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ポンプ室を物置にしてはいけないのか|消防法施行規則が定める加圧送水装置の維持と直接操作を解説

ポンプ室に置かれた赤い加圧送水装置のポンプと配管

立入検査でポンプ室を見せてくださいと言われて、はじめて扉を開けたという方は少なくありません。
ふだん誰も入らない部屋なので、置き場所に困った物がそのまま積まれていることがあります。
ところが消防法は消防用設備等について、設置するだけでなく維持することまで関係者に求めています。
ポンプ室の状態そのものが 消防用設備等の維持の問題になります

立入検査でポンプ室を見せてくださいと言われました。
ふだん誰も入らないので、すっかり物置になっています。

その物置になっているところが、まさに見られる場所です。
ポンプは屋内消火栓設備の要になる部分なので、前をふさぐと点検も操作もできなくなります。

置いているのは燃えないものばかりなのですが、それでも駄目でしょうか。
普段は誰も来ない部屋なので気にしていませんでした。

燃えるかどうかだけの話ではありません。
消防法は消防用設備等を維持することまで求めているので、点検や操作の支障になる状態そのものが問われます。

この記事の結論
  • 屋内消火栓設備で水を送り出す部分を加圧送水装置といいます
  • 消防法は消防用設備等を設置するだけでなく維持することも関係者に求めています
  • 加圧送水装置には性能を試験するための配管設備と逃し配管を設けることとされています
  • 水源の水位がポンプより低いときは呼水装置を設けることとされています
  • ポンプ室に物を積み上げると点検も非常時の操作もできなくなります

ポンプ室で見られる通路と弁の表示と呼水槽の三点を示した図解

ポンプ室にある設備はなんのためにあるのか

水槽とポンプと点検する人が並んだ機械室を描いたイラスト
廊下の壁に付いている消火栓の箱は、単独で水が出るわけではありません。
その水を押し出しているのが、機械室に置かれた設備です。
消防法第17条第1項 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない
ポンプ室は屋内消火栓設備の一部です
屋内消火栓設備の設置と維持の基準は消防法施行令第11条に置かれ、その細目が消防法施行規則第12条に定められています。
そこで水を送り出す部分を加圧送水装置と呼び、高架水槽を使うもの、圧力水槽を使うもの、ポンプを使うものの三つが定められています。
建物の機械室で見かける大きな機械は、このうちポンプを使う加圧送水装置にあたります。
消火栓の箱だけを点検の対象と考えていると、設備の半分しか見ていないことになります

機械室のポンプが消火栓とつながっているとは知りませんでした。
箱の中のホースだけ見ていれば足りると思っていました。

箱の中のホースは、ポンプが動いてはじめて水が出ます。
消火栓の箱とポンプ室は一つの設備の別々の部分だと考えてください。

加圧送水装置にはどんな装置を付けることになっているのか

ポンプの左右の配管に計器が付き細い配管が上に回り込んだイラスト
ポンプのまわりには、一見すると余分に思える計器や細い配管が付いています。
どれも規則で求められているものです。
消防法施行規則第12条第1項第7号ハ ポンプを用いる加圧送水装置は、次の(イ)から(チ)までに定めるところによること。(略)(ニ)ポンプは、専用とすること。ただし、他の消火設備と併用又は兼用する場合において、それぞれの消火設備の性能に支障を生じないものにあつては、この限りでない。(ホ)ポンプには、その吐出側に圧力計、吸込側に連成計を設けること。(ヘ)加圧送水装置には、定格負荷運転時のポンプの性能を試験するための配管設備を設けること。(ト)加圧送水装置には、締切運転時における水温上昇防止のための逃し配管を設けること。(チ)原動機は、電動機によるものとすること。
余分に見える配管にはそれぞれ役目があります
吐出側の圧力計と吸込側の連成計は、ポンプが規定どおりの圧力を出しているかを読み取るための計器です。
性能を試験するための配管設備は、点検のときにポンプを実際に回して水量と圧力を測るために使います。
逃し配管は、弁を閉じたまま回す締切運転で水温が上がるのを防ぐためのもので、細い配管が水槽側へ戻っているのがそれにあたります。
ポンプは専用とすることが原則で、他の消火設備と併用や兼用をするのは、それぞれの性能に支障を生じない場合に限られます

細い配管が邪魔なので外したいと言われたことがあります。
あれは外してもよいものなのでしょうか。

その細い配管が逃し配管であることがあります。
規則が設けることと定めているものなので、配管には手を触れずに工事業者へ相談してください。

弁や呼水槽にはなにが求められているのか

浮き玉の入った小さな水槽とハンドルの付いた弁を描いたイラスト
ポンプ室でまず目に入るのは、ハンドルの付いた弁と小さな水槽です。
この二つには規則が別々の条件を置いています。
消防法施行規則第12条第1項第3号の2 水源の水位がポンプより低い位置にある加圧送水装置には、次のイからハまでに定めるところにより呼水装置を設けること。イ 呼水装置には専用の呼水槽を設けること。ロ 呼水槽の容量は、加圧送水装置を有効に作動できるものであること。ハ 呼水槽には減水警報装置及び呼水槽へ水を自動的に補給するための装置が設けられていること。 同条同項第6号ト(ハ) 開閉弁又は止水弁にあつてはその開閉方向を、逆止弁にあつてはその流れ方向を表示したものであること。
呼水槽は常に水で満たしておくものです
水源がポンプより低い位置にあると、配管の中が空になったポンプは水を吸い上げられないので、あらかじめ水を満たしておく呼水装置が求められています。
呼水槽には水が減ったことを知らせる減水警報装置と、自動で水を補給する装置を設けることとされているので、水位が下がったまま止まっているなら補給の側に不具合があります。
一方で弁について規則が求めているのは、開閉弁と止水弁の開閉方向と、逆止弁の流れ方向の表示です。
常開や常閉と書かれた札は、この表示とは別に建物側や工事業者が運用として付けているものなので、両方をあわせて見ておくと状態を読み違えません

