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防災管理者を定めていないと消防はなにを命じるのか|選任命令と是正命令に付く標識と罰則を解説

防災管理者を定めていないと消防はなにを命じるのか

防災管理者を選任していない建物に、消防がいきなり罰を科すわけではありません。
先に来るのは命令です。
消防法第36条第1項は、防火管理の規定をそのまま防災管理へ読み替えて準用しています。
その中には防災管理者を定めるべきことを命ずる規定と業務の是正を命ずる規定が両方入っています

うちのビルはまだ防災管理者を決められていません。
ある日いきなり罰金になるのかと気が気ではないです。

条文の順番では先に命令が来ます。
消防法第36条第1項が防火管理の規定を読み替えて準用しているところです。

その命令は誰のところへ届くのでしょうか。
現場の担当者が呼ばれるのですか。

届く先は管理権原者です。
どんな場面でなにを求められるのかを順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法第36条第1項は同法第8条から第8条の2の3までを防災管理に読み替えて準用しています
  • 防災管理者が定められていないと認められたときは選任命令が出ます(同法第8条第3項)。
  • 業務が法令や消防計画に従っていないと認められたときは是正命令が出ます(同法第8条第4項)。
  • どちらの命令も名宛人は管理権原者で、防災管理者本人ではありません。
  • 命令を出したときは標識の設置その他の方法で公示されます(同法第8条第5項)。

防災管理者をめぐる選任命令と是正命令の違いを示す図解

防災管理者を定めていないと消防はなにを命じるのか

消防の庁舎から建物へ命令の書面が渡されるイメージ
防災管理は防火管理とは別の制度ですが、条文は一から書き直されていません。
消防法第36条第1項が防火管理の規定を読み替えて使う形になっています。
消防法第36条第1項 第八条から第八条の二の三までの規定は、火災以外の災害で政令で定めるものによる被害の軽減のため特に必要がある建築物その他の工作物として政令で定めるものについて準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。(略) 消防法第8条第3項 消防長又は消防署長は、第一項の防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により防火管理者を定めるべきことを命ずることができる
読み替えによって命令の規定も生きます
読替表は第8条第2項及び第3項の防火管理者防災管理者と読み替えると定めています。
つまり防災管理者が定められていないと認められたときは、消防長又は消防署長が定めるべきことを命ずることができます。
選任そのものをしていない状態と、選任はしたが届出をしていない状態は、条文の上では別々に扱われます。
まずは自分の建物の選任届の控えが手元にあるかどうかを確かめてみてください。

防災管理のところに命令の条文が見当たらないと思っていました。
読替表の側にあったのですね。

防災管理の条文は読替表とセットで読む決まりです。
第36条第1項の表を一度印刷して手元に置いておくと早く引けます。

この命令はどの建物の誰に届くのか

建物の前で管理権原者が命令の書面を受け取るイメージ
命令の相手は建物そのものではありません。
条文は届く先をはっきり書き分けています。
消防法施行令第46条 法第三十六条第一項の政令で定める建築物その他の工作物は、第四条の二の四の防火対象物とする。 消防法第8条第1項 (略)多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め(略)防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
命令は管理権原者に届きます
第8条第3項も第4項も名宛人を「同項の権原を有する者」と書いており、防災管理者本人ではありません。
対象になる建物は令第46条が令第4条の2の4の防火対象物としています。
地階を除く階数が11以上で延べ面積1万平方メートル以上といった規模の建物で、自衛消防組織の設置義務がかかる範囲と重なります。
テナントが入る建物なら、自分の権原がどこまで及ぶのかを図面の上で線引きしておいてください。

選ばれた本人が責められるのだと思い込んでいました。
受け取るのはオーナー側なのですね。

選任するのも届け出るのも管理権原者の義務です。
権原の範囲は契約書と図面の両方で確かめておくと後で揉めません。

業務が消防計画どおりでないときはなにを命じられるのか

開いた消防計画のバインダーと点検に来た職員と是正命令の書面のイメージ
防災管理者を選任すればそれで終わりではありません。
条文はもう一つ先の場面にも命令を用意しています。
消防法第8条第4項 消防長又は消防署長は、第一項の規定により同項の防火対象物について同項の防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる
比べる相手は自分が届け出た消防計画です
条文は「法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていない」と書いており、法令だけを見ているのではありません。
読替表ではこの第4項の防火管理上防災管理上に置き換わります。
消防法施行規則第51条の8第3項は避難訓練を年1回以上実施しなければならないと定めているので、計画に書いた訓練を実施していない状態はここに当たり得ます。
届け出た計画の写しを開いて、書いてあるとおりに動けているかを一つずつ照らし合わせてみてください。

