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有料老人ホームが(6)項ロと(6)項ハに分かれるのはなぜか|要介護度で変わるスプリンクラー設置基準を解説

有料老人ホームが(6)項ロと(6)項ハに分かれる基準を解説するアイキャッチ画像

有料老人ホームや小規模多機能型居宅介護事業所は、同じような建物、同じようなサービスでも、消防法上は令別表第一(6)項ロと(6)項ハという別々の区分に分かれます。
この区分がどちらになるかで、スプリンクラー設備や自動火災報知設備の設置義務が大きく変わり、面積に関わらず全部設置が求められることもあります。
しかも区分を分けるのは建物の構造ではなく、入居者や利用者の要介護度の構成という、日々変化しうるものです。
この記事では、消防法施行令・施行規則の条文と消防局の公表資料をもとに、(6)項ロと(6)項ハを分ける基準と、見落としやすい落とし穴を解説します。

うちの有料老人ホーム、最近入居される方の要介護度が上がってきた気がするんです。
設備とか、何か変わったりするんでしょうか。

実はそこ、消防法上とても大事なポイントなんです。
入居者の要介護度によって、建物の用途区分そのものが変わることがあります。

用途区分が変わるなんて、そんな急に言われても困ります。
今のままじゃダメということですか。

いきなりではありませんが、気づかないまま基準に近づいていることはあります。
今日は(6)項ロと(6)項ハの分かれ方を一緒に確認しましょう。

この記事の結論
  • 有料老人ホーム等は、避難が困難な要介護者(要介護3以上)を主として入居させるかどうかで(6)項ロと(6)項ハに分かれます
  • (6)項ロ(1)に該当すると、面積に関わらずスプリンクラー設備と自動火災報知設備の設置が必要になります
  • 要介護3以上の入居者が施設全体の定員の半数以上になると(6)項ロ相当の扱いになります
  • 「お泊りデイサービス」など宿泊を伴うサービスも、宿泊者に占める避難が困難な要介護者の割合で同様の判定を受けます
  • 判定は固定ではなく、入居者・利用者の状態が変われば区分も変わりうるため、定期的な確認が必要です

有料老人ホームの入居者構成が(6)項ロと(6)項ハを分ける基準を示した図解

有料老人ホームの用途区分はなぜロとハに分かれるのか

似た二つの高齢者施設の建物の前で車椅子の入居者と杖で歩く入居者を並べて用途区分の分かれ目を示したイメージ
有料老人ホームや軽費老人ホーム、小規模多機能型居宅介護事業所は、外から見ればどれも同じような施設です。
ところが消防法上は、令別表第一(6)項ロと(6)項ハという別の区分に分かれます。
消防法施行令別表第一(6)項ロ(1) 老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム(避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る。)、有料老人ホーム(避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る。)、介護老人保健施設(略)
同項ハ(1) 老人デイサービスセンター、軽費老人ホーム(ロ(1)に掲げるものを除く。)、老人福祉センター、老人介護支援センター、有料老人ホーム(ロ(1)に掲げるものを除く。)(略)
建物ではなく入居者の状態で区分が決まります
条文の(6)項ロ(1)と(6)項ハ(1)を見比べると、有料老人ホームと軽費老人ホームは両方に登場します。
分かれ目になっているのは、避難が困難な要介護者を主として入居させているかどうかです。
ただし特別養護老人ホームや介護老人保健施設、認知症対応型グループホームは、要介護度にかかわらず条文上もともと(6)項ロ(1)に固定されています。
要介護度によって区分が動くのは、軽費老人ホーム・有料老人ホーム・小規模多機能型居宅介護(宿泊)の三つです。
この記事では、判定に幅がある有料老人ホームを中心に見ていきます。

