小規模な福祉施設などでは、水道の管につないで使う特定施設水道連結型スプリンクラー設備を選ぶことがあります。
国の消防法令はヘッドの先の放水圧力と放水量を決めていますが、どの給水方式を選べるかや、設計に使う水圧の数字までは書いていません。
四日市市消防本部の四日市市消防同意事務審査基準は、第2章 第3の11で直結増圧式は使用できないと書き、設計水圧や計算の条件まで決めています。
国の条文から四日市市の基準までたどり、鈴鹿市・津市・埼玉県央広域・大阪市・堺市の書き方と比べます。
四日市市でグループホームを開く準備をしています。
水道につなぐスプリンクラーにすると聞きましたが、方式がいくつもあって迷っています。
四日市市では直結増圧式が使えないと基準に書かれています。
まず国の条文から確かめましょう。
市によって使える方式が違うとは知りませんでした。
方式だけでなく、設計に使う水圧の数字も本部ごとに違います。
順番に見ていきます。
- 国の消防法施行規則第13条の6第2項第2号は、ヘッドの先で0.02MPa以上・15L毎分以上(内装が準不燃材料以外なら0.05MPa・30L毎分)を求めるが、給水方式や設計水圧は書いていない
- 四日市市は、直結増圧式は管内の水道部局が認めていないため使用できないとしている
- 直結直圧式の設計水圧は、四日市市が配水支管等の最小動水圧か実測値から1割減じた値、県央広域が0.198MPaか0.245MPa、大阪市が0.196MPaとしている
- ほかの水栓は閉めた状態で計算してよいと四日市市・県央広域が書き、堺市は全部閉めた状態の実圧で設計するとしている
- 水道用の配管を使えるのは火災時に熱を受けるおそれがない部分だけで、難燃材料の天井裏や厚さ50mm以上の保温材の被覆などが例に挙がっている
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目次
四日市市では水道直結のスプリンクラーにどの給水方式を使えるのか

水源として水道の管をつなぎ、決められた水量を貯める施設を持たない設備で、対象の部分の床面積の合計が1,000平方メートル未満のものに限って設けられます。
特定施設水道連結型スプリンクラー設備(スプリンクラー設備のうち、その水源として、水道の用に供する水管を当該スプリンクラー設備に連結したものであつて、次号に規定する水量を貯留するための施設を有しないものをいう。以下この項において同じ。)は、前項第一号及び第九号に掲げる防火対象物又はその部分のうち、(略)床面積の合計が千平方メートル未満のものに限り、設置することができること。
政令にも規則にも、直結直圧式・直結増圧式・受水槽式といった方式の名前は出てきません(e-Govの現行条文で確かめました)。
一方、四日市市の基準は第2章 第3の11の冒頭で、平成21年3月31日付け消防予第131号によるとしたうえで、直結増圧式は管内水道部局が認めていないため使用できないと書いています(この一文に行政指導を示す下線はありません)。
消防の側が禁じているのではなく、水道の側の取扱いをそのまま基準に書き込んだ形です。
ほかの本部は方式を並べて説明しています。
| 消防本部(基準の位置) | 直結増圧式の扱い | 方式についての書き方 |
|---|---|---|
| 四日市市(第2章 第3 11) | 使用できない | 管内水道部局が認めていないため |
| 鈴鹿市(第4章 第3の5 1) | 7つの類型の1つとして図示 | 原則として直結・受水槽補助水槽併用式を推奨 |
| 埼玉県央広域(第4章 第3の5 1) | 7つの構成の1つとして図示 | 計算で設計水圧を超えるときの対策に増圧給水装置の設置を挙げる |
| 大阪市(第3節の2 第2・第5) | 類型の1つとして図示 | 常用の増圧ポンプは消防法令の範囲から除く |
| 堺市(第4 Ⅱ6(2)(3)) | 方式の1つとして図示 | 常用の増圧装置の位置ごとに扱いを分ける |
| 津市(5-3 17) | 記載なし | 給水方式の区分は書かず、性能の表と配管の告示への適合などを書く |
使えない理由は消防ではなく水道の側にあるのですね。
そうなんです。
方式が決まったら、次は設計水圧の数字を見ます。
直結直圧式の設計水圧はどの数字から決めるのか

