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ボイラーや炉の管理基準はどこで決まっているのか|消防法が市町村条例に委ねる仕組みを解説

対象火気設備等の管理基準が市町村条例で定められる仕組みを解説するアイキャッチ画像

オフィスや店舗の厨房やボイラー室には、炎や熱を扱う設備が必ずあります。
ところが、その位置や構造の具体的な基準を消防法の条文で探しても、数字や規格そのものは出てきません。
消防法第9条が、この基準を政令の枠組みに従って市町村条例で定めるよう求めているからです。
条文をたどると防火管理者が実際に確認すべき場所は消防法ではなく自分の市町村の条例だと分かります

ボイラーの設置基準は消防法にちゃんと書かれていると思っていました。

実は消防法の条文そのものには、距離や材料といった具体的な数字は書かれていません

じゃあ、その基準はどこで決まっているんですか。

政令が枠を決め、実際の基準は市町村条例に委ねられています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 炉やボイラーなどの位置・構造・管理の基準は、消防法第9条により政令の基準に従い市町村条例で定められます
  • 政令(施行令第5条・第5条の2)は条例制定基準という枠を列挙し、総務省令が種類ごとの細部を定めます
  • 対象火気設備等には離隔距離や不燃性の床など共通の管理基準が求められます
  • 条例は市町村ごとに違ってよく、地方の気候や風土の特殊性により基準に従わないことも認められています
  • 自分の建物がある市町村の火災予防条例を確認しないと正しい基準は分かりません

炉やボイラーの管理基準はどこに書いてあるのか

ボイラー室に設置された炉やボイラーの位置や構造の基準が条例で定められることを示したイメージ
炉やボイラーは建物にとって欠かせない設備ですが、扱いを誤れば火元になります。
その管理の基準を消防法という法律そのものから探すと、思いのほか何も見つかりません。
第九条 かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備の位置、構造及び管理、こんろ、こたつその他火を使用する器具又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある器具の取扱いその他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める
消防法第9条は基準そのものを条文に書かず市町村条例に委ねると宣言しています
条文の前半は「かまど、風呂場その他火を使用する設備」、後半は「こんろ、こたつその他火を使用する器具」です。この2つを合わせて、実務では対象火気設備等対象火気器具等と呼びます。
消防法本体が決めているのは、この委任の構造だけです。実際の距離や材料や点検の頻度は、政令の枠を経て市町村条例に書き込まれています。
つまり「うちのボイラーは消防法の基準を満たしているか」という問いは、正確には「うちの市町村の条例の基準を満たしているか」という問いに置き換わります。
まずこの委任の構造を押さえたうえで、政令がどこまでの枠を決めているのかを次に見ていきます。

基準そのものは消防法には書かれていないんですね。

そうです。
政令と総務省令が枠を作り、条例が実際の数字を決めています。

対象火気設備等の管理基準はどうやって決まっているのか

政令が条例制定基準の枠を定め総務省令が対象火気設備等の種類ごとの細部を定める階層構造を示したイメージ
消防法第9条がそのまま市町村に基準づくりを任せているわけではありません。
政令が先に「条例制定基準」という枠を細かく決めています。
第五条 火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備であつて総務省令で定めるもの(略。以下「対象火気設備等」という。)の位置、構造及び管理に関し火災の予防のために必要な事項に係る法第九条の規定に基づく条例の制定に関する基準(略。以下「条例制定基準」という。)は、次のとおりとする。(略) 2 前項に規定するもののほか、対象火気設備等の位置、構造及び管理に関し火災の予防のために必要な事項に係る条例制定基準については、対象火気設備等の種類ごとに総務省令で定める
条例が独自に基準を作れるわけではなく政令が先に骨格を決めています
消防法施行令第5条は、火を使用する設備のうち総務省令で定めるものを対象火気設備等と呼び、この対象火気設備等について条例が満たすべき条例制定基準を列挙しています。器具については第5条の2が同じ構造で対象火気器具等を定めています。
さらに第2項は、この骨格だけでは足りない細部を対象火気設備等の種類ごとに総務省令で定めると書いています。炉やボイラーやふろがまといった種類ごとの離隔距離や不燃性の床の範囲は、この総務省令(平成14年総務省令第24号)が担っています。
つまり基準は消防法から政令、総務省令を経て市町村条例に至る4段階を通って、初めて具体的な数字になります。
市町村条例の条文だけを読んでも、上位の政令や総務省令の言葉がそのまま使われていることが多いので、条例の根拠がどの段階にあるかを意識すると理解が早くなります。

