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飲食店や遊技場は避難にかかる時間を測っておくのか|火災予防条例が定める避難に必要な時間の算定を解説

飲食店の通路の先に出入口が見える店内の写真に飲食店や遊技場は避難にかかる時間を測っておくのかという記事タイトルを重ねたアイキャッチ画像

飲食店や遊技場や百貨店は、火災のときにお客さんが一斉に出口へ向かいます。
消防訓練で避難完了の号令はかけても、そこまでに何分かかったかを残している建物はあまり多くありません。
ところが市町村の火災予防条例には、避難に必要な時間を算定してその結果を活かすようにという条が置かれています。
努力義務という書き方をされたこの条について、誰がなにを求められているのかを条文のまま確かめておきます

うちは居酒屋を2階でやっています。
訓練はしていますが避難に何分かかるかまでは考えたことがありません。

火災予防条例に避難に必要な時間を算定するという条があります。
お店がある階の関係者が対象になります。

時間を測るだけでよいのでしょうか。

条文は算定してその結果の活用に努めるところまで書いています。
まずは誰がなにを求められているのかから押さえてください。

この記事の結論
  • 避難に必要な時間の算定は消防法ではなく市町村の火災予防条例に置かれています
  • 東京都火災予防条例では第53条の3がその条にあたります
  • 対象は飲食店や遊技場や百貨店などの店舗等が存する階の関係者です
  • 訓練その他避難に必要な管理に際して算定しその結果の活用に努めます
  • 算定は努力義務ですが避難施設を有効に管理することは義務です

飲食店や遊技場で避難に必要な時間を算定する流れとしてその階を見ることと人と出口を数えることと訓練で測ることと結果を活かすことを示した図解

避難に必要な時間を算定するとはどういうことか

左に出入口のある店舗の建物中央に列になって出ていく3人右に大きなストップウォッチが並んでいる
消防訓練は年に何回やったかで数えられがちです。
条例はそこから一歩進んだことを求めています。
消防法第8条第1項 (略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、(略)当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、(略)並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
法律は訓練をするところまでしか書いていません
その訓練で何を確かめるのかという中身は、市町村の火災予防条例が受け持っています。
東京都火災予防条例では第六章の避難及び防火の管理等という章に不特定の者が出入りする店舗等の避難の管理という条が置かれています。
その条は、訓練その他避難に必要な管理に際して避難に必要な時間を算定し、その結果の活用に努めなさいという書き方になっています。
つまり避難訓練は終わったかどうかではなく、どれだけの時間がかかるのかを掴むための機会でもあるということです。
東京都火災予防条例第五十三条の三 不特定の者が出入りする店舗等(略)が存する階の関係者は、訓練その他避難に必要な管理に際し、当該不特定の者が出入りする店舗等が存する階の位置、構造、設備、収容人員、使用形態、避難施設の配置等の状況から予測される避難に必要な時間を算定し、その結果の活用に努めなければならない

訓練のついでに測っておけばよいということですね。

条文が訓練その他と書いているのでそのとおりです。
測った結果を次の手順に活かすところまでが求めになります。

どんな店がこの決まりの対象になるのか

飲食店と遊技場と物品販売店とホテルの4つの建物が横一列に並んでいる
条文は用途を名指しで並べています。
自分の店が入っているかどうかは一つずつ照らして確かめます。
東京都火災予防条例第五十三条の三 不特定の者が出入りする店舗等(劇場等、性風俗関連特殊営業(略)その他これらに類する営業を営む店舗(略)、キャバレー等、遊技場、料理店、飲食店、ディスコ等、個室型店舗(カラオケボックスを除く。)、百貨店等、旅館等又はサウナ浴場その他これらに類するものをいう。以下同じ。)が存する階の関係者は、(略)
不特定の人が出入りする店がまとめて並べられています
料理店や飲食店も遊技場も百貨店等も旅館等もサウナ浴場も、この条の対象に入っています。
おもしろいのは個室型店舗の書き方で、括弧の中でカラオケボックスだけがわざわざ除かれています。
つまり同じ個室の店でも、条文の上ではこの条の対象になるものとならないものが分かれるということです。
自分の店の用途を思い込みで当てはめず、条文の並びを一つずつ読み下してください。

カラオケボックスが除かれているのは意外でした。

括弧の中の除くという言葉は読み飛ばしやすいところです。
条例は自分の市町村のものを開いて確かめてください。

避難に必要な時間は何を見て算定するのか

左に人が散らばる客席の床と開いた戸中央に踊り場へ上がる階段右に点検表を持つ人が並んでいる
条文は算定のやり方までは書いていません。
そのかわり何を見るのかは正面から並べています。
東京都火災予防条例第五十三条の三 (略)当該不特定の者が出入りする店舗等が存する階の位置、構造、設備、収容人員、使用形態、避難施設の配置等の状況から予測される避難に必要な時間を算定し、その結果の活用に努めなければならない。
条文には6つの言葉が並んでいます
位置と構造と設備と収容人員と使用形態と避難施設の配置で、最後に等が付いているのでこれで全部というわけではありません。
位置はその階が地上何階なのか地階なのかという話で、階段までの距離が変われば時間も変わります。
使用形態が入っているのが実務では大きく、団体客が多い店と一人客が多い店では出口へ向かう動き方が違います。
まずは自分の階について、この並びを一行ずつ埋める形でメモを作ってみてください。

