認知症グループホームなど、避難が困難な方が入所する小規模な福祉施設で、スプリンクラー設備の設置基準が段階的に強化されてきたことをご存知でしょうか。
以前は延べ面積が大きい施設だけが対象でしたが、今では小規模な施設でも設置が求められる場合があります。
この基準の変化には、実際に起きた重大な火災が深く関わっています。
今回は、消防法施行令の改正がどのような経緯で進んだのかを解説します。
うちのグループホームにも、スプリンクラーが必要になったと聞いたのですが。
そのとおりです。
基準は二度の大きな火災を経て変わってきました。
以前確認したときは、面積が足りなくて設置は免除だったはずなんですが。
その面積の要件が、今はもう撤廃されています。
順番に見ていきましょう。
- 認知症グループホームなど令別表第一(6)項ロの一部施設は、平成の二度の重大な火災を経てスプリンクラー設備の設置基準が大きく強化されました
- 平成18年の火災を受けた平成19年の施行令改正で、基準は延べ面積1,000平方メートル以上から275平方メートル以上まで引き下げられました
- 平成25年の火災を受けた平成27年施行の再改正で、面積要件そのものが撤廃され、対象施設は原則として面積を問わず設置が必要になりました
- 延べ面積1,000平方メートル未満の施設では、特定施設水道連結型スプリンクラー設備で設置義務を満たせます
- 猶予期間の途中でも重大な火災は起きており、先延ばしにできる猶予ではありません
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目次
グループホームのスプリンクラーはなぜ面積を問わず必要になったのか

入所者7人が亡くなるという惨事を受け、法令の見直しが動き出しました。
改正前は延べ面積1,000平方メートル以上の施設だけが対象でしたが、改正後は275平方メートル以上に基準が引き下げられました。
経過措置の期間中の平成22年3月には、北海道札幌市の認知症高齢者グループホームでも死者7人の火災が発生しています。
その後、平成25年2月には長崎市のグループホームでも複数の死者を出す火災が起き、基準はさらに見直されることになりました。
これを受けた再改正は、平成27年4月1日に施行されています。
一度の改正で終わっていなかったんですね。
はい。
残念ながら、同じような火災が繰り返し起きてしまった経緯があります。
どんな施設が面積を問わない対象になるのか

まずは自分の施設がどこに当てはまるかを確認しましょう。
(1)と(3)の施設は、令第12条第1項第1号ロに区分され、面積を問わず設置が必要です。
一方で救護施設や障害児入所施設、障害者支援施設などの(2)(4)(5)は同号ハに区分され、避難が困難な方を主として入所させる施設に限って面積を問わない扱いになります。
自分の施設が老人福祉法や障害者総合支援法のどの事業に当たるかは、運営許可の根拠法令から確認できます。
判断に迷う場合は、所轄の消防署に直接確認するのが確実です。
うちの施設がどちらに当たるか、一度確認しないといけませんね。
認知症グループホームであれば、まず対象と考えてよいです。
現行の設置基準はなにを求めているのか

延べ面積によって選べる設備の種類が変わります。
これは特定施設水道連結型スプリンクラー設備と呼ばれ、水道管に直接つなぐことで水源のための貯水施設を省ける仕組みです。
一般的な小規模グループホームは延べ面積がこの範囲に収まることが多く、実務ではこの水道連結型を選ぶ施設が大半です。
1,000平方メートル以上の施設では、水源や加圧送水装置を備えた通常のスプリンクラー設備が必要になります。
どちらを選ぶにしても、面積を問わず設置そのものは避けられません。
水道につなぐだけなら、工事の負担も軽くなりそうですね。
そのとおりです。
それでも水圧など技術上の条件はありますので、業者との相談は必要です。
実務で見落としやすいのはどこか

しかし、この猶予期間の受け止め方には注意が必要です。 平成19年改正の経過措置期間中にも、死者7人を出した火災が起きています。
平成19年改正のスプリンクラー設備の経過措置期間は3年でしたが、その期間中の平成22年3月、北海道札幌市の認知症高齢者グループホームで火災が発生しました。
自動火災報知設備や火災通報装置の設置がまだ経過措置期間中だったことが、被害の拡大に関わったとみられています。
「猶予期間があるからまだ大丈夫」という受け止め方は、実際の火災の前では通用しませんでした。
建物の位置や構造によって設置が免除される場合もありますが、その判断は自己流ではなく所轄消防署の確認を経る必要があります。
猶予期間があるから、まだ大丈夫だと思っていました。
猶予期間は先延ばしのための期間ではありません。
早めの準備をおすすめします。
明日からなにを確認すればよいのか

順番に見ていけば、それほど難しい作業ではありません。
運営許可の根拠法令から、老人福祉法や障害者総合支援法のどの事業に当たるかを整理します。
次に、延べ面積を測り、1,000平方メートルを基準に設備の選択肢を確認します。
既に設置済みの施設でも、設備の点検・整備が適切に行われているかをあわせて見直しておくとよいでしょう。
判断に迷う点があれば、書類を整えたうえで所轄消防署へ事前に相談するのが確実です。
まず消防署に確認してみます。
それが一番確実な進め方です。
分からない点はいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
基準が変わった理由がよく分かりました!
早速、消防署に相談してみます!
ぜひお気軽にご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第12条第1項第1号・第2項第3号の2(昭和36年政令第37号)
- 消防法施行規則第12条の3(昭和36年自治省令第6号)
- 「グループホームなど小規模社会福祉施設の防火安全対策[消防法令の一部改正について]」総務省消防庁(法令改正概要・平成21年4月1日施行)
- 「認知症高齢者グループホームにおける過去の火災について」総務省消防庁
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





