立入検査で消火器の話になると「バケツを置いておけばよいのでは」と言われることがあります。
実は水バケツや乾燥砂は消防法令にそのまま出てくる言葉で、簡易消火用具として能力単位が認められています。
ただし置けば置くほど消火器を減らせるわけではなく、消防法施行規則には上限が定められています。
この記事では簡易消火用具の数え方と どこまで消火器の代わりになるのかを条文から整理します。
うちの工場には消火用と書いた赤いバケツが昔から並んでいます。
あれは消火器の数に入っているのでしょうか。
水バケツは消防法施行令にきちんと出てくる簡易消火用具です。
能力単位という数え方で消火器と同じ土俵に乗ります。
それなら消火器を減らしてバケツを増やしてもよいということですか。
置き場所には困らないので助かります。
そこに二分の一という上限があります。
まずはバケツいくつで一単位になるのかから見ていきましょう。
- 消火器と簡易消火用具は、どちらも消防法施行令第10条がいう消火器具にあたります
- 水バケツは容量8リットル以上のものが3個そろって1単位です。
- 乾燥砂はスコップを備えた50リットル以上のもの1塊で0.5単位になります
- 簡易消火用具の能力単位は 消火器の能力単位の二分の一を超えられません。
- 乾燥砂と膨張ひる石は建築物その他の工作物の欄に○が付いていません
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目次
消火器の代わりになる消火器具にはなにがあるのか

消防法施行令は、消火器と簡易消火用具をまとめて消火器具と呼んでいます。
一方が消火器で、もう一方が簡易消火用具です。
簡易消火用具にあたるのは水バケツ・水槽・乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩で、いずれも消防法施行規則第6条第1項に能力単位の数え方が書かれています。
どれも身近な道具ですが、法令が容量や個数まで決めている以上、置いてあるだけでは消火器具として認められません。
まずは自分の建物にあるバケツや砂が、消火専用のものとして管理されているかを見てください。
バケツも法令に出てくる言葉だったんですね。
ただの入れ物だと思っていました。
消防法施行令第10条にそのまま書かれています。
ご自分の建物のバケツが消火専用かどうかを先に確かめてください。
水バケツや乾燥砂はいくつで一単位になるのか

簡易消火用具にも、容量と個数に応じた数え方が決められています。
水バケツは容量8リットル以上のものを3個そろえて、ようやく1単位です。
水槽は消火専用バケツを3個以上備えた80リットル以上のもので1.5単位、消火専用バケツを6個以上備えた190リットル以上のもので2.5単位になります。
乾燥砂はスコップを備えた50リットル以上のもの1塊で0.5単位、膨張ひる石と膨張真珠岩はスコップを備えた160リットル以上のもの1塊で1単位です。
スコップや消火専用バケツを備えていることまでが条件なので、砂だけが積んである状態では単位に数えられません。
8リットルのバケツが3個でようやく1単位ですか。
思っていたよりずっと多いです。
消火器の能力単位が3であれば、同じ単位をバケツでそろえるのに9個が要ります。
簡易消火用具だけで基準を満たせるのか

消防法施行規則は、簡易消火用具に頼りきることを認めていません。
必要な能力単位の合計数が2以上になる建物では、簡易消火用具で数えてよいのは消火器の能力単位の二分の一までです。
言いかえると、消火器が足りない分をバケツや砂だけで全部埋めることはできません。
ただし書きにあたるのは、アルカリ金属の過酸化物や鉄粉・金属粉・マグネシウム、それに禁水性物品に対して乾燥砂などを設ける場合です。
水をかけられない物を扱う場所では、その分の砂に上限がかからないという読み方になります。
つまりバケツを増やして消火器を減らす作戦は使えないということですね。
そのとおりです。
先に消火器の本数を決めて、そのうえで簡易消火用具を補う順番で考えてください。
実務で見落としやすいのはどこか

消防法施行令別表第二は、消火器具ごとに何の消火に適応するのかを○印で示しています。
別表第二を見ると、乾燥砂と膨張ひる石には建築物その他の工作物の欄に○が付いていません。
延べ面積から求める基本の能力単位は、建築物その他の工作物に適応する消火器具でそろえる決まりなので、砂をいくら置いてもその数には入らないという結果になります。
水バケツと水槽には建築物その他の工作物の欄に○が付いていますが、電気設備の欄には付いていません。
しかも電気設備の分は、条文が消火器具ではなく消火器を設けることと定めています。
電気室や配電盤のある部屋にバケツを置いても、床面積100平方メートル以下ごとに1個という数には数えられません。
電気室にバケツというのは、たしかに見たことがないです。
そういう理由だったのですね。
別表第二の○印がそのまま答えになっています。
電気設備のある部屋は消火器で数えると覚えてください。
明日からなにを確認すればよいのか

消防用設備等は設置したあとも維持しなければならないと、消防法が定めているからです。
水バケツなら、容量が8リットル以上あるか、水が入っているか、消火専用のものとして使われているかを見ます。
乾燥砂と膨張ひる石なら、量が足りているかに加えてスコップが備えてあるかを見ます。
掃除に使ったスコップが戻っていないだけで、単位の条件から外れてしまいます。
置き場所についても、通行又は避難に支障がなく容易に持ち出すことができる箇所であることが、消防法施行令第10条第2項に定められています。
今日のうちに、バケツの水位とスコップの有無だけでも見て回ってください。
スコップが無いだけで数から外れるとは知りませんでした。
今日のうちに見て回ります。
点検と報告の義務は消防法第17条の3の3にあります。
年に一度の点検のときに、あわせて確認してもらうとよいです。
よくある質問
まとめ
まずはバケツの水位とスコップから見てみます。
足りない分は消火器で埋めるようにします。
その順番で正解です。
必要な能力単位の算定でお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条第1項・第17条の3の3
- 消防法施行令第10条・別表第二
- 消防法施行規則第6条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





