オフィスの片隅に置く個室ブース。
テレワークやウェブ会議のために、床に置くだけで使える箱型の個室が急に増えました。
ところが天井と壁で囲われているので、消防の目から見ると区画された部屋が1つ増えたのと同じことになります。
消防庁が示したのはどんな条件ならブースの中に設備を入れずに済むのかという線引きです。
執務室に個室ブースを2台置いたら、消防から中の設備のことを聞かれました。
家具のつもりで買ったのですが、届出が要る話なのでしょうか。
家具か部屋かで扱いが変わります。
天井と壁で囲われた時点で中に設備が要るかどうかの検討が始まります。
ブース1台ごとに感知器やスピーカーを付けるとなると、費用も工事も相当なことになります。
そこで消防庁が全国共通の取扱いを示しました。
条件を満たせば設置を要しないとして差し支えない、という通知です。
- 可動式ブースとは床や壁に固定されていない箱型の個室のことで、令和5年3月30日付け消防予第211号が全国共通の取扱いを示しました
- 免除の対象はスプリンクラーヘッドと感知器、スピーカー、排煙口と散水ヘッドで、根拠は消防法施行令第32条の特例です
- どのルートを選んでも床面積6平方メートル以下と天井と壁の不燃材料の仕上げは共通の条件になります
- 火気設備等を使うもの、宿泊を目的とするもの、仮眠を伴うおそれがあるものはそもそも取扱いの対象から外れます
- 令和6年8月23日付け消防予第404号の改正で、消火実験の基準が別紙に定められフロアの過半をブースが占める使い方は想定していないことが明記されました
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目次
可動式ブースの通知はなぜ出されたのか

消防の側でも、問い合わせのたびに答えるやり方では追いつかなくなっていました。
可動式ブース(天井及び壁により囲われたブースで、防火対象物の床や壁に固定(工具等で簡単に取り外すことができるものを除く。)されておらず、人が出入りして利用するものをいう。以下同じ。)については、事務作業のほか、様々な使用形態(休憩、喫煙等)のものや、火災時の安全性等が確認された様々な性能・仕様を有するものが開発されるなど、その活用に係るニーズが拡大していることを踏まえ、今般、可動式ブースに係る消防用設備等の取扱いについて、下記のとおりとりまとめましたので、通知します。
それまでは執務資料の中の問答という形で、平成30年11月2日付け消防予第622号や令和2年12月28日付け消防予第420号に断片的に載っていました。
この通知はそれらのうち令和2年の420号を廃止し、平成30年の622号からも該当する問を削っています。
本文の最後に「消防組織法第37条の規定に基づく助言」と書かれているとおり、法令そのものではなく国から消防本部への技術的な助言という位置づけです。
そのうえで令和6年8月23日付け消防予第404号による改正を受けており、いま読むべきなのは改正後の本文になります。
助言ということは、守らなくてもよいのでしょうか。
逆です。
これを満たしていれば免除を認めてよいという各消防本部あての目安なので、満たしていなければ設置を求められます。
どんなブースが対象になるのか

使い方によっては、そもそも検討の入口にすら立てません。
(1) 次のいずれにも該当しないこと。
ア 令第5条第1項に規定する対象火気設備等及び令第5条の2第1項に規定する対象火気器具等(以下「火気設備等」という。)の使用を行うもの
イ 宿泊を目的とするもの
ウ イ以外のもので、仮眠を伴うおそれがあるもの
(2) 次のいずれにも該当しないこと。
ア 火気設備等の使用を行うもの
イ ア以外のもので、喫煙その他の火気の使用を行うもの
ウ 宿泊を目的とするもの
(3) 次に掲げる要件を満たすこと。
ア 可動式ブースの床面積は6平方メートル以下であること。(略)
(1)は宿泊も仮眠も外し、(2)は宿泊に加えて喫煙その他の火気の使用を外すという組み方になっており、あとで出てくる2つのルートに対応しています。
どちらのルートを選んでも共通で効くのが床面積6平方メートル以下という上限です。
天井及び壁を建築基準法第2条第9号の不燃材料で仕上げることも共通の条件になります。
つまり仮眠用のスリープボックスや喫煙用のブースは、この通知の枠組みでは免除を組み立てられません。
仮眠を伴うおそれがある、というのは休憩でうたた寝する程度でも当たりますか。
通知はそこまでは書き分けていません。
ただ横になれる家具を入れた時点で説明は苦しくなるので、置く前に所轄へ相談してください。
ブースの中の設備はなにを省けるのか

