蓄電池は非常用電源や再生可能エネルギーの蓄電システムとして、工場や商業ビルの屋上・屋外に設置される例が増えています。
危険物を用いた蓄電池だけを扱う施設は「一般取扱所」に区分されますが、通常の製造所と同じ重い基準をそのまま適用すると、屋上や屋外への設置が事実上難しくなります。
そこで消防法令は、蓄電池設備専用の一般取扱所に絞った特例基準を用意しています。
この記事では、蓄電池設備だけを取り扱う一般取扱所が屋内・屋上・屋外でそれぞれどこまで基準を軽くできるのかを解説します。
うちのビルの屋上に非常用の蓄電池設備を置きたいんですが、製造所と同じ基準がそのままかかるんでしょうか。
蓄電池設備だけを扱う一般取扱所には専用の特例があります。
屋内・屋上・屋外で条件が変わります。
屋上ならどこでも自由に置けるわけではないんですね。
その通りです。
置き場所ごとの条件を順番に見ていきましょう。
- 危険物を用いた蓄電池だけを扱う一般取扱所は、規則第二十八条の五十四第九号で定義され、規則第二十八条の六十の四に特例基準がまとめられています
- 告示適合のキュービクル式蓄電池設備であれば、屋外設備の囲い基準と電気設備の基準は設置場所を問わず共通で外れます
- 屋内に設置する場合は指定数量の倍数三十未満に限られ、厚さ七十ミリメートル以上の鉄筋コンクリート等による防火区画が必要です
- 屋上に設置する場合は指定数量の倍数十未満まで絞られる代わりに、囲いと空地という軽い条件で足ります
- 屋外の地上に設置する場合は数量の上限がありませんが、指定数量の百倍以上では冷却用の散水設備が追加で必要になります
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目次
蓄電池設備専用の一般取扱所とは何か

まずは根拠となる条文の構造を確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四 令第十九条第二項の総務省令で定める一般取扱所は、次の各号に掲げる一般取扱所の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。(略)九危険物を用いた蓄電池設備以外では危険物を取り扱わない一般取扱所
政令第十九条第一項は、一般取扱所の位置・構造・設備の基準について製造所の基準(政令第九条第一項)を準用すると定めており、これが原則です。
ただし政令第十九条第二項は、業態ごとに特有の危険物の使い方をする一般取扱所について、総務省令で基準の特例を定めることを認めています。
規則第二十八条の五十四第九号は、その対象の一つとして「危険物を用いた蓄電池設備以外では危険物を取り扱わない一般取扱所」を定義しました。
具体的な緩和の中身は、規則第二十八条の六十の四が設置場所ごとに定めています。
製造所と同じ基準がかかるなら、一般取扱所として区分する意味があるんでしょうか。
そこがポイントです。
専用に区分されたことで、次に説明する特例基準が適用されます。
告示適合の蓄電池設備なら共通で何が緩和されるのか

条文を確認します。
政令第九条第一項第十二号は、屋外に設けた液状の危険物を取り扱う設備に高さ〇・一五メートル以上の囲いと油分離装置付きの貯留設備を求める規定です。
第十七号は、電気設備を電気工作物に係る法令の規定によらせる規定です。
どちらも、蓄電池設備そのものの構造安全性がすでに告示で確認されていることを前提に、重複する規制を外す趣旨です。
この緩和は設置場所を問わず共通して働きますが、これだけでは足りず、次に見る設置場所ごとの条件を別途満たす必要があります。
告示に適合する蓄電池設備を選べば、それだけで屋上でも屋外でも自由に置けるということですか。
いえ、そこは別枠です。
設置場所ごとに追加の条件があります。
屋内に設置するときはどこまでの防火区画が必要か

条文を確認します。
規則第二十八条の六十の四第三項により、指定数量の倍数が三十未満で、危険物を取り扱う設備を建築物に設ける場合に限って屋内設置の特例が使えます。
条件を満たすには、規則第二十八条の五十五第二項第三号から第八号までに定める無窓・特定防火設備・床の傾斜排水・採光換気・排出設備・ダンパーの基準に適合させます。
さらに規則第二十八条の五十六第二項第一号・第二号の例により、壁・柱・床・はりを耐火構造とし、厚さ七十ミリメートル以上の鉄筋コンクリート等で建物の他の部分と区画しなければなりません。
これらを満たすと、政令第九条第一項第一号・第二号及び第四号から第十一号までの規定が適用されなくなります。
倉庫の一角に置きたいんですが、部屋を区切るだけでは足りないんですね。
はい、鉄筋コンクリート等の厚みまで求められます。
屋上や屋外に置くほうが軽い条件で済むこともあります。
屋上に設置するときはどんな条件で足りるか

条文を確認します。
規則第二十八条の六十の四第四項により、壁・柱・床・はり・屋根が耐火構造である建築物の屋上に設備を固定し、キュービクル式として周囲に高さ〇・一五メートル以上の囲いを設けます。
囲いの周囲には幅三メートル以上の空地を確保します(耐火構造の壁や柱に接する場合は距離を短縮できます)。
囲いの内部の床は危険物が浸透しない構造にして、油分離装置付きの貯留設備も備えます。
これらを満たすと、政令第九条第一項第一号・第二号及び第四号から第十二号までの規定が適用されなくなり、屋内設置より広い範囲の基準が外れます。
屋内より条件が軽いのに、指定数量の倍数の上限は逆に厳しいんですね。
そのとおりです。
量が多くなるほど、屋外設置を検討することになります。
屋外の地上に設置するときはどんな条件で足りるか

条文を確認します。
周囲に幅三メートル以上の空地を確保し、堅固な基礎の上に固定し、キュービクル式で告示適合の蓄電池設備とすれば、屋外設置の特例が使えます。
これを満たすと、政令第九条第一項第一号・第二号・第十二号及び第十七号の規定が適用されなくなります。
ただし数量が増えるほど条件は上乗せされ、指定数量の百倍以上を取り扱う場合は、放射能力範囲が設備を包含する冷却用の散水設備を追加で設けなければなりません。
屋外は自由度が高い分、大規模な設備ほど別の安全対策が求められる仕組みになっています。
屋外なら量を気にせず置いていいと思っていました。
数量の上限こそありませんが、大量になるほど散水設備が必要です。
計画段階で数量を数えておきましょう。
よくある質問
まとめ
屋上に置けば済むと思っていましたが、キュービクル式や空地の条件まで細かいんですね!
置き場所によって条件が変わる点が見落としやすいところです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十条第四項
- 危険物の規制に関する政令第九条第一項・第十九条第一項・第二項
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第九号・第二十八条の五十五第二項・第二十八条の五十六第二項・第二十八条の六十の四
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





