乙種防火管理講習の修了証を持って店に戻り、さて消防計画を作ろうというところで手が止まります。
乙種でよい建物なら、書く中身も軽くてよいのだろうか。
延べ面積の小さい建物ほど、そう考えたくなるところです。
ところが条文をたどると甲種と乙種で分かれているのは資格だけで消防計画は同じでした。
うちは乙種でよいと消防署で言われた小さな店です。
消防計画も簡単なもので足りますか。
そこがよく取り違えられるところです。
軽くなるのは講習であって消防計画ではありません。
では乙種という区分は何のためにあるのですか。
誰を防火管理者に置けるかを分けるためです。
延べ面積で分かれる線と、そこから先で変わらないものを順に見ていきましょう。
- 乙種防火対象物は消防法施行令第3条第1項第2号の言葉で、防火管理者の資格を分けるためだけに置かれた区分です
- 分かれ目は延べ面積で、飲食店や物品販売店舗などは300平方メートル未満、その他は500平方メートル未満が乙種です
- 講習は甲種の新規講習がおおむね10時間、乙種はおおむね5時間で、科目そのものは同じ六つです
- 消防計画に定める事項は消防法施行規則第3条第1項第1号にまとめて置かれていて、甲種と乙種で書き分けられていません
- 権原が分かれた建物の小さな部分だけは、甲種の建物でも乙種講習の修了者を防火管理者にできます
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目次
乙種防火対象物とはどんな建物を指すのか

まずどこに書かれている言葉なのかを押さえます。
第一条の二第三項第一号ロ及びハに掲げる防火対象物で、延べ面積が、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては三百平方メートル未満、その他の防火対象物にあつては五百平方メートル未満のもの(以下この号において「乙種防火対象物」という。)
乙種防火対象物という言葉が出てくるのは、消防法施行令のうち防火管理者の資格を定めた第3条だけです。
建物の用途を新しく分類したものではなく、すでに防火管理者を置かなければならない建物のうち、延べ面積が小さいものを取り出して名前を付けたにすぎません。
逆にいえば、この言葉が出てこない条文では甲種も乙種も区別されていないということです。
自分の建物が乙種かどうかを確かめたいときは、まず延べ面積と用途の二つを台帳から拾い出してください。
建物の種類の話だとばかり思っていました。
講習の名前としてしか見ないので無理もありません。
まずは検査済証で延べ面積を確かめておきましょう。
甲種と乙種はどこで分かれるのか

選任が要るかどうかを決める線と、甲種か乙種かを決める線は別ものです。
イ 別表第一(六)項ロ、(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物(略)で、当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数(以下「収容人員」という。)が十人以上のもの
ロ 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物(略)で、収容人員が三十人以上のもの
ハ 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの
上のイ・ロ・ハのどれかに当たれば防火管理者を選任しなければならず、ここまでは延べ面積を見ません。
そのうえで乙種になれるのはロとハに当たる建物だけで、飲食店や物品販売店舗のような特定の用途は300平方メートル未満、共同住宅や学校や倉庫や事務所などは500平方メートル未満というのが境目です。
イに当たる建物、つまり特別養護老人ホームや障害者支援施設のような(6)項ロの用途は、乙種の対象から外れているので延べ面積がどれだけ小さくても甲種になります。
自分の建物がロなのかハなのかで境目の数字が変わるので、用途区分を先に確定してから面積を当ててください。
人数の線と面積の線が別々にあるということですね。
そのとおりです。
人数で選任が決まり面積で資格が決まります。
消防計画に定める事項は乙種でも同じなのか

