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未届の有料老人ホームはなぜ約6割で消防法令違反が見つかったのか|平成22年の第2回フォローアップ調査の結果を解説

未届の有料老人ホームの防火調査の結果を示す手すりのある廊下の写真

老人福祉法の届出をしていない有料老人ホームの防火の状況を、消防庁はどこまで調べたのでしょうか。
消防庁は、届出が行われていない施設を対象にフォローアップ調査を重ね、平成22年7月21日の消防予第318号でその結果を通知しました。
この記事では、通知に書かれた調査結果と消防への依頼、現行の条文との関係、施設で確かめたいことを解説します。

届出をしていない有料老人ホームを、消防が調べたのですか。
どこまで分かったのか気になります。

消防庁が、施設の状況を数字でまとめています。
まず、通知の書き出しから確かめましょう。

調査で、どんなことが分かったのですか。

消防法令違反のある施設が約6割に達していました。
順に見ていきます。

この記事の結論
  • 消防庁予防課長は、平成22年7月21日の消防予第318号で、平成22年4月30日を基準日とする第2回フォローアップ調査の結果を示し、違反是正の徹底を求めました。
  • 調査の対象は、老人福祉法の届出がないことが分かった有料老人ホーム382施設で、何らかの消防法令違反があったのは224施設(58.6%)でした。
  • 違反率は、消防用設備等の点検報告が27.6%、消防訓練が29.0%で、設備そのものより運用面の違反が目立つ結果でした。
  • 通知は消防に、違反処理基準等に基づく警告、措置命令を速やかに発することを求め、平成22年10月31日現在の第3回調査を予告しています。
  • 通知は助言で、新しい義務を定めたものではありません。現行の令は避難が困難な要介護者を主として入居させるものを(6)項ロとしており、区分は所轄の消防署で確かめます。

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老人福祉法の届出がない有料老人ホーム、全国での追跡調査、違反のある施設が約六割、警告と命令による是正、第三回の調査の五段階を示した図解

消防庁はなぜ未届の有料老人ホームを繰り返し調べたのか

平屋の小さな建物の右に、白い届出用紙が立っているイラスト
通知の書き出しは、それまでの調査と、今回の位置づけを書いています。
まず、その部分を引いて確かめます。
消防予第318号「未届の有料老人ホームに対するフォローアップ調査について」(平成22年7月21日、消防庁予防課長)は、次のように述べています。
標記については、平成21年12月21日付け消防予第529号により照会し、回答いただいたところですが、この度、平成22年4月30日を基準日とした同調査の結果(以下「第2回フォローアップ調査結果」という。)を別添1のとおりまとめましたのでお知らせします。
この通知は、追跡調査の2回目の結果を伝え、次の調査を予告するものです。
「未届」とは、老人福祉法第29条による届出が行われていないという意味です。
別添1の注書きによると、平成21年4月30日現在の緊急調査で、届出が行われていないことが判明した施設が調査の対象です。
緊急調査のあとに新しく設置された施設や、廃止された施設は、調査の対象に入っていません。
日付通知など内容
平成21年4月30日現在緊急調査老人福祉法第29条による届出が行われていない有料老人ホームが判明
平成21年12月21日消防予第529号フォローアップ調査を照会
平成22年4月30日第2回の基準日今回の通知にまとめられた調査の基準日
平成22年7月21日消防予第318号第2回の結果を通知し、第3回の実施を依頼
平成22年10月31日第3回の基準日第2回で報告された施設の状況を回答
平成22年11月19日回答期限第3回の回答の期限

調査は、一度きりではなかったのですか。

この通知は、第2回の結果を伝えるものです。
そして、第3回も予告しています。

調査結果は未届の有料老人ホームのどんな姿を示したのか

白紙のチェック表の右に、高さの違う五本の棒グラフが並んだイラスト
通知の別添1は、施設の数と、建物の構造と、違反の状況を表にまとめています。
まず、表の区分の意味を、注書きから確かめます。
消防予第318号の別添1「第2回フォローアップ調査結果の概要」は、(6)項ロを次のように説明しています。
消防法施行令別表第1(6)項ロに定める施設で、有料老人ホームの場合、主として要介護状態にある者を入居させるものをいう。
調査の対象は382施設で、そのうち何らかの消防法令違反があったのは224施設です。
(6)項ロが307施設、(6)項ハが75施設で、違反があった施設は、ロが184施設、ハが40施設でした。
違反率は、全体で58.6%です。通知の本文は、この状況を「依然として約6割」と書いています。
建物の構造では、木造が122施設(31.9%)で、耐火が130施設(34.0%)でした。
区分合計(6)項ロ(6)項ハ
施設数382施設307施設75施設
何らかの消防法令違反があるもの224施設184施設40施設
建物構造 木造122施設(31.9%)98施設(31.9%)24施設(32.0%)
建物構造 防火構造41施設(10.7%)37施設(12.1%)4施設(5.3%)
建物構造 準耐火(木造)8施設(2.1%)6施設(2.0%)2施設(2.7%)
建物構造 準耐火(非木造)48施設(12.6%)38施設(12.4%)10施設(13.3%)
建物構造 耐火130施設(34.0%)102施設(33.2%)28施設(37.3%)
建物構造 その他33施設(8.6%)26施設(8.5%)7施設(9.3%)
都道府県別の表も、別添に付いています。
施設数が最も多いのは神奈川県の84施設で、そのうち60施設に違反がありました。
別の見方をすると、違反率の高さは県によって大きく違います。
都道府県未届施設数違反施設数違反率
神奈川846071.4%
東京411843.9%
千葉392666.7%
栃木161487.5%
沖縄171694.1%
全国合計38222458.6%

