消防用設備等は基準どおりに設置すれば終わり、というわけではありません。
点検者欄の書き方や点検周期を延ばした年の書類、表示灯の形、厨房の消火設備、特殊な施設での省略など、現場では細かい判断を迫られます。
消防実務六法の質疑応答は、こうした現場の小さな迷いに一つずつ答えを出しています。
質疑応答が示したのは基準を満たせば運用は思ったより柔軟に扱ってよいという線引きです。
複数の点検資格者で点検した場合、点検者欄には全員の名前を書かないといけませんか。
代表する1名の氏名を書くだけでも差し支えありません。
他にも思ったより柔軟に扱ってよい実務判断がいくつもあります。
自家発電設備の点検周期を延ばした年とか、厨房の消火設備とか、迷う場面が多いです。
ひとつずつ順番に見ていきましょう。
基準を満たしているかどうかが判断の分かれ目です。
- 複数の点検資格者で点検した場合、点検結果報告書の点検者欄は代表する者の氏名を記載するだけでも差し支えないとされました
- 自家発電設備の点検周期を6年に延長した年は、保全策を講じていることを示す書類の添付が不要になる場合があります
- 屋内消火栓設備や自動火災報知設備の表示灯は、規則の基準を満たせば平面型でも差し支えないとされました
- 厨房の水噴霧消火設備等は、認定を受けた簡易自動消火装置を設置すれば代わりにできる場合があります
- 原子力発電所の固体廃棄物貯蔵庫のような特殊な施設では、令第32条を適用して屋外消火栓設備等を省略できるとされた例があります
▼
目次
複数の点検資格者で点検したら点検者欄はどう書くか

このとき、点検結果報告書の点検者欄は誰の名前を書けばよいのか。
点検者欄は、点検を行った防火対象物点検資格者全員の氏名を記載するのが基本の書き方です。
ただし人数が多い現場では、代表する者の氏名だけを記載する扱いも認められています。
これは消防用設備等点検資格者による点検報告書とは別の制度なので、書式を混同しないようにしてください。
複数の資格者が関わった点検では、報告書を提出する前に代表者を誰にするか点検業者と決めておくとスムーズです。
てっきり関わった人全員の名前を書かないといけないと思っていました。
代表者1名の記載でも認められます。
次は自家発電設備の点検周期の話です。
自家発電設備の点検周期を延ばした年は書類が要るか

では、点検を実施した年に添付する書類はどう扱えばよいのか。
運転性能に係る点検を実際に行った年であれば、予防的な保全策を示す書類まで別途そろえる必要はないとされました。
ただし、より適切な維持管理のためには、その年も保全策を講じておくことが望ましいとされています。
書類が要らないのはあくまで点検を実施した年に限られるので、次の点検までの間は何もしなくてよいわけではありません。
自家発電設備の点検計画を立てるときは、実施年と書類添付が必要な年を分けて管理表に残しておくと安心です。
点検した年と書類が要る年を分けて考えればいいんですね。
そのとおりです。
続いては表示灯の形の話です。
屋内消火栓や自火報の表示灯は平面型でもよいか

最近増えている平らな形の表示灯は、基準を満たしていると言えるのか。
問われているのは規則の基準を満たしているかどうかであって、表示灯が半球型か平面型かという形状は問題にされていません。
視認性や明るさなど規則が求める性能さえ確保できていれば、平面型の表示灯を選んでも差し支えないということです。
リニューアル工事で表示灯を交換するときは、見た目だけで新旧を判断せず基準適合を確認することが大切です。
カタログを見るときは、消防用として基準に適合している製品かどうかをまず確認してください。
形が違うと交換できないのかと思っていました。
基準を満たしていれば形は問いません。
次は厨房の消火設備です。
厨房の水噴霧消火設備は簡易自動消火装置で代えられるか

フードやレンジごとに簡易自動消火装置を設けた場合、この設備を省略できるのか。
フード・ダクト用、レンジ用、フライヤー用と設備ごとに認定を受けた簡易自動消火装置を組み合わせて設置することが前提です。
そのうえで厨房設備が液体燃料を使っていないこと、適正な維持管理を行っていることが条件になります。
液体燃料を使うガスコンロなどが混ざっている厨房では、この省略はそのまま使えないので注意してください。
改修を検討するときは、厨房設備の燃料の種類を洗い出してから消防用設備等の計画を立てるとよいでしょう。
うちの厨房はガス台もあるので、そのままでは使えなさそうですね。
まず燃料の種類を確認してみてください。
最後は少し特殊な施設の話です。
原子力発電所の貯蔵庫は屋外消火栓を省略できるか

人の立ち入りが難しいこうした施設でも、通常どおりの消防用設備等が必要になるのか。
可燃物がなく、常時テレビカメラで監視され、消防署員でも立ち入って維持管理することが難しいという実態が判断の決め手になりました。
このように用途や構造が特殊な施設では、令第32条を適用して通常の基準どおりに設置しなくてよいと判断される場合があります。
ただし、あくまで施設ごとの実態を踏まえた個別の判断であり、同じような施設ならどこでも省略できるわけではありません。
特殊な用途や構造の施設を計画するときは、早い段階で所轄消防署に実態を説明し協議しておくことをおすすめします。
普通の建物とは全然違う判断がされるんですね。
実態をきちんと説明することが大切です。
ここまでの5つをまとめます。
よくある質問
まとめ
点検の書き方から特殊な施設の扱いまで、思ったより柔軟なんですね。
よく分かりました。
基準を満たしているかどうかを一つずつ確認することが大事です。
迷ったときは所轄消防署や点検業者に相談してください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 防火対象物定期点検報告制度に関する執務資料について(平成14年12月12日 消防安第122号)
- 「373号通知」消防用設備等の点検要領一部改正について(平成30年6月1日 消防予第373号)
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(平成19年9月3日 消防予第317号)
- 令第32条の適用について(平成4年12月17日 消防予第249号「8」)
- 原子力発電所における固体廃棄物貯蔵庫の消防用設備等の設置について(昭和49年4月2日 消防安第37号)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は各通達が発出された当時のもので、告示番号等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