記載事項を定めた条文の柱書を、区分の書き方ごと読みます。
防火管理者は、令第三条の二第一項の規定により、防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ、次の各号に掲げる区分に従い、おおむね次の各号に掲げる事項について、(略)防火管理に係る消防計画を作成し、(略)届け出なければならない。
一 令第一条の二第三項第一号に掲げる防火対象物及び同項第二号に掲げる防火対象物(仮使用認定を受けたもの又はその部分に限る。)
二 令第一条の二第三項第二号に掲げる防火対象物(仮使用認定を受けたもの又はその部分を除く。)及び同項第三号に掲げる防火対象物
第1号は令第1条の2第3項第1号に掲げる防火対象物、つまりすでに建っている建物のすべてを丸ごと相手にしていて、その中で延べ面積による区別をしていません。
乙種防火対象物も第1号に含まれるので、自衛消防の組織から自主検査、消防用設備等の点検及び整備、避難施設の維持管理、防火上の構造の維持管理、収容人員の適正化、教育、訓練、災害時の消火活動と通報連絡と避難誘導、消防機関との連絡、工事中の立会いまで、甲種と同じ並びを定めることになります。
第2号のほうは新築の工事中の建築物と建造中の旅客船のための区分で、小さな建物のための軽い版ではありません。
記載事項が減ると思って項目を落とすと、そのまま立入検査での指摘になりますので、ひな形は甲種用のものをそのまま使って構いません。
第2号を小さい建物用だと読み違えていました。
項目が少なく見えるので起きやすい読み違えです。
柱書のかっこ書きまで読むと工事中の話だと分かります。
甲種の建物でも乙種の講習で足りることがあるのはなぜか

建物ではなく、権原の及ぶ部分で見る例外です。
甲種防火対象物でその管理について権原が分かれているものの管理について権原を有する者がその権原に属する防火対象物の部分で総務省令で定めるものに係る防火管理者を定める場合における第一項(略)の規定の適用については、法第八条第一項の政令で定める資格を有する者は、第一項第一号に掲げる者のほか、同項第二号イに掲げる者とすることができる。
消防法施行規則第2条の2の2がこの総務省令で定める部分を受けていて、その部分だけを一の防火対象物とみなして収容人員を数えたときに、(6)項ロの用途なら10人未満、飲食店や物品販売店舗などなら30人未満、共同住宅や事務所などなら50人未満であれば当たります。
つまり大きな雑居ビルの中に入っている小さなテナントは、ビル全体が甲種防火対象物であっても、自分の区画の防火管理者に乙種講習の修了者を充てられるということです。
ただし建物全体をまとめる統括防火管理者はこの例外の外にあり、テナント側の消防計画も建物全体についての消防計画に適合しなければならない点は変わりません。
テナントで受講する方を決めるときは、自分の区画の収容人員を先に数えてから講習を申し込んでください。
ビルが大きいから甲種しかないと諦めていました。
区画の収容人員しだいで道が開けます。
先に所轄消防署へ数え方を確かめておくと確実です。
明日からなにを確かめればよいのか

順番だけ決めておけば迷いません。
防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
2 防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
はじめに検査済証か登記事項証明書で延べ面積を確かめ、用途が特定のものなら300平方メートル、それ以外なら500平方メートルの線を当ててください。
次に修了証を出して甲種か乙種かを見て、増築や用途変更で線を越えていないかを突き合わせます。
そのうえで届出済みの消防計画を開き、上に挙げた業務が一つずつ書かれているかを目で追ってください。
線を越えて甲種になった場合でも、直すのは防火管理者の資格のほうであって、消防計画の項目を足す必要はありません。
面積と修了証と計画の三つを並べればよいのですね。
その三つで足ります。
ずれていたら先に修了証のほうを直しましょう。
よくある質問
まとめ
消防計画を軽くしなくてよかったです。
このまま甲種用のひな形で作ります。
面積と修了証だけ毎年見直せば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第8条第1項(昭和23年法律第186号)
- 消防法施行令第1条の2第3項(昭和36年政令第37号)
- 消防法施行令第3条第1項・第3項(防火管理者の資格)
- 消防法施行令第3条の2第1項・第2項(防火管理者の責務)
- 消防法施行令別表第一
- 消防法施行規則第2条の2・第2条の2の2(昭和36年自治省令第6号)
- 消防法施行規則第2条の3(防火管理に関する講習)
- 消防法施行規則第3条第1項(防火管理に係る消防計画)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