使用形態まで見るというのは考えていませんでした。

同じ広さでも使い方で避難のしかたは変わります。
宴会の日と通常の日を分けて考えておくと役に立ちます。

義務を負うのは建物の持ち主だけなのか

左に階が重なった建物のうち真ん中の階だけ色を変えたもの右に並んで立つ2人がある
この条でいちばん読み落とされるのは主語の部分です。
建物ではなく階を単位にしていることに気づいてください。
消防法第2条第4項 関係者とは、防火対象物又は消防対象物の所有者、管理者又は占有者をいう
条文は店舗等が存する階の関係者はと書いています
建物全体の所有者だけを名指ししているのではありません。
関係者は消防法で所有者、管理者又は占有者と決められていますから、テナントとして入っている店もここに含まれます。
雑居ビルの3階だけで飲食店をやっているなら、その3階について算定に努める立場になるという読み方です。
ビルのオーナーがやってくれるはずと考えず、自分の階の避難のことは自分で掴んでおいてください。

テナントの自分も関係者に入るということですね。

占有者と書かれている以上そう読むのが自然です。
ビル全体の防火管理者とも情報を分け合ってください。

明日からなにをすればよいのか

左に記録簿を広げた台中央にストップウォッチを持つ人右に何も置かれていない通路と出口が並んでいる
算定のためだけに別の行事を作る必要はありません。
もともと義務になっている訓練の日に測ればよいだけです。
消防法施行規則第3条第10項 令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(16)項イ又は(16の2)項に掲げる防火対象物の防火管理者は、令第三条の二第二項の消火訓練及び避難訓練を年二回以上実施しなければならない
同条第11項 前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない
飲食店や遊技場は年2回以上の訓練が義務の側に入っています
その日にストップウォッチを一つ用意して、最後の一人が出口を出るまでを測ってください。
測るのは階ごとです。フロアが分かれているなら階ごとの記録にしておくと条文の作りと合います。
測った時間と、そのとき客席にいた人数と、使った出口を一枚の紙に残して消防計画の自主検査表に綴じておきます。
次の訓練で時間が延びていたら、通路に物が増えたのか出口の使い方が変わったのかを疑う材料になります。

次の訓練からストップウォッチを持っていきます。

一度でも数字が残ると次から比べられます。
訓練の前に消防機関へ通報することも忘れないでください。

よくある質問

Qカラオケボックスはこの条の対象になりますか?
A東京都火災予防条例第53条の3は個室型店舗からカラオケボックスを除くと書いています。ただし避難施設を有効に管理する条は令別表第一に掲げる防火対象物の関係者を対象にしていますので、通路や戸をふさがない管理はどの店にも求められます。
Q避難に必要な時間はどうやって算定すればよいのですか?
A条文は算定の方法までは定めていません。書かれているのは位置や構造や収容人員などの状況から予測するということだけですので、どこまでの精度で求めるのかは所轄消防署にご確認ください。
Q努力義務なら何もしなくてもよいということですか?
A条文の書き方が分かれています。算定については努めなければならないと書かれていますが、同じ章にある避難施設の管理は有効に管理しなければならないと書かれた義務です。二つを混ぜて考えないでください。
Qこの決まりは全国どこでも同じ内容ですか?
A同じとは限りません。火災予防条例は市町村ごとに定めるものですので、条番号も対象の並べ方も自治体によって異なります。この記事で引いたのは東京都火災予防条例ですから、必ず自分の建物がある市町村の条例を確かめてください。

まとめ

避難に必要な時間の算定は市町村の火災予防条例に置かれています
東京都火災予防条例では第53条の3がその条にあたります
対象は飲食店や遊技場や百貨店等や旅館等やサウナ浴場などです
個室型店舗のうちカラオケボックスは括弧の中で除かれています
主語は建物ではなく店舗等が存する階の関係者になっています
見るのは位置と構造と設備と収容人員と使用形態と避難施設の配置等です
年2回以上の訓練の日に測って記録に残すのが現実的です

次の訓練で避難に必要な時間を測って記録に残します。
これなら今の体制のままでも始められます。

その一枚が次の年の比べる材料になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第4項・第8条第1項
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第10項・第11項
  • 東京都火災予防条例(昭和37年東京都条例第65号)第53条の3・第54条
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)
  • 東京都例規集データベース

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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