屋外貯蔵タンクのそばに設けるポンプ設備には、危険物が漏れたときの流出を防ぐ措置が義務付けられています。
この措置には「溝方式」と「囲い方式」という二つの選び方があり、実はどちらを選ぶかで必要な設備の数が変わります。
危険物の規制に関する政令と規則は、方式ごとに省略できる設備の範囲を書き分けています。
この記事では二つの方式と省略できる条件を条文から整理します。
うちの屋外タンクのそばにあるポンプは、地面に囲いがあるだけなんですが、これで大丈夫なんでしょうか。
ポンプの流出防止措置には二つの認められた方式があります。
どちらを選んでいるかで、必要な設備が変わってきます。
うちは囲いだけで、傾斜や排水溝はありません。
それでも問題ないんでしょうか。
囲い方式であれば、条件を満たせば傾斜や貯留設備を省略できます。
条文に沿って確認していきましょう。
- 屋外貯蔵タンクのポンプ設備は、政令第11条第1項第10号の2ルにより流出防止措置が義務付けられます。
- 認められる方法は、規則第13条の2の2が定める「溝方式」と「囲い方式」の2つです。
- 囲い方式を選び漏れた危険物をとどめられる場合は、規則第21条の3の3により傾斜・貯留設備・油分離装置を省略できます。
- 溝方式のままでは、この省略の特例は適用されません。
- 既存設備がどちらの方式かを図面と現地で確認し、許可図面との整合を保つことが実務のポイントです。
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目次
屋外に設けたポンプ設備には何が義務付けられるのか

危険物の規制に関する政令は、この設置環境そのものに流出防止の義務を課しています。
条文が定める基本形は、高さ0.15メートル以上の囲いを設けたうえで、地盤面をコンクリートなどで覆い、傾斜と貯留設備を備えることです。
第4類の危険物のうち水に溶けないものを扱うポンプ設備では、この貯留設備に油分離装置まで求められます。
「総務省令で定める場合を除き」という留保が付いているため、条件次第でこの一部を省略できる余地があることが読み取れます。
その条件がどこにあるのかを、次の項目から確認していきます。
うちのポンプは基礎の周りに低い塀があるだけですが、これだけで足りているんでしょうか。
はい、それが囲いによる流出防止措置の基本形です。
次の項目で認められる方式を確認しましょう。
流出防止措置として認められる方法は何か

規則はこの2つを並べて示しています。
第1号は設備の真下の地盤面に溝を設ける方法、第2号は設備を載せる架台などの周囲に囲いを設ける方法です。
屋外貯蔵タンクのポンプ設備については、規則第21条の3の2がこの2つの措置をそのまま準用しており、どちらを選んでも「認められる措置」を講じたことになります。
ただし、この2つは見た目が似ていても、この先の設備の要否では扱いが分かれます。
次の項目で、どちらの方式に有利な違いがあるのかを確認します。
溝でも囲いでも、同じ「流出防止措置」として認められるんですね。
はい、条文上はどちらも対等な選択肢です。
ただしその先の話は変わってきます。
囲い方式を選ぶと何が省略できるのか

規則の別の条文が、この特例を定めています。
条文は「前条の措置」のうち第13条の2の2第2号に掲げる措置に限ると明記しており、対象は囲い方式だけに絞られています。
つまり、しっかりした囲いで危険物をその場にとどめられるなら、政令第11条第1項第10号の2ルが原則として求める傾斜・貯留設備・油分離装置は不要になります。
この特例が使えるのは、あくまで漏れた危険物を囲いの中に確実にとどめられることが条件です。
次の項目では、逆に溝方式を選んだ場合にどうなるかを確認します。
つまり、囲いさえきちんとしていれば、排水溝や油分離装置は要らないということですね。
はい、それが囲い方式ならではの特例です。
ただし溝方式ではこの特例は使えません。
溝方式のままだと何が省略できないのか

条文を読み比べると、両方式のあいだにはっきりとした差があることが分かります。
- 囲い方式(規則第13条の2の2第2号) 条件を満たせば傾斜・貯留設備・油分離装置を省略できる
- 溝方式(規則第13条の2の2第1号) 省略の特例は適用されず、傾斜・貯留設備を通常どおり設ける
- 水に溶けない第4類の危険物を扱う場合 溝方式では油分離装置も省略できない
- 規則第21条の3の3が対象を「第13条の2の2第2号に掲げる措置に限る」と明記しているため、溝方式に読み替えることはできない
規則第21条の3の3が特例の対象を囲い方式に限定しているため、溝方式のポンプ設備は政令第11条第1項第10号の2ルの原則どおり、傾斜・貯留設備・油分離装置をそのまま備える必要があります。
既存の設備が溝方式なのか囲い方式なのかを取り違えると、省略してよいはずのない設備を省略してしまう恐れがあります。
図面や現地の状況を確認し、どちらの方式で設置されているかをまず特定することが欠かせません。
図面を見ても、うちのポンプがどっちの方式か分からないんですが、どう確認すればいいですか。
基礎の周りが溝なのか囲いなのかを現地で見るのが確実です。
次の項目で確認の手順をまとめます。
実務ではどちらの方式を選べばよいのか

新設のときも、既存設備を点検するときも同じ視点で確認できます。
- ポンプ設備がポンプ室の中か外かをまず確認する(ポンプ室内は別の基準が適用される)
- 屋外に設けている場合は、基礎周りが溝方式か囲い方式かを現地と図面の両方で確認する
- 囲い方式で漏れた危険物を確実にとどめられる場合は、傾斜・貯留設備・油分離装置の省略が認められるか所轄消防署に確認する
- 新設時に省略を選ぶ場合は、囲いの高さや強度が「漏れた危険物をとどめることができる」水準かどうかを設計段階で詰めておく
どちらの方式かは設置時の許可申請書類にも記載されているはずなので、許可図面と現地を突き合わせて確認しておくと安心です。
改修や設備更新のときに方式を変える場合は、変更後の基準を満たしているかを事前に確認する必要があります。
判断に迷う場合は、早めに所轄消防署へ相談することをおすすめします。
うちのポンプがどちらの方式か、今度現地で確認してみます。
許可図面との突き合わせもあわせて行ってください。
次のよくある質問もあわせて確認してください。
よくある質問
まとめ
方式の確認を、この機会にしてみます。
迷ったときは早めのご相談がおすすめです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第11条第1項第10号の2(屋外貯蔵タンクのポンプ設備の基準)
- 危険物の規制に関する政令第9条第1項第12号(製造所の危険物流出防止措置)
- 危険物の規制に関する規則第13条の2の2(危険物の流出を防止する措置)
- 危険物の規制に関する規則第21条の3の2(ポンプ設備の危険物の流出を防止する措置)
- 危険物の規制に関する規則第21条の3の3(ポンプ設備において適当な傾斜及び貯留設備並びに油分離装置を設けなくてもよい場合)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





