特定建築物定期調査では、外壁の劣化診断は建物の構造によって着眼点が大きく変わります。
木造とれんが造、鉄骨造と鉄筋コンクリート造とでは、劣化のサインも判定基準もまったく異なるためです。
調査員がどの構造でどこを見ているのかを知っておくと、報告書の指摘事項もぐっと理解しやすくなります。
本記事では、外壁躯体の劣化及び損傷の状況について、5つの構造区分ごとに調査のポイントと判定基準を解説します。
うちのビル、去年の定期調査で「外壁躯体の劣化及び損傷の状況」の欄に指摘が入ったんですが、木造でも鉄筋コンクリート造でも同じ見方をされているんでしょうか。
実は構造によって判定基準がまったく別に定められています。
今日は5つの構造区分ごとに見るポイントを整理していきますね。
構造で判定基準がこんなに違うとは、恥ずかしながら知りませんでした。
木造・組積造・補強コンクリートブロック造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の順に見ていきます。
ご自分の建物がどの構造に当たるかを意識しながら読んでみてください。
- 外壁躯体の劣化診断は、木造・組積造・補強コンクリートブロック造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の5区分で判定基準が分かれています。
- 基準はすべて国土交通省告示によって全国共通に定められています。
- 木造は腐朽・虫害・緊結金物の錆、組積造はれんがや石の割れ・ずれが主な着眼点です。
- 鉄骨造は鋼材の錆・腐食、鉄筋コンクリート造は鉄筋露出や著しいひび割れが判定の決め手になります。
- 自分の建物の構造を把握しておくと、調査結果図の指摘内容が理解しやすくなります。
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目次
木造の外壁躯体はどこを見て劣化を判定するのか

定期調査では、この軸組に生じる劣化のサインを構造の基本として最初に確認します。
調査は双眼鏡等を使った目視が基本で、下地を壊して確認するようなことはしません。
外壁の一部が浮いている、雨だれの跡が続いているといった見た目の変化は、内部の腐朽が進んでいるサインになりやすい部分です。
筋かいや土台をつなぐ緊結金物の錆も、木造特有の見落としやすいポイントです。
外壁に不自然なしみやひび割れを見つけたら、次回の調査を待たずに専門家へ相談しておくと安心です。
うちは木造なんですが、腐朽って言われても、どこを見ればいいのか分かりません。
外壁の下の方や雨がかかりやすい部分に、色の変化やふくらみが無いか見るだけでも十分な手がかりになります。
気になる箇所は写真を撮っておくと相談がスムーズです。
組積造の外壁躯体はどんな劣化のサインを見るのか

木造や鉄筋コンクリート造とは異なる、組積造ならではの着眼点があります。
れんがや石は木造の軸組のように内部が腐るわけではなく、経年で目地や積み方そのものが動くことが劣化の中心です。
割れは表面のひびだけでなく欠けの有無まで見て、ずれは積み上げた面が水平を保っているかを基準に確認します。
組積造は現存数こそ少ないものの、歴史的建造物や倉庫等で今も使われている構造です。
該当する建物では、目地の異常を早期に見つけることが崩落防止の第一歩になります。
組積造なんて、うちの建物には関係ないと思ってました。
最近の建物では少ないですが、歴史ある建物や倉庫では今も現役です。
該当する場合は、目地のずれに早めに気づくことが大切です。
補強コンクリートブロック造の外壁躯体はどう判定するのか

この目地とブロックの積み方に異常が出ていないかが、調査の中心になります。
ブロック自体が割れるよりも先に、ブロック同士をつなぐ目地モルタルが欠け落ちる形で劣化が現れやすいためです。
目地の欠落を放置すると、壁全体の一体性が失われてブロック積みの変位につながるおそれがあります。
塀や倉庫、工場の外壁などに使われていることが多い構造です。
目地に沿って段差やずれが見えたら、専門家に早めの点検を依頼しましょう。
うちの倉庫、補強コンクリートブロック造なんですが、見た目にはどこも変わってないように見えます。
ブロックそのものより、目地のモルタルに小さな欠けが無いかを重点的に見てください。
気になる場所があれば、遠慮なくご相談ください。
鉄骨造の外壁躯体で見落としやすいのはどこか

木造や組積造と違い、目に見えにくい部分の錆が進行していることも少なくありません。
基準がシンプルな分、著しい錆かどうかの見極めが調査員の経験に委ねられる部分でもあります。
外壁の目地や取り合い部分は水がたまりやすく、塗装が剥がれた箇所から腐食が進むことがあります。
屋外に露出した鉄骨は、塗装の劣化そのものが錆の前兆として重要な手がかりになります。
塗装の色あせやふくれを見つけたら、錆が進む前の塗り替えを検討する時期です。
鉄骨造の建物なんですが、パッと見はきれいなので大丈夫かなと思ってます。
塗装がきれいでも、目地や取り合い部分の裏側で錆が進んでいることがあります。
定期調査の指摘を機に、塗装の状態も確認してみてください。
鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の外壁躯体はどう調べるのか

数ある構造区分の中でも、特定建築物で最も多く使われている構造です。
鉄筋露出はコンクリートのかぶりが失われているサインで、放置すると鉄筋の腐食が急速に進みます。
白い粉状の跡である白華や、幅の大きいひび割れも、内部への水の浸入を示す重要な指標です。
これらは外壁躯体そのものの劣化で、タイルやモルタルなど外装仕上げ材の劣化とは別の項目として判定されます。
コンクリートにさびた色の水の跡が出ていたら、鉄筋露出のサインとして早めに調査を依頼しましょう。
鉄筋コンクリート造のビルですが、ひび割れなんて古い建物なら普通にあるものだと思ってました。
幅が大きいひび割れや、さびた色の水の跡が出ているひび割れは注意が必要です。
気になる場合は、次回の調査を待たずに専門家に見てもらいましょう。
よくある質問
まとめ
今回の話で、うちの建物がどの基準で見られているのか、よく分かりました!
次の調査までに目地や塗装もチェックしておきます。
外壁の劣化は早期発見が肝心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行規則第5条(e-Gov法令検索)
- 建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(平成20年国土交通省告示第282号)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。調査の方法や判定の適用は建物や特定行政庁の運用ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門業者にご確認ください。





