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危険物を漏らして火災の危険を生じさせるとなぜ罪になるのか|消防法第39条の2と第39条の3が分ける故意と過失の罰則を解説

危険物を漏らすと罰則は故意と過失で分かれることを解説する記事のアイキャッチ画像

危険物を保管する倉庫やタンクから、中身が漏れてしまったことはありませんか。
実際に火事にならなくても、消防法第39条の2第39条の3により罪に問われることがあります。
しかも同じ行為でも、故意か過失かによって罰則の重さは大きく変わります。
その境目がどこにあるのかを、条文から確認します。

うちの倉庫で、ドラム缶から少し中身が漏れているのを見つけました。
火事にはなっていないんですが、これって問題になるんでしょうか。

それは消防法第39条の2が関わる場面です。
実際に燃えていなくても、罪に問われることがあります。

燃えてもいないのに、罪になるんですか。

はい、火災の危険を生じさせただけで成立する条文なんです。
結論から整理しますね。

この記事の結論
  • 消防法第39条の2・第39条の3は、危険物を漏出・流出・放出・飛散させて火災の危険を生じさせた行為そのものを罪としている
  • 故意に危険を生じさせた場合は第39条の2で三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金
  • 過失(業務上必要な注意を怠った場合)は第39条の3で二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金
  • 人を死傷させると、故意犯は七年以下の拘禁刑又は五百万円以下の罰金、過失犯は五年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金まで重くなる
  • ただし公共の危険が生じなかったときは、どちらの条文も罰しないとされている

危険物の漏出で火災の危険が生じ故意なら重く過失でも罰則があり死傷でさらに重くなることを示す図解

危険物を漏らしただけでなぜ罪になるのか

貯蔵中のドラム缶から液体が漏れ警戒標識が立つイラスト
危険物を扱う施設では、実際に火災が起きなくても罰則の対象になる場面があります。
まずはその条文の中身を確認します。
第三十九条の二 製造所、貯蔵所又は取扱所から危険物を漏出させ、流出させ、放出させ、又は飛散させて火災の危険を生じさせた者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。ただし、公共の危険が生じなかつたときは、これを罰しない。
燃えていなくても罪になり得ます
条文が罰しているのは火災という結果そのものではなく、火災の危険を生じさせた行為です。
危険物の管理を怠り、漏れた中身が引火しかねない状態を作った時点で、この規定にふれる可能性があります。
対象になるのは製造所・貯蔵所・取扱所から危険物が漏出・流出・放出・飛散した場合です。
実際にけがや延焼がなくても適用され得る、いわゆる危険犯という位置づけです。

実際に燃えなくても罪になるとは、正直意外でした。

危険な状態を作ったこと自体が処罰の対象なんです。
次は、故意と過失でどう扱いが分かれるかを見ましょう。

故意に漏らした場合と過失で漏らした場合はどう分かれるのか

バルブを操作する人と計器から目をそらす人が並ぶイラスト
同じ「火災の危険を生じさせた」結果でも、条文はもう一段階分かれています。
過失で招いた場合の規定を見てみます。
第三十九条の三 業務上必要な注意を怠り、製造所、貯蔵所又は取扱所から危険物を漏出させ、流出させ、放出させ、又は飛散させて火災の危険を生じさせた者は、二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金に処する。ただし、公共の危険が生じなかつたときは、これを罰しない。
第39条の2は故意犯、第39条の3は過失犯という対の条文です
第39条の2の三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に対し、第39条の3はうっかりの過失でも罰則の対象になり、二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金がかかります。
過失犯の要件は「業務上必要な注意を怠り」という一文で示されています。
これは危険物を業務として扱う立場、つまり日常的に取扱所を運営する側に向けられた規定と読めます。
点検や在庫管理を怠った結果として漏出させた場合も、この過失犯にあたり得ます。

うっかりのミスでも罰則があるとは、気を引き締めないといけませんね。

日常の点検が過失を避ける一番の対策です。
続いて、死傷者が出た場合の重さを見ましょう。

人が死傷した場合はどこまで罰則が重くなるのか

救急車と隊員がタンクのそばで対応するイラスト
火災の危険を生じさせた結果、実際に人が死傷した場合はさらに罰則が重くなります。
両方の条文の第2項を確認します。
第三十九条の二第2項 前項の罪を犯し、よつて人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は五百万円以下の罰金に処する
第三十九条の三第2項 前項の罪を犯し、よつて人を死傷させた者は、五年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する
死傷結果が生じると、故意犯は七年以下、過失犯は五年以下の拘禁刑まで引き上げられます
罰金の上限も、故意犯は五百万円以下、過失犯は三百万円以下とそれぞれ跳ね上がります。
基本の罪と死傷結果が生じた場合の罪は別項として明確に分けて規定されており、結果の重さがそのまま罰則の重さに反映される構造です。
どちらの場合も、故意犯の方が過失犯より重いという上下関係は保たれたままです。
危険物の取扱いミスが人身事故に直結し得ることを、条文自体が物語っています。

