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用途を変えたビルの消防設備はいつまで前の基準でよいのか|対象外になる設備と4つの適用除外を解説

テナントの入れ替わりが進む複合ビルの外観写真

テナントが入れ替わって事務所を店舗に変えたり、店舗の一部を飲食店にしたりすると、消防用設備等の基準も一緒に見直しになるのではと不安になります。
しかし実際には、用途を変えたからといって、すべての設備をいきなり最新の基準に合わせなければならないわけではありません。
消防法には、用途変更前の基準のままでよいとする特例と、その特例が及ばない設備・場面がそれぞれ条文で定められています。
本記事では、その特例の範囲と、現行基準への適合が必要になる4つの場面を条文にもとづいて解説します

テナントが入れ替わって、うちのビルにも飲食店の区画ができたんですが、消防設備はそのままで大丈夫でしょうか。

それなら消防法第17条の3が定める用途変更時の特例が関わってきます。

特例があるなら、設備は何も変えなくていいということですか。

そう言い切れない部分もあるので、この記事で順番に説明していきますね。

この記事の結論
  • 防火対象物の用途を変更しても、消防用設備等は原則として変更前の基準のままでよいとされています
  • この特例を定めているのは消防法第17条の3で、変更前の規定をそのまま適用する仕組みです
  • ただし自動火災報知設備や誘導灯など一部の設備は、この特例の対象から除かれています
  • 用途変更後に一定規模以上の増改築をした場合や特定防火対象物になった場合は、特例が及ばなくなります
  • 用途を変えるときは、対象外設備の有無と増改築の規模を早めに確認しておくことが実務のポイントです

用途変更後に消防用設備等の基準がどうなるかを示す図解

防火対象物の用途を変えたら消防用設備等の基準はどうなるのか

用途変更後の建物と消防設備のイメージ
事務所を店舗に変えたり、店舗を飲食店に変えたりすると、建物の使われ方が変わります。
このとき、すでに設置している消防用設備等の基準まで変わってしまうのか気になるところです。
消防法第17条の3第1項 前条に規定する場合のほか、第17条第1項の防火対象物の用途が変更されたことにより、(略)消防用設備等の技術上の基準に関する政令(略)の規定に適合しないこととなるときは、当該消防用設備等については、当該規定は、適用しない。この場合においては、当該用途が変更される前の当該防火対象物における消防用設備等の技術上の基準に関する規定を適用する
用途を変えても、消防用設備等はいきなり新しい基準に合わせる必要はありません。
条文が定めているのは、用途変更前の基準をそのまま使ってよいという原則です。
これは、用途を変えるたびに設備をすべて入れ替えさせると、関係者に重い経済的負担がかかることを考慮したものです。
ただし、この原則がどんな設備にも無条件で及ぶわけではない点は、次の見出しで確認します。
まずは「用途変更=即・全設備を最新基準に」ではないことを押さえておきます。

うちも去年、事務所の一角を店舗に変えたんですが、それだけで設備を全部やり直す必要はなかったんですね。

はい、原則としては前の基準のままで大丈夫です。

どの設備が対象外になり最新基準への適合が必要になるのか

用途変更の特例から除かれる消防用設備等のイメージ
前の見出しで見た特例には、実は最初から対象に入っていない設備があります。
消防法施行令では、その設備の種類があらかじめ列挙されています。
消防法施行令第34条 法第17条の2の5第1項の政令で定める消防用設備等は、次の各号に掲げる消防用設備等とする。 一 簡易消火用具 三 自動火災報知設備(別表第一(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ及び(16の2)項から(17)項までに掲げる防火対象物に設けるものに限る。)(略)
この列挙にあたる設備は、用途変更の特例が及ばず、いつでも現行基準への適合が必要です。
具体的には簡易消火用具、特定の防火対象物に設ける自動火災報知設備ガス漏れ火災警報設備漏電火災警報器、非常警報器具及び非常警報設備、誘導灯及び誘導標識、それに消火器や避難器具に類する設備が該当します。
これらは火災の覚知や避難に直結する設備で、経済的負担よりも人命の安全を優先する考え方が背景にあります。
用途変更で新たに(6)項などの防火対象物に該当した場合は、この列挙の対象になっていないかをまず確認します。
対象外の設備が見つかれば、その設備だけは変更後の基準に合わせて更新や追加が必要になります。

自動火災報知設備は、用途を変えたら結局最新基準に合わせなきゃいけないってことですね。

その通りです、令34条に列挙された設備は特例の対象外だと覚えておいてください。

特例そのものが効かなくなるのはどんな場合か

用途変更の特例が及ばなくなる場面のイメージ
対象外の設備がなくても、状況によっては特例そのものが働かなくなることがあります。
消防法は、その場面を4つの類型に整理しています。
消防法第17条の3第2項 前項の規定は、消防用設備等で次の各号の一に該当するものについては、適用しない。 一 (略)当該用途が変更される前の(略)規定に適合していないことにより(略)違反している当該防火対象物における消防用設備等 二 工事の着手が用途の変更の後である政令で定める増築、改築又は大規模の修繕若しくは模様替えに係る当該防火対象物における消防用設備等 三 (略)現行の基準に関する規定に適合するに至った当該防火対象物における消防用設備等 四 前三号に掲げるもののほか、用途が変更され、その変更後の用途が特定防火対象物の用途である場合における当該特定防火対象物における消防用設備等
特例が効かなくなるのは、大きく分けて4つの場面です。
1つ目は、用途変更の時点ですでに前の基準に違反していた設備で、もともと違法な状態まで守られるわけではありません。
2つ目は、用途変更後に一定規模以上の増築・改築・大規模な修繕をした場合で、その規模の基準は次の見出しで確認します。
3つ目はすでに現行基準に適合するに至った設備、4つ目は用途変更の結果特定防火対象物になった場合です。
この4つのどれかに当てはまれば、その設備は用途変更前の基準に頼れなくなります。