うちは有料老人ホームですが、区分がロかハかなんて考えたこともありませんでした。
どちらも同じ許可を取っているのに、なぜ分かれるんですか。

介護保険法上の指定と消防法上の区分は別の話なんです。
次は、区分を分ける「避難が困難な要介護者」がどこからを指すのか見ていきましょう。

避難が困難な要介護者とはどの要介護度を指すのか

介助者がベッドから車椅子へ移乗させる高齢者の様子で避難が困難な要介護者を示したイメージ
「避難が困難な要介護者」という言葉は、条文の中でさらに総務省令へ委任されています。
たどっていくと、要介護認定の区分にたどり着きます。
消防法施行規則第5条第5項 令別表第一(6)項ロ(1)の総務省令で定める区分は、要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令第1条第1項第3号から第5号までに掲げる区分とする。
避難が困難な要介護者とは要介護3以上の人を指します
委任先の省令の第1条第1項は要介護状態区分を要介護一から五まで定めており、そのうち第3号から第5号まで、つまり要介護3・要介護4・要介護5が該当します。
要介護1や要介護2の人がどれだけ多くても、この区分には含まれません。
そして「主として入居させる」かどうかは、施設に実際に入居している要介護3以上の人の割合で判断されます。各地の消防局が公表している資料では、施設全体の定員の半数以上であることを目安とする運用が示されています。
つまり要介護度の重い人が増えるほど、(6)項ロに近づいていく仕組みです。

要介護3以上の人が半分を超えたら、区分が変わるかもしれないということですか。

そのとおりです。
入居者の要介護度は日々の更新で変わるので、定期的な集計が欠かせません。

(6)項ロになるとスプリンクラー設備はどう変わるのか

廊下の天井にスプリンクラーヘッドと火災報知設備と消火器を並べて設置義務を示したイメージ
(6)項ロ(1)に該当すると、消防用設備等の設置義務が大きく変わります。
特にスプリンクラー設備は、面積の小さい施設にとって重い負担になります。
消防法施行令第12条第1項第1号ロ スプリンクラー設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。(略)別表第一(6)項ロ(1)及び(3)に掲げる防火対象物
(6)項ロ(1)は延べ面積に関わらずスプリンクラー設備が全部必要です
一般的な用途では延べ面積が数千平方メートル以上にならないと出てこないスプリンクラー設備が、(6)項ロ(1)では面積の下限なしで義務になります。
自動火災報知設備も同じ扱いで、消防法施行令第21条第1項第1号イが(6)項ロを規模にかかわらず設置する対象に挙げています。
(6)項ハに区分される場合は、スプリンクラー設備の設置義務は原則として生じません。自動火災報知設備も、入居や宿泊を伴わない通所のみの施設であれば延べ面積300平方メートル以上からの義務にとどまります。
つまりロとハの違いは、設備費用に直結する差になります。

面積が小さくても全部設置となると、費用がかなり変わってきますね。

はい。
だからこそ、次の落とし穴を知っておく必要があります。

お泊りデイサービスは知らないうちに設備義務を負っていないか

デイサービスの椅子と机の脇に畳んだ布団を積んだ様子でお泊りデイサービスの実態を示したイメージ
通所介護(デイサービス)の施設が、利用者や家族の希望で夜間も預かる「お泊りデイサービス」を行っていることがあります。
これも(6)項ロ相当の設備義務につながることがあります。
  • 月に5日以上の宿泊サービスを提供している
  • 実態として1泊あたり2名以上の要介護者(要介護状態区分1以上)が宿泊することがある
  • 宿泊サービスを利用する避難が困難な要介護者(要介護3以上)の数が、宿泊者数の半数以上となることがある
上の三つすべてに当てはまると設備義務が生じます
これは福岡市が高齢者福祉施設の事業者向けに公表している資料に示された確認方法で、要件に当てはまれば面積や収容人員にかかわらず消火器・スプリンクラー設備・自動火災報知設備・消防機関へ通報する火災報知設備が必要になるとされています。
三つのうち一つでも外れる場合でも、過去1年間で最も宿泊人数が多かった連続3か月間の実績をもとに、延べ宿泊者数のうち避難が困難な要介護者が半数以上かどうかで改めて判定されます。
「デイサービスとして指定を受けているから設備は今のままでよい」という思い込みが、この落とし穴の正体です。
宿泊の受け入れ実績は、介護保険上の指定の種類とは別に、消防上の区分を動かします。

