地階や無窓階に広い売場や駐車場をお持ちの方は、排煙設備の設置を求められることがあります。
ところが図面には排煙設備ではなく加圧防排煙設備という名前が載っていることがあります。
これは消防法施行令第29条の4が用意した仕組みで、通常用いられる消防用設備等に代えて置くことが認められたものです。
置き換えられるかどうかは建物の用途と階と床面積で決まります。
うちの建物の地下の売場に排煙設備が要ると言われました。
図面には加圧防排煙設備という別の名前が出てきて戸惑っています。
排煙設備の代わりに置ける設備として省令で決められたものです。
まずは建物の用途とその階の床面積を確かめてください。
用途と床面積で決まるのですか。
どの建物でも選べるわけではないのでしょうか。
選べるのは令別表第一の(4)項と(13)項イだけです。
同じく排煙設備が必要になる(2)項や(10)項では選べません。
- 加圧防排煙設備は令第28条により設置し維持しなければならない排煙設備に代えて用いることができる設備です
- 対象は令別表第一(4)項と(13)項イの地階又は無窓階で床面積が1,000平方メートル以上のものに限られます
- (13)項イのうち昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のものは除かれます
- 特定主要構造部が耐火構造であることと吹抜きや階段の部分の区画と消火設備の設置も条件になります
- 技術上の基準として省令が並べているのは手動起動装置と煙に接する部分の材料と非常電源の3つです
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目次
加圧防排煙設備は何を守るための設備なのか

まずは根拠になる省令の定義と、なにに代えて置ける設備なのかを見ます。
次の各号に適合する防火対象物又はその部分において、令第二十八条の規定により設置し、及び維持しなければならない排煙設備に代えて用いることができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等は、加圧防排煙設備(消防隊による活動を支援するために、火災が発生した場合に生ずる煙を有効に排除し、かつ、給気により加圧することによって、当該活動の拠点となる室への煙の侵入を防ぐことのできる設備であって、排煙口、給気口、給気機等により構成されるものをいう。以下同じ。)とする。
出発点は令第29条の4第1項で、通常用いられる消防用設備等に代えて、その防火安全性能が同等以上であると消防長又は消防署長が認める設備を用いてよいと定めています。
その受け皿として作られたのが平成21年総務省令第88号で、排煙設備についてはこの加圧防排煙設備が指定されました。
定義で目を引くのは煙を排除するだけでなく給気により加圧すると書かれているところで、守る相手は消防隊の活動の拠点となる室です。
排煙設備は令第7条第6項の消火活動上必要な施設なので、置き換えた設備も同じ性格のものだと読んでおいてください。
排煙設備は煙を外に出す設備だと思っていました。
給気して押さえるという考え方は初めて聞きます。
排除と給気を組み合わせるところが違いです。
図面に給気機や給気口が描かれていないか確かめてみてください。
排煙設備に代えて使えるのはどの建物か

省令は条件を4つ並べていて、そのすべてに適合することを求めています。
一 令別表第一(四)項又は(十三)項イに掲げる防火対象物(同表(十三)項イに掲げる防火対象物にあっては、昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のものを除く。)の地階又は無窓階で、床面積が千平方メートル以上のものであること。
二 特定主要構造部(建築基準法(略)第二条第九号の二イに規定する特定主要構造部をいう。)が、耐火構造(同条第七号に規定する耐火構造をいう。)であること。
三 吹抜きとなっている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分については、当該部分とその他の部分(略)とが準耐火構造(略)の床若しくは壁又は防火設備(略)で区画されていること。
四 スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備(移動式のものを除く。)(略)が令第十二条、令第十三条、令第十四条(略)に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置されていること。
第1号が挙げているのは令別表第一(4)項の物品販売業を営む店舗や展示場と、(13)項イの自動車車庫又は駐車場だけです。
そのうえで地階又は無窓階であることと、床面積が1,000平方メートル以上であることが重ねて求められます。
第2号から第4号までは建物側の造りの話で、特定主要構造部が耐火構造であること、吹抜きや階段やダクトスペースを区画していること、消火設備が設けられていることを並べています。
ひとつでも欠けると置き換えられないので、平面図と断面図と設備図を並べて確かめてください。
うちは地下の売場が1,200平方メートルほどあります。
用途と広さの条件は満たしていそうですね。
そこは満たしていますね。
あとは耐火構造かどうかと吹抜きの区画を確かめれば見当がつきます。
加圧防排煙設備には何を備えなければならないのか