うちは今回、床面積を増やす改装もセットでやる予定なんですが、それも関係しますか。

増改築の規模によっては特例の対象外になるので、次の見出しで基準を確認しましょう。

増改築の規模はどこからこの例外に当たるのか

増改築の規模で特例が外れる基準のイメージ
前の見出しで触れた「一定規模以上の増改築」には、具体的な数字の基準があります。
消防法施行令が、床面積の合計で線引きをしています。
消防法施行令第34条の2 法第17条の2の5第2項第2号及び第17条の3第2項第2号の政令で定める増築及び改築は、防火対象物の増築又は改築で、次の各号に掲げるものとする。 一 工事の着手が基準時以後である増築又は改築に係る当該防火対象物の部分の床面積の合計が1,000平方メートル以上となることとなるもの 二 前号に掲げるもののほか、(略)床面積の合計が、基準時における当該防火対象物の延べ面積の2分の1以上となることとなるもの
増改築の面積が1,000平方メートル以上になると、特例は使えなくなります。
もう1つの基準は、増改築した部分の床面積が、もとの延べ面積の2分の1以上になる場合です。
どちらか一方に当てはまれば、その時点で特例の対象から外れます。
なお、主要構造部である壁の過半の修繕・模様替えも同じ扱いです(消防法施行令第34条の3)。
増改築を計画する段階でこの面積を先に計算しておくと、後からの手戻りを防げます。

1,000平方メートルって聞くと大きい数字に思えますけど、延べ面積の半分だと意外と超えそうです。

その通りです、延べ面積の2分の1の基準は見落としやすいので要注意です。

用途を変えるとき実務で何を確認すればよいのか

用途変更前に確認する手順のイメージ
ここまでの内容を実務の順番に並べ直すと、確認すべきことが見えてきます。
用途を変える前に済ませておきたい確認は、大きく3つです。
  • まず、用途変更後にどの項の防火対象物に当たるかを確認し、特定防火対象物になるかどうかを見ます
  • 次に、設置している設備が令34条が列挙する対象外設備に当たっていないかを確認します
  • 最後に、増改築を伴う場合は床面積の合計が基準を超えないかを計算し、超えそうなら早めに所轄消防署へ相談します
迷ったときほど、早い段階で所轄消防署に相談するのが近道です。
確認を後回しにすると、工事が進んでから設備の追加や改修が必要になり、費用も工期も増えてしまいます。
用途変更を検討し始めた時点で、この3つを順番に確認しておくことをおすすめします。

チェックすることが整理できたので、増築の計画を立てる前に消防署に確認してみます。

それが一番確実です、早めの事前相談が結局いちばんの近道ですよ。

よくある質問

Q用途変更をしたら必ず消防署に届出が必要ですか?
A用途変更そのものについて消防法上の届出義務が一律にあるわけではありませんが、防火対象物の区分が変わる場合は防火管理者の選任や消防計画の見直しが必要になることがあります。変更前に所轄消防署へ相談しておくと安心です。
Q用途変更前に設置していた消火器も交換が必要になりますか?
A消火器は、消防法第17条の2の5第1項が定める「消防用設備等」の定義から最初に除かれている設備です。避難器具とあわせて用途変更の特例そのものの対象になっておらず、現行の規格に適合しているかを別途確認しておく必要があります。
Q用途変更後にどの項の防火対象物になったか自分で判断してよいですか?
A用途の判定は実態にもとづいて消防機関が確認するのが原則です。自己判断で進めると、後から特定防火対象物に該当すると判定され、対象外設備の追加が必要になることがあります。事前に所轄消防署へ相談することをおすすめします。
Q増改築をしなければ、この特例は永久に使えますか?
Aいいえ。用途変更の時点ですでに違反していた設備や、現行基準に適合するに至った設備は、増改築の有無にかかわらず特例の対象外になります。特例はあくまで一定の条件を満たす間だけ働く仕組みです。

まとめ

用途変更後も、消防用設備等は原則として変更前の基準のままでよい
この原則を定めているのは消防法第17条の3である
簡易消火用具・自動火災報知設備・誘導灯など令34条が列挙する設備は特例の対象外
消火器・避難器具も、特例の対象になる「消防用設備等」の定義から除かれている
増改築の床面積が1,000平方メートル以上、または延べ面積の2分の1以上になると特例が及ばなくなる
用途変更の結果特定防火対象物になった場合も特例の対象外になる
用途を変えるときは対象外設備の有無と増改築の規模を早めに確認するのが実務のポイントである

これで用途変更のときに何を見ればいいか分かりました、次の改装計画で早速確認します。

用途変更の相談から届出の実務まで、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第17条の2の5・第17条の3
  • 消防法施行令第34条・第34条の2・第34条の3

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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