条例が独自に決めているわけではないんですね。

政令と総務省令が先に骨格を作り、条例はその枠の中で数字を定めています

対象火気設備等にはどんな管理基準が求められるのか

対象火気設備等が建築物や可燃物との離隔距離を保ち不燃性の床の上に設置される管理基準を示したイメージ
政令が定める条例制定基準には、設備の種類を問わず共通する項目があります。
建物側の管理として押さえておきたいのはこの部分です。
第五条 (略)一 対象火気設備等は、(略)建築物その他の土地に定着する工作物(略)及び可燃物までの間に、対象火気設備等の種類ごとに総務省令で定める火災予防上安全な距離を保つ位置に設けること。(略)三 対象火気設備等を屋内に設ける場合にあつては、(略)総務省令で定める不燃性の床等の上に設けること。(略)五 対象火気設備等は、(略)その使用に際し、火災の発生のおそれのある部分について、不燃材料で造る等防火上有効な措置が講じられた構造とすること。
共通して求められるのは離隔距離と不燃化と維持管理です
第1号は建築物や可燃物までの距離、第3号は屋内に設ける場合の床の不燃化、第5号は火災の発生のおそれのある部分そのものの構造を挙げています。数字そのものは種類ごとに総務省令が決めるので、条例制定基準はあくまで骨格です。
このほか第5条には振動や衝撃で転倒しない構造、燃料タンクや配管からの漏れを防ぐ構造、そして必要な点検整備と周囲の整理清掃といった項目まで並んでいます。
現場で分かりやすいのは、可燃物が落下したりガスが滞留したりしない位置に置くことと、日常の整理清掃を怠らないことです。ここは条例の文言を読むより先に、現場を見て回るほうが早く不備に気づけます。
点検の記録を残しておけば、立入検査で管理状況を説明するときにも役立ちます。

離隔距離と不燃化と日常の点検、ということですね。

そのとおりです。
まずは自分の建物の対象火気設備等を一覧にして、この3つを確認してみてください

管理基準が市町村ごとに違うのはなぜか

同じ設備でも市町村ごとに異なる火災予防条例の基準が適用されることを示したイメージ
ここまでの基準は全国共通の骨格ですが、条例の中身は市町村ごとに変わることがあります。
政令自身がその余地を認めています。
第五条の五 市町村は、法第九条の規定に基づく条例を定める場合において、その地方の気候又は風土の特殊性により、第五条若しくは第五条の二又はこれらの規定に基づく総務省令に定める条例制定基準に従つて定められた条例の規定によつては火災の予防の目的を充分に達し難いと認めるときは、当該条例制定基準に従わないことができる
条例制定基準は全国一律の下限ではなく地域事情で動かせる枠です
第5条の5は、地方の気候や風土の特殊性を理由に、条例制定基準どおりでは火災予防の目的を十分に達成できないと市町村が判断した場合、その基準に従わないことを認めています。積雪や強風といった土地の条件を踏まえて、政令の想定より厳しい基準を条例に置く市町村があってもおかしくありません。
同じ種類の設備であっても、隣の市町村へ移せば条例の数字が変わる可能性があるということです。テキストや解説記事が示す数字は、あくまで政令や総務省令の骨格であって、自分の建物に適用される条例の数字そのものとは限りません。
新しく設備を導入するときや、他の地域で使われていた設計図をそのまま使うときは、この前提を忘れないようにしてください。