省令は設置と維持の技術上の基準を第2項に並べています。
前項に定める加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。
一 加圧防排煙設備には、手動起動装置を設けること。
二 加圧防排煙設備の排煙口、排煙用の風道その他煙に接する部分は、煙の熱及び成分によりその機能に支障を生ずるおそれのない材料で造ること。
三 加圧防排煙設備には、非常電源を附置すること。
同条第3項
前項に定めるもののほか、加圧防排煙設備は、消防庁長官が定める設置及び維持に関する技術上の基準に適合するものでなければならない。
手動起動装置を設けること、煙に接する部分を熱や成分に耐える材料で造ること、非常電源を附置することの3つが並んでいます。
読み比べたいのが排煙設備の側で、令第28条第2項第2号は手動起動装置又は自動起動装置と書いていますが、この省令には自動起動装置という言葉が出てきません。
残りの細かい仕様は第3項が消防庁長官が定める基準に委ねているので、省令だけを読んでも仕様は決まりません。
設計者から出てくる図面がどの基準に沿ったものかを、打ち合わせの段階で確かめておいてください。
省令には自動起動装置という言葉が出てこないのですね。
排煙設備の条文と読み比べてみます。
省令が求めているのは手動起動装置までです。
それ以上の仕様は消防庁長官が定める基準に置かれているので、所轄の消防署で確かめてください。
実務で見落としやすいのはどこか

令第28条の側の条文と並べて読むと、ずれているところがはっきりします。
排煙設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
一 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
二 別表第一(一)項に掲げる防火対象物の舞台部で、床面積が五百平方メートル以上のもの
三 別表第一(二)項、(四)項、(十)項及び(十三)項に掲げる防火対象物の地階又は無窓階で、床面積が千平方メートル以上のもの
令第28条第1項第3号は(2)項と(4)項と(10)項と(13)項を並べていますが、省令が受けているのは(4)項と(13)項イだけです。
キャバレーなどの(2)項や車両の停車場である(10)項、航空機の格納庫である(13)項ロ、そして第1号の地下街と第2号の舞台部は、置き換えの対象に入っていません。
もうひとつは(13)項イの括弧書きで、昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のものが外されています。
規則第29条は排煙設備の設置を要しない部分を別に定めているので、置き換えを考える前にそちらに当たらないかを先に見てください。
排煙設備が要る建物なら全部使えると思っていました。
用途をひとつずつ突き合わせないと危ないですね。
そこを取り違えると設計をやり直すことになります。
建物が令別表第一の何項に当たるかを先に確定してください。
明日からなにを確認すればよいのか

この設備は特別扱いではなく、普通の消防用設備等と同じ手続きに乗ります。
前項の場合においては、同項の関係者は、必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等について、通常用いられる消防用設備等と同等以上の防火安全性能を有するように設置し、及び維持しなければならない。
消防法施行規則第31条の6第3項
防火対象物の関係者は、前二項の規定により点検を行った結果を、維持台帳(略)に記録するとともに、次の各号に掲げる防火対象物の区分に従い、当該各号に定める期間ごとに消防長又は消防署長に報告しなければならない。(略)
一 令別表第一(一)項から(四)項まで(略)に掲げる防火対象物 一年に一回
二 令別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで(略)に掲げる防火対象物 三年に一回
令第29条の4第2項は、置いた設備を通常用いられる消防用設備等と同等以上の防火安全性能を保つように維持することを求めています。
令第7条第7項でこの設備は法第17条第1項の消火活動上必要な施設に含まれるので、工事が終われば規則第31条の3第1項により4日以内に届け出て検査を受けます。
点検の結果の報告は建物の用途で期間が分かれ、(4)項の物品販売業を営む店舗は1年に1回、(13)項の駐車場は3年に1回です。
建物全体が(16)項イの複合用途防火対象物なら1年に1回になるので、部分の用途だけで判断せずに維持台帳を開いて確かめてください。
維持台帳を開いて検査済証があるか見てみます。
報告の期間も建物全体の用途で確かめます。
その順番で見れば引き継ぎでも困りません。
控えが見当たらないときは、設計や工事をした会社に図面が残っていることもあります。
よくある質問
まとめ
まずは地下の売場の床面積と用途を確かめます。
吹抜きの区画も図面で見ておきます。
その2つがそろえば置き換えの見当がつきます。
排煙設備のことでお困りでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条・第17条の3の2・第17条の3の3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第7条・第28条・第29条の4・第36条・別表第一
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第29条・第31条の3・第31条の6
- 排煙設備に代えて用いることができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成21年総務省令第88号)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





