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立入検査の指摘はいつまでに直せばよいのか|改修計画報告書の期限と違反処理へ移行する基準を解説

立入検査の指摘から違反処理へ移行する基準を解説するアイキャッチ画像

立入検査で不備を指摘されても、その場で命令が出るわけではありません。
消防法令が最初に用意している手続きは、期限を切って改修(計画)報告書を出させ、状況を確認するという行政指導です。
ところがこの報告書には提出期限があり、対応を誤ると指導のつもりでいたまま違反処理へ切り替わります。
指導と命令のあいだには、読者が気づかないまま踏み越えてしまう境界線があります

先日の立入検査で不備を指摘されました。
指導止まりなら、そこまで急がなくても大丈夫ですよね。

そこが誤解されやすいところです。
指導にも報告の期限があり、応じないと命令に進みます

期限はどこで決まるんですか。

消防法と消防庁のマニュアルに手順が定められています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 立入検査の指摘(通知書)は、消防法第4条に基づく行政指導であり、命令ではありません
  • 改修(計画)報告書の提出期限は、消防庁の運用ではおおむね2週間程度とされています
  • 期限内に報告がない場合や、期限までに是正が終わらない場合は違反処理へ移行します
  • 命令に進む根拠は消防法第5条、防火管理者に関するものは第8条第3項・第4項です
  • 口頭の指導だけで済ませず、行政手続法第35条に基づき書面の交付を求めることができます

立入検査の指摘から改修計画報告書の提出と違反処理への移行までの流れを示した図解

立入検査で指摘を受けたらまず何が起きるのか

立入検査結果通知書を交付し行政指導として改善を求める場面を示したイメージ
立入検査で不備が見つかると、消防機関はまず立入検査結果通知書を交付します。
この通知が、法律上どういう性質のものかを最初に押さえておく必要があります。
行政手続法第2条第6号 行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
通知書による指摘は行政指導であり、その場で法的な強制力は生じません
消防法第4条の立入検査で判明した不備は、まず改善を求める指導として伝えられます。行政指導は相手方の任意の協力を前提とするもので、これに従わないこと自体を理由に不利益な扱いを受けることはありません(行政手続法第32条)。
ただし任意だからといって放置してよいわけではなく、指導に応じなければ次の段階に進む仕組みになっています。
また、消防法令上の設置義務がない設備の指導によって関係者に損害が生じた場合は、国家賠償法に基づく責任が問題になることもあります。
まずは「これは命令ではなく指導である」という位置づけを正しく理解することが、次の対応を考える出発点になります。

命令ではないなら、従わなくても罰則にはならないんでしょうか。

その段階では罰則はありません。
ただし応じないままにしておくと命令に進みます。次の章で期限を見ていきましょう。

改修計画報告書はいつまでに出せばよいのか

改修計画報告書の提出期限をカレンダーで確認する場面を示したイメージ
指摘を受けたら、次にすることは改修(計画)報告書の提出です。
総務省消防庁の立入検査標準マニュアルは、この報告書の扱いを具体的に示しています。
  • 原則として、違反改修の履行義務者本人に報告させます
  • 報告の内容は「改修が完了した」という完了報告と、「これから改修する」という計画報告の2種類があります
  • 計画報告の場合は、改修予定期日と具体的な改修計画を記載します
  • 報告期限はおおむね2週間程度とされ、事案ごとに理由があれば必要最低限の範囲で延長できます
期限は原則としておおむね2週間で設定されます
この期限は法律に明記された数字ではなく、消防庁が全国の運用の目安として示しているものです。とはいえ現場の運用はこの目安に沿って動いているため、実務上はこれが基準になります。
報告は窓口や電子メール、電子申請システムなど文書で行うのが原則で、口頭だけで済ませたつもりでいると記録に残らず、後から「指導に応じていない」と評価されるおそれがあります。
指摘を受けたその日のうちに、報告の方法と期限をメモしておくことが最初の一歩になります。

その場で「直しておきます」と口約束しただけでは、報告したことにならないんですね。

そのとおりです。
文書で残すことが、指導に応じている証拠になります。

改修予定期日はどのように決めればよいのか

改修予定期日を記した工程表と報告書を並べた場面を示したイメージ
計画報告を出すとき、多くの担当者が迷うのが改修予定期日の決め方です。
ここにもマニュアルが示す考え方があります。
  • 改修予定期日は社会通念上可能と認められる最短の期限を定めるのが原則です
  • 「改修のための資金不足」や「改修する意思がある」というだけでは、期日を長期間先に設定する理由になりません
  • 工事業者への発注状況を示す見積書や発注書、長期間かかる場合は理由書などの提出を求められることがあります
  • 検査から改修完了までの経過は指導記録簿に記録され、防火対象物台帳と一体で管理されます
「資金がない」だけでは期日を延ばす理由になりません
消防機関は改修予定期日が妥当かどうかを、火災予防上の必要性と比較して判断します。理由もなく先延ばしにした計画は、そのまま受理されるとは限りません。
長期間の改修が本当に必要な場合は、その理由を明確にしたうえで、改修が終わるまでの安全担保措置を併せて示すことが求められます。
自分の建物の事情を説明するだけでなく、根拠になる資料をそろえてから報告書を書くと、やり直しの指導を受けにくくなります。

