建物の用途や構造が特殊だと、消防用設備等の基準がそのまま当てはまらないと感じることがあります。
そんなとき頼りになるのが、消防法施行令第32条が定める「基準の特例」です。
昭和40年代から50年代にかけて、消防庁は射撃場や自動車検査場など様々な施設についての照会に回答してきました。
そこから読み取れるのは設備の要否は用途の名前ではなく実際の火災リスクと建物の構造で判断されるという考え方です。
うちは倉庫の一部を冷凍庫にしていて、普通の自動火災報知設備をどう付けるか迷っています。
用途が特殊だと、基準も特別になるのでしょうか。
特殊な用途や構造の建物については、消防庁が古くから多くの照会に答えてきました。
令第32条の特例が使われた実例を見ていきましょう。
射撃場や車検場のような特殊な建物の話は、あまり聞いたことがありません。
昭和43年から48年にかけて示された5つの照会を、順に見ていきます。
- 射撃場は弾薬等を収容していても構造によっては令第32条の特例基準を適用してよいとされました
- 自動車検査場は消火器及び屋内消火栓設備を除き他の消防用設備等の設置を要しないと解されました
- 冷凍室や冷蔵室は温度監視装置を設ければ自動火災報知設備を省略できるとされました
- テント状の仮設建築物は特例を使わずに通常の基準で設置すればよいと回答されています
- スキップ型式の共同住宅は歩行距離などの条件を満たせば屋内消火栓を1階層おきに設けてよいとされました
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目次
射撃場に消防用設備等の特例基準は使えるか

内装を難燃材料以上にしても、それだけでは特例が使えないのではないかが問われました。
昭和43年、兵庫県からの照会に対し消防庁は、鉄筋コンクリート造で内装を難燃材料以上とした射撃場について令第32条の特例基準を適用して差し支えないと回答しました。
照会した側は、収容物が弾薬等・火薬類であることを理由に特例は使えないのではないかと尋ねましたが、回答はその心配を退けています。
建物の構造や換気設備が実際の火災リスクを下げていると評価されたためです。
ご自分の建物で特殊な用途や収容物があっても、まず構造や運用の実態を所轄消防署に説明することから始めてください。
弾薬を置いているから設備を減らせないと思っていました。
構造のほうが判断材料になるのですね。
そのとおりです。
用途の名前だけで判断しないという考え方が、ここから読み取れます。
自動車検査場では消防用設備等はどこまで必要か

どこまで消防用設備等を要するのかが問われました。
昭和44年、運輸省所管の自動車検査場について消防庁は、令第32条を適用し消火器及び屋内消火栓設備以外の設置を要しないと回答しました。
建物が軽量形鋼材造で燃えやすい可燃物の集積が少なく、検査時間外は車両が在留しないという運用実態が評価されたためです。
現在の車検場でも同種の判断が使われる余地はありますが、燃料や油脂の保管状況によって結論が変わるため、まず自施設の可燃物の量を確認してください。
車が出入りするだけの建物なら、設備は少なくて済むのですね。
うちの倉庫も似たような使い方かもしれません。
油や燃料をどれだけ置いているかで結論が変わります。
まずは可燃物の量を数えてみてください。
冷凍室や冷蔵室で自動火災報知設備は省略できるか

自動火災報知設備の代わりにどんな措置が認められるのかが問われました。
昭和45年、東京都からの照会に対し消防庁は、冷凍室・冷蔵室内の温度を常時監視し、異常上昇時に表示と警報音で知らせる温度監視装置を設けた場合、令第32条を適用して自動火災報知設備を省略してよいと回答しました。
温度自体が低く保たれているため、通常の感知器では機能しにくいという冷凍庫特有の事情が踏まえられています。
なお同じ照会では、冷凍庫以外の事務室等の部分について煙感知器の省略は認められず、廊下や階段の通路誘導灯の省略だけが認められるという判断も示されました。
冷凍設備のある倉庫を管理している場合は、省略してよいのは冷凍庫内の自動火災報知設備だけで、事務室等の煙感知器は別扱いになる点に注意してください。
冷凍庫だけが特別で、事務所の部分は普通どおりということですね。
まとめて考えないほうがよさそうです。
はい、部分ごとに分けて見る必要があります。
まずは冷凍庫の範囲を図面で確認してください。
テント状の仮設建築物に特例基準は必要か

壁や天井が布製でも普通の設備基準で足りるのかが問われました。
昭和47年、岩手県からの照会に対し消防庁は、空気膜で形を保つニューマチック構造の仮設建築物であっても、自動火災報知設備などの消防用設備等は通常の基準どおりに機能を満たして設置すればよく、令第32条の特例を持ち出す必要はないと回答しました。
壁や天井が布製であっても、感知器や配線を通常の工法で取り付けることは可能だと判断されたためです。
テント倉庫や仮設の建物を計画するときは、まず特例を探すより先に、通常の設置基準を満たせないかを確認してください。
特殊な構造だから特例が要ると思っていましたが、逆なのですね。
普通に設置できるなら、そのほうが簡単そうです。
そのとおりです。
工法が変わっているだけで、機能自体は普通に確保できるという判断です。
スキップ型の共同住宅で屋内消火栓はどこに設ければよいか

廊下のない階にも屋内消火栓を設けなければならないのかが問われました。
昭和48年、日本住宅公団のラーメン型14階建てスキップ型住宅について、消防庁は屋内消火栓をエレベーターホール・階段室・廊下に設け、各部分からの歩行距離が25メートル以下であれば、共用部分のない階への設置を省略してよいと回答しました。
スキップ型式の住棟はエレベーターが停止しない階に共用廊下がないため、隣接する階からの歩行距離で必要性を判断する考え方です。
スキップ型の住棟を管理している場合は、まず各住戸の玄関から最も近い屋内消火栓までの歩行距離を図面で測ってみてください。
階の数ではなく、距離で見るのですね。
廊下が無い階でも、近くの階から届けばよいということでしょうか。
そのとおりです。
歩行距離が条件を満たすかどうかを、図面で確認してみてください。
よくある質問
まとめ
特殊な建物でも、構造や運用の実態を説明すれば特例が使える場合があるとわかりました。
自分の建物ではどう当てはまるか、所轄消防署に相談してみます。
その姿勢が大切です。
令第32条の特例は個別の判断が前提ですので、まず建物の実態を整理してから相談してください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 射撃場における消防法施行令第32条の特例基準適用について(昭和43年9月2日 消防予第195号 予防課長から兵庫県民生部長あて回答)
- 自動車検査場における消防法施行令第32条の特例基準等の取扱いについて(昭和44年10月20日 消防予第234号 消防庁予防課長から運輸省自動車局整備部車両課長あて回答)
- 冷凍室または冷蔵室の用途に供する消防用設備等の設置について(昭和45年9月9日 消防予第172号 予防課長から東京都あて回答)
- ニューマチック構造の仮設建築物における消防用設備等の設置の可否について(昭和47年10月30日 消防予第149号 予防課長から岩手県あて回答)
- 屋内消火栓および連結送水管の設置について(昭和48年2月23日 消防予第31号 予防課長から東京都あて回答)
- 消防法施行令第32条
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は各通知が発出された当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