国が決めているのはヘッドの先の性能で、配管の入口にどれだけの水圧があると見込んでよいかは書いていません。
(略)スプリンクラーヘッドを同時に使用した場合に、それぞれの先端において、放水圧力が〇・一メガパスカル(特定施設水道連結型スプリンクラー設備にあつては、〇・〇二メガパスカル((略)仕上げを準不燃材料以外の材料でした場合にあつては、〇・〇五メガパスカル))以上で、かつ、放水量が五十リットル毎分(特定施設水道連結型スプリンクラー設備にあつては、十五リットル毎分((略)三十リットル毎分))以上で有効に放水することができる性能
四日市市は11(2)カで、直結直圧式の設計水圧を、原則として配水支管等の最小動水圧か実測で得た動水圧から1割減じた値とし、この部分には行政指導を示す下線が引かれています。
県央広域は第3の5 7⑵で、設計水圧を年間最小動水圧に将来の水圧変動予測を考えた水圧(0.198MPaか0.245MPa)と定義し、配管の摩擦損失がこれを超えないことを求めています。
大阪市は第6 5で、大阪市水道局の給水装置工事設計施行ガイドブックに定める0.196MPaで性能が出る口径にするとしています。
堺市は留意事項(11)アで、設計圧力によらず実際の水圧を基にして設計するとしています(堺市独自の★)。
| 消防本部(基準の位置) | 直結直圧式の設計水圧 | 足りないとき |
|---|---|---|
| 四日市市(第2章 第3 11(2)カ) | 配水支管等の最小動水圧か実測の動水圧から1割減じた値(下線) | 記載なし |
| 埼玉県央広域(第4章 第3の5 7⑵⑸) | 0.198MPaか0.245MPa | 増圧給水装置・配管ルートの変更・口径を太くする・加圧送水装置の方式に変える |
| 大阪市(第3節の2 第6 5) | 0.196MPa(大阪市水道局のガイドブック) | 記載なし |
| 堺市(第4 Ⅱ6(11)ア) | 設計圧力によらず実圧を基にする(★) | 記載なし |
| 鈴鹿市・津市 | 数字の記載なし | 鈴鹿市は屋内消火栓の摩擦損失計算を準用 |
四日市市では実際の水圧から1割引いて考えるということですね。
はい、余裕を見た低めの水圧で性能が出るかを確かめる考え方です。
次は計算のときの蛇口の扱いです。
計算するときほかの蛇口は閉めたままでよいのか

火災のときにほかの蛇口が開いていれば、そのぶんヘッドへ行く水が減るという心配があります。
水圧と水量の計算は、ほかの給水用具(水栓等)を閉めた状態で計算しても差し支えない。
この11(2)キにも行政指導を示す下線が引かれています。
県央広域も第3の5 7⑶で、ほかの給水栓を閉栓した状態で計算して差し支えないとし、大阪市は第5 3でポンプの設計をほかの給水用具を閉めた状態での作動を想定して行うとしています。
堺市は(11)アで、常用の給水用具を全て閉めた状態で使うことを想定して実圧を基に設計するとし、理由として、非常用の設備と常用の給水用具は性質が根本的に違うと書いています。
摩擦損失の計算式は、県央広域・大阪市・堺市が水道で使うウェストンの式でもよいとしていますが、四日市市の11には計算式の記載が見当たりません。
明日やることは、設計書の計算条件の欄にほかの水栓の状態が書かれているかを確かめることです。
計算は閉めた状態でよくても、実際の使い方は気をつけたいところです。
堺市は断水や水圧低下のときに正常に働かない旨の表示も求めています。
次は配管の材料を見ます。
水道用の配管をそのまま使えるのはどの部分か

