消防用設備等の検査には、意外と知られていない実務上のルールがあります。
検査済証は誰のものか。手数料はなぜ取らないのか。届出は棟ごとか敷地ごとか。
一つひとつは細かい疑問ですが、現場では避けて通れません。
質疑応答が示したのは検査と届出の制度は行政の必要に基づく仕組みであり利用者の都合とは別だという考え方です。
設備を増設したら検査済証は作り直しですか。
原則そうなります。
検査に手数料がかからないのはなぜですか。
それも含めて5つの実務Q&Aを見ていきます。
この記事の結論
- 消防用設備等を増設・改修したときは検査済証を新たに交付しなければなりません
- 消防長等が指定する検査対象物の基準は市町村が独自に定められます
- 検査手数料を規定しないのは特定の者のためにする事務ではないからです
- 住居部分の立入検査には関係者の承諾が必要です
- 消防用設備等の届出は棟単位で行います
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目次
消防用設備等を増設・改修したら検査済証はどうなるか

古い検査済証をそのまま使い続けてよいのでしょうか。
問 消防用設備等の増設、改修等の際、検査済証はいかに取扱うのか。
答 消防用設備等を増設、改修したような場合も、単なる修繕等に止まる場合を除き、新たに設置した場合と同様消防法第17条の3の2の規定による届出及び検査を要する。従って、この場合、検査済証を新たに交付しなければならない。
増設や改修が単なる修繕等に止まる場合を除いて、新設のときと同じ届出・検査が必要になり、検査済証も新しいものに交付し直されます。古い検査済証をそのまま使い続けることはできません。
逆に言えば、修繕にとどまるかどうかの見極めが、届出の要否を左右するということです。
設備を増設・改修する計画があるなら、修繕の範囲を超えていないか、事前に所轄消防署に確認してください。
修繕かどうかの線引きが大事なんですね。
事前に所轄消防署に確認してください。
消防機関の検査対象になる防火対象物は誰が指定するか

その判断基準は、国が全国一律で定めているのでしょうか。
問 消防機関の検査を受けなければならない防火対象物について、消防長等が火災予防上必要と認めて指定する場合、国において基準を定めるか。また、定めない場合は、市町村において独自に定めてよいか(条例で定めてよいか)。
答 国において基準を定める予定はないので、市町村において独自に定められたい。なお、防火対象物を条例で指定することはできない。
国が全国一律の基準を定める予定はなく、市町村が独自に定める運用になっています。ただし、個々の防火対象物そのものを条例で名指しして指定することはできません。あくまで指定のための基準を定める、という位置づけです。
自分の建物が検査対象に当たるか気になるなら、所在地の市町村がどのような基準で指定を行っているかを確認してください。
全国一律の基準があるわけじゃないんですね。
市町村の基準を
確認してください。
消防用設備等の検査に手数料がかからないのはなぜか

消防用設備等の検査には、なぜ手数料が規定されていないのでしょうか。
問 消防用設備等の検査手数料を規定しなかった理由は。また、市町村条例で独自に徴収できるか。
答 消防用設備等の検査は、行政機関が行政上の必要に基づいて行うものであり、特定の者のためにする事務とはいえないので、手数料を徴収するにはなじまない性質のものである(地方自治法第227条)。従って、条例によって規定することもできない。
消防用設備等の検査は、申請者個人のためというより行政上の必要に基づいて行われるものと位置づけられています。特定の者のためにする事務ではないため、手数料になじまず、市町村条例で独自に徴収することもできません。
建築確認などとは制度上の性格が異なる、ということを押さえておくとよいでしょう。
消防用設備等の検査費用について疑問があるなら、この行政上の必要という位置づけを踏まえて確認してください。
建築確認とは性格が違うんですね。
行政上の必要という位置づけを踏まえてください。
住居部分の立入検査で承諾が得られない場合どうなるか

