病院の防火管理者から「手術室の天井にだけスプリンクラーヘッドが見当たらないが工事の手抜きではないか」という相談を受けることがあります。
図面を追いかけても、そこだけヘッドの記号が抜けていて理由が書かれていない、ということが起こります。
これは施工の落ち度ではなく、消防法施行規則がはじめから「ヘッドを設けなくてよい部分」を並べているからです。
手術室やレントゲン室は、その並びに名指しで載っている部屋です。
うちの病院、手術室の天井にだけスプリンクラーが付いていないんです。
これって付け忘れじゃないんですか。
付け忘れではなく、消防法施行規則が手術室を名指しで外しています。
省令にそういう並びがあるんです。
名指しということは、他にも外れる部屋が決まっているんですか。
階段や便所から機械室まで、番号を振って並んでいます。
この記事でその並びを一つずつ見ていきましょう。
- スプリンクラーヘッドを設ける部分は消防法施行令ではなく省令が決めている。令第12条第2項第1号が総務省令に委ねている
- その省令が消防法施行規則第13条第3項で、書き方は「次の各号に掲げる部分以外の部分」という裏返しになっている
- 病院で外れるのは第7号の手術室・分娩室・内視鏡検査室・人工血液透析室・麻酔室・重症患者集中治療看護室と、第8号のレントゲン室等放射線源を扱う室
- 用途を問わず外れる部分もあり、階段・浴室・便所・エレベーターの機械室・昇降路・パイプダクト・外気に開放された廊下が並んでいる
- 外れる部分があっても、その建物にスプリンクラー設備そのものが要るかどうかは別の話です。混同すると点検も届出もずれる
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目次
スプリンクラーヘッドはどの部分に設けることになっているのか

どこに設けるかは、条文が二段構えで決めています。
劇場等の舞台部と、指定可燃物を貯蔵し又は取り扱う部分だけは、令が直接「ここに設けなさい」と書いています。
それ以外の建物については、令は場所を書かずに総務省令へ委ねており、受けているのが消防法施行規則第13条第3項です。
そしてこの省令は、設ける部分を数え上げるのではなく「次の各号に掲げる部分以外の部分」という裏返しの書き方をしています。
つまり実務では、自分の建物の部屋がこの各号に載っているかどうかを見ることになります。
設ける場所じゃなくて、外れる場所のほうが書いてあるんですね。
そのとおりです。
だから「載っていない部屋は設ける側」と読むのが早道になります。
病院のどの部屋がヘッドを設けなくてよい部分に入るのか

どちらも部屋の名前がそのまま書かれています。
第7号は手術室から重症患者集中治療看護室まで六つの室名を挙げ、末尾に「その他これらに類する室」と付けています。
第8号はレントゲン室を例に挙げたうえで、放射線源を使用し、貯蔵し、又は廃棄する室を広くとらえています。
一方で病室や待合室、診察室はこの並びに出てきませんので、外れる部分としては書かれていません。
室名の看板だけで判断せず、その室が条文のどの号に当たるのかを図面と一緒に所轄消防署へ確かめてください。
うちには条文に出てこない名前の処置室もあるんですが、どう見ればいいですか。
「その他これらに類する室」に当たるかどうかの判断になります。
使い方を書き出して所轄消防署に持ち込むのが確実です。
病院以外の建物でも外れる部分はどこか

用途を問わず並んでいる号があり、事務所でも店舗でも同じように読みます。
第1号は階段と浴室と便所を、第3号はエレベーターや機械換気設備の機械室を挙げています。
第5号は昇降路やリネンシュート、パイプダクトのような縦に貫く部分で、第6号は直接外気に開放されている廊下です。
これらは病院でも事務所でも同じ号で読みますので、用途が違うから並びも違う、ということにはなりません。
自分の建物の平面図に、まずこの四つに当たる部分を色分けしておくと、あとの確認がずいぶん楽になります。
つまりトイレにヘッドが無いのも、同じ省令の並びのおかげなんですね。
そうです、第1号に便所と書かれています。
平面図に印を付けておくと点検のときに迷いません。
実務で見落としやすいのはどこか

号の見出しだけを拾うと、そこを飛ばしてしまいます。
第1号の括弧書きは、令別表第一(2)項・(4)項・(16の2)項と、(16)項イのうち(2)項と(4)項の用途に供される部分に設けられる階段について、避難階段又は特別避難階段に限ると絞っています。
言い換えると、これらの建物にある普通の階段は外れる部分に入らないという読み方になります。
もう一つの落とし穴が第9号の2で、病院や社会福祉施設のうち基準面積が千平方メートル未満のものは、廊下や脱衣所、床面積が二平方メートル未満の収納設備までが外れる側に回ります。
号の名前だけを拾わず、括弧書きまで読んで自分の建物がどちらに当たるのかを確かめてください。
階段は全部外れると思い込んでいました。
建物の種類まで見ないといけないんですね。
括弧書きが効いているのはこの号だけではありません。
各号は必ず最後まで通して読んでください。
明日からなにを確かめればよいのか

はじめから外れている部分と、別の消火設備で置き換えた部分です。
規則第13条第3項の各号は、そもそもヘッドを設ける部分に入っていないという話です。
これに対して令第12条第3項は、水噴霧や泡などを基準どおりに設けたときに、その有効範囲でスプリンクラー設備を設けないことができるという別の仕組みです。
明日はまず消防用設備等の図面を開いて、ヘッドの無い部分に別の消火設備の記号が重なっているかどうかを見てください。
重なっていなければ規則の各号を、重なっていれば令第12条第3項を根拠として、点検の記録と届出の控えに書き分けておくと、次の立入検査で説明に困りません。
図面を見れば、どっちの理由なのか分かるということですね。
記号が重なっているかどうかが分かれ目です。
判断に迷ったら図面ごと所轄消防署へ持って行きましょう。
よくある質問
まとめ
手術室にヘッドが無い理由を条文で説明できるようになりました。
さっそく平面図に印を付けてみます。
その図面の読み合わせから、㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第13条
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第123条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