うちのデイサービスも、家族の希望でたまに1泊お預かりすることがあります。
これも数えないといけないんですか。

はい、実態で判断されます。
宿泊の頻度と人数と要介護度を記録に残しておくと、判定のときに困りません。

明日から何を確認すればよいか

受付でクリップボードを手に電話をかける職員の様子で消防署への確認を示したイメージ
用途区分は一度決まったら固定されるものではありません。
入居者や利用者の状態が変われば、区分も追いかけて変わります。
  • 入居者・利用者のうち要介護3以上の人数と割合を定期的に集計する
  • 宿泊サービスを行っている場合は、頻度・人数・要介護度を記録に残しておく
  • 割合が半数に近づいてきたら、早めに所轄消防署へ相談する
用途区分の確認は一度きりで終わりません
介護保険の更新のたびに要介護度は変わり、施設全体の構成も少しずつ動きます。
半年に一度など、決まったタイミングで入居者名簿を見直す仕組みを作っておくと安心です。
区分が(6)項ロに近づいていると分かれば、スプリンクラー設備の設置スペースや配管ルートを先に検討しておくことができます。
判定そのものは所轄消防署が行うものなので、迷ったら早い段階で相談してください。

入居者名簿を定期的に見直すだけでも、備えになるんですね。

そのとおりです。
気づいた時点で消防署に相談しておけば、設備を後から慌てて入れることになりません。

よくある質問

Q有料老人ホームが(6)項ロになると、すでに建っている建物でも設備を追加しなければなりませんか?
Aはい。老人福祉施設等が含まれる令別表第一(6)項は特定防火対象物にあたり、消防法施行令第34条の4第2項でそう定められています。消防法第17条の2の5第2項第4号により、特定防火対象物は既存の建物でも新しい基準がそのまま適用されます。区分が(6)項ロに変わった時点で、スプリンクラー設備などの設置が必要になります。
Q要介護3以上の入居者が一時的に半数を超えただけでも区分は変わりますか?
A「主として入居させる」かどうかは実態で見られるもので、一時的な増減だけで直ちに切り替わるとは限りません。ただし継続的に半数以上の状態が続くと、(6)項ロ相当と判断される可能性が高まります。具体的な判定は所轄消防署が個別に行うため、状態が続きそうな場合は早めに相談してください。
Q小規模多機能型居宅介護事業所で宿泊を行っていない場合はどうなりますか?
A宿泊サービスを提供していなければ、お泊りデイサービスに関する判定基準はそもそも当てはまりません。令別表第一(6)項ハ(1)の通所のみの施設として扱われ、自動火災報知設備も延べ面積300平方メートル以上からの設置義務にとどまります。
Q認知症対応型グループホームも要介護度によって区分が変わりますか?
Aいいえ。令別表第一(6)項ロ(1)は認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設を要介護度の条件なしに挙げています。区分が要介護度によって動くのは軽費老人ホーム・有料老人ホーム・小規模多機能型居宅介護(宿泊)の三つで、グループホームや特別養護老人ホームはもともと(6)項ロ(1)に固定されています。

まとめ

有料老人ホーム等は避難が困難な要介護者(要介護3以上)を主として入居させるかどうかで(6)項ロと(6)項ハに分かれます
要介護度で区分が動くのは軽費老人ホーム・有料老人ホーム・小規模多機能型居宅介護(宿泊)の三つです
グループホームや特別養護老人ホームは要介護度にかかわらず(6)項ロ(1)に固定されています
(6)項ロ(1)に該当すると面積に関わらずスプリンクラー設備と自動火災報知設備が必要になります
要介護3以上の入居者が施設全体の定員の半数以上になると(6)項ロ相当の扱いになります
「お泊りデイサービス」も宿泊者に占める避難が困難な要介護者の割合で同様の判定を受けます
(6)項は特定防火対象物にあたり、既存の建物でも新しい基準が遡及適用されます

要介護度の構成が用途区分を左右すると分かって整理できました。
まずは入居者名簿を見直してみます。

要介護度の集計、宿泊実績の記録、そして早めの消防署への相談。
この3つを押さえておけば急な用途区分の変更にも慌てずに済みます
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法第17条の2の5
  • 消防法施行令別表第一(6)項ロ・ハ
  • 消防法施行令第12条
  • 消防法施行令第21条
  • 消防法施行令第34条の4
  • 消防法施行規則第5条
  • 要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令第1条
  • 福岡市保健福祉局高齢者サービス支援課「高齢者福祉施設の事業者の方へ 消防法令の改正について」
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※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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