隣の市に行けば基準の数字が変わることもあるんですね。

地域の気候や風土によって、条例が政令の枠から外れることも認められています。

自分の建物の管理基準を確認するにはどうすればよいか

防火管理者が火災予防条例を確認しながら火元責任者に管理基準を伝える手順を示したイメージ
基準が市町村条例にある以上、確認の手順も条例から始まります。
加えて、特殊な設備を使う場合に備えた仕組みも政令に用意されています。
第五条の四 法第九条の規定に基づく条例には、対象火気設備等又は対象火気器具等について、消防長又は消防署長が、予想しない特殊の設備又は器具を用いることにより第五条若しくは第五条の二又はこれらの規定に基づく総務省令に定める条例制定基準に従つて定められた条例の規定による場合と同等以上の安全性を確保することができると認めるとき、その他(略)火災予防上支障がないと認めるときにおける当該条例の規定の適用の除外に関する規定を定めるものとする。
まず自分の建物がある市町村の火災予防条例を確認するところから始めます
条例には対象火気設備等や対象火気器具等の章があり、位置・構造・管理の基準がそこに具体的な数字で並んでいます。防火管理者はこの章を確認し、火元責任者や防火担当責任者に対して設備ごとの管理基準を周知してください。
第5条の4は、条例が定める基準どおりの設備でなくても、消防長又は消防署長が同等以上の安全性を確保できると認めれば適用を除外できる規定を条例に置くよう求めています。新しい方式の設備を導入したいときは、この適用除外の仕組みが使えるかを所轄の消防署に相談してみてください。
条例の条文は市町村の公式サイトで公開されていることが多く、対象火気設備等や火気管理といった見出しから探せます。
一覧表や配置図で対象火気設備等の設置場所を把握しておけば、条例の改正があったときにも確認の範囲を絞り込めます。

まずは自分の市町村の条例を確かめるところからですね。

そのとおりです。
対象火気設備等の一覧を作るところから始めてみてください

よくある質問

Q対象火気設備等と対象火気器具等はどう違うのですか
A消防法施行令第5条は炉やボイラーのように容易に移動できない設備を、第5条の2はこんろのように移動して使用できる器具を対象にしています。どちらも条例制定基準の枠に従って市町村条例が具体的な基準を定める点は共通です。
Q総務省令の内容まで確認する必要がありますか
A対象火気設備等の種類ごとの細かい数字は総務省令(平成14年総務省令第24号)に定められています。市町村条例はこの総務省令の枠をほぼそのまま取り込んでいることが多いので、まずは自分の市町村の条例から確認し、疑問が残れば所轄の消防署にご確認ください。
Q条例の基準を満たしていない古い設備を使い続けることはできますか
A既存設備の扱いは条例ごとの経過措置や適用除外の規定によって異なります。消防法施行令第5条の4は同等以上の安全性を認める場合の適用除外を条例に置くよう求めているので、個別の判断は所轄の消防署にご確認ください。
Q対象火気器具等にも同じような離隔距離の基準がありますか
Aあります。消防法施行令第5条の2第1項は、対象火気器具等についても建築物等及び可燃物との間に安全な距離を保つことを条例制定基準として挙げています。具体的な距離は設備と同様に総務省令や条例で種類ごとに定められています。

まとめ

炉やボイラーなどの位置・構造・管理の基準は消防法第9条により市町村条例で定められます
政令(施行令第5条・第5条の2)が条例制定基準の枠を列挙し総務省令が種類ごとの細部を定めます
対象火気設備等には離隔距離と不燃化と日常の点検整備が共通して求められます
対象火気器具等にも同じ構造の条例制定基準が施行令第5条の2に定められています
条例は市町村ごとに違ってよく気候や風土の特殊性により基準に従わないことも認められています
特殊な設備には消防長又は消防署長の判断による適用除外の仕組みがあります
自分の建物がある市町村の火災予防条例を確認しないと正しい基準は分かりません

消防法だけでなく、自分の市町村の条例まで見る必要があるとよく分かりました。

まずは対象火気設備等の一覧を作って、市町村の条例と照らし合わせてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法第9条
  • 消防法施行令第5条
  • 消防法施行令第5条の2
  • 消防法施行令第5条の4
  • 消防法施行令第5条の5
  • 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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オフィスや店舗の厨房やボイラー室には、炎や熱を扱う設備が必ずあります。 ところが、その位置や構造の具体的な基準を消防法の条文で探しても、数字や規格そのものは出てきません。 消防法第9条が、この基準を政令の枠組みに従って市...