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旅館やホテルの自動火災報知設備はなぜ面積を問わなくなったのか|福山市ホテル火災を契機にした消防法施行令改正を解説

旅館やホテルの自動火災報知設備はなぜ面積を問わないのかを解説する記事のアイキャッチ画像

延べ面積が小さい旅館や診療所だから自動火災報知設備は要らない、と思い込んでいる建物が今も見つかります。
実はこの考え方は、ある宿泊施設の火災をきっかけに通用しなくなりました。
面積の要件がまるごと撤廃された用途があり、小さな施設でも対象になっているからです。
この記事では福山市のホテル火災を出発点に、自動火災報知設備の設置基準がどう変わり、なにが今も義務なのかを解説します。

うちは小さな旅館だから、自動火災報知設備までは関係ないと思っていました。

実は平成27年の改正で、面積を問わず設置が必要になった用途があるんです。
きっかけになった火災があります。

うちの規模でも対象になるんでしょうか。
正直、確認したことがなくて。

はい。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成24年の福山市ホテル火災(死者7名)を契機に、消防法施行令の自動火災報知設備の基準が見直されました。
  • 旅館・ホテル・宿泊所(5)項イと病院・有床診療所(6)項イ(1)から(3)は、延べ面積300平方メートル以上という要件が撤廃され、面積を問わず設置が義務になりました。
  • 改正は平成27年4月1日に施行され、経過措置期限は平成30年3月31日でした。
  • 小規模な施設には、配線工事の要らない特定小規模施設用自動火災報知設備を設置できる特例があります。
  • 経過措置は既に終わっており、対象施設は今すぐ設置状況を確認する必要があります。

平成24年の福山市ホテル火災を契機に消防法施行令が改正され自動火災報知設備が面積を問わず必要になった経緯を示す図解

自動火災報知設備はなぜ面積を問わなくなったのか

木造部分とRC造部分が外階段でつながった古い宿泊施設の建物のイメージ
平成24年5月、広島県福山市のホテルで発生した火災がこの改正の出発点です。
建物の構造上の弱さが被害を広げたことが、その後の議論につながりました。
消防法施行令第二十一条第一項 自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。 一 次に掲げる防火対象物 イ 別表第一(二)項ニ、(五)項イ、(六)項イ(1)から(3)まで及びロ、(十三)項ロ並びに(十七)項に掲げる防火対象物
福山市ホテル火災では、死者7人・負傷者3人という被害が出ました。
総務省消防庁の公表資料によると、この建物は木造部分と鉄筋コンクリート造部分が一体で使われており、階段部分に防火区画がなく、煙が上階の客室まで広がったとされています。
この火災を受けて消防庁の検討会で自動火災報知設備の設置基準が議論され、平成25年の消防法施行令改正につながりました。
つまり条文の第二十一条第一項が今のかたちになった背景には、この火災があるということです。

一件の火災で、基準がここまで変わるものなんですね。

次は、具体的にどの用途が対象になったのかを見ていきましょう。

どの用途のどんな施設が対象になるのか

旅館のフロントカウンターと病院の病床を並べたイメージ
面積を問わず設置が必要になったのは、就寝を伴う4つの用途です。
令別表第一の項番号で確認していきます。
消防法施行令第二十一条第一項第一号ロ 別表第一(六)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)
対象は旅館・ホテル・宿泊所、病院・有床診療所、そして入居や宿泊を伴う高齢者施設です。
先ほどのイの号にある(5)項イが旅館・ホテル・宿泊所、(6)項イ(1)から(3)が病院・有床診療所にあたります。
特別養護老人ホーム等の(6)項ロはこの改正より前からすべて対象でしたが、有料老人ホーム等の(6)項ハは利用者を入居・宿泊させるものに限って新たに対象へ加わりました。
逆にデイサービスのように宿泊を伴わない施設は、この号の対象には入りません。

うちは6人しか泊まれない小さな宿ですが、それでも(5)項イなら対象になるんですか。

はい、規模に関わらず対象です。
次は基準がどう変わったかを見てみましょう。

設置基準はどう変わったのか

小さな建物と大きな建物にそれぞれ同じ火災報知設備が付いているイメージ
改正の前後で変わったのは、面積要件そのものの有無です。
条文には面積の記載が無いことに注目してください。
消防法施行令第二十一条第一項 自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。 一 次に掲げる防火対象物 イ 別表第一(二)項ニ、(五)項イ、(六)項イ(1)から(3)まで及びロ、(十三)項ロ並びに(十七)項に掲げる防火対象物
改正前は延べ面積300平方メートル以上という条件が付いていましたが、改正後はその条件が条文から消えました。
総務省消防庁の資料では、平成26年3月31日までは「延べ面積300平方メートル以上」、平成27年4月1日以降は「全て」と整理されています。
つまり面積要件の有無こそが、この改正の核心です。
施行は平成27年4月1日で、経過措置期限は平成30年3月31日でしたから、経過措置は既に終わっています