施設の数が多い県ほど、違反も多いのですか。

数だけを見れば、そう言えます。
ただ、違反率は県ごとに大きく違います。

どの項目に違反が多く、設備の設置と運用のどちらが目立ったのか

白紙のチェック表と、白い書類の束と、小さな卓上カレンダーが並んだイラスト
別添1の違反の状況の表は、項目ごとの義務施設数と違反施設数を示しています。
まず、点検報告の根拠になる条文を確かめます。
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十七条の三の三(現行、抜粋)
第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(略)について、総務省令で定めるところにより、定期に、(略)自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
設備の設置の違反より、点検報告や訓練や防炎物品の違反率が高い結果でした。
スプリンクラー設備の違反率は8.8%、自動火災報知設備は8.2%、消火器具は3.7%でした。
一方で、消防訓練は29.0%、消防用設備等の点検報告は27.6%、防炎物品は26.4%でした。
義務があった41施設を対象にした防火対象物定期点検報告は、21施設で違反があり、違反率は51.2%です。
建築基準法令に係る何らかの違反は116施設(30.4%)で、消防法令の外側にも不備が見つかっています。
項目義務施設数違反施設数違反率
消火器具376143.7%
屋内消火栓設備461021.7%
スプリンクラー設備181168.8%
自動火災報知設備355298.2%
消防機関へ通報する火災報知設備337226.5%
誘導灯3617320.2%
防火管理者選任3284413.4%
消防計画3285918.0%
消防訓練3289529.0%
防炎物品38210126.4%
消防用設備等点検報告38010527.6%
防火対象物定期点検報告412151.2%
避難管理382246.3%
上記以外の消防法令に係る何らかの違反382153.9%
建築基準法令に係る何らかの違反38211630.4%

設備が付いていれば、安心というわけではないのですね。

表を見ると、点検報告と訓練の違反が目立ちます。
設置後の運用も、確かめたいところです。

通知は消防に何を求め、第3回調査はどう行われる予定だったのか

白い通知書が立つ台の右に、小さな木づちが置かれたイラスト
通知の本文は、結果の受け止め方と、消防に求める対応を書いています。
まず、その部分を引いて確かめます。
消防予第318号は、第2回フォローアップ調査結果について次のように述べています。
第2回フォローアップ調査結果によると、消防法令違反等の防火安全上の不備事項が認められる施設が依然として約6割に達していることから、引き続き関係機関と連携し、未だ違反が是正されていない対象物については、違反処理基準等に基づき適切な履行期限を設定した警告、措置命令を速やかに発する等、一層の違反是正の徹底をお願いします。
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十七条の四第1項(現行)
消防長又は消防署長は、第十七条第一項の防火対象物における消防用設備等が設備等技術基準に従つて設置され、又は維持されていないと認めるときは、当該防火対象物の関係者で権原を有するものに対し、当該設備等技術基準に従つてこれを設置すべきこと、又はその維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができる。
通知は、警告や措置命令で違反の是正を進めるよう求め、第3回の調査も予告しています。
通知は条文を挙げていませんが、消防用設備等が技術基準に従って設置、維持されていないときの命令は、法第17条の4第1項に定められています。
第3回調査の対象は、第2回で報告された未届の有料老人ホームで、基準日は平成22年10月31日です。
調査は、福祉部局や建築部局と連携して実施するよう求められています。
消防予第318号は、第3回フォローアップ調査の対象と連携について、次のように述べています。
第2回フォローアップ調査結果により報告された未届の有料老人ホームについて、別添2の記入要領を参照の上、各調査内容について平成22年10月31日現在の状況を回答願います。
また、調査にあたっては、福祉部局及び建築部局と連携を図りながら実施していただくようお願いします。
回答の経路も、通知に書かれています。消防本部が都道府県の消防防災主管部へ回答し、都道府県が取りまとめて消防庁へ回答する流れです。
項目通知に書かれた内容
第3回調査の対象第2回で報告された未届の有料老人ホーム
基準日平成22年10月31日現在の状況
連携先福祉部局と建築部局
回答の経路消防本部から都道府県の消防防災主管部へ、都道府県から消防庁予防課へ
回答期限平成22年11月19日(金)
実施不要の場合平成21年4月30日時点で未届の施設が認められなかった消防本部と都道府県

