劇場や公会堂の舞台を見上げると天井のずっと上に鉄の棚のようなものが組まれています。
その裏側にもスプリンクラーヘッドが付いていますが客席のものとは形が違います。
舞台部に設けるのは栓のない開放型スプリンクラーヘッドで一斉開放弁などを開けなければ水が出ません。
この記事では消防法施行令と消防法施行規則の条文だけを見て弁と放水区域の決まりを整理します。
うちのホールは舞台の上のヘッドだけ形が違うと言われました。
客席のものとどこが違うのでしょうか。
舞台部のものは栓のない開放型スプリンクラーヘッドです。
熱で溶ける栓がないので弁を開けるまで水は出ません。
弁を開けるということは誰かが操作するのですか。
火事のときにそんな余裕があるのか心配です。
自動で開く一斉開放弁と人が開ける手動式開放弁のどちらかを放水区域ごとに設けます。
置く高さまで条文で決まっているので現場で確かめられます。
- 舞台部に設けるスプリンクラーヘッドは開放型スプリンクラーヘッドとされています
- 開放型を用いる設備の一斉開放弁又は手動式開放弁は放水区域ごとに設けることとされています
- 一斉開放弁の起動操作部又は手動式開放弁は床面からの高さが0.8メートル以上1.5メートル以下の箇所です
- 放水区域の数は1つの舞台部又は居室につき4つ以下とされています
- 二以上の放水区域を設けるときは隣接する放水区域が相互に重複するようにすることとされています
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目次
舞台のスプリンクラーヘッドはなぜ栓がないのか

どちらを使うかは消防法施行規則が防火対象物ごとに決めています。
条文は令別表第一(一)項の防火対象物の舞台部に設けるものは開放型スプリンクラーヘッドとすると定めています。
開放型は熱で溶ける栓を持たないので自分では作動せず配管に水が来れば区域内の全部のヘッドから一斉に水が出ます。
だからヘッドの側ではなく弁の側で水を出すかどうかを決める仕組みになっています。
自分のホールの舞台の上を見上げて栓があるかどうかを確かめるところから始めてください。
熱で溶ける栓がないから自分では作動しないのですね。
ヘッドだけ見ていても分からないわけです。
そのとおりです。
まずは舞台の上のヘッドに栓があるかどうかを図面で確かめてください。
どの舞台部に開放型スプリンクラー設備が要るのか

消防法施行令は舞台部の床面積で線を引いています。
舞台部には舞台そのものだけでなく接続して設けられた大道具室及び小道具室が含まれると条文が定義しています。
その床面積が地階と無窓階と4階以上の階では300平方メートル以上その他の階では500平方メートル以上になると同号の対象です。
ヘッドを設ける場所は天井や小屋裏だけでなくすのこ又は渡りの下面の部分にも及びます。
すのこや渡りの上部に可燃物が設けられていなければ天井側は省けるというただし書もあるので図面と現場を見比べてください。
大道具室まで舞台部に入るとは思っていませんでした。
面積の数え方が変わってきますね。
条文が定義しているとおりです。
まずは図面で舞台部の範囲を線で囲ってみてください。
一斉開放弁と手動式開放弁はどこに設けることになっているのか

その弁について消防法施行規則が置き場所と操作に必要な力まで決めています。
置く高さは床面から0.8メートル以上1.5メートル以下で立ったまま手が届く範囲に収められています。
条文はあわせて火災のとき容易に接近することができることも求めているので前に物を置いてはいけません。
手動式開放弁は開放操作に必要な力が150ニュートン以下のものであることとされています。
弁の前に平台や大道具が積まれていないかを公演のたびに見る習慣を作ってください。
高さが決まっているのは手が届くようにするためですね。
前に物を置いたら台無しです。
そこが要点です。
弁の前は物を置かない場所として床にテープで示しておくと守られやすくなります。
放水区域の決め方で見落としやすいのはどこか

分け方には数の上限と重なりについての決まりがあります。
放水区域の数は1つの舞台部又は居室につき4つ以下とされています。
2つ以上に分けるときは隣接する放水区域が相互に重複するようにすることとされているので境目に水の届かない帯を作ってはいけません。
ただし書で放水区域の数を五以上とすることができるとされているのは居室の場合で舞台部については書かれていません。
弁の二次側配管には放水せずに作動を試験するための装置を設けることとされているので点検のたびに舞台を濡らす必要はありません。
区域を細かく分けたほうが安全だと思っていました。
上限があるとは知りませんでした。
数と重なりの両方が条文で決まっています。
設計図の放水区域の割り付けを一度数えてみてください。
明日からなにを確かめればよいのか

点検と報告の義務は消防法が定めています。
まず図面で舞台部の範囲を囲い大道具室と小道具室が入っているかを見ます。
次に一斉開放弁の起動操作部と手動式開放弁の位置を回り前に物が置かれていないかを確かめます。
最後に放水区域の割り付け図で区域の数と隣り合う区域の重なりを数えます。
点検と報告は消防法第17条の3の3に基づく義務なので気づいた不備は点検業者にそのまま伝えてください。
図面と現場を突き合わせればよいのですね。
次の公演の前にやってみます。
それで十分です。
放水区域の割り付けは図面が無いと分からないので保管場所も確かめておいてください。
よくある質問
まとめ
栓の有無から放水区域までひとつながりになりました。
次の公演の前に弁の前を片付けます。
その一手がいちばん効きます。
判断に迷ったときは㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条(スプリンクラー設備に関する基準)第1項第二号・第2項第一号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第13条の2(標準型ヘッド等)第1項・第4項第二号
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第14条(スプリンクラー設備に関する基準の細目)第1項第一号・第二号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