その基準が平成20年消防庁告示第27号で、たどる道筋は次のとおりです。
- 消防法施行規則第14条第1項第10号ハが、配管・管継手・バルブ類は消防庁長官が定める基準に適合するものを使うとする
- 告示第27号の第1号から第3号が、屋内消火栓設備と同じ規則第12条第1項第6号ニ・ホ・トに準じて設けるとする
- 同じ告示の第4号が、火災時に熱を受けるおそれがある部分に設けるもの以外は、水道法第16条に規定する基準によることができるとする
- 四日市市の11(2)イ・ウが、水道法の適用範囲外の設備には第4号を使えないことと、熱を受けるおそれがない部分の例を書く
四 前三号の規定にかかわらず、配管、管継手及びバルブ類であって、火災時に熱を受けるおそれがある部分に設けられるもの以外のものにあっては、水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第十六条に規定する基準によることができる。
四日市市は11(2)ウで、水道法の基準に合う管は気密性や強度などは確保されていても耐熱性は確保されていないので第4号の線引きがあると説明し、壁や天井(内装を難燃材料にしたもの)の裏面と、厚さ50mm以上のロックウール保温材などで覆ったものを例に挙げています(保温材の例だけに下線があります)。
堺市は同じ2つの例を挙げ、大阪市は難燃材料の天井裏などの隠ぺい部分だけを挙げています。
県央広域はこの2つに加えて、配管を埋設する場合も熱を受けるおそれがある部分に当たらないとしています。
鈴鹿市は熱を受けない部分でも原則として屋内消火栓設備と同じ配管にするよう求め(▲)、水道用の硬質塩化ビニル管を使うときの接着の手順を並べています。
明日やることは、施工図で水道用の管が通る場所に天井の内装の材料と保温材の厚さが書かれているかを見ることです。
天井の内装の材料で、使える管が変わるとは思いませんでした。
改装で天井を張り替えるときも、上の管が熱を受ける部分に変わらないかを見ておきましょう。
最後に逆止弁と地中の配管です。
逆止弁と地中の配管は四日市市でどう指導されるのか

どちらも国の告示には書かれていない、四日市市の基準の中身です。
エ 配管を埋設するときは、屋内消火栓設備の基準4(13)を準用する。
オ 直結直圧式は、水道メーターの二次側か、ヘッドの取付け配管が分岐した部分に逆止弁を設ける。
オの逆止弁には行政指導を示す下線が引かれていて、水道メーターの二次側か、ヘッドへの配管が分かれる所のどちらかに付けるよう求めています。
エが準用する屋内消火栓設備の基準4(13)は、配管を原則として地盤面の下に敷かないとし、やむを得ず敷くときはU字溝や配管ピットなど目で見える形にするか、防食被覆・外面被覆鋼管・塗覆装などの防食措置をとるとしています。
前の章で見たとおり県央広域は埋設した配管を熱を受けない部分として扱いますが、四日市市では埋設そのものが原則として避けるものです。
堺市も埋設配管には屋内消火栓設備の規定を準用するとしており、大阪市は制御弁を水道メーターの二次側直近に設けるとしています。
明日やることは、敷地の外から建物までの配管が地中を通る計画になっていないか、配管図で確かめることです。
地中に埋めるなら、溝に入れて見えるようにするのが基本なのですね。
そうです。
埋めるしかないときは防食の方法を設計者と決めておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず水道の窓口で使える方式と水圧を聞いてから、設計者と打ち合わせます!
開設後は断水のときの連絡先も分かるようにしておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第12条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第13条の6・第14条(e-Gov法令検索)
- 水道法 第3条・第16条(e-Gov法令検索)
- 特定施設水道連結型スプリンクラー設備に係る配管、管継手及びバルブ類の基準(平成20年消防庁告示第27号・総務省消防庁)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第3 スプリンクラー設備 11、第2 屋内消火栓設備 4(13)(四日市市消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第3の5 特定施設水道連結型スプリンクラー設備 1・6・7(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第4章 第3の5 特定施設水道連結型スプリンクラー設備 1・6・7(埼玉県央広域消防本部)
- 大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 第3節の2 特定施設水道連結型スプリンクラー設備 第2・第5・第6・第7(大阪市消防局)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 第4 スプリンクラー設備 Ⅱ6(堺市消防局)
- 津市予防事務審査検査基準 5-3 スプリンクラー設備 17(津市消防本部)
※本記事は四日市市消防本部などが公表している審査基準・運用基準と、消防法施行令・施行規則・消防庁告示に基づく一般的な解説です。四日市市の基準は行政指導の部分に下線を引いており、今回の部分では設計水圧・閉栓での計算・逆止弁・保温材の例・補助水槽の20分間に下線があり、直結増圧式を使用できないとする一文には下線がありません。堺市の★は堺市独自の基準、鈴鹿市の▲は行政指導を表します(記号と下線はいずれも原本の画像で確かめました)。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「記載なし」としたものは各本部の水道連結型スプリンクラー設備の節を確認した範囲の結果です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





