには改正の年月日の一覧は載っていますが、改正前にどの規格を指定していたかや、経過措置の定めは載っていません。
既存の避雷設備がどちらの規格で造られているかは、竣工図や設備の仕様書で確かめておくと、更新の打合せで話が早くなります。
うちのビルの竣工図には、昔のJISの番号が書いてあった気がします。
その番号がA4201なら、いまの指定とは違う規格です。
建築の告示の切り替えとあわせて扱いを見ておきましょう。
建築の告示が切り替わると既存の避雷設備はどうなるのか

国土交通省は施行にあわせて技術的助言を出し、経過措置の扱いを説明しています。
適合すべき外部雷保護システムの構造については、改正告示施行後1年を経過する日(令和8年3月31日)までにその工事に着手する建築物については、改正前の避雷設備告示に規定する「JIS A4201-2003に規定する外部雷保護システムに適合する構造(略)」とすることができるとする経過措置を設けることとした。
令和6年国土交通省告示第151号は、平成12年建設省告示第1425号が求める構造をJIS A4201-2003からJIS Z9290-3-2019に改め、令和7年4月1日から施行されました。
技術的助言は、経過措置の「工事の着手」は避雷設備ではなく建築物の工事の着手を指すとし、JIS A4201-2003の構造の避雷設備は令和8年4月1日以降、建築基準法第3条第2項の既存不適格になると書いています。
高さ20mをこえる既存の建築物で経過措置の期間が終わったあとに増築や大規模の修繕などを行うときは、避雷設備を新しい規格に合わせる必要があるとも説明しています。
四日市市の消防長の指定が同じJIS Z9290-3-2019になったので、四日市市では建築と消防の両方で同じ規格を見ることになります。
来年に外壁の大規模な修繕を予定しているのですが、避雷設備も関係しますか。
大規模の修繕に当たるなら、避雷設備も新しい規格に合わせる対象になりえます。
設計者に修繕の区分と避雷設備の改修範囲を一緒に確かめてもらいましょう。
鴻巣市や羽生市の消防長はどの規格を指定しているのか

例規集で確かめられた範囲で、指定の書き方を並べます。
条例第16条第1項に規定する消防長が指定するものは、日本産業規格A4201(建築物等の雷保護)とする。
羽生市火災予防要綱(平成16年6月30日 消防本部告示第2号)第6条(避雷設備の位置及び構造の指定)
条例第16条第1項に規定する避雷設備の位置及び構造は、日本産業規格のA4201(建築物の避雷設備(避雷針))とする。
鴻巣市を所管する埼玉県央広域は「建築物等の雷保護」、羽生市は「建築物の避雷設備(避雷針)」と、どちらも括弧の中に規格の題名を書き、版の年は書いていません。
国土交通省の技術的助言によると、JIS A4201の題名は1992年版が「建築物等の避雷設備(避雷針)」、2003年版が「建築物等の雷保護」なので、括弧の書き方は県央広域が2003年版に、羽生市が1992年版に近い形です。
羽生市の要綱は令和8年3月23日にも改正されていますが、確認した時点の第6条はA4201のままでした。
鈴鹿市と津市の条例第16条も同じ文言ですが、例規集に収められた火災予防条例施行規則などでは規格の指定を見つけられず、行田市は今回確認していません。
| 市(消防本部) | 規格を指定する条例の条 | 消防長の指定 | 指定の置き場所 |
|---|---|---|---|
| 四日市市 | 火災予防条例第18条第1項 | JIS Z9290(雷保護)-3-2019 | 消防本部告示(令和8年3月24日改正) |
| 鴻巣市(埼玉県央広域) | 埼玉県央広域事務組合火災予防条例第16条第1項 | 日本産業規格A4201(建築物等の雷保護) | 火災予防規程第8条 |
| 羽生市 | 羽生市火災予防条例第16条第1項 | 日本産業規格のA4201(建築物の避雷設備(避雷針)) | 火災予防要綱第6条 |
| 鈴鹿市 | 鈴鹿市火災予防条例第16条第1項 | 例規集では見つけられなかった | 施行規則に規格の定めなし |
| 津市 | 津市火災予防条例第16条第1項 | 例規集では見つけられなかった | 消防法等施行取扱規則に定めなし |
| 行田市 | 今回は確認していない | 今回は確認していない | - |
支店のある鴻巣市では、まだA4201と書かれているのですね。
建築の告示は全国でZ9290-3に切り替わっているので、両方の扱いを所轄の消防署に確かめるのが安全です。
改修の設計の前に問い合わせておきましょう。
避雷設備の点検は誰にさせればよいのか

