家族だけで切り盛りする小さな民宿やペンション。
部屋数も少なく、宿泊客の顔もだいたい見えています。
それでも消防法は、規模が小さいことを理由に防火管理の義務を軽くしてはいません。
消防庁の通知が名指ししたのはこの種の宿こそ防火安全対策が安易になりがちだという点です。
うちは家族で営んでいる小さなペンションです。
部屋も少ないので、防火管理者までは要らないと思っていました。
決まるのは建物の広さではなく収容人員です。
従業者と宿泊客を合わせて30人以上なら選任が必要になります。
数えたことがありませんでした。
設備のほうは消火器と自動火災報知設備が付いています。
付いているだけでは足りません。
設置したあとも所定の機能を保てているかまで問われます。
- 民宿やペンションは令別表第一(5)項イの宿泊施設にあたり、収容人員が30人以上なら防火管理者の選任が必要です
- 消防庁は昭和60年に消防予第53号を出し、規模が小さく家族により経営されている宿ほど対策が安易になりがちだと指摘しました
- 通知が求めたのは防火管理者の選任と消防計画の作成と避難訓練の実施という防火管理の基本です
- 避難訓練は宿泊客の多い時期等に宿泊客の協力を得て実施することが肝要とされました
- 消防用設備等は設置して終わりではなく設置後の機能維持までが求められます
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目次
民宿やペンションへの通知はなぜ出されたのか

その2日後に消防庁が出したのが、民宿やペンションを名指しした通知です。
通知に添えられた別紙によれば、この宿の消防法上の収容人員は49人で、防火管理者の選任義務がありました。
それにもかかわらず、防火管理者は未選任のままだったと記されています。
消火器と自動火災報知設備と誘導灯は設置されていましたが、増改築した部分の設置状況は調査中とされました。
自分の宿を小さいから大丈夫と考えていないか、まずそこを疑うところから始まります。
火災の2日後に通知が出たというのは、それだけ深刻だったということですね。
そのとおりです。
通知は簡易宿所という言い方で、この種の宿をまとめて名指ししました。
小さな宿でも消防法の義務は軽くならないのか

そのうえで義務が始まるかどうかは、建物の広さではなく人の数で決まります。
民宿やペンションは令別表第一の(5)項イ「旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの」に含まれます。
収容人員は従業者の数に宿泊室ごとに算定した数などを足して求め、和室は床面積を6平方メートル、簡易宿所や主として団体客を宿泊させるものは3平方メートルで割ります(消防法施行規則第1条の3)。
さらに自動火災報知設備は、(5)項イであれば延べ面積に関係なく設置対象です(消防法施行令第21条第1項第1号イ)。
小さいから対象外という考え方は、このどちらの条文にもありません。
収容人員には、住み込みで働く家族も入るのですか。
従業者として働いているなら入ります。
従業者の数に宿泊室から算定した数を足すので、家族で回している宿ほど見落としやすいところです。
通知は宿の側になにを求めたのか

防火管理の徹底と、消防用設備等の設置および維持管理の徹底です。
防火管理者を選び、消防計画をつくって届け出て、その計画に基づいて訓練を行う。
これは消防法第8条第1項と消防法施行令第3条の2が定める防火管理者の業務そのものです。
通知はそこに宿泊客の協力という視点を加えました。
そして設備については、付いているかどうかではなく所定の機能を維持できているかを見るよう求めています。
つまり、選任して計画を出して訓練する、という順番ですね。
その順番で合っています。
三つそろえて初めて防火管理を行ったことになります。
実務で見落としやすいのはどこか

訓練に誰を巻き込むかと、設備をどう見るかです。
(5)項イは消火訓練と避難訓練が年2回以上の義務で、実施の前にはあらかじめ消防機関へ通報することも求められます。
家族と数人のアルバイトだけで動かす訓練は、満室の夜に起きる本番とかけ離れてしまいます。
設備のほうも、(5)項イは点検の結果を1年に1回報告する区分です(消防法施行規則第31条の6第3項第1号)。
火災の起きた宿は小屋裏を客室に改築していましたが、別紙はその部分の設備の設置状況を調査中としています。
訓練の前に消防署へ連絡が要るとは知りませんでした。
忘れやすいところです。
実施の前にあらかじめ通報すると規則に書かれています。
明日からなにを確かめればよいのか

人を数えるところから始めます。
まず収容人員を数え直し、30人以上なら防火管理者を選んで選任届を所轄消防署へ出します。
次に消防計画を作成して届け出て、消火訓練と避難訓練を年2回以上、事前の通報のうえで実施します。
訓練の日には宿泊客の多い時期を選び、避難口の案内と誘導を実際に声に出してみます。
最後に消防用設備等の点検を済ませ、1年に1回の報告まで出せば、通知が求めた二つの柱がそろいます。
収容人員を数えるところから始めればよいのですね。
そこが起点です。
数が出れば、選任届を出すかどうかが決まります。
よくある質問
まとめ
まず収容人員を数えてみます。
訓練の日にはお客様にも声をかけてみます!
数えて選んで届け出て、訓練まで通せば通知が求めた形になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 民宿、ペンション等に対する防火安全の徹底について(昭和60年4月3日 消防予第53号 消防庁予防救急課長)
- 消防法第8条第1項
- 消防法施行令第1条の2第3項第1号ロ
- 消防法施行令第3条の2
- 消防法施行令第21条第1項第1号イ
- 消防法施行令別表第一(五)項イ
- 消防法施行規則第1条の3
- 消防法施行規則第3条第10項および第11項
- 消防法第17条の3の3および消防法施行規則第31条の6第3項第1号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。通知が取り上げた火災については施設の名称および所在地を記載していません。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