弁に常開と書いた札が下がっています。
あれは法令で決められているものだと思っていました。

規則が求めているのは開閉方向の表示です。
常開の札は運用として付けているものなので、札が正しいかどうかも確かめてください。

実務で見落としやすいのはどこか

段ボールでふさがれたポンプの前と通路の空いたポンプの前を並べたイラスト
物が置いてあっても設備そのものは動くので、支障がないように見えます。
見落としが起きるのは、規則が人の動きを前提にしている場面です。
消防法施行規則第12条第1項第7号ト 加圧送水装置は、直接操作によつてのみ停止されるものであること。 同条同項第6号ハ(ハ) フート弁は、容易に点検を行うことができるものであること。
ポンプは遠くからは止められません
規則は加圧送水装置について直接操作によってのみ停止されるものであることと定めているので、人がポンプのところまで行かなければ止められない仕組みになっています。
起動は消火栓箱の操作部からの遠隔操作でもできますが、停止だけは直接操作に限られているという非対称がここにあります。
また吸水管に設けるフート弁についても、容易に点検を行うことができるものであることとされています。
どちらも人が近づいて手を掛けることを前提にした定めなので、通路や点検口の前に物を置くと条文の求める状態から離れていきます

ポンプが回りっぱなしになったとき、事務所から止められないのですか。
機械室まで降りるのは時間がかかります。

規則が直接操作によってのみ停止されるものと定めているためです。
だからこそ機械室までの通路を空けておく意味があります。

明日からなにを確認すればよいのか

点検表を持つ人と制御盤とポンプが並んだ機械室を描いたイラスト
条文を覚えていなくても、扉を開けて見るだけでわかることがあります。
点検の記録と現場の状態は別々に見られます。
消防法第17条の3の3 第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(略)について、総務省令で定めるところにより、定期に、(略)点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。 消防法施行規則第12条第1項第9号 貯水槽、加圧送水装置、非常電源、配管等(以下「貯水槽等」という。)には地震による震動等に耐えるための有効な措置を講じること。
まず扉の前と機械の前を空けてください
通路をふさぐ物をどけるだけで、点検も非常時の直接操作もできる状態に戻ります。
そのうえで呼水槽に水が満たされているか、弁の表示と札が食い違っていないかを見ておくと、点検の結果とも突き合わせられます。
規則は貯水槽等について地震による震動等に耐えるための有効な措置を講じることも求めているので、固定が外れていないかもあわせて見ておきたいところです。
気づいたことは日付と写真で残し、次の点検のときに業者へ渡すと、指摘を受ける前に手当てができます

つまり点検の記録だけでなく、部屋の状態そのものも見られるということですね。
同じ場所を写真に撮って残しておきます。

その進め方で問題ありません。
毎回同じ位置から撮っておくと、物が少しずつ増えていく変化にも気づけます。

よくある質問

Qポンプ室に燃えないものなら置いてもよいのでしょうか?
A燃えるかどうかとは別に、点検と操作ができる状態を保てるかどうかで考えてください。規則は加圧送水装置を直接操作によってのみ停止されるものと定め、フート弁は容易に点検を行うことができるものであることとしているので、人が近づけない置き方は避けることになります。
Q呼水槽の水が減っていたら故障ということですか?
A規則は呼水槽に減水警報装置と水を自動的に補給するための装置を設けることとしています。水位が下がったままなら補給の側に不具合がある可能性が高いので、水を足して終わりにせず点検を依頼してください。
Q屋内消火栓のポンプを他の設備と兼用できますか?
A規則はポンプを専用とすることを原則としています。ただし書きで他の消火設備と併用または兼用する場合が置かれていますが、それぞれの消火設備の性能に支障を生じないものに限られるので、設計の段階で確認が必要です。
Qポンプ室の点検は自分で見ておけば足りますか?
A消防法第17条の3の3は消防用設備等について定期に点検させ、その結果を消防長または消防署長に報告することを関係者に求めています。日ごろの目視は有効ですが法定の点検の代わりにはならないので、周期と報告の要否は所轄消防署に確かめてください。

まとめ

ポンプ室は屋内消火栓設備の一部であり点検も操作もここで行います
水を送り出す部分を加圧送水装置といいます(消防法施行規則第12条第1項第7号)
性能を試験するための配管設備と逃し配管を設けることとされています(同号ハ)
水源の水位がポンプより低いときは呼水装置を設けることとされています
弁について求められているのは開閉方向や流れ方向の表示です(同項第6号ト)
加圧送水装置は直接操作によってのみ停止されるものとされています(同項第7号ト)
通路と機械の前を空けておくことが維持の第一歩になります

さっそくポンプ室の段ボールを片づけます。
呼水槽の水位と弁の札も見てきます。

よい進め方です。
屋内消火栓設備の点検や改修でお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 消防法第4条第1項(立入検査)
  • 消防法第17条第1項(消防用設備等の設置及び維持)
  • 消防法第17条の3の3(消防用設備等の点検及び報告)
  • 消防法施行令第11条(屋内消火栓設備に関する基準)
  • 消防法施行規則第12条(屋内消火栓設備に関する基準の細目)
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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