廊下に下りた防火シャッターの真ん中に小さな戸が付いているのを見たことがあると思います。
現場では「くぐり戸」と呼ばれていますが消防法令の条文にはその大きさまで書き込まれています。
幅と高さと床からの立ち上がりの三つが決められていて一つでも外れると区画として認めてもらえません。
この記事では消防法施行規則と建築基準法施行令の条文だけを見てくぐり戸の寸法と要否の線引きを整理します
うちの廊下のシャッターに小さい扉が付いてるんですけど大きさの決まりってあるんですか。
見た目は普通のドアより小さくて低い気がします。
あります。
消防法施行規則が幅と高さと下端の三つを数字で決めています。
ということは全部の防火戸に付けないといけないんでしょうか。
付いていない戸もたくさんあります。
そこが分かれ目です。
普段は開けておく防火戸を主たる避難経路に使うときだけ求められます。
- くぐり戸とは条文でいう直接手で開くことができ かつ 自動的に閉鎖する部分のことで消防法施行規則が寸法まで定めている
- 寸法は幅75センチメートル以上 高さ1.8メートル以上 下端の床面からの高さ15センチメートル以下の三つ
- 求められるのは居室から地上に通ずる主たる廊下や階段その他の通路に設ける戸に限られる
- 随時開くことができる自動閉鎖装置付きの防火戸を選べばくぐり戸は求められない
- くぐり戸付きの防火シャッターがある場所は避難口誘導灯を設ける箇所にもなる
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目次
くぐり戸とは防火戸のどの部分を指すのか

条文は同じものを機能で書いていて寸法までそこに並んでいます。
(ロ) 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路に設けるものにあつては、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖する部分を有し、その部分の幅、高さ及び下端の床面からの高さが、それぞれ、七十五センチメートル以上、一・八メートル以上及び十五センチメートル以下であること。
条文は「直接手で開くことができ かつ 自動的に閉鎖する部分」と書いていて別の戸を足せとは言っていません。
シャッターに切られた小さな扉も開き戸の中に組み込まれた小扉もこの「部分」に当たります。
そして数字は幅75センチメートル以上と高さ1.8メートル以上と下端の床面からの高さ15センチメートル以下の三つです。
現場でまず測るのはこの三つで足りるということになります。
別の扉を増やすんじゃなくてシャッターの一部でよかったんですね。
それなら今あるもので測れます。
そのとおりです。
コンベックスを一本持って幅と高さと敷居を当たってみてください。
どの防火戸にくぐり戸が求められるのか

防火戸の作り方の選択肢の中の一つとして出てきます。
ニ ハの開口部には、防火戸(三階以上の階に存する開口部にあつては特定防火設備である防火戸に限り、廊下と階段とを区画する部分以外の部分の開口部にあつては防火シャッターを除く。)で、随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの若しくは次に定める構造のもの又は防火戸(略)を設けたものであること。
(イ) 随時閉鎖することができ、かつ、煙感知器の作動と連動して閉鎖すること。
「随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの」を選んだ場合はイもロも付いてきません。
普段から閉めておいて開けても自然に閉じる戸なので避難のときに手で開ける部分をわざわざ切る必要がないからです。
これに対して「次に定める構造のもの」を選ぶと煙感知器連動のイが必須になりさらにロのくぐり戸が付いてきます。
普段は開けておきたい大きなシャッターや大扉を使う建物ほどくぐり戸の話が出てくるのはこのためです。
うちは普段開けっぱなしのシャッターなので後ろの型ですね。
だからくぐり戸が付いていたのか。
その見立てで合っています。
あわせて煙感知器と連動して閉じるかも確かめておいてください。
くぐり戸の寸法はどう決められているのか

建築基準法施行令の側は同じ戸を性能の言葉で書いています。
(略)次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの
ハ 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の通行の用に供する部分に設けるものにあつては、閉鎖又は作動をした状態において避難上支障がないものであること。
ニ 常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあつては、火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合のいずれかの場合に、自動的に閉鎖又は作動をするものであること。
建築基準法施行令は「閉鎖した状態において避難上支障がない」という結果だけを求め具体の作りは国土交通大臣が定める構造方法に委ねています。
一方の消防法施行規則は幅75センチメートル以上と高さ1.8メートル以上と下端15センチメートル以下という数字を条文に置いています。
どちらも対象は同じ「居室から地上に通ずる主たる廊下 階段その他の通路」に設ける戸です。
測って判断できるのは消防法施行規則のほうなので現場の確認はこの三つの数字から入るのが早道です。
つまり数字で当たれるのは消防法施行規則のほうということですね。
建築の図面を待たなくても測れます。
そうです。
ただし下端だけは床の仕上げをやり直すと変わるので改修のたびに測り直してください。
くぐり戸がある場所には避難口誘導灯も要るのか

そのため誘導灯の条文にも名指しで出てきます。
ニ イ又はロに掲げる避難口に通ずる廊下又は通路に設ける防火戸で直接手で開くことができるもの(くぐり戸付きの防火シャッターを含む。)がある場所(自動火災報知設備の感知器の作動と連動して閉鎖する防火戸に誘導標識が設けられ、かつ、当該誘導標識を識別することができる照度が確保されるように非常用の照明装置が設けられている場合を除く。)
条文は屋外への出入口や直通階段の出入口と並べてこの場所を挙げ避難口誘導灯の設置箇所にしています。
シャッターが下りると廊下は一度そこで行き止まりに見えるので目印が要るという考え方です。
ただし括弧の中に外れる場合が書かれていて防火戸に誘導標識が設けられ非常用の照明装置でその標識を識別できる照度が確保されているときは除かれます。
シャッターを増設したのに誘導灯を足していない場合はここを見直してください。
戸の話だと思っていたら誘導灯まで関わるんですね。
設備の担当にも伝えておきます。
ぜひ伝えてください。
シャッターを直したときは誘導灯の位置も一緒に見るのが確実です。
明日からなにを確認すればよいのか

管理の義務は消防法の本則に置かれています。
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、又はみだりに存置されないように管理しなければならない。
まずくぐり戸の幅と高さと下端をコンベックスで当たって三つとも満たしているかを記録に残してください。
次にその戸の前後に台車や什器が置かれていないかを歩いて確かめます。
条文が言う「閉鎖の支障になる物件」はシャッターの下だけでなくくぐり戸の開き方向にも当てはまります。
最後に消防計画の日常の確認事項へ「くぐり戸の寸法と前後の障害物」を一行足しておけば次の担当者にも引き継げます。
測って片づけて消防計画に書く。
これなら今日から回せます。
その三つで十分です。
記録の様式に迷ったら所轄消防署の指導様式に合わせておくと後が楽になります。
よくある質問
まとめ
あのシャッターの小さい扉に三つの寸法があるとは知りませんでした。
さっそく測ってきます。
測った結果の見方で迷ったら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の4
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条の2第1項第1号・第13条第1項第1号・第28条の3第3項第1号
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第19項・第123条第1項第6号
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





