防犯を考えて窓を 合わせガラスに替える建物が増えています。
割れにくいことは防犯には利点ですが 消防にとっては外から入れない窓になりかねません。
無窓階かどうかは窓を破って入れるかどうかで決まるので ガラスを替えた時点で階の扱いが動くことがあります。
消防庁は平成19年3月の通知で 合わせガラスの破壊試験ガイドラインと開口部の扱いを示しています。
防犯のために事務所の窓を全部 割れにくいガラスに替えました。
消防用設備の話とは関係ないですよね。
そこが関係してきます。
外から破壊して進入できるかで その階の扱いが変わるからです。
窓の数も大きさも替える前と同じなのに 扱いが変わることがあるのですか。
ガラスの中身までは見ていませんでした。
中身まで見る決まりになっています。
消防庁が破壊試験のガイドラインを作って 判断の物差しを示しました。
- 合わせガラスの窓であっても避難上又は消火活動上有効な開口部として扱える場合があります。
- 判断の物差しは平成19年3月27日付けの消防予第111号が定めた破壊試験ガイドラインです。
- 通知が名前を挙げた構成の合わせガラスは破壊試験に合格するものとみなされます。
- 外にバルコニーや屋上広場等の足場があるかどうかで 認められる構成が変わります。
- はめ殺し窓は開口部として取り扱わないと通知がはっきり書いています。
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目次
防犯のために入れた合わせガラスがなぜ通知の対象になったのか

それでも消防の見方が変わるのは 窓に求めている役目が防犯とは逆向きだからです。
防犯の側は外から割って入られないことを求め 消防の側は外から破って入れることを求めます。
合わせガラスは2枚以上のガラスのあいだに樹脂の中間膜をはさんで全面を接着したもので 割れても破片の大部分が飛び散らないようにしてあります。
つまり打撃を加えても穴が開きにくいという性質そのものが 消防にとっては困る性質になります。
そこで消防庁は現場ごとの勘に任せず 破って入れるかどうかを測る手順を国として決めました。
なお通知が引いている規則第5条の2は 現在の規則では第5条の5にあたります。
防犯を強くしたつもりが 消防では不利に働くこともあるのですね。
そんな見方をしたことがありませんでした。
不利と決まったわけではありません。
通知は認められる構成まで書いているので まず自分の窓を照らし合わせてください。
どの窓のどの合わせガラスが対象になるのか

適用の範囲が最初にはっきり区切られています。
ガイドラインが見ているのは引き違い窓等として使われている合わせガラスで はめ殺し窓は最初から開口部に数えません。
通知はさらに クレセント錠か補助錠を合わせて2以下 解錠すれば開けられる窓を取扱いの対象にしています。
引き違い窓のうち一部を割って外から開けられる部分は 規則第5条の5に規定する開口部として扱われます。
つまり窓の面積を測る前に その窓が動く窓かどうかを見分けるところから始まります。
会議室の大きな窓は はめ込みで開かないタイプです。
あれは面積が大きくても数に入らないということですね。
合わせガラスのはめ殺し窓であればそのとおりです。
図面の建具表で引き違いかどうかを先に拾ってください。
破壊試験ガイドラインは何をもって合格としているのか

合格の線は感覚ではなく寸法と時間で決めてあります。
一次破壊試験では おの刃と鋸状刃とピッケルと柄からなる質量約2.7kgの破壊器具を振子式に自由落下させ ガラスに当てます。
このとき保持する高さは70cmで 外に破壊作業のできる足場がある窓に限って180cmまで上げられます。
二次破壊試験は試験員が同じ器具を手に持って行い 60秒以内に15cm×15cm以上の穴を開けられるかを見ます。
供試体の寸法は高さ1,930mm×幅864mmと決まっていて 打撃の位置もクレセントの想定位置から水平125mmと指定されています。
合格の線が数値で書いてあるので 同じガラスなら誰が判断しても同じ結果になります。
うちの窓を1枚ずつ試験に出さないといけないのでしょうか。
とてもそんな手間はかけられません。
その必要はありません。
通知が名前を挙げた構成なら合格したものとみなすと書いてあります。
実務で見落としやすいのはどこか

その一覧が2組に分かれているところが見落とされます。
中間膜が薄い組み合わせは足場がなくても認められますが 中間膜が厚い組み合わせはバルコニーや屋上広場等の足場がある窓に限られます。
一次破壊試験で保持する高さが70cmと180cmに分かれていたのは この差に対応しています。
同じ建物でもバルコニーの付いた面と付いていない面で結論が変わりうるので 面ごとに見る必要があります。
またクレセントやレバーハンドル自体が鍵付きになっている特殊なものは ガイドラインを適用せず個別に判断すると通知が書いています。
一覧に載っていない構成のガラスは 自動的に不合格ということではなく試験をしていないという状態なので 所轄消防署への確認が要ります。
つまり同じガラスでも 窓の外にバルコニーがあるかどうかで答えが変わるのですね。
建物ごとにひとまとめで考えていました。
そこが一番の落とし穴です。
建物単位ではなく窓単位で表にしておくと後の説明が楽になります。
明日からなにを確認すればよいのか

手がかりはガラスそのものに貼られています。
まず建具表から引き違い窓とはめ殺し窓を分け はめ殺し窓は開口部の勘定から外します。
次に残った引き違い窓について ガラスの構成が分かる書類を工事業者から取り寄せます。
現地では窓の隅に貼られた識別のシールを見れば 合わせガラスかどうかの当たりが付きます。
そのうえで外にバルコニーや屋上広場等の足場がある面とない面を分けて 通知の第2の一覧と照らし合わせます。
ガラスを替える工事の前に相談すれば 設備の追加が要るかどうかを先に把握できます。
工事の見積書にガラスの品番が書いてありました。
あれを持って行けば話が早そうです。
それが一番の近道です。
板厚と中間膜の厚さが分かれば通知の一覧と突き合わせられます。
よくある質問
まとめ
引き違いとはめ殺しを分けた窓の一覧表を今週中に作ります。
面ごとにバルコニーの有無も書き込んでおきます。
その一覧表があれば協議が一度で済みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 合わせガラスに係る破壊試験ガイドラインの策定及び無窓階の判定等運用上の留意事項について(通知)(平成19年3月27日 消防予第111号 消防庁予防課長)
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(平成23年12月28日 事務連絡 消防庁予防課)問2
- 消防法施行規則第5条の5(避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階)
- 消防法施行令第10条第1項第5号(無窓階の定義)
- 消防用設備等に係る執務資料の送付について(平成14年9月30日 消防予第281号)第5の問19(平成19年消防予第111号により廃止)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





