台風や地震のあと、停電が何日も続くことがあります。
そのあいだ消防用設備等を支えているのが、蓄電池設備や非常電源専用受電設備といった非常電源です。
ところが非常電源の容量は分単位で決められていて、長く続く停電には最初から足りません。
消防庁が示したのは設備が作動しない場合に備えて人が動くという考え方です。
台風のあと停電が三日続いて、ビルの設備がほとんど止まってしまいました。
こういうとき何から手を付ければよいのでしょうか。
消防庁がその手順を通知で示しています。
まずは非常電源がどれくらいもつのかから見ていきましょう。
非常電源があるのだから、停電しても設備は動き続けるものだと思っていました。
非常電源の容量は分単位で決められています。
止まった前提の備えが要ります。
- 平成30年10月2日の消防予第575号・消防危第184号が求めているのは消防用設備等が作動しない場合に備えた対応です
- 自動火災報知設備の非常電源は蓄電池設備で10分間作動できる容量が下限です
- 誘導灯の非常電源は20分間で、一定の避難口や階段に設けるものは60分間です
- 消火設備は消火器の設置場所と使用方法と、自動消火設備の手動による放出操作手順を再確認します
- 警報設備が働かないぶんは巡回で火元を警戒し連絡と周知の体制を確保します
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目次
長時間の停電を心配する通知はなぜ出されたのか

実際に停電が続いている最中に、消防庁から現場へ向けて出されました。
発出は平成30年10月2日、消防庁予防課長と消防庁危険物保安室長の連名で、各都道府県消防防災主管部長と東京消防庁・各指定都市消防長にあてられました。
きっかけは同年台風24号による停電が一部地域で続いていたことです。
通知は消防機関に対し、立入検査や問合せの機会を使って防火対象物の関係者へ周知するよう求めています。
つまり建物側から見れば、消防署から説明を受ける前に自分で読んでおける内容だということです。
災害が起きてから慌てて出された通知ということですか。
停電が長引くたびに同じ内容が出ています。
次は非常電源がどれくらいもつのかを見ていきましょう。
非常電源は停電のときどれくらいもつのか

火災が起きたときに必要な時間だけ設備を動かすための容量が定められています。
自動火災報知設備の非常電源に蓄電池設備を使う場合、容量の下限は有効に10分間作動できることです。
誘導灯は20分間で、消防庁長官が定める要件に該当する防火対象物の一定の避難口や階段に設けるものだけが60分間とされています。
非常電源の種類そのものは消防法施行規則第12条第1項第4号に定めがあり、非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備の4つです。
このうち非常電源専用受電設備は電力会社からの受電をそのまま使う方式なので、停電すれば同時に止まります。
10分や20分では、何日も続く停電にはとても足りませんね。
足りない前提で書かれているのがこの通知です。
だから作動しない場合に備えよという書き方になっています。
消火と警報と避難でなにを再確認するのか

消火・警報・避難の三つに分けて、それぞれ再確認する対象が挙げられています。
イ 警報設備 防火対象物の関係者等による巡回等によりこんろその他火気使用設備・器具の火元の警戒を入念に行う等、火災の早期発見を図るとともに、警報設備の設置範囲内への連絡及び周知体制を確保すること。
ウ 避難設備 防火対象物の関係者等による避難誘導体制及び避難経路を再確認すること。(同通知 記1(1))
消火設備では、まず消火器と簡易消火用具がどこにあり、どう使うのかを確かめます。停電した建物は暗いので、置き場所を体で覚えているかどうかが分かれ目になります。
自動消火設備については手動による放出操作手順の再確認が求められています。ふだんは自動で動くものほど、手で動かす手順を知っている人が少ないためです。
警報設備では、自動火災報知設備が火災を見つけてくれない前提に立ち、人が巡回してこんろその他の火気使用設備・器具の火元を警戒します。
あわせて、警報設備の設置範囲内へ知らせるための連絡及び周知体制を確保しておくことと、避難誘導体制と避難経路を再確認することが挙げられています。
消火と警報と避難の三つを見直せばよいということですね。
その順番で構いません。
とくに手動による放出操作手順は、停電する前に確かめておいてください。
停電中の電気機器でなにを見落とすのか

停電したときに切っておかなかった機器が、電気が戻った瞬間に動き出すことです。
電気こんろや電子レンジを使っている最中に停電すると、機器は止まりますがスイッチは入ったままです。
そのまま人が離れ、数時間後に電気が戻ると、誰もいない場所で加熱だけが再開します。
だから通知は、使用中に停電した際はスイッチを切る等の措置をすることと書いています。テナントや在館者にも周知を図ることが求められている点も見落とせません。
このほか、自動火災報知設備には長時間停電で予備電源の容量が低下すると異常警報を発するものがあり、警報音の停止方法や復電時の点検方法を点検事業者等に確認しておくことも挙げられています。
停電したらスイッチを切っておくものだとは知りませんでした。
電気が戻ったときに火が出ることがあります。
在館者や利用者にも先に周知しておいてください。
明日からなにを確認すればよいのか

先に決めて、書いて、担当を割り当てておく必要があります。
通知が挙げた項目は、そのまま消防法第8条第1項が防火管理者に求めている業務の中に収まります。
まず消火器と簡易消火用具の設置場所を図面に落とし、暗い中でもたどり着ける経路を決めます。
次に自動消火設備がある建物では、手動による放出操作手順を書き出し、操作できる人を複数決めておきます。
最後に停電時の巡回の経路と時間、火元を警戒する対象、連絡先の一覧を消防計画に書き足せば、通知の内容は訓練で確かめられる形になります。
停電のときの手順も消防計画に書いておけばよいのですね。
巡回の経路と担当まで書いておくと動けます。
そこまで書ければ訓練でも確かめられます。
よくある質問
まとめ
これからは設備が止まった前提で決めておきます。
台風が来る前に消防計画を見直します!
その順番がいちばん確実です。
迷うところがあれば㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 風水害、地震等の災害に伴う長時間停電を踏まえた防火対策の徹底について(平成30年10月2日 消防予第575号・消防危第184号)
- 消防法第8条第1項
- 消防法施行規則第12条第1項第4号
- 消防法施行規則第24条第1項第4号ロ
- 消防法施行規則第28条の3第4項第10号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