建物側の設備そのものを外せるという話ではありません。
1 可動式ブース内のスプリンクラーヘッド又は感知器の設置について
スプリンクラー設備又は自動火災報知設備の設置が義務付けられている防火対象物において、可動式ブースを設けることにより、当該可動式ブース内にスプリンクラーヘッド又は感知器の設置が必要と認められる場合であっても、次の(1)及び(3)に掲げる要件を満たすもの又は次の(2)及び(4)に掲げる要件を満たすものについては、消防法施行令(昭和36年政令第37号。以下「令」という。)第32条の規定を適用し、これらの設置を要しないこととして、差し支えないこと。(略)
3 可動式ブース内の排煙口又は散水ヘッドの設置について(略)
この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。
記1がスプリンクラーヘッドと感知器、記2がスピーカー、記3が排煙口と散水ヘッドを扱っています。
そして要件の組み合わせは2つのルートしかなく、(1)と(3)を満たすか、(2)と(4)を満たすかのどちらかです。
前者は仮眠を外したうえでブースの中に住宅用下方放出型自動消火装置を入れる消火のルート、後者は喫煙を外したうえで内外に連動型住宅用防災警報器を置く警報のルートになります。
なおスピーカーの話が出てくるのは、消防法施行規則第25条の2第2項第3号によって8メートル以内に隣の放送区域のスピーカーがあれば省けるためで、それを超えて離れた場所にブースを置いたときに初めて記2の出番になります。
つまり何も付けずに免除、ではなくて代わりのものを入れるということですね。
そのとおりです。
消すか気づかせるかのどちらかを必ず備える構成になっています。
実務で見落としやすいのはどこか

古い資料をそのまま読んでいると、この2か所を丸ごと見落とします。
(改正後)a 当該可動式ブース内で火災が発生しても確実に消火できることが別紙に定める基準による消火実験等により確認されていること。
(改正前)a 当該可動式ブース内で火災が発生しても確実に消火できることが消火実験等により確認されていること。
(改正後・追加)(4) 本通知における可動式ブースに係る取扱いについては、消防用設備等の設置が義務付けられている防火対象物の一部に可動式ブースが設置される場合を想定しているものであり、防火対象物の部分の過半を可動式ブースが占めるような活用をしている場合は想定していないこと。
改正で加わった4(4)は、フロアの過半をブースが占めるような使い方を想定していないと明記しました。
執務室をまるごとブースで埋めて個室オフィスのように使う形は、この通知では説明できません。
もう1つの改正が消火実験の基準で、以前は「消火実験等により確認」としか書かれていなかったものに別紙の基準が加わりました。
別紙は着火から20分以内に有炎現象が認められず、その後5分間その状態が続くことを判定基準としており、メーカーの試験成績書がこの基準に沿っているかを見る必要があります。
導入したのが令和5年なので、手元の資料は改正前のものかもしれません。
まさにそこが危ないところです。
増設のときは改正後の本文で組み直してください。
明日からなにを確認すればよいのか

どちらも工事ではなく、その場で直せることが多い項目です。
エ 可動式ブースの出入口扉に施錠装置が設けられていないこと(非常の際に外部から容易に解錠できる場合を除く。)。
オ 可動式ブース内の見やすい箇所に喫煙その他の火気の使用を禁止する旨の表示が設けられていること。
オンライン会議のために後付けした鍵や、内側から掛けるつまみが付いていないかを確認します。
次に、喫煙その他の火気の使用を禁止する表示が中の見やすい場所に貼ってあるかを見ます。
そのうえでメーカーから消火装置の点検基準と第三者機関の検証結果の資料をもらい、消防計画の建物概要や配置図にブースの位置を書き足します。
最後に、令第32条を適用するかどうかを決めるのは消防長又は消防署長ですから、設置前に所轄へ図面を持って相談するのがいちばん早い順路になります。
置いてしまってから相談すると、やり直しになることもありますか。
台数や置き方によってはあります。
発注前に機種と配置を持ち込むのが結局いちばん安く済みます。
よくある質問
まとめ
すっきりしました。
まずは扉の鍵と表示を見てから所轄に相談してみます。
その順番なら手戻りがほとんど出ません。
機種選びから消防計画への反映まで、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 可動式ブースに係る消防用設備等の取扱いについて(通知)(令和5年3月30日付け消防予第211号)
- 「可動式ブースに係る消防用設備等の取扱いについて(通知)」の一部改正について(令和6年8月23日付け消防予第404号)
- 消防法施行令第32条(基準の特例)・第5条第1項(対象火気設備等)・第5条の2第1項(対象火気器具等)
- 消防法施行規則第25条の2第2項第3号(放送設備のスピーカーの設置)
- 建築基準法第2条第9号(不燃材料)
- 消防組織法第37条(消防庁長官の助言)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