プライベートな空間への立ち入りを拒まれたら、検査はできないのでしょうか。
問 検査の対象となる防火対象物に住居部分があり、当該部分にも検査の対象である消防用設備等(例えば自動火災報知設備)が設置されている場合において、関係者から立入検査に対する承諾が得られないとどうなるか。
答 この検査については、防火対象物の関係者の届出に基づいて行うものであり、その意味で、検査のための立入りに対する関係者の承諾があらかじめ予想されている場合が多いのであるが、本条の検査は同法第4条の立入検査とはその趣旨を異にするものであり、消防用設備等の検査のための防火対象物への立入りについては、関係者の承諾が必要である。なお、本条に基づく検査のための立入りが拒否された場合は、同法第44条第3号の2の規定に基づく罰則の適用が可能である。
届出に基づく検査であるため、原則として立入りには関係者の承諾が必要です。一般的な立入検査とは根拠条文も趣旨も異なります。ただし、届出をした以上、正当な理由なく検査のための立入りを拒否すると、罰則の適用対象になり得ます。
承諾が前提とはいえ、届出をした側にも検査を受け入れる責任が伴うということです。
住居部分を含む防火対象物を管理しているなら、検査の日程調整を早めに行い、立入りを拒否する事態を避けてください。
承諾は要るのに拒否すると罰則があるんですね。
日程調整を早めに行い
立入りを拒否する事態を避けてください。
消防用設備等の届出は棟単位か敷地単位か

また、届出の対象になる工事は、新設のときだけなのでしょうか。
問 消防法施行規則第31条の3の規定による届出は、棟単位か、敷地単位か。また、「防火対象物における消防用設備等の設置に係る工事」とは、新設工事のみをさすのか。
答 棟単位である。新設、増改、移設に係る工事をいい、消防用設備等の変更に伴う工事を含む。
同じ敷地内に複数の棟があっても、棟ごとに届出が必要です。また、対象となる工事も新設に限らず、増改や移設、消防用設備等の変更に伴う工事まで幅広く含まれます。
新設工事だけを届出の対象と考えていると、増改や移設の際に届出漏れが起きかねません。
複数の棟を持つ敷地で消防用設備等の工事を計画しているなら、棟ごとに届出の要否を確認してください。
新設工事だけだと思い込んでいました。
棟ごとに
届出の要否を確認してください。
よくある質問
Q古い検査済証があれば増設時の検査は省略できますか?
A回答は、単なる修繕を除き新設と同様の届出及び検査を要するとしています。検査済証も新たに交付されます。
Q検査対象の指定基準は全国共通ですか?
A回答は、国では基準を定めず市町村が独自に定めるとしています。全国一律ではありません。
Q市町村が条例で検査手数料を独自に定めることはできますか?
A回答は、行政上必要な事務であるため条例によって規定することもできないとしています。
Q増設工事だけ届け出れば移設工事は届出不要ですか?
A回答は、新設・増改・移設に係る工事のほか変更に伴う工事も含むとしています。移設も届出の対象です。
まとめ
✔増設・改修時は検査済証を新たに交付します
✔検査対象の指定基準は市町村が独自に定めます
✔検査手数料は行政上の必要のためなじみません
✔住居部分の立入りは承諾が必要で拒否には罰則があります
✔届出は棟単位で行います
✔共通するのは検査と届出が行政の必要に基づく仕組みだという視点です
検査や届出の仕組みが、なんとなく分かった気がします。
今度の増設工事の前に確認してみます。
検査と届出は
行政の必要に基づく仕組みだと押さえてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防用設備等の検査、点検等について〔消防用設備等を増設、改修した場合の検査済証の取扱い〕(昭和50年6月16日 消防安第65号 安全教急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 同前〔消防機関の検査を受けなければならない防火対象物の指定について〕(同日 同号)
- 同前〔消防用設備等の検査手数料を規定しない理由は〕(同日 同号)
- 同前〔検査の対象である消防用設備等が設けられている場合、関係者から立入検査の承諾が得られない場合について〕(同日 同号)
- 同前〔消防用設備等の届出は棟単位か、敷地単位か〕(同日 同号)
- 消防法第17条の3の2、第4条、第44条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





