火災現場でホースから水が出続けているのは、当たり前の光景に見えます。
でもその水は、誰かの敷地にある水利を消防が使わせてもらって届いています。
消防法第30条は、消防に水利を使う強い権限を与える一方で、所有者側への配慮も定めています。
誰がどんな時に水利を使え、所有者はどう守られるのかを確認します。
うちの敷地には防火水槽があるんですが、火災のときに消防が勝手に使ってしまうことってあるんですか。
所有者の許可はいらないんでしょうか。
消防法第30条に、まさにその水利の使用権が定められています。
条文から見ていきましょう。
使われた結果、水槽が空になったり設備が傷んだりしたら、補償してもらえるんですか。
第29条の破壊消防の話とは違うんでしょうか。
そこが今日のポイントです。
結論から整理しますね。
- 消防長等は、緊急の必要があるときに水利を使用し、水門・樋門・制水弁の開閉を行える(消防法第30条第1項)
- この権限を持つのは消防長若しくは消防署長、消防本部を置かない市町村では消防団の長に限られる
- 要件は「火災の現場に対する給水を維持するために緊急の必要があるとき」
- 第30条には、水利の所有者等への損失補償の規定が置かれていない
- 消防長等は、水利の所有者等とあらかじめ協定を結んでおくことができる(同条第2項)
▼

目次
消火のための給水はどんな権限で確保されるのか

条文を見てみましょう。
防火水槽や河川、プールといった水利だけでなく、その水量を左右する設備そのものにまで権限が及ぶ点が特徴です。
火災現場に水が届き続けるかどうかは、消防活動の成否を左右する土台になるからです。
水を使うだけじゃなくて、バルブの開け閉めまでできるとは思っていませんでした。
それだけ現場の給水が大事ということですね。
そのとおりです。
次は、この権限を誰が使えるのかを見ていきましょう。
この権限を持つのは誰でどんな時に使えるのか

もう一度、条文の文言を確認します。
一般の消防隊員が独自の判断で行えるわけではなく、指揮系統の上位にある立場の者に限定されているということです。
要件も「火災の現場に対する給水を維持するために緊急の必要があるとき」に絞られています。
平常時の点検や訓練のために使える権限ではなく、あくまで非常時の権限です。
誰でも勝手に操作できるわけじゃないんですね。
それを聞いて少し安心しました。
次は、所有者側が気になる補償の話に移ります。
水利の所有者に損失が出ても補償されないのはなぜか

ところが第30条には、その仕組みがありません。
- 消防法第29条第3項は、火元から離れた建物等を使用・処分・使用制限した場合に、緊急の必要があれば時価により損失を補償すると定めています
- これに対し第30条には、水利の使用や水門・樋門・制水弁の開閉による損失を補償する規定が置かれていません
とはいえ、水量が急に減ったり設備の状態が変わったりすれば、所有者にとって困りごとになりかねません。
補償が無いなら、せめて何か事前に決めておける仕組みがあると安心です。
実は、それを可能にする仕組みが同じ条文の第2項にあります。
所有者との「協定」とは何を定めるものか

第30条第2項を見てみましょう。
使用の方法や水量の限度、水門・樋門・制水弁の開閉の方法と実施者などを、火災が起きる前に取り決めておく仕組みです。
補償されない前提だからこそ、事前の協定でお互いの負担を減らしておく発想だといえます。
協定を結んでおけば、いざというときに慌てずに済みそうですね。
うちの防火水槽についても消防に相談してみます。
その相談が一番の備えになります。
最後に、防火管理者として確認しておきたいことをまとめます。
防火管理者が明日からなにを確認すればよいのか

最後に、防火管理者として押さえておきたい実務を整理します。
- 敷地内の防火水槽や制水弁の所在を把握し、所轄消防に情報が伝わっているか確認する
- 水利の使用や管理について、あらかじめ消防と協定を結べるかを相談しておく
- 設備の位置や操作方法を、従業員にも共有しておく
消防水利の基準そのものは別の条文で定められていますが、まずは自分の敷地にどんな水利設備があるかを知ることが第一歩です。
今度の点検のときに、敷地の水利設備について消防に聞いてみます!
それが一番の備えになります。
よくある質問もあわせて確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
補償が無いからこそ、事前の相談が大事だとよく分かりました。
今度の点検で消防に相談してみます!
その一言が、いざというときの安心につながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第30条(緊急水利)
- 消防法第29条第3項(消火活動中の緊急措置等)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