自分で書いた計画が物差しになるとは思いませんでした。
盛り込みすぎるのも考えものですね。

実際に回せる中身にしておくのが一番の備えです。
回せなくなったら変更の届出を出して計画のほうを直してください。

命令を受けた建物にはなにが掲げられるのか

建物の壁の標識を外そうとする手に禁止マークが付いたイメージ
命令は当事者だけの話では終わりません。
外から見えるところにも出ることになっています。
消防法第8条第5項 第五条第三項及び第四項の規定は、前二項の規定による命令について準用する。 消防法第5条第3項 消防長又は消防署長は、第一項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。 消防法第5条第4項 (略)同項の規定による命令に係る防火対象物又は当該防火対象物のある場所の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない
命令が出ると建物に標識が立ちます
公示の方法は消防法施行規則第1条が公報への掲載その他市町村長が定める方法としており、同条は第8条第5項を第36条第1項において準用する場合を含むと明記しています。
標識の設置を拒んだり妨げたりしてはならないとも書かれているので、掲げられたものを外すことはできません。
命令に従わなかったときの罰は、選任命令の違反が六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金(法第42条第1項第一号)、是正命令の違反が一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金(法第41条第1項第二号)で、是正命令の側が重くなっています。
どちらの号にも「第三十六条第一項において準用する場合を含む」と書かれているので、防災管理の側でもそのまま働きます。

選任していないより計画どおりに動いていないほうが重いのですね。
そこは逆だと思い込んでいました。

選任は入口で、動かすところが本体だからです。
標識が立つと利用者の目にも触れるので信用の面でも痛手になります。

明日からなにを確かめればよいのか

届出書の控えとチェックリストとバインダーの棚を確かめるイメージ
命令が出る前に自分で確かめられることがあります。
順番を決めておくと迷いません。
消防法第8条第2項 前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。 消防法施行令第48条第1項 防災管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防災管理対象物についての防災管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない
確かめる順番は三つです
一つ目は選任届の控えで、防災管理者の氏名と届出の日付が残っているかを見ます。
二つ目は届け出た消防計画の写しで、訓練の回数や自主検査の周期が実際の運用と合っているかを見ます。
三つ目は法人としての備えで、命令違反の罰則は消防法第45条第三号により法人にも各本条の罰金刑が科されます。
届出を怠っただけの違反は同条の列挙に入っていないので、命令に従わなかった場合との重さの差をそのまま社内に伝えておくと話が早く進みます。

まず控えを探すところから始めます。
そのあと計画の写しを開いて運用と突き合わせます。

その順番なら抜けが見つけやすくなります。
控えが見当たらないときは所轄消防署で届出の受理状況を確かめてください。

よくある質問

Q防災管理者を選任していないと、いきなり罰金になりますか?
A条文の順番では先に命令が置かれています。消防法第36条第1項において準用する同法第8条第3項が定めるのは選任命令で、罰則である同法第42条第1項第一号は「その命令に違反した者」を対象にしています。
Q命令は防災管理者本人に届きますか?
A第8条第3項も第4項も名宛人を「同項の権原を有する者」と書いています。管理権原者に届くもので、選任された防災管理者本人を名宛人とする規定は置かれていません。
Q防火管理の命令と防災管理の命令は別々に出るのですか?
A根拠になる項が違います。防火管理の業務には同法第8条第4項がそのまま働き、防災管理の業務には第36条第1項において準用する同項が働きます。同法第36条第2項は防災管理者に防火管理者の業務も行わせると定めているので、同じ建物で両方が問題になることもあります。
Q命令を受けたことは点検の特例認定に響きますか?
A響きます。同法第8条の2の3第1項第二号イは過去三年以内に命令がされたことがある場合を認定できない事由に挙げており、第36条第1項の読替表はここへ「第三十六条第一項において準用する第八条第三項若しくは第四項」を加えています。特例認定を目指している建物では影響が出ます。

まとめ

消防法第36条第1項が第8条から第8条の2の3までを防災管理に準用しています
防災管理者が定められていないときの選任命令は第8条第3項です。
業務が法令や計画に従っていないときの是正命令は第8条第4項です。
どちらの命令も名宛人は管理権原者です。
命令を出したときは標識の設置その他の方法で公示されます
罰は是正命令の違反のほうが重く法人にも罰金刑が科されます。
過去三年以内の命令は点検の特例認定を受けられない事由になります

今日のうちに選任届の控えを探し出します。
そのあと消防計画の写しと実際の運用を突き合わせます。

その順番なら是正命令の対象になる前に手を打てます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第5条第3項及び第4項・第8条第1項から第5項まで・第8条の2の3第1項・第36条第1項及び第2項・第41条第1項・第42条第1項・第44条・第45条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の4・第46条・第47条・第48条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第1条・第51条の8

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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