準用される第13条第1項第9号は、点検を「消防長が指定するもの」に行わせるとしています。
必要な知識及び技能を有する者として消防長が指定するものに必要に応じ設備の各部分の点検及び絶縁抵抗等の測定試験を行わせ、不良箇所を発見したときは、直ちに補修させるとともに、その結果を記録し、かつ、保存すること。
四日市市火災予防条例に基づく炉等の点検及び整備を行わせるために必要な知識及び技能を有する者の指定について(平成10年4月1日 消防本部告示第1号)2(抜粋)
条例第13条第1項第9号(条例第13条第3項、(略)第17条第2項及び第18条第2項において準用する場合を含む。)に規定する必要な知識及び技能を有する者は、次に掲げる者又は当該設備の点検及び整備に関しこれらと同等以上の知識及び技能を有する者とする。
(1) 電気事業法に基づく電気主任技術者の資格を有する者
(2) 電気工事士法に基づく電気工事士の資格を有する者
(3)〜(5)(略)
四日市市の告示は、避雷設備にも使われる第13条第1項第9号の指定として電気主任技術者と電気工事士を挙げ、(3)〜(5)の発電設備・蓄電池設備・ネオン管灯設備向けの資格はそれぞれの準用の場合に限っています。
鈴鹿市(平成28年9月1日 消防本部告示第2号)・埼玉県央広域(火災予防規程第7条第2項)・羽生市(火災予防要綱第5条)の指定も、条例第16条第2項で準用する場合を含めて電気主任技術者と電気工事士を挙げていて、県央広域と羽生市は「同等以上」の者も認めています。
条例が求めているのは点検と絶縁抵抗等の測定試験を行わせ、不良箇所を直ちに補修させ、結果を記録して保存することです。
点検を頼むときは担当者の資格を確かめ、測定の結果を記録として受け取って、竣工図と一緒に保管しておいてください。
つまり、点検を頼む相手の資格と、結果の記録の両方を見ればよいのですね。
はい、記録は保存まで求められています。
電気設備の保守を頼んでいる業者さんに、避雷設備も入っているかを聞いてみてください。
よくある質問
まとめ
竣工図で今の規格の番号を確かめてから、更新の見積りを取ります!
支店のある市でも、条例と消防長の指定を一緒に確かめておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法 第3条第2項・第33条、建築基準法施行令 第129条の14・第129条の15(e-Gov法令検索)
- 国土交通省住宅局建築指導課長「雷撃によって生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができる避雷設備の構造方法を定める件の一部を改正する件の施行について(技術的助言)」令和7年4月1日 国住指第532号(令和7年7月31日 国住指第195号で一部訂正)
- 四日市市火災予防条例 第13条第1項第9号・第18条(四日市市例規集)
- 四日市市消防本部告示「四日市市火災予防条例第18条に規定する避雷設備の指定について」(令和8年3月24日 消防本部告示第2号で改正)・「四日市市火災予防条例に基づく炉等の点検及び整備を行わせるために必要な知識及び技能を有する者の指定について」(四日市市消防本部)
- 埼玉県央広域事務組合火災予防条例 第16条・埼玉県央広域消防本部火災予防規程 第7条・第8条(埼玉県央広域事務組合例規集)
- 羽生市火災予防要綱 第5条・第6条(羽生市例規集)
- 鈴鹿市火災予防条例 第16条・鈴鹿市火災予防条例施行規則・平成28年9月1日 鈴鹿市消防本部告示第2号(鈴鹿市例規集)
- 津市火災予防条例 第16条・津市消防法等施行取扱規則(津市例規集)
※本記事は四日市市消防本部などが公表している告示・例規集と、建築基準法令および国土交通省の技術的助言に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「見つけられなかった」としたものは各市の例規集で確認した範囲の結果です。JISの規格本文の中身には立ち入っていません。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





