特別養護老人ホームや病院の防火管理者から「うちのスプリンクラーは事務所ビルで見るものと形が違う」という相談を受けることがあります。
天井に小さな丸いヘッドが埋まっていて、居室ごとに一つずつ付いている、という見え方をします。
これは施工業者の好みではなく、消防法施行令が福祉施設と病院についてだけヘッドの種別まで省令に委ねているからです。
種別は基準面積と天井の高さという2つのものさしで決まります。
うちの特養、居室の天井のスプリンクラーが小さくて数が多いんです。
他の建物で見るものと違うので不安になってきました。
それは小区画型ヘッドだと思います。
福祉施設と病院は、消防法施行令がヘッドの種別まで省令に委ねている数少ない用途です。
種別が決まっているというのは、こちらで選べないということでしょうか。
選べる幅が基準面積と天井の高さで変わる、という決まり方をしています。
まず自分の建物がどの区分に落ちるのかを押さえておきましょう。
- 消防法施行令第12条第2項第2号ハが、福祉施設と病院についてはヘッドの種別そのものを総務省令に委ねています
- 対象になるのは令第12条第1項第1号と第9号の防火対象物で、令別表第一(六)項イ(1)(2)と(六)項ロの福祉施設が中心です
- 消防法施行規則第13条の5第1項の表が、基準面積千平方メートルと天井の高さ三メートル・十メートルで種別を振り分けます
- 基準面積は延べ面積と同じではありません。規則第13条の5の2が定める部分を差し引いて数えます
- 小区画型ヘッドは水平距離二・六メートル以下で、一つのヘッドが受け持つ面積は十三平方メートル以下です
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目次
病院や福祉施設のスプリンクラーヘッドはなぜ種別まで決められているのか

ところが福祉施設と病院は、その並びから外れたところに置かれています。
同じ第2号でも、イは「水平距離が一・七メートル以下」「二・一メートル以下」といった距離だけを表で示し、種別には触れていません。
ハに挙がっているのは第1号(福祉施設と病院)と第5号から第7号まで(ラック式倉庫・地下街・準地下街)と第9号(地下街の中の福祉施設等)で、いずれも火災が起きたときに人が自力で逃げにくい場所か、煙がこもりやすい場所です。
つまり令は、この用途については距離を決めるだけでは足りないと考え、どのヘッドを使うかまで省令に決めさせています。
自分の建物がハの側にいるのかイの側にいるのかで、読みにいく条文が変わるということです。
同じスプリンクラーなのに、読む条文が用途で分かれるんですね。
そうなんです。
まず設置届や消防用設備等点検結果報告書で、自分の建物が令第12条第1項の何号なのかを確かめてみてください。
この決まりはどの建物のどの部分に効くのか

まず第1号の並びを見てみます。
(六)項イ(1)(2)は特定の診療科名と療養病床等を持つ病院や四人以上の入院施設を持つ診療所、(六)項ロ(1)(3)は特別養護老人ホームや養護老人ホーム、乳児院などで、いずれも面積に関係なくこの第1号に入ります。
一方で救護施設や障害児入所施設、障害者支援施設が並ぶ(六)項ロ(2)(4)(5)は、介助がなければ避難できない者を主として入所させるもの以外なら二百七十五平方メートル以上に限られます。
第9号は地下街の中に福祉施設等が入っている場合で、地下街そのものが第6号で対象になっているときは第6号が優先します。
なお第1号には「総務省令で定める構造を有するもの以外のもの」という但し書きが付いていて、規則第12条の2の区画を備えていればそもそも設置義務から外れます。
小さなグループホームでも面積に関係なく対象になることがあるんですね。
入所者の状態で(六)項ロの枝番が動くので、そこが出発点になります。
介護度や障害支援区分が変わったときは、用途区分から確かめ直してください。
基準面積と天井の高さで種別はどう変わるのか

上欄が建物の区分、下欄が使えるヘッドの種別という形で並んでいます。
表の区分は5つありますが、天井が十メートルを超える部分を除けば、どの区分にも小区画型ヘッドが顔を出します。
逆に標準型ヘッドが使えるのは基準面積が千平方メートル以上のときだけで、千平方メートル未満の建物では選べません。
開放型スプリンクラーヘッドが加わるのは天井が三メートル以上になってからで、天井の低い居室には出てきません。
福祉施設の居室でよく見かけるヘッドが小さいのは、この表のいちばん上の区分に落ちる建物が多いからです。
つまり千平方メートル未満の施設なら、居室は小区画型ヘッド一択ということですね。
天井が三メートル未満ならそのとおりです。
吹き抜けのある食堂やホールがあると同じ建物でも区分が変わるので、部分ごとに見てください。
基準面積は延べ面積と同じではないのか

しかし基準面積は令第12条第2項第3号の2にいう床面積の合計で、差し引ける部分があります。
第1号が指す規則第13条第3項第7号と第8号は、手術室や分娩室、人工血液透析室、重症患者集中治療看護室、レントゲン室といった病院の特殊な室です。
これらは第2号の防火措置が講じられていて、第3号の大きな地階や無窓階などに無い場合に限って、基準面積から外れます。
さらに差し引ける合計には上限があり、延べ面積の二分の一を超えて差し引くことはできません。
延べ面積が千百平方メートルの病院でも、条件を満たす手術室等を差し引いた基準面積が千平方メートル未満になれば、居室のヘッドは小区画型ヘッドに限られることになります。
延べ面積の数字だけ見て千平方メートル以上だと思い込んでいました。
そこが分かれ目になります。
設計時の計算書に基準面積の算定が残っているはずなので、点検業者さんと一緒に探してみてください。
明日からなにを確かめればよいのか

小区画型ヘッドの場合は距離と面積の2つが条件になります。
第13条の3第2項は本来ホテルや福祉施設の宿泊室等に向けた規定ですが、第13条の5第2項は第1号を除いて準用しています。
第1号は「宿泊室、病室その他これらに類する部分に設けること」という限定なので、これが外れることで居室に限らず対象の部分すべてに同じ距離と面積の条件がかかります。
そのため居室を仕切って二部屋にしたり、倉庫を作って壁を立てたりすると、ヘッドが一つも掛からない部分ができてしまいます。
用途変更や間取りの変更を計画したら、図面にヘッドの位置を重ねて十三平方メートルの受け持ちが崩れていないかを先に確かめてください。
去年、談話室を仕切って相談室を作ったんですが確かめていません。
まずその部屋の天井を見上げて、ヘッドが入っているかを確かめましょう。
入っていなければ次の点検のときに設備業者へ相談してください。
よくある質問
まとめ
明日さっそく相談室の天井を見上げてきます。
基準面積の計算書も探してみます。
それがいちばん早い確認になります。
種別や間仕切りの判断で迷われたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条の2・第13条・第13条の3・第13条の5・第13条の5の2・第13条の6
- 閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令(昭和40年自治省令第2号)第2条・第14条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