うちの施設、正直まだ設置していないかもしれません。

経過措置はもう終わっているので、早めの確認をおすすめします。

小規模な施設ではどう対応すればよいのか

天井の無線式感知器と壁の受信機を並べたイメージ
配線工事の費用や日数を心配して、設置が後回しになる小規模施設は少なくありません。
実はその負担を軽くする特例があります。
消防法施行令第二十九条の四第一項 法第十七条第一項の関係者は、(略)消防用設備等(以下この条において「通常用いられる消防用設備等」という。)に代えて、総務省令で定めるところにより消防長又は消防署長が、その防火安全性能(略)が当該通常用いられる消防用設備等の防火安全性能と同等以上であると認める消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設(略)を用いることができる。
延べ面積300平方メートル未満の小規模な施設には、特定小規模施設用自動火災報知設備という選択肢があります。
総務省消防庁の資料によれば、これは電池式・無線式の感知器を連動させるだけの簡易な設備で、受信機や地区音響装置を新設せずに済み、配線工事が不要とされています。
資格を持たない人でも設置でき、工事着手前の届出も要らないとされていますが、受信機や中継器を設ける場合は消防設備士による工事が必要です。
費用や工期を理由に設置をためらっている施設ほど、この特例を確認する価値があります。

配線工事までは正直、費用も日数も心配していました。

無線式の特例がありますので、まずは相談してみてください。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持つ人物と電話で相談する人物を並べたイメージ
制度の経緯が分かったところで、次は自分の建物の状況を確認する番です。
今日からできる3つの確認を紹介します。 今日からできる確認は三つあります。
一つ目は建物が令別表第一の(5)項イ・(6)項イ・(6)項ロ・(6)項ハのいずれかに当たるか、宿泊や入居を伴う使い方をしているかを確認することです。
二つ目は自動火災報知設備が既に付いているか、感知器や受信機の設置年と点検記録を確認することです。
三つ目は延べ面積が300平方メートル未満なら、特定小規模施設用自動火災報知設備で対応できないか所轄消防署や消防設備士に相談することです。
経過措置は平成30年3月31日で終わっているため、未設置のまま放置すると違反の状態が続くことになります。
まずは自分の建物が対象用途に当たるかどうかを、消防計画や用途区分の記録から確かめてみましょう。
対象なのに設置状況が分からない場合は、所轄消防署に確認するのが一番確実です。
一件の火災の教訓が、今も自分の建物の設備基準に直結していることを覚えておいてください。

今日にでも設置状況を確認してみます!

それが分かれば、今後の対応がぐっと立てやすくなります。

よくある質問

Q改正前から設置していた自動火災報知設備は、そのままでよいのですか?
A既に技術上の基準に沿って設置・維持されているものであれば、改めて設備を取り替える必要はありません。今回の改正で変わったのは対象となる防火対象物の範囲であり、既存設備の技術基準そのものではありません。
Q住宅宿泊事業(民泊)を営む一般住宅も対象になりますか?
A住宅の一部を宿泊の用に供する場合は、用途の実態に応じて(5)項イ等の扱いになり得ます。個別の判定は建物の使い方によって変わるため、所轄消防署に確認してください。
Q特定小規模施設用自動火災報知設備は、どんな建物にでも使えますか?
A総務省消防庁の資料では、原則として2階建て以下であることなど一定の要件が示されています。延べ面積や用途の組み合わせによって設置可能な範囲が変わるため、所轄消防署や消防設備士に確認しながら進める必要があります。
Q特定小規模施設用自動火災報知設備を設置すれば、点検や報告の義務は無くなりますか?
Aいいえ、設備の種類にかかわらず消防用設備等の点検・報告の義務は変わりません。特定小規模施設用自動火災報知設備を設置した場合も、他の自動火災報知設備と同じく定期点検の対象になります。

まとめ

きっかけは平成24年の福山市ホテル火災でした。
対象は旅館・ホテル・宿泊所と病院・有床診療所、入居や宿泊を伴う高齢者施設です。
延べ面積300平方メートル以上という要件が撤廃されました。
施行は平成27年4月1日、経過措置期限は平成30年3月31日でした。
小規模施設には特定小規模施設用自動火災報知設備という特例があります。
この特例は配線工事が不要で、電池式・無線式の感知器で構成できます。
経過措置は既に終了しており、対象施設は今すぐ設置状況を確認する必要があります。

面積が理由じゃなくなったこと、今日すぐ確認します!

自動火災報知設備のことでしたら、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第21条・第29条の4
  • 総務省消防庁「平成24年版消防白書 第2節 福山市ホテル火災を踏まえた防火安全対策」
  • 総務省消防庁「社会情勢の変化等に対応した消防用設備や防火管理のあり方」(平成30年7月23日 消防庁予防課資料)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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