スプリンクラー設備は天井のヘッドが開けば水が出る設備です
その水を押し出しているのが加圧送水装置で、多くの建物ではポンプが使われています
どれだけの量をどれだけの勢いで送るかは、建物ごとに計算して決めることになっています
しかもその計算式は、屋内消火栓設備の規定を借りながらスプリンクラー設備だけの数値に置き換えられています。
点検の書類にポンプの吐出量という欄がありました。
これは何を意味する数字なのでしょうか。
ポンプが一分間に送り出せる水の量です。
同時に開くと想定したヘッドの個数から計算して決まります。
全揚程という欄もありましたが、こちらは高さのことでしょうか。
高さだけではありません。
そこに配管の抵抗と10メートルという決まった数字を積み上げて出します。
- スプリンクラー設備の加圧送水装置の基準は規則第14条第1項第十一号にあります。
- ポンプの吐出量はヘッドの個数に90リットル毎分を乗じて求めます。
- 小区画型ヘッドは60リットル毎分でラック式倉庫は130リットル毎分に変わります。
- 落差にも全揚程にも共通して10メートルを足すことになっています。
- 放水圧力が一メガパスカルを超えないための措置も同じ号で求められています。
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目次
スプリンクラー設備の水はなにが押し出しているのか

実際には水源から水を汲み上げて押し出す装置があり、それが加圧送水装置です。
規則第14条第1項第十一号はイで高架水槽、ロで圧力水槽、ハでポンプの基準をそれぞれ並べています。
柱書が引いている第12条第1項第七号は屋内消火栓設備の条で、そこから水槽の付属品やポンプの構造といった共通部分を借りてきています。
借りるのは装置の作りの部分だけで、量や高さといった数値はイからハまでにスプリンクラー設備専用のものが置かれています。
点検結果報告書で加圧送水装置の欄を見るときは、まず自分の建物がこの三つのどれなのかを確かめてから数値を読むと、業者の説明が追いかけやすくなります。
うちはポンプ室があるのでポンプの方式ということですね。
ほとんどの建物がポンプ方式です。
ですから読むのは第十一号ハということになります。
ポンプの吐出量はなにをもとに決まるのか

同時に開くと見込んだヘッドの個数が、そのまま計算のもとになります。
掛ける量は原則が90リットル毎分で、小区画型ヘッドなら60リットル毎分、ラック式倉庫なら130リットル毎分に変わります。
掛けられる個数は前条にあたる規則第13条の6第2項第一号から第四号までのもので、これは水源の量を計算するときに使う個数と同じです。
つまり水源の量とポンプの吐出量は同じ個数を土台にしています。
改装でヘッドの種別が標準型から小区画型に変わったり、倉庫の棚をラック式にしたりすると、この掛ける量そのものが動くので、工事の相談をするときはポンプまで話が及ぶことを見込んでおいてください。
ヘッドの種別を変えるとポンプの話にもなるのですね。
個数と掛ける量の両方が動きます。
ヘッドだけ替えれば済むと思い込まないでください。
落差や全揚程に足す10メートルはなにを表しているのか

どちらの式にも同じ数字が末尾に置かれています。
規則第13条の6第2項は、標準型ヘッドの性能を放水圧力が〇・一メガパスカル以上と定めており、水の高さに直すとおよそ10メートルにあたります。
ですから式は、配管を通るときに失われる分と持ち上げる高さの分に、ヘッドの先で残しておく分を足すという組み立てになっています。
圧力水槽を用いる場合のロも同じ考え方で、こちらは高さではなく圧力の単位で0.1メガパスカルを足す形です。
同じ式を屋内消火栓設備で見ると足す数字は17メートルで、しかも消防用ホースの摩擦損失水頭という項が一つ多く、ホースを使わないスプリンクラー設備には最初からその項がありません。
つまり最後の数字はヘッドの分の取り置きということですね。
そのとおりです。
ですから配管を長くする改修をするとh1が増えてポンプが足りなくなることがあります。
実務で見落としやすいのはどこか

ところが規則は上限のほうにも一行を置いています。
ニが求めているのは一メガパスカルを超えないための措置で、屋内消火栓設備の0.7メガパスカルとは別の数値が置かれています。
もう一つ見落としやすいのが柱書のただし書で、補助散水栓を設けている建物では計算がひとつ増えます。
スプリンクラー設備として求めた値と、屋内消火栓設備の規定の例により求めた値の両方を出して、大きい方を採ることになっているためです。
ホースの箱が付いている建物は補助散水栓がある建物ですので、加圧送水装置の能力がどちらの計算で決まっているのかを設計書類で確かめておいてください。
ホースの箱があるだけで計算が変わるとは思いませんでした。
人が持って使う設備なので勢いが要るのです。
その分だけ全揚程が大きく出ることがあります。
明日からなにを確かめればよいのか

それでも防火管理者の側から確かめられることがあります。
ヘッドの先で出せなければならないのは80リットル毎分以上ですが、ポンプの吐出量を計算するときに掛けるのは90リットル毎分です。
理由までは条文に書かれていませんが、算定に用いる量のほうが大きく置かれているという関係になっています。
確かめ方としては、ポンプの銘板に書かれた吐出量と全揚程を控え、点検結果報告書の同じ欄と食い違っていないかを見るのが早いです。
そのうえで、増築や間仕切りの変更でヘッドを増やした記録があれば、そのときポンプの計算をやり直したかどうかを業者に確かめてください。
銘板の数字と報告書を突き合わせればよいのですね。
それだけでも十分に意味があります。
数字が合わない理由を聞ければ改修の履歴まで見えてきます。
よくある質問
まとめ
まずはポンプの銘板を見に行きます。
そこが分かれば加圧送水装置の話は業者と対等に進められます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第14条第1項第十一号・第十一号の二
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第13条の6第2項・第4項
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第七号
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条第2項第五号・第六号
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