見積書まで求められるとは思っていませんでした。

すでに発注済みであることを示せると、報告書の説得力が変わります。

指導のままだと思っていたらどうなるのか

指導に応じない場合に警告書や命令書へ切り替わる分岐を示したイメージ
指導に応じないまま時間が過ぎると、対応は違反処理に切り替わります。
命令として何が命じられるのかは、消防法にはっきり書かれています。
消防法第5条第1項 消防長又は消防署長は、防火対象物の位置、構造、設備又は管理の状況について、火災の予防に危険であると認める場合(略)その他火災の予防上必要があると認める場合には、権原を有する関係者(略)に対し、当該防火対象物の改修、移転、除去、工事の停止又は中止その他の必要な措置をなすべきことを命ずることができる
指導から命令へ切り替わる基準は消防庁の通知で示されています
平成27年10月13日消防予第396号は、提出期限を過ぎても報告がない場合、報告書の不備を指導したのに期限までに応じない場合、履行期限までに是正が終わっていない場合、そして緊急性が高く直ちに対応が必要な場合に、違反処理へ移行するのが適切だとしています。
命令が出れば消防法第5条第3項により標識の設置と公示の対象になります。防火管理者が定められていない、又は消防計画どおりに業務が行われていないという指摘であれば、根拠は第8条第3項・第4項に移ります。命令の公示や罰則の詳しい扱いは、別記事「措置命令の標識・公示・防火戸の維持管理は?」で解説しています。
「指導だから急がなくてよい」という受け止め方が、この境界線を越えてしまう一番の原因です。

報告書を出しさえすれば、それだけで安心してよいんですか。

出すだけでは終わりません。
書いた改修予定期日までに終わらせないと、同じように移行します。

明日からなにをすればよいのか

指導記録簿に経過を記録しながら改善を確認する場面を示したイメージ
ここまでの手続きを踏まえると、現場で取るべき行動は絞られます。
まず、口頭の指導で終わらせないことです。
行政手続法第35条第3項 行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前二項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない
口頭の指導は、書面の交付を求めることができます
何を指摘され、いつまでに何をすればよいかを書面で残すことが、後々の行き違いを防ぐ一番の対策です。
そのうえで、①指摘内容と根拠法令を確認する、②改修(計画)報告書の提出方法と期限を確認する、③改修予定期日を社会通念上可能な最短の範囲で決める、④発注書や工程表など根拠資料を用意する、という順番で動くと、指導の段階で収束させやすくなります。
逆に、期限を決めないまま「そのうち直します」で終わらせることが、違反処理への移行を早める一番の落とし穴です。受け取った通知書の期限を、まず今日カレンダーに書き込んでください。

まずは期限をカレンダーに書くところから始めます。

それだけで違反処理への移行はかなり防げます。

よくある質問

通知書の受け取りを拒否したらどうなりますか

拒否そのものに罰則はありませんが、消防機関側は拒否された事実を記録に残します。
受け取らなかったことは指導に応じていない事情として扱われます。郵送で改めて交付される場合もあるので、受け取ってから内容を確認するほうが実務上は安全です。

改修計画報告書は口頭で伝えるだけでもよいですか

その場で即時に是正できた場合は口頭確認で済むこともありますが、時間のかかる改修は文書での報告が原則です。
窓口や電子メールなど記録に残る方法で提出してください

改修予定期日を先延ばしにする理由に資金不足は使えますか

単に資金が足りないという事情だけでは、期日を長期間先に設定する理由にはなりません。
社会通念上可能な最短の期限を示すことが原則で、やむを得ず長期化する場合は理由書や安全担保措置を併せて示す必要があります。

一度指導に従っていれば、命令にはならないと考えてよいですか

そうとは限りません。
火災予防上の緊急性が高い不備は、報告書の提出を待たずに違反処理へ移行することがあります階段への物件存置など火災の予防上猶予できない状態が典型例です。

まとめ

立入検査の指摘(通知書)は消防法第4条に基づく行政指導で、命令ではありません
改修(計画)報告書の提出期限は、消防庁の運用でおおむね2週間程度です
改修予定期日は社会通念上可能な最短の期限で定めるのが原則です
資金不足や改修意思の表明だけでは、期日を長期化する理由になりません
期限内に報告がない、又は指導に応じないと違反処理へ移行します
防火管理者に関する命令の根拠は消防法第8条第3項・第4項です
口頭の指導は行政手続法第35条に基づき書面の交付を求められます

指導と命令のあいだに、こんなにはっきりした境目があるとは思っていませんでした。
今日、期限をカレンダーに入れます。

期限の管理、文書での報告、根拠資料の用意。
この3つを押さえれば指導の段階で収束させられます
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法第4条
  • 消防法第5条
  • 消防法第8条第3項・第4項
  • 行政手続法第2条第6号・第32条・第35条
  • 総務省消防庁「立入検査標準マニュアル」
  • 消防予第396号(平成27年10月13日)
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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