死傷者が出ると、罰則が一気に重くなるんですね。

危険物は結果の重さが直結しやすいということです。
次は、罰せられない場合の条件を見てみましょう。

公共の危険が生じなければ罰せられないとはどんな意味か

防油堤内にとどまるタンクと敷地外へ続く排水溝のイラスト
どちらの条文にも「公共の危険が生じなかったときは罰しない」というただし書きが付いています。
この線引きがどこにあるのかを確認します。
第三十九条の二 (本文略)ただし、公共の危険が生じなかつたときは、これを罰しない
第三十九条の三 (本文略)ただし、公共の危険が生じなかつたときは、これを罰しない
火災の危険を生じさせても、公共の危険にまで及ばなければ罰せられません
条文は「公共の危険」の具体的な内容までは定めていません。
一般には、敷地の外や周囲の人・建物に危険が及ばず、施設内で収まった漏出であれば、このただし書きに該当し得ると考えられます。
理由までは書かれていませんが、被害が周囲に及ぶかどうかが線引きの鍵になっていると考えられます。
とはいえ実際に該当するかどうかは個別の状況次第なので、漏出そのものを起こさない管理が最優先です。

うちの敷地内で収まっていれば、大丈夫というわけでもなさそうですね。

結局は漏らさないことが一番です。
最後に、明日からの備えを整理しましょう。

危険物を扱う施設は明日から何を確認すればよいか

点検表を持ちタンクの計器を確認する防火管理者のイラスト
故意でも過失でも、危険物の漏出は重い罰則につながります。
最後に、防火管理者として確認できる実務を整理します。
  • 危険物を保管するタンクや容器の劣化・腐食を定期点検し、漏出の芽を早期に見つける
  • 漏出に気づいたら量の大小にかかわらず速やかに止め、拡大を防ぐ
  • 防油堤や受け皿など、漏出を敷地内で食い止める設備が機能しているか確認する
漏出に気づいた時点で速やかに止め、広げない対応ができれば、火災の危険そのものを生じさせずに済む場面も少なくありません。
点検記録を残しておくことは、過失が無かったことを示す材料にもなります。
危険物を扱う作業は、慣れているほど注意が薄れがちです。
定期点検のたびに、漏出対策の設備が正しく機能しているかどうかもあわせて確認しておきましょう。

点検のときに漏出対策の設備もあわせて確認します。

それが一番の備えになります。
よくある質問もあわせて確認しておきましょう。

よくある質問

Q実際に火事にならなければ罪に問われないのか?
Aいいえ。第39条の2・第39条の3は火災の危険を生じさせた時点で成立する規定で、実際の出火や延焼は要件ではありません。
Qうっかり漏らしてしまった場合も罰則があるのか?
Aあります。業務上必要な注意を怠った過失であれば第39条の3が適用され、二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金の対象になり得ます。
Q公共の危険が生じなければ本当に罰せられないのか?
A条文上は公共の危険が生じなかったときは罰しないとされていますが、該当するかどうかは個別の状況によるため、所轄消防にご確認ください。
Q人がけがをした場合はどのくらい罰則が重くなるのか?
A死傷結果が生じると、故意犯は七年以下の拘禁刑又は五百万円以下の罰金、過失犯は五年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金まで引き上げられます。

まとめ

消防法第39条の2・第39条の3は、危険物を漏出・流出・放出・飛散させて火災の危険を生じさせた行為を罪としている
故意犯は第39条の2で三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金
過失犯は第39条の3で二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金
人を死傷させた場合は、故意犯が七年以下、過失犯が五年以下の拘禁刑まで重くなる
過失犯の要件は業務上必要な注意を怠ったこと
公共の危険が生じなかったときはどちらも罰しないとされている
漏出に気づいたら速やかに止め、防油堤などで敷地内に食い止めることが実務上の備えになる

同じ「漏らす」でも、故意と過失で罪の重さが違うとはっきり分かりました。
倉庫の点検、あらためて徹底します!

その一言が、いざというときの安心につながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第39条の2(危険物に係る火災の危険を生じさせた罪)
  • 消防法第39条の3(過失により危険物に係る火災の危険を生じさせた罪)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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