通知で、新しい義務が増えたのですか。

いいえ、増えていません。
通知は消防組織法第37条に基づく助言で、義務は消防法令に別にあります。

現行の条文と照らして、有料老人ホームでは何を確認すればよいのか

天井のスプリンクラーヘッドと白い感知器、赤い通報の箱が並んだイラスト
通知の数字は、平成22年当時のものです。
まず、有料老人ホームが消防法令上どう区分されているかを、現行の条文で確かめます。
消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)別表第一(六)項(現行、抜粋)
ロ 次に掲げる防火対象物
(1) 老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、(略)有料老人ホーム(避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る。)、介護老人保健施設、(略)その他これらに類するものとして総務省令で定めるもの
ハ 次に掲げる防火対象物
(1) 老人デイサービスセンター、(略)有料老人ホーム(ロ(1)に掲げるものを除く。)、(略)その他これらに類するものとして総務省令で定めるもの
老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第二十九条第1項(現行、抜粋)
有料老人ホーム(老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であつて厚生労働省令で定めるもの(以下「介護等」という。)の供与(略)をする事業を行う施設であつて、老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は、あらかじめ、その施設を設置しようとする地の都道府県知事に、次の各号に掲げる事項を届け出なければならない。
現行の令は、有料老人ホームを、入居者の避難の困難さで(6)項ロと(6)項ハに分けています。
通知の表の(6)項ロの説明は「主として要介護状態にある者を入居させるもの」ですが、現行の令別表第一(6)項ロ(1)は避難が困難な要介護者を主として入居させるものと書いています。
届出は老人福祉法第29条第1項が、設置しようとする者に、あらかじめ都道府県知事へ行うよう求めています。
通知の義務施設数は当時の基準で数えたものなので、いまの施設の適否は、通知の数字では判断できません。次の五つは通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
  • 老人福祉法第29条第1項の届出の控えが、施設にそろっているかを見る
  • 入居者の状況から、(6)項ロか(6)項ハかを所轄の消防署に確かめる
  • 消防用設備等の点検結果を消防長又は消防署長へ報告しているか、報告の控えを見る
  • 防火管理者の選任と、消防計画の届出の控えがそろっているかを見る
  • 消防訓練の記録と、防炎物品の表示、避難経路の建築基準法令上の不備がないかを見る

まず、届出と点検報告の控えを確かめます。

それが入り口です。
訓練の記録も、あわせて確かめてください。

よくある質問

Qこの通知で、有料老人ホームの法令上の義務は増えたのですか?
Aいいえ。通知は消防組織法第37条の規定に基づく助言で、新しい義務を定める文言はありません。設備や防火管理の義務は、消防法令に別に定められています。
Q通知の「未届」とは、消防法の届出がないという意味ですか?
Aいいえ。別添1の注書きによると、老人福祉法第29条による届出が行われていない施設のことです。
Q第3回調査の結果は、この通知に載っていますか?
Aいいえ。この通知が示すのは第2回の結果と、第3回の実施要領です。第3回の結果は、通知には書かれていません。
Q通知の数字は、いまの状況を示していますか?
Aいいえ。調査は平成22年4月30日現在のもので、義務施設数も当時の基準で数えたものです。現在の状況は、所轄の消防署に確かめてください。

まとめ

✔消防庁予防課長は、平成22年7月21日の消防予第318号で、第2回フォローアップ調査の結果を通知した
✔調査の対象は、老人福祉法の届出がない有料老人ホーム382施設で、違反があったのは224施設だった
✔違反率は、消防訓練が29.0%、点検報告が27.6%で、設備の設置より運用面が目立った
✔通知は消防に、警告、措置命令を速やかに発するなど違反是正の徹底を求めた
✔第3回調査は、平成22年10月31日現在の状況を、福祉部局と建築部局と連携して回答する形だった
✔通知は助言で、現行の令は避難が困難な要介護者を主として入居させるものを(6)項ロとしている
✔個別の適否は通知の数字では決まらないため、所轄の消防署に確かめる

有料老人ホームの防火を、確かめます!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第318号「未届の有料老人ホームに対するフォローアップ調査について」(平成22年7月21日 消防庁予防課長)別添1から別添3
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3・第17条の4 e-Gov法令検索
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一 e-Gov法令検索
  • 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条 e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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